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嘘告だと思い込んでたら本告でした  作者: 家紋 武範
第二章 二人は恋人
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第十九話 

 この数日、一條さんに勉強を教えて貰っていたが非常に上手! さすが才女で麗人、佳人。俺もこれならテストでよい点が取れるんじゃないかと自信が出てきた。

 リビングでは一條さんは淑女であり、いつものラブラブしようよう、的な風ではなかったので、俺も勉強に身が入り、毎日学校から帰ったら勉強を教えてくれるようお願いしていた。


 木曜日の夕食時に、その話題を出すと母は大変に焦りだし、一條さんが来たらちゃんとおもてなししなさいと、お菓子と飲み物を買うようにお金を貰った。

 俺もその通りと思い、一條さんを連れて帰り道にコンビニに寄った。


「瑠菜、勉強教えて貰うんだから、なんでも好きなのカゴに入れて!」


 というと、一條さんは張り切ってテキパキとカゴにお菓子やらボールペンやらを放り込んでいたので、微笑ましく見ていた。


 そして会計の時、店員さんが値段を読み上げてカゴの中身をレジの上に置いていく。そして、ポテチの袋を持ち上げたときに愕然とした。


 そこには──、1ダースの男性用避妊具があったのだ。


 何が起きたか分からない……。だがハッとした。これはおそらく、手品で言うところのパームという技法だ。コインを観客に見えないように手の内に隠す。一條さんは、それを応用して手中に男性用避妊具をいつの間にか隠し持ち、ポテチとともにカゴの中に入れたのだ。


 俺は白目の直立不動だった。ただ暗い宇宙を一人さ迷っていた。そこには光もなにもない。生物の気配が感じられない。


 その間、店員さんは紙袋にそれを入れてテープ止めして他の客から見えないように細工をしていてくれた。


 一條瑠菜、一條瑠菜よ。私は今、心の中からあなたの頭の中に直接話しかけています。

 どうしてあなたは男性用避妊具など購入したのですか? 間違って? それともお菓子と勘違い? それか誰かに頼まれた?

 ま、まさか、使おうとなど考えていませんよね。私たちは付き合い初めて十日ほど。ともに未経験な間柄……。

 それが女子のほうから積極的にこんなものを買ってなどいけません。

 私たちは、今から勉強するのです。そして、その勉強はまだ我々には早すぎるのです──。






「ありがとうございましたー」


 コンビニを出た。俺の片手にはコンビニ袋。もう片手には一條さんと恋人繋ぎ。俺たちは何も話していない。照れてる。すごい照れてる。それしか考えていないのが丸分かり。


 だがダメだ! そんなことをしたら、一條さんのお父様から罰を受けてしまう! 


『空! 俺は信じていたのだぞ!』

『あわわわわわ。お、お父様、お許しを!』

『ダメだ! 今度のバーベキューはお前だ!』

『ひゃあ! 熱い! 誰か、誰か助けてくださーい!』

『無駄だ、無駄だ! この家は完全に治外法権。お前は我々の血と肉になるのだあ!』


 うおあ! そんな! 丸焼きにされてしまう! お父様が交際を許してくれたのは、俺を信頼してくれたから! あと酔ってたから。


 絶対にダメだ! 告白初日にキスしたけど。舌もいれちゃったけど。


「あの、瑠菜?」

「え? な、なに?」


 キミも動揺してるやん。キミがやっといて……。


「ど、どうして避妊具なんか……」

「ち、違うよ? そう言う意味じゃなくて、もしも間違ったとしても備えあれば憂い無しって思ったからだよ? 全然、今日のこととかじゃなくて……」


 あっ……、そうか。俺ったらなんてことを。本来は男のほうが気を付けなくちゃならない。それがエチケットだ。それを一條さんは恥ずかしくてもそれをカゴに入れてくれた……。

 彼女だって恥ずかしかったろう。嫌だったろう。屈辱だったかもしれない。

 それを俺は自分の彼女に、させてしまった。クソ! 自分で自分が恥ずかしい!


 そうだ! 一條さんがそんな行動にでたのも、俺は告白を受けてすぐに彼女に深いキスをした獣同然の男。彼女が警戒をするのは間違いじゃないし、そうされて傷つくのは女性のほうなのだ。

 今更ながらに悔やまれる、自分自身の恥ずべき行為を……!


「ゴメン瑠菜! 俺、気付かなくて……」

「ああん、いいの、いいの。こういうのって、気づいたほうがすればいいと思うから」


「ああ、クソ! 俺、恥ずかしいよ。キミに恥ずかしい思いをさせちゃったね」

「ううん、そんなことない」


「俺、約束するよ! 絶対にキミに手を出さない。自分自身に負けないって!」

「……………………そう」


 なぜか、一條さんから表情が消えたような気がした。




 そんな一條さんを連れて、森岡家に到着。


「おじゃまします」


 一條さんはキチンと靴を揃えて、靴先を玄関に向けていた。すげえな、淑女だよ、キミは。

 俺がリビングに案内しようとすると、一條さんがポツリ。


「空くんの部屋、見てみたいなあ~、なんて」

「あ、ああ。いいよ。別にそこで勉強してもいいなあ。マンガとかもあるし、暇なときはそれ読んでて貰ってもいいし」


「あ、じゃあそっちにしようよう。瑠菜、そっちのほうが落ち着けるかも」

「ああそうか。ごめんな、気がつかなくて」


「今日も妹さん帰るの遅いかな?」

「ああ、アイツは大抵友だちとか彼氏と遊んでくるから帰ってくるのは18時くらいだと思う」


「へー、そーなんだあ」


 俺は先導して二階にある俺の部屋へと向かった。階段を上り始めると……。


「わ……」

「どうしたの? 空きゅん」


「いや、なんでお尻触ってんの?」


 そう。一條さんは、俺の尻に両手を添えてサワサワしていた。


「えー、だって足踏み外して落ちてこられたら困るもん」

「あ、そ、そう?」


 仕方なく、されるがまま上り始めるが、な、なんだこれ。サワサワされるのって……、気持ちいい。な、なんだ一條さん。たまたま偶然だよな。うん、そうだ。ここで俺はハアハアしてちゃダメだ。


 部屋に入ると、俺は小さなテーブルを用意して教科書を開いた。クッションを二つ自分のと、対面に一條さんのを置いた。しかし、一條さんは、トテトテとクッションを取ったと思うと、俺の隣に置いた。


「もしもし?」

「えー、だって横のほうが教えやすいじゃん?」


「あ、そうか。じゃ先生、よろしくお願いします」


 俺はペコリと頭を下げた。昨日と同じで、一條さんはキチンと先生役をやってくれるだろう。


「えーと、まずは英語にしようか……な」


 すると隣に座った一條さんは、俺の左腕に全身を使ってすり寄ってくる。な、なんだこの感触のいいマッサージは?


「瑠菜ちゃん?」

「ひゃん。なに?」


「勉強しづらいよ?」

「あ、そーか。ごめんね」


 ふう。聞き分けがいい。スキンシップが多いのはいいけど、今は困るよね。


「マンガ、借りてもいい?」

「いいよ、あそこの本棚」


 一條さんは、立ち上がったと思うと、すぐに俺の背中に抱きついてきた! 背中にご自慢のでっぱいがぷよぷよぷよぷよってあなた!


「な、なに? マンガは?」

「違うのお、違うのお!」


「何が? 何が?」

「分かんない、分かんない! この字、なんていう字? この字、なんていう字?」


「えー? 英、語?」

「あーん、英語って読むのお?」


「わあああああ! 瑠菜?」

「なんですかあ?」


「おっぱいが背中に当たってるよ?」

「やだあ~、空くんのエッチい。エッチだあ~、いーけないんだあ、いけないんだあ」


「もー、いーかげんにしなさい!」


 俺は背中の一條さんを振り払うと、彼女は頬を膨らませていた。


「勉強。勉強させてよ。今日は勉強する日でしょ?」

「そっかあ」


「ね? おとなしくしてて」

「はーい」


 なんとか聞き分けてくれたと思い、参考書を見出すと、今度は膝の上に軽い衝撃。視線を落とすと、一條さんは俺の太ももに頭を倒し膝枕の姿勢だった。


「え? 瑠菜、どうしたの?」

「疲れた……、少しこのままでいい?」


「疲れたの? 大丈夫?」

「うーん、ちょっとヤバいかも」


「貧血? ベッドに横になる?」

「あ、いい?」


「じゃあ立って」

「うん。ごめんね~」


 そう言って二人で立ち上がり、俺は一條さんのために毛布をめくると、彼女は俺の腕に自身の腕を絡ませ、ベッドに引き込んでキスをしてきたのだ。


 え? 何が起きてる? 彼女は下で、俺は上には違いないが、両頬を手で押さえられ、濃厚なキスをされている!?


 いや、一條瑠菜? ちょっと何やってるか分かんない。

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― 新着の感想 ―
[一言] >1ダースの男性用避妊具があったのだ。 >もしも間違ったとしても備えあれば憂い無しって思ったからだよ?  いやいやいや! その気マンマンでしょ!瑠菜さん(笑) みこと
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