第5話 『魔術練習 その2』
「本当に成功ですか?で、、、でもステークストさんのと比べると小さいですよ?」
「何度も言わせるな。成功だ」
「はあ」
「なんだ、あまり実感がないようだな」
「使えたのは、嬉しいんですが、鍛えると言っても魔術についてあまり知らないので、あんまり成長できる未来だ見えないんですよ」
確かに、嬉しいよ?
元の世界にいたら、こんなこともできなかったし。
でも、ステークストさんの魔術の大きさと比べると、明らかに小さい。
ステークストさんの水球を、ハイドロ○ンプとすると、俺の水球はじょうろからでる水のようなもんだ。
「鍛えることは、簡単だ。使いまくればいい。魔術の使い方は、使えば使うほど、体が覚える。そして、体内に貯蔵できる魔力の量も、使えば使うほど、大きくなる」
なるほど、風船のようなことか。
1回膨らました風船は、2回目以降膨らませるとき、1回目より楽に膨らませられる。
体内にある魔力の量の限界値をゴムのように引き伸ばすことができるのか。
「鍛えるのは、今は気にするな。今は、魔術とは、どういうものか体で覚えろ」
「はい」
「ちなみに今やった魔術は5級水属性魔術『水球』だ」
「このレベルが5級くらいなんですね」
「今の魔術で、お前の魔力量はよくわかった。今のお前の魔力量では、4級はまだ難しいだろう」
確かに、水の大きさが小さすぎたもんな。
でも、鍛えれば、、、、きっと俺も1級いや、界級だって使えるはずだ!
自分に自信を持とう。
「とりあえず、当面は、違う5級魔術をやる」
「了解です」
「続けていけるか?」
「大丈夫です」
「魔力はまだ残っているのか?」
大丈夫だ、、、、と信じたい。
魔力の量が、ゲージみたいに見えないからわかんないよ。
感覚とかでわかるのかな?
てか、魔力が切れたらどうなるんだ?
「魔力が切れたら、どうなるんですか?」
「意識がなくなる」
あぁ、なるほど。
寝て、エネルギーチャージって感じか。
てか、寝れば、魔力が回復するって解釈で合ってるのかな?
「意識が飛んで、眠りと同じ状態を作り、魔力を回復させるているのですか?」
「いや、違う。魔力は食べるものから形成される。この世界の全てのものに魔力が含まれている。人間もそうだ。しかし、人間は、自ら魔力を作り出すことはできん。そのため、魔力を含んでいる物を摂取することにより、魔力を得る。そのため、多くの者は魔力がなくなってきたら、魔力を多く含んでいるものを食べ、回復させる。意識が飛んだ場合は、意識が戻ったときに急いで食べている。」
「じゃあ、なんで、魔力がなくなると意識が飛ぶのですか?」
「切れるというよりも、正しくは魔力量がギリギリまで減った時に気を失う。体を無理に動かして魔術を使わないように体がセーブをかけるんだ」
なるほど。
魔力は栄養素みたいな感じか。
ビタミンやタンパク質みたいに食べ物から得て、消化し、健康状態を保つようなことか。
「理解できました」
「そうか、魔力の残りの量は感覚的にしかわからないため常に意識しとけ。気怠さを感じてきた時は、残り少ない時だ。」
「了解です」
「では、次の魔術を行う」
「はい!次の魔術はなんですか?」
「次は、5級風属性魔術『風嵐』だ」
「はい!」
「では見ておけ」
そう言って、ステークストさんは、右手を前に出した。
「疾風よ、我が魂と共に嵐を形成し舞い上がり、全てのものを吹き飛ばせ!『風嵐』」
すると、『ゴゴゴ』という音とともに強い風が吹いてきた。
風は、元の世界でいう、強風警報が出るくらいの強風だ。
今日の学校は休みかな?
「どうだ?」
ステークストさんは、魔術を切り、風を止めて俺の方を向いてきた。
最初に出てくる感想はやはり『すごい』
5級でこの凄さか。一体、界級はどのくらいなんだ。
「すごいです」
「さあ、やってみろ」
「ふぅ」
俺は、深く深呼吸し、右手に持っている杖を前に出し、詠唱を唱える。
「疾風よ、我が魂と共に嵐を形成し舞い上がり、全てのものを吹き飛ばせ!『風嵐』」
すると、先ほどのステークストさんのような、強風は出ず、
気持ちいくらいのそよ風が吹いた。
「よし、いいだろう」
「今のでいいのですか?」
「ああ、何度も聞くな。はじめであればそれで良い」
「ステークストさんも最初はそうでした?」
「もちろんだ」
そうなのか。
なら安心だ。
自分に特別、才能があるわけではない。
しかし、ステークストさんのように自分を鍛えれば、あれだけの強風をう強風を埋めるのか。
「どのくらい鍛えたんですか?」
「そうだな、剣術メインにした時から、鍛えていないから、5万年くらいか」
「ええ??5万年!?ステークストさん、今何歳ですか?」
「今、7万歳くらいのはずだ。細かい数字なんぞ覚えておらん」
「そんなに長生きだったんですね」
衝撃の新事実だ。
初めて聞いた。
確かに、古代族と言っていたが、昔から生きている人を指すなんて、、、
だから、「『古代』族」なのか。
そりゃあ、少ないわけだ。
「すごいですね」
「、、、、俺らは、ただ、死に場所を奪われただけだ。」
「どういうことですか?」
「いや、なんでもない」
普通の人間より長く生きている。
だから強いのか。
7万年も生きてきたらたくさんの命の危機や戦争を見てきただろう。
そこで身につけた技術によってステークストさんは強いんだ。
「そんなことより、魔術の練習だ。魔力は残っているか?」
体に気だるさは、、、ない!と思う。
逆にテンションが上がってるくらいだ。
次の魔術はなんだろう?
どんとこいや!
「次は5級土属性魔術『石銃』だ」
「これは、どういった魔術ですか?」
「相手に、直径3センチほどの石をぶつける術だ。今回はあの木を目掛けて打つ」
ステークストさんは近くの木を指差した。
てか、この魔術はなんとも子供らしい。
そんなこと、魔術を使わなくても、子供の時からできたさ。
もしかして、子供の時は魔法使い!?
なんちゃって、きっと威力が違うんだろうな。
またステークストさんは魔術を使うために右手を前に出した。
「秘めたる岩石の力よ、勢いよく放ち標的を粉砕させよ『石銃』」
するとほんとに直径3センチほどの綺麗な球ができ、木に当たり木は石が当たったところから崩れ始め、木が倒れた。
すごい。子供の時の石を投げるのとは訳が違う。
元の世界のハンドガンよりも圧倒的に威力がすごい。
人間があんなん食らったら死ぬな。
「やってみろ」
「ふぅ」
俺は、また深い深呼吸をして詠唱をする。
「秘めたる岩石の力よ、勢いよく放ち標的を粉砕させよ『石銃』」
直径3センチほどの石ができた。
しかし、飛ばすことはできず、そのまま下に落ちた。
そして、俺は、うまく立てなくなり、その場に倒れた。
俺は、魔力切れを起こしたのだ。
ーーー
「はっ!!」
意識が戻ると、宿のベッドの上だった。
「あれ?さっきまで、草原にいたよな、、、、あれ?よく思い出せないな」
「起きたか、お前はさっき、魔力切れを起こし気絶した」
「そうか、そうだった。」
「気を失うと、その時の前後の記憶は薄れる。仕方ない」
そうだったな。
あの時は、アドレナリンドバドバで、気づかなかったんだ。
あんなに、ステークストさんが気を遣ってくれたというのに。
ここまで、ステークストさんが運んでくれたのだろうか。
本当に申し訳ない。
「ステークストさんが運んでくれたのですよね?ありがとうございます」
「気にするな、誰にでもあることだ」
「ありがとうございます」
「とりあえず、これを食え」
異世界のリンゴのような果物を渡された。
「これには、魔力が多く含まれている。それを食って、少し休め」
でも、おかしいな。
俺の肉体は元の世界のままだ。
だから、魔力が貯まるはずもないし、なくなったとて、今まで、そんなのがなくても意識を保っていた。
いや?もしかすると、この世界に順応してきたってことか?
自分の体は、食べるものによって形成される。
そのため、異世界のものを食べて、体を作っているから、異世界のための体になってきているのか。
そうじゃないと、魔力なんてたまらないからな。
これぞ、異世界あるあるの一つ『なぜか魔術が使えちゃう』だ。
あと、この世界には、ポーションというのはないのか?
ないのだろうな。渡されないし。
あったら便利なのに、、、
「で?どうだった」
「どうとは?」
「魔術を使った感想だ」
「なんかすごかったですね。なんか、今までできなかったことができるようになって、神様のような気分でしたよ」
「、、、、神、、、そうか」
本当に神秘的な気分にになる。
男子なら、一度は、魔法を使ってみたいと思うだろう。
それが叶ったのだ。
最高の気分だ。
「とにかく、今日は休め。明日から、今日と同じことをする。それをルーティーン化しろ」
「明日もあの距離を走るのですか?
「ああ。案ずるな。また、気を失なったら、運んでやる」
そういうことじゃないんだけどな。
でも明日から、またキツくなりそうだ。
「あと、今日、数学、歴史、文学の先生となる人を見つけてきた。明日からは、夕方まで、体を鍛え、夜に頭を鍛える」
「あの、、、、」
「なんだ?」
「歴史に限っては、ステークストさんの方がわかるのではないでしょうか?7万年も生きてるし」
「、、、いや。俺が、教えると、要らぬことまで言ってしまいそうだ」
そうか、7万年も生きていると消したい記憶もたくさんできるだろう。
俺だって、21年間しか生きていないけどそんな記憶はたくさんあるさ。
とにかく、明日からハードな生活を送りそうだ。
家庭教師が大人のお姉さんであることを祈り今日は寝よう。
『おやすみ』
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