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はじまりとおわり

作者: キト

よくあるやつ



階段を上っている。


靴の着地音だけが響き渡る。


目的地はまだ遠い。



ふと、立ち止まり、

荒れ狂う風音を近くに聞きながら、

私はそっと目を閉じる。



思えば、ここまでの道のりは、

大したものではなかったと感じる。


しかし確かに、

一つ一つの出来事は、その瞬間、その一瞬は、

余りにも濃密で、長く、無限にも感じたのだ。


だから...




...私は、目をゆっくりと開き、

再び上り始める。


カツン、コツン、と、軽快な音を立てて。


ダンスやリズムの知識は無いが、

さながらワルツのようだと思い、少し、幸せな気持ちになった。



頭の中で、昔見た映画や好きな曲を繰り返し流し、

幸せなひとときを延長する。


そうして、今度は少し、安堵した。



ふと我に返ると、掌が汗ばんでいる事に気が付いた。


気が付いて...しまった。


しかし、もう戻れないのだ。



いや、そんなことは無いのかもしれない。


自分で、『そうだ』と、思い込んでいるだけで。


本当は戻る方法など、

いくらでもあるのかもしれない。



...だけれどもう、目的地は目の前に迫っていた。


これで良い。という気持ちと、

こんなのは嫌だ!!という気持ちが、

せめぎ合い、ぐちゃぐちゃになり、身体を廻って


「ヴッ....」


立ち止まり、やっとのところで抑え、

また上り始める。



身体の具合と相反して、

いつの間にか辺りは静まり返っていた。




フッと、短く、強く、息を吐く。



目的地に着いた。



強く深く、息を吸う。



何時だって、何だってそうなのだ。

こちらの気持ちなんて、周囲は、時間は、

待ってくれやしない。だからこそ。



扉に手をかける。




さあ、私はこれで



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