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第九十二話 出来るだけ早く

 俺達はリヴァームの町を走っていた。

 この町に久しぶりに現れたという巨人族の元へ急ぐ為だ。


「このタイミングで巨人族が現れたのは気になるわ」


「確かにそうだけど…」


 わざわざ走らなくてもいいんじゃないかと思うのは俺だけだろうか。


「巨人族って本当に大きいんだね」


「そうね」


 走りながらユリアとジブリエルが言う。

 俺達と巨人族はそれなりに離れている筈なのに存在感がある。

 二人がこう言うもの分かる。


「何か少し様子が変なように見えますね」


 そう言われて巨人族を見る。

 すると、やけに下の方を気にしているように見える。

 もしかしたら、彼女らの周りに人が集まってるのかもしれない。


「とにかく急ごう」


 それからしばらく走り続けて俺達は巨人族の元まで移動した。

 近付くと更に分かる背の高さ。

 二階建ての家の二倍はあるから十数メートルは軽くあるだろう。


「ここまで来たのはいいがどうすれば…」


 巨人族の女性がそう言う。

 どうやら困っているようだ。

 と、その時、彼女達がどうして下の方を気にしていたのか分かった。

 そこに多くの子ども達がいたからだ。

 子どもと言っても人族の子供ではなく、巨人族の子どもなので背は高く俺の背の二倍以上はある。


「困ってるみたいね。話を聞きましょう」


「そうだな」


 俺達は巨人族へ話し掛けることに。


「あの〜!!!」


「ん?」


 シャーロットが声を掛けると巨人族の女性三人がこちらを向く。

 ただそれだけなのに迫力がある。


「何かあったんですか?」


「「「……」」」


 シャーロットが聞くと三人は顔を合わせる。

 そして、


「実は我々の集落を魔王が襲ってきたんだ」


「「「!?」」」


 俺達は驚いた。

 ここにきてようやく掴んだ魔王の情報。

 自然とみんなで顔を合わせた。


「その話を詳しく聞かせてもらえませんか?」


 ヒルダが尋ねる。


「あなた達は?」


「私達は魔王の完全復活を阻止する為にここまで旅をしてきた者です!」


 ユリアがそう答えると、巨人族の三人は顔を合わせ、


「話すと少し長くなる。その前にこの子達をなんとかしたい」


 今までの話から察するに、もしかしたらこの巨人族の三人は子供達を逃す為にここまできたのかもしれない。


「冒険者ギルドに言ってどうにかしてもらえないか話してみるのはどうだ?」


「そうですね。一度戻って事情を話してきましょう」


 と、その時、


「巨人族の方がこの町まで来ていると噂になってまして。いかがなされましたか?」


 冒険者ギルドの職員が数人、タイミングよくやってきた。




 それからギルド職員達と巨人族の三人とで話をし、とりあえず町の近くに何もない場所があるのでそこを休憩ができる場所にするという話になった。


「これでひとまず安心できる」


「巨人族用の毛布などがなくて申し訳ありません」


「気にしないでくれ。体を休める場所があるだけでありがたいよ」


「さあ、これから簡易的な寝床を作るからみんな手伝ってくれ」


「「「はい」」」


 巨人族の子どもは元気よく返事を返す。


「いい返事ね。それじゃあ、行きましょうか」


 そう言うと、巨人族の女性二人が子供達を連れてどこかに向かって行った。


「待たせてすまない」


 残った巨人族の女性が言う。


「いえ。それで一体何があったんですか?」


「そうだな…」


 ユリアが聞くと何があったのか話してくれた。

 彼女の名前はイリーナ。

 今まで巨人族の集落で平和に暮らしていたらしい。

 が、一ヶ月以上前のある日、事件が起こった。

 魔王の使い魔が村を襲ったというのだ。

 しかし、この時は撃退することに成功した。

 これがきっかけで村の中で色々と会議もあったらしい。


 そんな中、数週間前に更なる事件が起こった。

 そう、村に魔王と名乗る者が突然現れ集落を襲ったのだという。


 村の男達はそれを止める為に戦った。

 多くの犠牲を出したが、なんとか一時退却させることに成功したらしい。


 が、いつまた襲ってくるか分からない。

 そう考えた巨人族のみんなは話し合いの末、子供を連れて集落から離れることにしたのだという。


 そして、現在、イリーナ達はここリヴァームまで来たということらしい。


「私とパメラ、ルドナは子供達を守るのが使命だ。だが、正直、これからのことを考えると不安だ」


 イリーナは下を向く。

 もしかしたら今も村が襲われているかもしれない。

 誰かが戦いで戦死している可能性だってある。

 そう考えると無理もない。


「……イリーナ。私達は魔王…を止める為にここまで来たの。だけど、巨人族の集落がどこにあるのか分からなくて…だから、教えて欲しいの!」


 シャーロットがイリーナへ強い目で訴える。

 すると、イリーナはそれを感じとったのか、


「…私達のことを助けてくれるか?」


 そう言った。


「ええ。必ずなんとかしてみせるわ」


「その為にここまで来ましたからね」


「そうだな」


「うん」


「ユリアなんて最悪な船旅までして来たしね?」


「ちょっと…!?」


「まあ、まあ、ユリアさん。ジブリエルさんなりの冗談ですよ」


「……君達は仲がいいな」


 イリーナが俺達の前で初めて微笑んだ。


「分かった。だが、君達の足では時間が掛かるだろう。私が案内するよ」


「イリーナさんが?」


 ユリアが聞く。


「ああ。ここまで来れたら子供達も安全だろうし、パメラとルドナが居れば子供達も大丈夫だろう。どうだ?」


「できるだけ早く着いたほうだいいのは明らかです。お願いするべきでしょう」


「そうね。私もそう思うわ」


「じゃあ、決まりね」


「ああ」


「うん」


「よし。それじゃあ、みんなが帰ってきしだい出発する。みんなもそのつもりで」


「分かった」


 それから少ししてパメラとルドナが子供達を連れて戻ってきた。

 みんなの手にはどこから持ってきたのか枯れ草や木などを持っていた。

 寝床などに使うんだろうか。


「パメラ、ルドナ。そして、みんなも聞いてくれ」


「どうかしたのか?」


「?」


 いきなりのことにみんなが不思議そうな顔をしている。


「実は、この人達を連れて村へ戻ろうかと思うんだ」


「「「ええ!?」」」


「どういうことだ?」


 みんなが驚いている。


「この人達は魔王を止める為にここまで旅をしてきたらしい。私が急いで戻れば二日で着く」


「確かにそうかもしれないが…そいつらは信用できるのか? それに我々の使命はどうする?」


「信用はできる。少なくとも私はそう感じた。使命は…私の分までパメラとルドナにお願いしたい」


「……」


 多分パメラという名前の女性は悩んでいるようだ。

 しかし、


「イリーナが言うなら私は大丈夫だと思う。だから、子供達のことは私達に任せて!」


 悩んでいるパメラではなくルドナがそう言った。


「っ…!? ルドナ……分かったよ。私もイリーナを信じよう」


 どうやら上手く纏ったみたいだな。


「そこの人間達」


 そう言ってパメラが俺達の方へ近付いてくる。


「さっきは悪かった。イリーナのこと、村のこと、色々頼むよ」


 そう言って兜を外すと頭を下げた。


「私からもお願い」


 パメラと同様にルドナも兜を外して頭を下げた。

 俺達はその様子を見て顔を合わせると首を縦に振り、


「任せてちょうだい!」


 シャーロットが俺達を代表してそう言った。


「それじゃあ、行ってくる!」


 イリーナが別れの挨拶をした。

 こうして、俺達はイリーナの案内で巨人族の村へと向かうこととなった。

見てくれてありがとうございます。

気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。

今週は連休があるので金、土、日、月曜日の四話投稿予定です。

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