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嘘告だと思い込んでたら本告でした  作者: 家紋 武範
第二章 二人は恋人
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第二十話 

 前回のあらすじ。

 勉強会のために森岡家に入った、空と瑠菜。空は勉強をしようとしたが、どうにも瑠菜の調子が芳しくない。そこで、ベッドに寝るよう促し立ち上がると、なんと瑠菜にベッドに引き摺りこまれてしまうのであった。


 なんて、悠長に思っている場合か! なんですかこれは。なんなんです、これ!


 お、おう……、瑠菜ちゃんキス上手になったよねえ~? 一週間前はあんなに受け身だったのに~。


 じゃねえ! 一條さんからのキスをじっくり味わっていてどうする? 俺よ!


 こ、これはどういう分けだ? 誰かこの状況を、説明してください。

 俺と一條さんは、勉強会でここにいます。一條さんは、なにやらドッキリするようなグッズを買いました。でもそれはもしものためであって、もしもが起きてしまってはいけませんよね。


 ですが、これじゃ、このままじゃ、俺のアレがアレで、勝手にリフトオフしてしまう……!


 はふぅ……。一條さんの唇、やわー。はふぅ、はふぅ、はふぅ……。




 はあっ! さ、さては一條さんめぇ! このような甘い誘惑ごとき、はね除けられぬようでは、大学受験など受からん、受かるはずがない、とこういうことか!

 受験生には様々な誘惑があると聞いたことがある。夏を制するものは受験を制すというが、まさに誘惑の多い時期にそれに打ち勝ってこそ開ける道がある!

 成功した人は、そういうのを乗り越えてきた。

 性交した人になってはいけない!


 くっ、しかし、こんな攻撃を健全な恋人同士なら受けきれるわけがない!


 おおう! 一條さんの猛攻。口中を暴れまわる快楽物質。


 はう! 白目。

 理性! 黒目。

 はあう! 白目!

 倫理観! 黒目!


 うあう……。 やっぱり、俺、もうダメかも知れない。この一條さんのふくよかな体に全てを委ねてしまうかも……。



 ・・・・・



【緊急事態】

 俺は巨大ロボットのパイロットとなって、強大な敵の前に完全停止している。作戦本部からは『森岡くん! 森岡くん!』との起きろとの催促!


 眼前には巨大なお胸が押し寄せてくる……。くっ、この誘惑のままこのお胸にダイブしてしまったら、どれだけ楽か……。




『もりうぉかぁー!!』



 ぎゃー! 大怪獣、お父様! 俺から全ての邪念が吹き飛んだ!





「はい、終わり!」


 一條さんは、俺の頬をかっちりホールドしているものの、首に腕を回している訳じゃなかったので、俺は身を後ろに下げて起こすことにより何とか一條さんの縛めを解くことができた。

 危ない。ドキドキと高鳴る胸。残念そうな一條さんの顔。くそう、キミはそうやって俺を惑わす、いけない魔女!


「ハアハア、ど、どうした? 瑠菜、勉強会は?」


 すると一條さんは、頬をプクっと膨らまして毛布をかけて俺を睨んだが、すぐにいつものかわいらしい顔に戻った。


「違うのお。苦しいから、具合悪いから、一緒にいて欲しかっただけなのお……」

「え?」


「だってここには二人しかいないんだもん。頼れるのは空きゅんだけなのお。ね、お願い、側にいてえ」

「う、うん、大丈夫。側にいるよ?」


 一條さんは、身を横にスライドして、俺が横に寝れるだけのスペースを作った。


「ここ、ここに寝て、子守唄歌ってえ」


 こ、子守唄? きゃわいい。でもそのきゃわいい一條さんと共に、ベッドに入り込んでしまったら……。


『うへへへへ。赤ずきんちゃん。キミはもう俺のものだよ!』

『きゃー! 狼だわ! 助けて狩人さーん!』

『コイツ、逮捕だあー! 16時24分、青少年育成条令違反、2年以下の懲役または100万円以下の罰金!』

『そ、そんなあ~、一條すゎ~ん』


 最後はシュルルって感じで顔だけ丸くなる。いや、そんなコメディ的なノリじゃない。


 一條さんは、俺の勉強の面倒を見てくれるのだ。エッチなんて、そんなピンクなことなんて考えている分けないじゃないか。


 突然、一條さんは制服の下にあるワイシャツの胸のボタンを外し始めた。そこには! あのぉ、水色のブラが見えておりますけど……。


「はあ~、胸が苦しいよお……」


 たゆん、たゆーん。なんですか、その揺れる物体。高校生でそれは育ち過ぎだよね? キミはなんでそんなに小柄なのに、そんな大きなものをもってらっしゃる?


「ねえ、空きゅん、胸さすってえ」

「ええ? 胸を、ですか?」


「苦しい、苦しい。早くう、早くう」


 で、ですがさすれと仰せられても!? どこが胸なんでしょうか? 人生山あり谷ありと申しますが、ここにも山と谷が……。その分厚い丸い大きな山部分をさすっても、おそらく患部までは届かないと推察されます。

 それとも谷間の部分でしょうか? なるほど、そこならさすれないこともないですけど……。


 俺は、ドキドキしながらベッドに腰を下ろして彼女の頭をなでさすった。


「瑠菜、瑠菜、早く良くなれ、元気になあれ」

「はうー、はうー」


「かわいいなー、瑠菜は。大丈夫? 貧血?」

「えへ。なんか良くなってきた」


「はあ良かった。じゃ今日は勉強会は無理だな。送って行くよ」


 俺は立ち上がって一條さんの荷物を持った。しかし一條さんは、毛布を鼻までかけて起きようとしない。


「どうしたの? 帰るよ」

「んぎぎぎぎ、帰らない~」


「いや体調悪いなら帰って休んだほうがいいよ」

「ふぎいいいい、体調なんて悪くないいい」


 ?????


 なんだというのです。体調は悪くない? それでは先ほどまでの騒ぎはなんだったのですか?


「んぎい、瑠菜、もっと空きゅんと一緒にいるう~、空きゅんと仲良くするう~」


 な、なんですか、このかわいらしい生き物は? 仲良く。一條さんは本当にそう思っているのだろうか? 俺を困らせたり、惑わしたりすることに余念がない。まあ騙されたってそばにいたいけど、さ。


「空くんは、瑠菜のこと好き?」

「そりゃあね。だから一緒の大学行くために勉強してる」


 すると、一條さんの目は大きく見開かれ、半身を起こした。


「そうなの!?」

「そうだよ。俺と瑠菜は偏差値十五以上違うもん」


「そーなんだぁ……」

「だから、勉強教えて」


 すると、身を起こした一條さんはニッコリ微笑んだ。その笑みが徐々に妖しさと艶かしさを含んで、俺に飛び付いて来た。


「んんんんん! やっぱり好き!!」

「うげ!」


 一條さんは、ベッドから跳ね起きて、首に飛び付いてきたので、締め付けられ一時的に呼吸ができなくなった。いや折れたかも。しかも、一條さんは前にも増して、グイグイぐにぐに、グイグイぐにぐに。


「ごめんね、ごめんね。瑠菜、全然分かってなかった!」

「ちょちょちょちょ! だったら離れなさーい!」


「ごめんね、空きゅん! 瑠菜、とっても悪い子でした!」

「いーかげんにしなさい!」


 俺は一條さんをその場に押し倒した。そして真剣な顔。一條さんは一瞬真顔になったが、すごく可愛い笑顔に変わった。そのまま、彼女は期待して目を閉じる……。


 え? まずい。まずい。この体勢は? 彼女は下で俺は上……。そして彼女の体を押さえつけている状態。このままでは……!


「瑠菜、いいんだね?」

「うん……」


「もう止まんないよ?」

「うん、優しく……ね」


 ハアハアと息も荒い。無理だ。こんな女神を相手に何もしないなんて……。ごめんなさい、お父様、あなたとの約束……守れなかった……。

 俺は一條さんにのし掛かって自分の服に手を掛けた。


「たっだいまー! あれ? 靴多い。お兄、今日も一條先輩来てるのお~?」


 点、点、点。俺と一條さんは顔を見合わせて吹き出した。


「ああん、妹ちゃん帰ってきちゃったね」

「う、うん」


「あー、今日はダメだね」


 ダメだね? やっぱりキミは、それに期待を?


 おお、一條瑠菜! やっぱり、それはまだダメでしょう。お父様の信頼関係、どうしたらいい?

 ああ、苦悩……。


「ねえ空きゅん」

「ん?」


「でも大学は瑠菜、空くんの行きたいとこにいくから、無理な勉強はしなくていいと思うよ」


 おおー! マジか! ありがたい。でも、この勉強会、なくなるのも寂しいかも……。

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