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第八十八話 仲間の会話

〜ヒカリ視点〜


 やっと言えた。

 みんなと一緒に旅をしてようやく気持ちに余裕ができた。

 いつかみんなと話したいと思いつつも怖くてなかなかそれができなかった。


 でも、やっと自分の口で言えた。

 みんなと一緒に居たいと伝えられた。

 そのことが今はとても嬉しい。


「嬉しそうね」


 私が考え事をしているとジブリエルさんに話し掛けられた。

 彼女は人の考えていることが分かるらしく、よく私のことを気に掛けて声を掛けてくれる優しい人だ。


「はい」


「あなたが話せるようになってから数日経ったけど、調子はどう?」


「調子ですか? …心の蟠りがなくなって良いですよ」


「そっか。それはとてもいいことね」


「はい」


 と、そんな会話をしていると、


「みんな、ご飯っできたわよ!」


 シャーロットさんの声が聞こえた。


「おっ、今日は刺激的なご飯になりそうだから覚悟しないとね」


「……覚悟します」


 私は苦笑いで返した。


 それからみんなでシャーロットさんのご飯を食べることに。


「さあ、召し上がれ」


 そう言われて出された料理を見る。

 どうやら芋を使った料理のようで、いろんな食材を潰した芋と混ぜ合わせて作ったみたいだった。


「これはなんて料理なんだ?」


 ソラさんが言う。


「これは魔大陸でよく作られてるジャポグリラって料理よ。潰した芋にいろんな食材とか調味料を混ぜて焼き固めたものなの。だから、そのまま食べれるわ」


「へえ〜」


「シャーロットの思い出の味ということですか」


「楽しみ〜」


 みんなが料理を前にそんな感想を言う。


「死なないわよね?」


「死なないわよ! もう、失礼しちゃうわね!」


 そう言ってシャーロットさんはジャポグリラを口に頬張る。


「うん。バッチリね」


 美味しそうに食べるな〜。

 私も食べてみよう。

 そう思い一口分をフォークでとると、みんなも気になったのか同じようにフォークでとった。


「「「いただきます」」」


 みんなで一斉に食べる。

 すると、


「美味いな…!」


「うん、美味しい」


「そうですね」


「なかなかやるみたいね」


 みんなの反応はとてもいい。

 勿論私も美味しいと思う。


「そうでしょ? ヒカリはどう? 美味しい?」


「はい、美味しいです」


「そう。それはよかったわ」


 シャーロットさんは安心したような表情を見せた。


 ご飯を食べ終えて少し時間が経った頃、私は初めての試みをしていた。

 それはソラさんから離れること。

 ストライドを離れてからずっと側にいたから正直緊張する。

 でも、どうしてもやりたいことがあった。

 それはユリアさんに謝ること。

 彼女には優しくしてもらっていたのに私は冷たい態度でしか対応できなかった。

 だから、そのことを謝る為に器洗いを買って出た。

 今は野宿している場所の近くの小川でユリアさんと二人ってきりだ。


「あの…ユリアさん」


「ん? どうかした?」


 彼女は器を洗う手を止めて私を見る。


「その…ずっとユリアさんに謝らなければいけないと思ってたんです」


「謝る…?」


 ユリアさんは不思議そうな顔で私を見つめる。


「今までユリアさんには優しくしてもらっていたのに、その…私は冷たい態度でしか対応できなくて…ご飯の入った器も弾き飛ばしたこともあったし…」


「ああ、そういうこと。私は全然気にしてないよ」


「え…」


「ヒカリちゃんも大変だったのは分かってるから。気にしなくていいんだよ」


「ユリアさん……」


 なんて優しい人なんだろう。

 私はあんなに酷い態度だったのに。

 私もユリアさんを見習って人に優しくできる人になりたいな。


「私はヒカリちゃんとこうやって話せるようになってとても嬉しいよ」


「っ……! そう言ってもらえてとても嬉しいです」


 そんな会話をして、ユリアさんとは仲良くなれた。


 それから器洗いを済ませてみんなのところへ戻ってきた私はいつも通りソラさんの近くへ座った。

 癖でいつも彼の左後ろへ座ってしまう。

 ご主人様と一緒に居た時の名残だ。

 でも、ソラさんのことを常に視界に入れられるからとても安心する。


「ヒカリ、初めて俺から離れてみてどうだった?」


 近くに座って早々ソラさんが聞いてきた。

 心配してくれてるみたい。

 そう顔に書いてある。


「少し緊張しましたが、大丈夫そうです」


「そうか」


 ソラさんは安堵からか優しく笑うとそう言った。

 と、その時、


「ヒカリ、今大丈夫ですか?」


 ヒルダさんが話し掛けてきた。

 どうかしたんだろうか。


「はい」


「そうですか。実はあなたに剣を教えようかと思いまして」


「剣…ですか?」


 いきなりのことで戸惑う。

 今までは七武衆のジャンヌに剣を教わっていたけど、正直私には才能がないと思っている。

 別に苦手ではないし、覚えるのが特別難しいとも思わない。

 でも才能があるか、ないかと聞かれたらないと答える。

 特にヒルダさんの剣を見てると余計そう思うようになった。


「これから先の旅で少しでも自分の身を守れるように剣の腕を磨くのがいいかと思いまして」


「……」


 そう言われると確かにと思う一方で、ヒルダさんの貴重な時間を無駄にするのではと思う自分がいる。


「確かにな。元々ヒカリは短剣を使ってたわけだし、いいかもしれないな」


 ソラさんがそう言う。

 自分の身を守る為の剣か……。


「どうですか? 勿論無理にとは言いません。ですが、やるからには手を抜きませんよ」


「……私…」


 足手纏いにはなりたくない。

 せめて自分の身は自分で守れるぐらいにはなりたい。

 だから!


「やります!」


 私はそう言った。


「分かりました。では、早速始めましょうか。まずは剣の構え方からですね」


「はい!」


「あんまり無茶させないでくれよ?」


「分かってますよ」


 ということで、私は少し離れた場所でヒルダさんと二人きりで剣の修行をすることに。


「まずは剣の構え方ですね」


「はい」


 ヒルダさんはもう少し腰を低くとか、肩の力を抜くとかそう言った基本的なことを丁寧に教えてくれた。


「流石にあの女性から習っていただけあって細かいところ以外はできてますね」


「ありがとうございます」


 自分より圧倒的に強いヒルダさんに褒められのは嬉しい。


「では、次は攻撃の往なし方を教えます」


「はい」


「そうですね。ヒカリは短剣ですから攻撃の勢いを受け流すような静流剣を覚えるのがいいと思います」


「静流剣…? とは、なんですか?」


「静流剣は自分から攻撃せず、相手の攻撃を受け流したり、カウンターすることだけに特化した戦い方、技です」


「へえ…」


 今まで聞いたことがない。


「わたくしは使ったことありませんが一応教えられたので教えることはできます。使う人も少ないので覚えれば相手の意表をつくこともできるでしょう」


「そうなんですね」


「ええ。まあ、そもそも今は剣神流がほとんどでそれ以外の剣の技や流派を学ぶ者はあまり多くはないんですがね」


「そうなんですか?」


「はい。今の剣神…師匠が色々な場所に行って剣神流を教えたというのもありますが、剣神流はその人にあった剣を作ることができます」


「剣をつくる…?」


「わたくしで言うなら雷の剣。クライシス神聖国のヴァルキュリーなら氷の剣。要は魔法剣が使えるんです」


「魔法剣…」


「魔法剣は魔力を自分の得意な属性に変化させて剣や体に纏う技のことで……ここら辺の話はまた今度ですね」


「あ、はい」


 ヒルダさんがしまったという顔をしている。


「簡単に言うと、剣神流は誰でも使いやすくて、一番無難な流派ってことです」


「なるほど」


「それじゃあ早速、静流剣を教えます」


「はい!」


 こうして私とヒルダさんとの剣の修行が始まった。

見てくれてありがとうございます。

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