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嘘告だと思い込んでたら本告でした  作者: 家紋 武範
第一章 嘘告に抗え!
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第一話

 高二の夏休みが終わり、二週間経った火曜日の放課後。俺は校舎裏へと来ていた。


「ずっと好きでした! 付き合ってください!」


 俺の目の前には、我が校一と言われる美少女、一條(いちじょう)瑠菜(るな)がいて、こんなことを言い放ってきた。


 下校の時間に、ここに来て欲しいという手紙を見て来てみればこれだった。


 はは、何かの間違いだ。きっとこれは夢だ。夢なのだ。彼女には王子さまとか公爵令息がお似合いであって、俺みたいななんの変哲もない勉強、スポーツ、顔、全てがアヴェレージ。だいたいにして『べ』を『ヴェ』に言い直すところが中二くさい。

 一條さんは虹のような存在だ。虹を見ると幸せな気持ちになれる。そういう思いで彼女を眩しく見ていた。しかし、虹は追いかけても決して掴めない。彼女も同様なのだ。そんな俺が才女で美女で佳人で麗人な一條さんから愛の告白……、ないない。それはない。

 きっと、もうすぐ母さんの『(そら)いつまで寝てんの! 起きなさい!』の声が聞こえてくるに違いない。


 そんな自嘲しながら待っていても、何も起こらない。目の前の一條さんは目を潤ませながら、小さな声で『森岡くん、返事……』と言っている。


 へ、返事……。となったところで気づいた。ピシーンと顔の横に稲妻が走ったのだ。


 向こうの銀杏の木の影に、一條さんと友だちのギャルっぽい加川さん、その加川さんの頭の上に高身長の女性、柔道部の国永さんの顔がこちらを覗いていることに……。


 はっはーん。これは友だち同士の悪ふざけ。俗に言う嘘告白。略して『嘘告』に違いない。


 俺の狼狽えるさまを見て、さらに『う、うれしい。ありがとう』と言ったところで、向こうから加川さんと国永さんが躍り出てくる。

 そしてこの一連の動画を撮っていて『あんたみたいなのが瑠菜の恋人になれるわきゃねーだろ!』『ふふ。少しはいい夢みれたみたいね』『この動画流されたくなかったら十万持ってこい』とこう来るワケだ!


 最悪。かわいい顔して、美人佳人麗人を装いながら、その裏では俺をピエロに仕立て上げてやがる。口に蜜あり、腹に剣ありとはまさにこのこと。


 殺られる。善良な俺は、この悪魔たちに少しずつ命を削られる。


 ゆ、許しがたし、この魔女どもめぇ!


「ちょっと来て!」

「きゃん!」


 俺は一條さんの手を取って、加川さんと国永さんとは逆方向に歩きだした。それは俺の家の方向。

 この嘘告白、失態を見せるわけにいかない。『ありがとう、一條さん!』なんて嬉しそうな顔したら、全てをカメラにおさめられ、俺は地獄の釜に突き落とされるのだ。


「て、手を握られるなんて……」


 一條さんがボソボソ言っているが、聞こえやしない。俺は一條さんを学校から程近い自宅の中に強引に押し込んだ。うちの両親は共働き、中三の妹はまだ帰らない。つまりここは全くの無人!

 俺は、玄関の壁に壁ドンして一條さんへと顔を近付ける。


「も、森岡くん?」

「空だよ。俺の名前は空。好きなんだから名前で呼んでいいよ。瑠菜」


 言ってやった。一條さんを呼び捨てで呼んでやった。そして、この俺の家の中なら、彼女の友人たちもカメラに撮ることは出来まい。


 『嘘告』敗れたり!

 そしてここは、一條さんの友人たちも校則も、一條さんの可愛さもなにも意味をなさない。治外法権。


「じゃ、じゃあ空くん……。きゃん!」


 一條さんは、顔を押さえて照れてる演技をしているが騙されない。俺は彼女の顎に指を添えて顔を上に向けさすとキスをしてやった。壁ドンに顎クイ。見事なコンビネーション技!


 嫌がろうがなにしようが関係ない。だって、嘘だろうがなんだろうが告白してきたのは一條さんのほうなのだ。


 ざまぁみろ! 好きでもなんでもない俺にキスされてどんな気持ちだ?

 俺はなぁ、前からあんたを好きだったんだよ。だから多少罪悪感はあれど、一生の思い出にキスさせて貰うぜ。それが嘘告の代償。


 へっ! 舌まで入れてやったぜ! それはそれは濃厚にな! ざまぁ! ざまぁ見ソラシド!

 俺の純心を弄んだからには、お前のことも弄ばさせて頂く。それが嘘告というゲームに敗れたお前への罰。


 そして俺は彼女の口中を味わったあとに唇を放す。閉じられていた彼女の目はゆっくりと開いたところで怪しい笑顔で微笑んでやった。


「ごめんな。その日にキスしたりして。でも瑠菜が可愛すぎるから悪いんだぞ?」

「あ……やん。えへへ……」


「じゃ送って行くよ」

「え? あの……」


「なんだ。部屋に上がるほうがいいか?」

「はう……ん。いや、あの、それはまだ早いっていうか」


「じゃあ行こう」

「あん」


 俺は一條さんの手を強引に恋人繋ぎで握って外に出る。おそらく、彼女の友人たちは『嘘告大成功!』なんて飛び出してくるかもしれんが、こっちだって強気だ。

 見ろ。初めてのキスに恋人繋ぎ。もはや一條さんの悪戯が成功したかどうかなんて、誰の目にも分からんぞ。


 君たちの敗けだ。


 強気、強気。強気で行くぞ。こうして付き合っているという既成事実を無理にでも作ってやる。世間の前で一條さんのご主人は俺であるように見せるのだ。

 一條さんは、帰り道一言もしゃべらず、俺を見たり、下を見たりしていた。

 ハン! 恥ずかしかろう。こんな俺に俺様されちゃってよォ。明日には校内に二人はラブラブなんて噂を撒き散らかされる。

 そしてら嘘も真実になっちまうな。さあどうする。どうくる。ごめんなさいって言うか? 嘘でしたってか? しばらく学校休んで自然消滅を狙うか?

 ケケケ。どっちにしたって悪女の称号がついて回るぜ。そんな人生送りたいか? 送りたくないよなぁ。だったら俺と付き合うしかないと思わせてやるぜ!!


 一條さんの家まで着いた。彼女は真っ赤な顔をして胸を押さえていた。さすがに今までの道のりが恥ずかしかったのだろう。ざまぁ。


「じゃあな瑠菜また明日な明日からの学校生活楽しみだな昼一緒に食おうぜそして週末デートしようぜいいだろ?」


 息をつかせぬ注文。一條さんは、コクコクと頷いていた。


「そんじゃ!」


 俺が手を上げて帰ろうとすると


「あ、あの。空くん」


 呼び止められた。ふふん。何を今さら。


「明日、あの……、あのね?」

「何? どした?」


「お弁当、作らせて。あの……何か好きなもの、ある?」


 ほ、ほう。そうきたか。

 そんじょそこらのド素人風情ならばもろ手を上げて喜んでいただろう。実際、俺の脳内議会も三分の一以上の議員が立ち上がって万歳を唱えようとしていたが封じ込めた。そんでそれ衆議院解散のときのヤツだからちょっと違うし。


 これは嘘告リベンジ!

 弁当持ってきたと思わせといて『う、うれしいよ。ありがとう一條さん!』とやったところで友人連中がなだれ込んで来て、『はい今どんな気持ち? どんな気持ちィ~?』『この人仕掛人。この人仕掛人!』『はい~カメラに向かってェ! 大・成・功!』と殺られる!


 た、立ちくらみィ~! ぐ、ぐ、ぐ。こいつら、二段重ねで来やがったか。


 ま、負けてたまるもんかぁ!


 ピシーン。またもや俺の顔の横に稲妻が走る!

 そうだ。考えろ。今までの道のりの間に、俺と一條さんのラブラブ下校が我が校の生徒たちに見られているのは必然。つまり恋愛沙汰大好きウォッチャーたちに好奇の目にさらされているのだ。そんなみんなが興味津々の中で、お弁当ドッキリなんてしようものなら、こいつら全員批難を受けるのは必定! 間違いない!

 ならば受けてやろう。そのお弁当砲とやらを!


「そーだなー。瑠菜の可愛いお手々でニギニギしたおにぎりとかいいなぁ。中身は梅干しでもツナマヨでもいいよ。おかずは唐揚げとか定番のでオッケー」

「ホント? おにぎり得意なんだ! じゃあ頑張って作るね!」


 と可愛く両拳を上げてガッツポーズを取りやがった! か、かわい過ぎる!

 でもいかん! いかんぞ! 惑わされるな俺! こいつは悪魔なのだ! 魔女なのだ! 俺を苦しめる妖狐なのだ……。調伏しなくては……。


 いざ勝負だ! 一條瑠菜!

【人物紹介】

◎森岡 空

 身長168センチ、体重56キロ。

 本作の主人公。どこにでもいる平々凡々な高校二年生。密かに一條瑠菜に憧れていたが、向こうから告白され疑いの目を向けている。少しばかり人にはない能力を持つ。


◎一條 瑠菜

 身長156センチ、体重49キロ。

 本作のヒロイン。麗人、佳人な清楚美人な爆乳。学校一の美少女で彼女を慕うものは多い。実は恋に一生懸命な肉食系女子なのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1/3の議員のくだりで吹きました! 勢いがあって超面白いです! 明日が楽しみです!
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