第7話 『数学のお勉強』
さて、今日から、数学のお勉強です。
しかし!何を隠そう、私の現世の得意教科は数学だ!
高校数学の数Ⅲまで、オッケーよ!
かかってこんかい!
そして、俺は、ステークストさんが数学の先生としてスカウトしたこの男、、、
見覚えがある。
そう、あの日、勝手に抜け出した日のことだ。
その日に出会った。
「あなたは、、、、」
「お!誰に教えるかと思えばあんたか!見覚えあるぜ?」
「ちっ!男か、、、」
「悪かったな、男で」
まずい聞こえていた。
本心がバレてしまう、、、、
「てか、俺も見覚えありますよ」
「本当か?偶然ってやつだな。」
あっちにも記憶の中に俺がいたみたいだ。
よかった。
まあ、忘れられていても、どうってことはないがな。
「なんだ?お前ら知り合いか」
「はい、以前、この人から媚薬を買わされそうになりました」
そう。何を隠そう、この男は、俺に媚薬を買わせようとしてきたやつだ。
あの時のことは、しっかり覚えている。
口の悪い店員だが、気前の良さそうな、兄貴キャラだと記憶している。
「おいおい!人聞きの悪いこと言うなよ。なんでも、売って利益を上げようとするのが俺の仕事だ」
こいつ、開き直ってないか?
あんなに、一般庶民には手に入らないようなものを売ろうとしているなんて、、、、
犯罪じゃないか!
「そうか。なんでもいいが、知り合いなら話は早い。こいつが、今日から数学をお前に教える」
「そう言うことだ。え〜、、、、名前はなんだっけ?」
「フィフティ・ストームです」
「ほえ、家名があんのかい?すごいな!」
「なんのことですか?」
「ん??なんだ、知らないのか、いわゆる苗字があるのは人族じゃ珍しいんだ。
それこそ、貴族とかじゃねえと、家名なんてない。
だから、一般人の俺みたいな奴にはない。
お前には『ストーム』っていう、家名があるんだろ?
俺にはどこの国の貴族なのかさっぱりだが、すごいってことはわかったぜ。
ちなみに、人族以外は、自分達の民族や種族とかで苗字をつけてるんだ。
わかんなければ、他のやつに詳しく聞いてくれ。」
「へえ、そうなんですね。生まれた時からあったので、みんなにもあるものだと思ってました。あれ?ステークストさんって、古代族ですよね?人族じゃないないのだから苗字あるんじゃないですか?」
「、、、、そんなものは捨てた」
「そう、、、ですか」
空気が重い。
変な質問だったか?ステークストさんから睨まれてる。
怖え。
前にも説明したが、五十の嵐だからこの名前だ。
俺は苗字の事なんて考えてない。
日本人には、みんなあるから、常識だと思ってた。
まずかったかな?
でも、そうか、昔の日本でも苗字があるのは珍しかったって聞いたこともあるし。
苗字がつくのは、名誉あることなのかもしれない。
ちなみに、俺の本名はステークストさんしか知らない。
最初に言葉を覚えて名前を言ったときに、
『そんな名前は不思議がられるから、偽名を考えろ』
と言われて作ったんだ。
郷に入れば郷に従え、と言うからな。
異世界に来たのだから、名前くらいは異世界仕様にしなければおかしいってもんよ。
いずれ、誰かに転移について話さなければならない時が来るのだろうか?
今日の呪術の練習でステークストさんは、俺のことを不思議がっていたし、最初に話すのはステークストさんかもしれないな。
「まあまあ、落ち着けよ」
媚薬男が仲裁に入った。
「とりあえず!俺の名前は『クライブ』だ。普段はリカリス領一の魔道具屋『クライブストア』で店を営む商人だ。今回は、ステークスト殿に計算力を見込まれスカウトされた。お前に数学がわかるか不安だが精一杯頑張ろうと思う。よろしくな。」
「はい、よろしくおねがくします」
魔道具とは、魔力の帯びた道具のことだ。魔力によって特殊能力を得てるものだ。
「じゃあ、頼む」
「あいよ!任せておきな!」
「じゃあ、まずは、足し算ってのをやるぜ」
「、、、、、」
「足し算は全ての計算の初歩の初歩だ、このほかにも引き算、掛け算、割り算の計4つある。」
異世界の数学というものは随分レベルが低いらしい。
これなら、何も学ぶところはないな。
「数学というものは非常に便利だ。物の買い物、そして距離の計算。簡単に考えられるようになるからな」
「はあ、、、」
「なんだよ、つまんないって顔してるな。もうわかんないのか?」
おっと、つまらないって顔をしてたのか。
まずいまずい。
「いえ、なんでもありません。」
「そうか?とりあえず、足し算というものをやるぞ?
いいか?ここに、ボールが一つ、そして、同じボールをもう一個待ってきました。
ちゃんと見てみろ?ここには、ボールは何個ある?」
「2個です」
「そうだ!足し算とは、2つのものを合わせるものだ。」
クライブは身振り手振り、実際にボールを持ってきて、教えてくれた。
これは、簡単すぎるな。
小学校一年生レベルじゃないか。
退屈な時間がはじまったな。
ーーー
「、、、、、これが割り算だ。そして、これらが四則演算といい、基礎となるものだ。これ以外に計算はない。これからの応用として、大きな数字を扱っていく」
「わかりました」
やっと終わったーーーー。
退屈な時間だった。
すでにわかることを聞いても面白くないよ。
もっと、微分積分とかやってくれ。
いっそ、俺が教えてあげるか?
この世界の数学は小学生レベルだから、マイナスという概念もなさそうだし、中学校の数学のレベルなんてないだろう。
この世界なら、有名な数学者になれそうだ。
「以上で、今日の数学の勉強は終わりだ」
「ありがとうございました」
「わからないところはあるか?」
こんななレベルで、あるかい!!
とは口が裂けても言えない。
「特にはありません」
「そうか、お前は、筋がいいからすんなり頭にはいったな」
「はあ」
「これは、鍛えがいがありそうだぜ」
めんどくさ!
このレベルをこれからずっとやっていくのか。
いっそ、百マス計算スピード勝負でもしてやるか?
きっと圧勝だろう。
「数学は、学ぶことよりも実践で使ってみることが大事だ。
さあ、街に行くぞ。飯の時間だ」
「え??」
「大丈夫だ。ステークスト殿には許可をもらってる」
そんな心配はしてないんだけどな。
いきなりすぎて、戸惑ってるだけだ。
そんな、数学の勉強法なんてしたことがないからな。
「じゃあ、行こうぜ。俺のおすすめの店があるんだ」
「はい」
俺らは、宿を出た。
向うのは、クライブおすすめの料理屋だそうだ。
どんなところだろうか。
今日はジャンクなもんでもさっぱりしたものでもいいからたくさん食べられるところに行きたい。
昼にリンゴしか食べてないから腹が減った。
着いたのは、クライブストアの真横の酒場だった。
今日は、酒が飲めるのか?
異世界にきて、一滴たりとも飲んでないから楽しみだ。
酒を浴びるほど飲んでやるぜ!
「兄貴、今やってるか?」
「ああ、好きなとこに座れや。」
「いつも悪いな」
「いや、、、、ん?誰だ、横にいるやつは?」
「ああ、こいつは、今俺が数学を教えてる子だ」
「へえ、弟が世話になってるな。こいつの兄の『クライク』だ。」
「あっ、初めまして。フィフティ・ストームです」
「え?家名があるのか・・・・・・」
さすがは兄弟だ。
名前を言った時の反応が同じだ。
似たもの兄弟か。
素敵だな。
てか、クライブのお兄ちゃんの店か。
うまいのだろうか。
俺らは、席に着いた。
そして、俺は文字が読めないので、クライブがメニュー表を見ている。
「お前、歳はいくつだ?」
「21歳です」
「18歳は超えてるな。よし、酒を飲むぞ」
「ここでは、18歳からお酒を飲めるんですか?」
「他の国では、いくつから飲んでも自己責任だが、この国では、18歳からって法律が決まってんのよ」
この国だけ、アルコールが人体に及ぼす害を考え考慮してんだな。
立派なことだ。
律儀に法律を守ろうとする国民もいるところを見ると、国の民度の高さがうかがえるな。
スラム街に行けば別だが。
「おーい!注文していいかー?」
「はーい!」
クライブがそういうと奥から、30代くらいの女性が出てきた。
「あら、クライブくんいらっしゃい」
「邪魔してるぜ!」
「そちらは?」
「俺の生徒だ」
女性が俺の方を見てきた。
それに合わせて、俺は会釈をする。
「生徒持てるようになったんだね。おめでとう」
「別に俺は商業をメインとしてるからいいんだよ」
「そうかい?
で?ご注文は?」
「ラム酒を2杯
店長おすすめの焼肉盛り合わせを2人前
あと、つまみのピーナツを2人前くれ」
「了解」
そう言って、女性は下がっていった。
「さあ、フィフティよ、問題だ。
ラム酒は1杯は銅貨4枚。肉の盛り合わせは銀貨1枚、ピーナツは銅貨1枚。
合わせていくらだ?
あってたら、ここの飯は奢ってやるよ。」
一人前の合計が銅貨4枚+銀貨1枚+銅貨1枚=銀貨1枚、銅貨5枚だ。
それが2人分だから。
銀貨2枚と銅貨10枚だ。
銅貨は10枚で、銀貨一枚だから、銀貨3枚が答えだな。
「銀貨3枚です」
「へへ、正解だ。俺が教えただけあるな。よし、ここは俺が奢ってやる」
ここのご飯はこの異世界に来てから、1番美味かった。
酒というものは神だ。
うますぎる。
テーブルに出された時に『キンキンに冷えてやがる』と思って、
一口飲んだら涙が出て『犯罪的だ、うますぎる』と思ったよ。
地下労働のあとくらいに疲れてたからな。
地下労働なんてしたことないが。
ペリカという通貨も使ったこともないし。
あと、肉も美味しかった。
酒場であるため、味は濃いめだったが。
肉の臭み取りもしっかりとされていて、美味だった。
アキトの食べログ評価☆3、5
大変美味しかったです。
タダ飯の後は、宿に戻り、しっかりと体を休め、寝ました。
歴史か文字はお姉さんでありますように。
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