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嘘告だと思い込んでたら本告でした  作者: 家紋 武範
第二章 二人は恋人
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第二十七話

 俺たちのデートには時間制限がある。18時には一條家に入らなくてはならない。だから俺たちは、家の近くにあるひっそりとした公園で時間ギリギリまで一緒にいた。

 話したり、手を繋いで互いの体温を分けあったり、時にはキスしたり。

 やがて18時に向けて一條家に歩きだす。そして、17時59分まで、一條家の壁に寄りかかりながら、その時間を惜しんだ。


「あー、時間が進むの早すぎるよお」

「ホントだな」


 彼女を持ち帰れたらどんなに嬉しいだろう。やがて時間が来て、一條さんは門の中に入った。


「じゃあな瑠菜。また明日遊ぼうな」

「あうん、空きゅーん!」


「早く家に入らないと、お父さんが心配するぞ」


 と言ったところで、玄関の扉が激しく開いてお父様が登場。


「瑠菜お帰り! パパに会いたかったろう? それをこの不埒な森岡くんが放さなかったんだね。もう怖くないよ。じゃあ森岡くん、またな。キミもとっとと家に帰りたまえ。さっさと」


 そう言うと、お父様は一條さんの体を抱くように家に入れようとするも、一條さんは足を踏ん張って俺に手を振った。


「じゃ、空くん、明日も遊ぼうねー!」


 とやるとお父様は一條さんと、俺の顔を急速に交互に見た。そして怒気を放ちながら言う。


「な、なんだそれは! パパは聞いてないぞ!?」

「だってさっき決めたんだもの」


「ダメだダメだダメだ! そんな毎日毎日、おかしいだろ!」

「だって愛し合ってたら毎日会いたいでしょ?」


「バカもん! 愛してたって、毎日なんて異常だ!」

「パパもママと毎日会ってるよ? それもダメなの?」


「パパとママは……、夫婦だからいいのだ……。それに! それとこれとは話が別だ! それからパパはたまにはデートしてもいいとは言ったが、そんな頻繁によいとは言ってない!」

「なによおう、パパのバカ! んー、えいえいえいえい!」


 一條さんは小さく手を握ると、お父様の胸をポカポカと叩いていた。かわいい……。こりゃ見てるほうが面白い。


「それに、森岡くんは明日パパと釣りに行く約束なんだ! そうだよな、森岡くん!?」


 つ、釣りですか? あの魚を釣るやつですよね? 知ってますけどやったことはないです。

 それに、約束したことないし、初耳……。


 はっ! お父様の顔が! 俺は知っている! 映画やテレビなどでよく見る、不良、ヤンキー、悪役極悪な人々の一触即発な顔を! 今のお父様の顔は、それらを軽く凌駕するお顔……!

 これは間違った回答をすれば、一生許さないという、その意志を感じる……!


 つまり明日、お父様と俺は釣りに行かなくちゃならない──。そう言えとお顔でおっしゃっているぅ。


「は、はい。お約束忘れておりました」

「だよな、森岡くん。忘れちゃダメじゃないか。はっはっは。だが私は心の広い男だ。許そう」


「ありがとうございます……」


 屈してしまった。圧力に。これは何ハラですか? どこかで取り締まってますか? ひどい。このお父様と釣りか……。どうしたって明るいビジョンが見えてこない……。


「なによう。ぷん! 二人で勝手に約束なんてしちゃって! 瑠菜もついていきますからね!」


 いや、この子は本当にそう思っちゃってますけど? この親からどーやってこんな人を疑うことも知らない純粋な子が産まれたのだろう……?





 釣り、か……。竿もなにもお父様が用意してくれるらしい。お父様の運転で、キャンプ場に行って渓流釣りをするのだとか。朝6時集合。一体なんの因果でそんなに早起きしなくてはならないものか。

 お父様の反射的な言動だったとしても、そこまでスン、ナリと決めれるのは、やはりお父様のアウトドア経験が豊富だからだろう。


 俺は明日のことを考えると、ストレスを感じてしまい、リビングのソファーの背もたれに体を預けていた。


「どーしたの? そりゃ初めてのデートなんだから失敗なんて普通にあるよ。まあ失敗は成功の母というじゃない。なんでも経験よ」


 また妹の海のヤツだった。なぜ失敗の前提なのか問い詰めたい。


「失敗などしておらん。一條さんと俺は終始デート最高と思い、そこには幸せしかなかった」

「まあまあ、プライドあるから強がる気持ちも分かるけどね」


「そんなんじゃない。明日もデートしようと約束したら、強制的に一條さんのお父さんに明日は朝から釣りに行くと言われたのだ」


 すると海は膝から崩れ落ちたかと思うと、絨毯の上で転げ回ってしまった。


「笑え。笑い終わったら、どうすればお父さんに邪魔されないようになるか、策をくれ」

「ウケケケケケケケーー!!」


 やはりコイツ……! 妖怪だ。妖怪だったのだ。『ウケケ』なんて笑うのは妖怪くらいしかいない。きっと妖術で平和な我が家に入り込み、災いを振り撒いているに違いない。そもそも一條さんのお父様に邪魔されるのは、コイツが裏で妖術を使っているからに違いない。

 ひとしきり笑っていた妖怪は、ようやく落ち着いて、涙を拭きながら話し始めた。


「別に? キャンプ場で釣りするんだし、一條先輩もいるなら、問題なくない?」

「バカな、問題だらけだ。第一、最強の敵、お父さんがいつも目を光らせてるんだぞ?」


「でもさ、お父さんは釣りして動けないでしょ? 回りには木々もあるし、その辺に隠れるのなんて簡単だと思うよ? 『木を隠すには森の中』、よ」

「な、なるほど。そこで一條さんと……」


 なるほど、なるほど。いいこと聞いた。聞いちゃった。お父様が椅子に腰をおろして釣りを始め……。


『森岡くん、こうして釣るのだ』

『なるほどですね~。お父さん分かりやすいです』

『さもありなん。ではキミもポイントを探したまえ』

『はい、ではボクは下流のほうに』

『うむ。ではさらばだ』


 とやっていると、一條さんのことだ。『瑠菜も空きゅんと一緒に行く~』とついてくるぞ。そしたら釣りなんてそっちのけだ。一條さんと仲良くおしゃべりしたり、身を寄せ合って過ごしたり、チウチウしたり。


「えへ、えへ、えへへ」

「なに笑ってんの? 気持ち悪ぃ」


 し、しまった! 妖怪の前でとんだ失態を見せてしまった! 危うし危うし。

 でもこの作戦は一條さんに伝えておいたほうがいいな。あの子は頭いいし、かわいいけど、どこか一本抜けてそうな感じだからな。トークアプリで送っておこう。


 明日は瑠菜ちゃんと森林デートだ。ルンルン。

 自分で言うのもなんですが、海ちゃんのキャラ、好きです。

 (*゜∀゜)*。_。)*゜∀゜)*。_。)

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― 新着の感想 ―
[一言] >明日もデートしようと約束したら、強制的に一條さんのお父さんに明日は朝から釣りに行くと言われたのだ 瑠菜パパ、最強ですなぁ(^_^;) >「ウケケケケケケケーー!!」 妖怪海ちゃん(笑)
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