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嘘告だと思い込んでたら本告でした  作者: 家紋 武範
第二章 二人は恋人
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第五十一話◇一條瑠菜

 空くんがお友達と戯れながら楽しそうに行ってしまった。私はポツンと一人。

 でも急に回りのみんなが駆け寄ってきた。同級生に知り合いの先輩や後輩。それぞれ口々に可愛い、可愛いって、いやーん。うれしー。空くんも喜んでくれたかな? 私の嬉し恥ずかし花嫁姿! やんやん、瑠菜照れちゃう~。


 でも最近、空くん様子がおかしかったもんね。トークアプリでもスタンプばっかりだったし。私何かしたかしら……?


 うーん、あの時に痛くて目をつぶって声出すのも我慢してたから怒ったのかな~? でも二回もしたし。二回目は良かったような気がする。空くん思った通りセクシーだったよ~。最近筋トレしてるっていってたけど、お胸とか、腕とかカッコよかったな~。そんな空くんと私はもう他人じゃないのだ。


 はっ! そうだわ! 思い出した! あの時の私の下着……。油断した、使い古しだったわ。くうう、せっかく可愛い下着用意してたのに、最近は空くんと一緒に帰らないからって油断してた。しかも、上と下、別カラーだったのよね。ひょっとしたらほつれとかあってボロだったかも?

 い、いやそんなはずないわ。あの時の空くんは、もう私の体に寄りかかって手探りで脱がしてたって感じだし。

 でも着るときはチラチラしてたような……。お、おう……。


『オラぁ! 瑠菜、よくも恥ずかしげもなくそんな醜い着古した下着を俺様の前で着てくれたな!』

『ひゃいーん、空きゅん、勘弁してぇ!』

『ならぬ、ならぬぞよ! この端女(はしため)め、手打ちにしてくれようぞ!』

『あーれー』


 って、誰よそれよ。空くんはそんなお話のしたかじゃなかったはずよね?


 で、でも私たちは一つになった間柄なのだ。これからも仲良くしてれば、下着のことは挽回するチャンスは巡ってくるはずなのだ。


 私が腰に手を当てて威張った格好でふんすと鼻を鳴らしていると肩を叩かれたので驚いた。


「きゃん!」

「ん? おいおいどうした。大丈夫か?」


「やん。夢唯ちゃん?」


 振り返ると夢唯ちゃんだった。お隣にいるのは、えーと、生徒会長のナンとか先輩だわ。神父の役をやってくれた人だよね。知ってるよ、私。


「転校しなくて良かったな、瑠菜。これでまた一緒に学校生活を送れる」

「うん、そうだね。でもどうして転校なんて? 瑠菜そんなこと言ってないのに」


「うむ。どうやら空が勝手に勘違いしたようだな」


 ……あ、そうか、だから空くんあんなに悲しそうでテンション低めだったんだわ。やだ、嬉しい。そんなに瑠菜を大事に思ってくれてるってことだもんね。


「この仮装も、空があまりに悲しそうだったからみんなで企画したんだ」

「そうそう。森岡くんはみんなをそう言う気持ちにさせられる能力があるのかもね。放っておけないっていうか、さ」


 お、おう。夢唯ちゃんも生徒会長のナントカさんも、空くんの魅力に気付いてくれて嬉しい。生徒会長のナントカさんは笑顔で言った。


「森岡くんの勘違いにはやられたが、こうして生徒全員が一つになれたのは誰あろう彼のお陰だよ。森岡くんはなかなか大した男だね。感謝しているんだ。彼には、さ」


 そしてナントカさんは夢唯ちゃんの肩に手を置いた。どうやらナントカさんも空くんの魅力を知ってくれたみたいで嬉しい。

 こうしちゃいられない。空くんを探さなきゃ。そして、これからも一緒にいれることを喜び合うのだ。そしてぇ、今日のお帰りの時に空くんのお部屋で……、きゃんきゃん。


 私は空くんを探してウェディングドレス姿で歩き始めた。キョロキョロしていると、美羽ちゃんが優しい顔をして小さく手を振っていてくれた。私は急いでそこに近付いて抱きついた。


「やんやん、美羽ちゃーん!」

「ふふ。瑠菜、結婚おめでとう」


「うふ、ありがとう」

「こんな日がすぐにくるかもね」


「えへ。美羽ちゃんも御堂くんと仲良さそうだったね!」

「え?」


「ほら、デート、デート。前に商店街で二人のところあったじゃん? 誕生日プレゼント渡した時。あれから瑠菜、パパの引っ越し準備で学校来れなかったけど、御堂くんとのデート楽しかった」

「ああ、あれ、ね……」


 美羽ちゃんは、そう言うと視線を地面へと落としてしまった。そしてためらいながら言う。


「なんか、ダメになっちゃって……。ダメだね、私。ケンカ別れしちゃった」

「え、そんな……」


「あは、なんか清々しちゃった……かも」


 様子が変だと思ったけど、美羽ちゃん、そんなことがあったのね。私は美羽ちゃんへと両手を突き出した。


「はい、これ上げる!」

「ブーケ? いや、私貰う資格ないし……」


「んーん。次は美羽ちゃんの番!」

「え? でも……。私、最低な女なの。瑠菜は知らないかもだけど……」


「うん。でも美羽ちゃんにも幸せになって貰いたい。大事な友達だもの。そんでね、空くん言ってた。御堂くんは美羽ちゃんとやり直したいから気持ち入れ換えたって。美羽ちゃんもきっと御堂くんを頼りたいから、寄り掛かりたいから、御堂くんに甘えていろいろキツく言うんだって。美羽ちゃんにはね、そう言う御堂くんが必要なんだって、さ」


 美羽ちゃんの顔がみるみる明るく変わるのが分かった。そして手渡したブーケを胸元でキュっと抱いた。


「そっか。空くんが……」

「うんうん」


「やっぱり、空くんは素敵だね」

「でしょ? でも空くんは瑠菜の恋人なんですからね」


「あは。二人とも、とってもお似合いだよ!」

「ありがと。ホラ、美羽ちゃんも御堂くんと仲直りして」


「うん!」


 そう言うと、美羽ちゃんは校舎に向けて駆け出した。きっと御堂くんの元に行くに違いない。でももう少しゆっくり走って貰えると助かるのに。私、ドレスだから後を追って走りにくい。でも二人の仲直りを見届けたい。

 私は美羽ちゃんの後を追った。

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