1話 高柳の拾われっ子 燈子の能力
高柳の広間には実に麗しい華やかな着物や簪がズラッと並んでいた。
なんの珍しい事ではない。
商いをしている高柳家では年に何回かある燈子を交えた「商品の買い付け」の最中だ。
目の前には父、高柳 元廉が二種類の扇子を持ち「左が松方屋、右が山吹の物だ」
と燈子の前に置き、眼鏡の奥の瞳がわずかに笑う。
さあ、どちらが売れる?と聞いているのだ。
「山吹様の方はお客様はよく喜んでおられます」
燈子は右の扇子に触れて答えるが元廉は
「そりゃあそうだ。どちらもいい物だからな。で、どうなんだ?」
と静かに圧を掛ける。
つまり「結局、売れるのはどちらだ?」と言う事だ。
もう一度、片方づつ扇子を触り
「左の松方屋の方です・・・」と答える。
すると彼は満足したかと思うと松方屋の扇子だけ自分の側に寄せた。
買い付け決定の動作だ。
そうしていくつもの同じ種類の違う専門店から持って来させた新作を元廉は燈子に見せ終わると彼女に
「以上だ」と言い部屋から出ていくよう促す。
一礼して手袋をはめ広間を出ていくと燈子は慣れてるとはいえ溜まった疲れがドッと溢れ身体に被さるような気を覚えた。
燈子には自分でも不思議な力がある。
それはいわゆる悟りの能力で素手で触れた人や物の過去や未来が「視える」のだ。
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