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嘘告だと思い込んでたら本告でした  作者: 家紋 武範
第二章 二人は恋人
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第三十三話 

 御堂くんが出ていった後、俺は目の前の国永さんを睨んでいた。しかし国永さんは涼しい顔で、俺の頭をワシャワシャしてきた。


「おいおい怖い顔するな。大丈夫、瑠菜とお前の邪魔はせん」

「ちょちょちょ。そもそも、俺には瑠菜だけなんだ。俺とキミが関係しているみたいな発言は止めてくれ」


「はっはっは。遠慮は無しだ」

「なにが遠慮だよ。ぎゃふーん……」


 俺は机の上に倒れ込んだ。そもそも悩みごとが多すぎるというのに。お父様のデートブロックに、ママさんまでもブロックに加担。うちの両親にはゴム見られるし、瑠菜ちゃんは生理だし、妹の海は悪魔だし、週末は瑠菜のおじいちゃんの家に強制的に連れていかれるし、学校もこの調子では。


 そんな調子の俺に、国永さんは背中をさすっていた。もしもし、どーゆーことですか?


「夢唯! お前探したぞ。文化祭の女子柔道部の出し物はどうなっている!?」

「ん? 大知(だいち)かぁ」


 突然の来訪者に顔を上げてみると、我が校の生徒会長さま。髪は真面目にピッチリとキメ、細身の細顔のメガネ。三年生鳴門(なると)大知(だいち)先輩だ。国永さんは、そんな先輩にも呼び捨てなのかよ。すげえキャラしてんな。


「夢唯! 学校では先輩と呼べ!」

「別に、大知は大知だろう」


「お前、いくら幼馴染みだからと言って……」


 そこまで言うと、鳴門先輩はしばらく口を開けてポカンとしていた。そして、ゆっくりと国永さんを指差す。


「な、なんだ夢唯、その男にくっつきすぎだぞ、離れなさい」


 え? 俺? 俺っすか!? ほ、ホントだ。さっきから気持ちいいと思ったら、背中さすりーのからマッサージに転向して、今は俺の肩をモミモミしていた。


「その男ではない。空だ。森岡空という。私の将来の情夫だ」

「は、はあ? 俺は聞いておらんぞ? そ、それに情夫だと? 夢唯、意味分かっているのか!?」


「もちろんだ。将来は空の子を産むつもりなのだから」


 真っ青になって呆然自失の鳴門先輩。おそらく彼は国永さんを好きなのだろう、が国永さんには全くその気がないのだ。くく、なんなんだこの新キャラは! さっさと国永さんをさらっていってくれよ。俺の見えないところに……。いやホント、マジで。

 俺は鳴門先輩に手を振って否定した。


「ないですよ! ないない。俺には心に決めた人がいますし、結婚の約束だってしてるんです! 国永さんの思い込みです!」


 だが鳴門先輩は、キッと睨み付けてきた。


「や、ヤッたのか?」


 や、ヤッた? それって、高校生にあるまじき行為のヤツですか? いやあ、一條さんとは未遂まで行きましたけど、一條さんとのじゃないですよね? 国永さんと? それは絶対ないです!

 俺が『ヤッてません。ヤるわけないです』と笑顔で答えようとしたところに、この筋肉メスゴリラは勝手に答えていた。


「ああ、ヤッた」


 白目、アンド、気絶。俺の意識はワープ空間に乗って、遥か遠くのイスカンダルを目指していた。

 いやいや、戻ってきて! 俺の意識! 危うく顔色の悪い宇宙人と宇宙戦争を一戦交えるところだった!


 意識が戻ると、国永さんは俺を庇うように前に立ち、鳴門先輩を圧倒するように見下ろしている。

 いえ、あのぉ~、俺関係ないんですけど……。


「な、何回だ?」

「三回だ。まあコイツはすぐに目を回してしまったがな。だがその後が男らしかったもんで惚れてしまってな」


「く……! 不純なヤツめ! そんなことで夢唯の心を奪おうとしても無駄だ! 必ず……、必ず夢唯は取り戻してみせるからな!」


 鳴門先輩は、俺に向けて言葉を投げ掛けると教室を出ていった。いやいや、完全にお互いに言ってるの食い違ってるでしょ? でっしゃろ?

 鳴門先輩は、いかがわしいことの回数を聞いて、国永さんは普通に俺を投げた回数。おそらく試合をヤッた的なことですよね、ハイ。


 俺は深く深くため息をつく。一條さん、早くトイレから戻ってきて~。そしてこの蝗害の如き(どうにもならない)状況から解放してぇ~。

 すると、校内放送が鳴った。


『生徒会からの連絡です。二年二組の森岡空くん、森岡空くん。至急生徒会室まで来てください』


 オーマイゴッド。こりゃあれでしょ? 生徒会長の鳴門先輩は、職権を利用して俺に意地悪しようっていう連絡でしょ? いいですよ、もう。そういうの慣れっこですから。

 授業が始まるというのに、俺は生徒会室まで行くと、中心に鳴門先輩が座り、生徒会役員の面々が俺を睨み据えていた。なんなの?

 俺は意見した。


「あのう、もう授業が始まるので手短に」


 と言うと、鳴門先輩は書記を指差した。


「書記の中川さん。森岡くんは良く分かっていないようなので、説明してやってくれたまえ」

「はい、生徒会規約八条に、生徒会長は必要に応じて学校の活動時間内において、生徒会役員会を召集することができる。その召集に対して教諭は活動を妨げることができない、とあります。よって授業中だからといって、役員会議が必要である場合は続行することが可能であります」


 長い。聞いてる人最早いないよ? なんだよ、規約なんて堅苦しいもの持ち出しやがって。


「分かるかい、森岡くん。私が役員会を開いた。議題はキミだ、授業のことは気にすることはない」

「俺が一体なんだと言うのです?」


「そこだ。今度文化祭があるのは知っているね」

「はい」


「キミには文化祭の実行委員をやってもらう」

「はい? 文化祭実行委員はすでに決まってますよね? うちのクラスでも二人いるはずですけど?」


 それを鳴門先輩は鼻で笑ってまた書記の人を指差す。


「書記の中川さん、説明してやってくれたまえ」

「はい、当校文化祭規約の十一条の三項に、生徒会は生徒会長の権限において必要に応じ文化祭実行委員を指名及び罷免することができる、とありますので、森岡くんへの推薦は正当なものであります」


「その通り。なので、森岡くん。キミはこれから文化祭実行委員の一人となった。期日は迫っているので、放課後は残って仕事をして貰うよ」


 ガーン!! なにそれーー!? じゃ一條さんとの楽しい下校は? 公園での濃厚キスは? それを君たちは何の規約の何条何項で妨げることが出来ますか?


 くぬう、国永夢唯! キミって女は災いしか運んでこん!


 これじゃ、一條さんの両親にはデートを妨害され、うちの両親にはゴムは見られ、一條さんはアノ日でお預けだし、妹は悪人だし、週末は一條さんのご祖父にお会いしなきゃだし、放課後は文化祭実行委員だしで、ストレスの行き場がない。

 こんな一條さんと会えない時間が長くなれば、そのうち……。


『なんか空くん全然時間作ってくれないね』

『一條さん、好きです』

『と言うわけで瑠菜はこの告白してくれた人と付き合うことにするよ。森岡某は好きなだけ文化祭の実行でもするといい』

『すぉんな~、一條すわぁ~ん』


 ってなっちゃう! あーん、瑠菜ちゃあ~ん、見捨てないでよお~……。

【人物紹介】

 鳴門 大知:森岡空が通う高校の生徒会長。年齢は一つ上。不幸にも国永夢唯の幼馴染みで彼女に惚れている。しかし、思い告げられぬまま夢唯は空が好きだと知ってしまう。そのため、空には陰湿な復讐をすることを誓う。

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[一言] 私に勝てるかな?(激熱演出)
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