20話 父の来訪
夏最後の雨が降り、外が涼しくなり千代のリボンが好評になった矢先に急に来た秋と一緒に父、元康が輪島邸にやって来た。
「真莉の結婚が決まった。今から視てやれ」
それだけ開口一番に言って来たから
「今からですか?」
と久しぶりの父からの物言いに驚く。
「当たり前だ」
「でも・・・」
言いかけてギクリとする。
なんとも言えない圧を父から感じたのだ。
言われなくても分かる。
いつから口答えできるようになったとでも言いたげだ。
「分かりました。では家の者にすぐ戻るとだけ伝えて来ますので少々お待ちください」
「早くしろ」
会話が噛み合わないまま、燈子はエミリーにその事を告げ、父が乗ってきた馬車に乗り久しぶりの実家へ向かった。
帰ってくるやいなや父は真莉を呼びつける。
「真莉、来なさい。燈子が視てくれるそうだ」
女学校から帰ってくつろいでいる茉莉はなかなか部屋から出たがらない。
「別に視るまでもないわよ」
襖越しから久しぶりに聞く妹の声がした。
「そういう訳にはいかない。縁談はまとまったが見れるなら見通しは立てておいた方がいい」
部屋の前をどかない父の気配を感じ取り真莉は渋々襖を開けた。
久しぶり見た妹の顔には不機嫌と顔に書いてある表情だった。
「もう、お父様は心配しすぎよっ」
ガラッと襖を開けて父の話を終わらせようとした茉莉は側に控えている燈子を見てフンと目を伏せた。
するとどういう気の変わりようか
「視るんだったら広間に行きましょう」
と言うとさっさと先に行ってしまった。
「さっさと視なさいよ」
素手で触らせてるんだからと茉莉が言うので頷き集中する。
茶髪の青年が何やら茉莉に諭すように注意し、キャンキャン反撃する茉莉の姿が映る。
(一応、大きな喧嘩をしてるようには見えないし)
これはこれで大丈夫そう?
「・・・大丈夫。お相手の方とは上手くやれています」
「だからそうだって言ってるじゃない!光司さんは私に相当入れ込んでいるんだから」
杉乃井 光司様。
杉の井は高柳が贔屓にしている家具屋だ。
工房で作られる木製の家具は人気でよく買い付けの時に選んだ記憶は新しい。
光司様はご長男で弟さんは職人として修行している。
そんな話を高柳に戻る道中、父から聞いた。
用事は終わった。
お辞儀をし広間を出ようとしたその時ー、嗅いだ事のない匂いが鼻に充満した。
目を開けているのが限界で、何故か瞼の裏にいたのはしばらく会っていない母ー。
そんな気がした。
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