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こちら魔族領魔王城前教会 ~このすばらしい異世界でゼロから始めるハウスダストクルセイダーズ~  作者: 名久井悟朗


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ま、迷子になってたのよ


「バッカモーーン!!どこをほっつき歩いていたんだぁっ!!!!」

 カワサキやオタカルにとっては最早見慣れた光景だが、アンティオキアの人々はその光景にどうしていいのか途方にくれた。

「痛い痛いいたたたっ!?そんなに頭を掴んだら痛いですよテレジアさんっ!」

 両手で涼花の頭を鷲掴みにしてガクガクと振り、鬼の形相で怒鳴りつけるテレジアに物申せるのは一部の傑物くらいだろう。

「まぁまぁ、ルター大司教。見慣れぬ街で迷ってしまわれるのは仕方のない事、勇者様を問い詰めるのは筋違いでしょう。罰するならエスコートの任を果たせなかった魔術師達、そして彼等を選んだ私でしょう」

 勇敢にもアンティオキア公が宥めに入ると流石にテレジアの圧が弱まる。

「し、しかしアンティオキア公」

 テレジアは言葉に詰まった。

 公の言い分は一見もっともであり、そこだけを聞き涼花の本性を知らなければ何の違和感も抱かない。

 しかし、街を探索中に「ん?アレは何かしら?」と、あさっての方角を示し、魔術師達の注意が逸れた一瞬の隙に消えてしまったそれを迷子であると思っているものは誰もいない。

 当然、その事情を知っている物は皆そう思ってはいるのだが、それを咎めて得をする者は誰もいない。

 下手に勇者がとんでもない疫病神であると言ってしまえば聖教会の威信に係わるし、アンティオキアの人々からしてもせっかくの神輿がハリボテ、災厄(開きっぱなしのアーク)である可能性など考えたくもないし、言える筈がない。

 つまり、公自身これっぽっちも信じていない公の言い分を通すのが誰にとってもベターな選択であった。

「ぐ……仕方ない。もう迷子になるんじゃないぞ涼花」

 振り上げた拳を震わせながらゆっくりと下ろすと、テレジアは涼花を睨み釘を刺すが、彼女は目を逸らし下手な口笛を吹く。

「それでは勇者様と三従者様は城内へ。聖戦軍兵士の方々には市内に家屋を用意しましたが、全員は無理なのでそれ以外の方々は市外に野営していただけますかな?」

「公、幾人か身の回りの世話をさせる者を連れてもいいかしら?」

 涼花の提案に公は僅かに違和感を覚えた。

 しかし、高位の者であればそれ相応に身の回りの世話をさせる者は当然必要となる。

 しかも勇者も変人とはいえ女性だ。

 気の知れた者出ないと不都合も出てくるだろう。

 というか、この女に見張りを付ける必要もあるが、何をするかわからんので彼女を知っている付き人がいないと酷い騒動になりかねない。

「ええ、もちろんかまいませんよ」

 公は笑顔の裏でそう考えながら答えた。

「ありがとう。それじゃあリア!」

 涼花は数少ない女性の聖戦兵を呼ぶと、数人の兵を選ぶよう申し付けた。

 そして、クルリと公の方を振り返るとにこやかに提案した。

「公、歓迎のお礼、土産と言ってはなんですが、ラテン半島で仕入れてきた良いワインがあるのです。それを私から、いえ教皇公認の勇者聖戦軍から兄弟達への好意の証として振舞ってもいいかしら?」

「それはありがたい。ラテン半島のワインなんて滅多に口に出来る物ではありません。それも勇者様からの贈り物となれば、皆喜ぶでしょう」

 公認勇者の好意に背くなど公の選択肢にありはしない。

 その返答に涼花は一瞬ニヤリと悪い笑みを浮かべた。

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