第八十六話 ドラグナー
馬車に揺られて少しして、俺達はドラグナーに着いた。
このドラグナーという街は今までの街と同じで特別な壁に囲まれている。
ドラグナーは俺が思っていたより大きな街らしい。
「それじゃあ、私はお茶してくるから後はよろしくね〜」
「失礼するよ」
ジブリエルとカイザーが離れていく。
二人はこれからお茶をするらしい。
その間に俺達はイーストポートまで行く馬車を探さないとな。
後はこの街に滞在することになった時の宿とかも必要だろう。
「そういえば、ジブリエルはどうやって戻ってくるつもりなんだろう」
「心配しなくてもジブリエルなら自力で私達を探せるわよ」
「そうですね。わたくし達はまず馬車があるかどうか探しに行きましょう」
「そうだな」
「うん…」
と、いうことでそれから俺達は歩いてイーストポート行きの馬車があるかどうかを確かめる為に組合まで移動した。
大きめの街には大体馬車を出してる組合がある。
カイザーに聞いたらこの街にもあるらしいから行けば分かるとのことだった。
そういえば、このドラグナーという街は国ではなく街らしい。
一応、クライシス神聖国の領土内らしく、それが証拠にクライシス信徒がちらほら見える。
「あったわ。これね」
俺達が着いたのは石で造られた大きめの建物。
すぐ側には馬小屋があるから分かりやすい。
「では、早速イーストポート行きの馬車があるかどうか聞きましょう」
「ああ」
それから俺達は建物の中へと入った。
〜ジブリエル視点〜
「それじゃあ、ジブリエルはみんなと魔王の復活を阻止する為に旅をしているのか」
「ええ」
「それはなかなか大変な旅だね」
「まあね。でも、誰かがやらないと魔王が復活してしまうわ」
「そうだね」
「それに、辛いことばかりじゃないもの。みんなと一緒にいるのは楽しいわ」
「そうか。俺もいつかそんな旅をしてみたいものだ」
「しないの? 旅?」
ふ〜ん。
「俺はこのドラグナーの領主の息子だからな。旅なんてできないんだよ。俺は気儘に長い人生を過ごすだけさ」
「カイザーは色んな種族の血が混ざってるのね」
「っ…本当に心の声が聞けるんだな」
「まあね」
「俺の血にはエルフと獣人族、あと龍人族の血が混ざってるんだそうだ」
「ふ〜ん」
それで普通の人より長生きなのね。
「詳しいことは俺もよく知らないがな。昔のことにそこまで興味がないし」
「そう」
「さっ、こんな話は程々にして楽しいお茶にしよう。いいところを知っているから楽しみにしててくれ」
「あらそう? それは楽しみね」
「まずはこの格好をなんとかしてくるからジブリエルは客室で待っててくれ。ここが俺の家だ」
そう言われた家は大きな屋敷だった。
城門のところには二人の門番が立っていて、流石は領主の家という感じだわ。
「ささ。こっちですよ、お嬢様」
「ええ」
それからカイザーに案内されて屋敷の中へ。
中に入ると客室に通された。
「それじゃあ、悪いが俺は着替えてくるから待っててくれ」
「分かったわ」
「その間、メイドに何か持ってきてもらうよ」
「これは親切にどうも」
カイザーが部屋を出て行った。
「それにしても…」
私は周りを見る。
高そうな装飾品に埃一つない部屋。
セレナロイグのお城とかもこんな感じだったわね。
そんなことを考えながら歩いて窓の方へと近付くと、
「あら?」
窓の下の方にはあの白龍が気持ちよさそうに眠っていた。
どうやら屋敷の後ろ側はこの子の寝床になってるみたいね。
近くに雨を避ける為の屋根がある建物が見える。
今は昼寝かしら?
「失礼します」
ノックされた後に若い女性のメイドが入ってきた。
「こちら緑茶と羊羹でございます」
「ああ…ありがとう」
「もし何かありましたらお申し付けください」
「分かったわ」
「それでは」
そう言って部屋から出て行く。
でも、声が離れていかないから扉の近くに居てくれてるみたい。
メイドも大変ね。
「へえ〜珍しい食べ物ね」
椅子に座ってテーブルに置かれた羊羹と呼ばれていた食べ物を口に運ぶ。
すると、程よい甘味が口一杯に広がる。
「美味しいわね…」
この甘味と香りがとてもいいわ。
それから緑茶と一緒に羊羹を楽しんだ。
〜ソラ視点〜
明日に出るというイーストポート行きの馬車の予約を済ませた。
イーストポートは海があり、海鮮だったり、エクスドットへ行く為に寄る街の為それなりに馬車は出てるらしい。
でも、一週間に一本とからしいのでそう考えると運は良い方だろう。
それから俺達は今日泊まる宿を決めた。
一日泊まるだけだからすぐに決まるだろと思うかもしれないがそれなりに数が多いので案外宿が見つからない。
結局、いくつかの宿を回って泊まる宿が決まった。
「ふう…やっと見つかったわね」
シャーロットがベッドに座りながら言う。
これももういつもの光景だ。
「これからどうしようか」
「そうだな」
明日の馬車までは時間があるしな。
「ひとまずご飯でも食べに行きましょうか」
「賛成!」
シャーロットが食い付いてきた。
まあ、俺も腹は減ってきたし丁度いいだろう。
「じゃあ、ご飯食べに行くか」
「うん」
ということで、俺達は街へ出た。
クライシス神聖国で盗みにあったから荷物を置いて宿を出るのは少し躊躇ったが、持っていると動き辛くてしょうがないので仕方がない。
盗まれないことを祈ろう。
一応、お金とか大事な物は自分達で持ってるから盗まれても最悪なんとかなる。
「ご飯を食べ終えたら冒険者ギルドで魔王様について何か情報がないか探してみましょうか」
「ああ、そうだな」
一応聞いておいた方がいいだろうしな。
「あれ? あれってジブリエルじゃない?」
「ん?」
ユリアが指差した方を見る。
すると、そこには外の席でカイザーと楽しそうに会話をしているジブリエルの姿があった。
「確かにジブリエルですね」
「ここでお茶してたのか」
テーブルには美味しそうなケーキとティーカップが見える。
「随分楽しそうじゃない」
「邪魔してはあれですし、私達はどこか他の場所を探しましょうか」
「少し邪魔をしたいけど、しょうがないわね」
「おい」
「でも、ジブリエルに宿の場所を伝えた方が良くない?」
「う〜ん、どうしましょうか」
と、俺達が悩んでいるとジブリエルが俺達に気が付いて手を振ってきた。
「気付いたみたいだな」
「手招きしてるし行きましょうか」
「うん」
俺達は二人に近付く。
「意外と早かったわね」
ジブリエルがティーカップを片手に言う。
「まあね」
「どうですか? せっかくならみんなで一緒に食事でも。ここは料理も美味しいですから」
カイザーからの食事の誘いだ。
「でも二人のお邪魔なんじゃ…」
「いえ、ジブリエルの話を聞いてあなた達に興味が湧きまして」
「そうなんですか?」
「あんた何話したのよ?」
「別に? 旅の話をしただけよ」
「ふ〜ん」
「じゃあ、せっかくですから一緒に食事でもしますか」
「まあ、そうだな」
それから俺達はみんなで食事を摂ることになった。
ご飯を食べながらどうやって出会ったのかとか、どんな旅をしてきたのかとかそんな話を。
シャーロットとの出会いはぼかした言い方をしたけどな。
「もうこんな時間か…そろそろ戻らなくてわ」
少し空の様子が夕暮れに変わってきた頃、カイザーが言った。
思ったより話し込んでしまったらしい。
「そうなの? それじゃあ、またいつか会いましょう」
「ああ。でも明日、馬車の見送りに行きますよ」
「そう? それは嬉しいわね」
「それではまた明日会いましょう! では!」
そう言うとカイザーは小走りで行ってしまった。
「それじゃあ、私達も冒険者ギルドに寄ってから宿に戻りますか」
「そうだな」
ということで、俺達は冒険者ギルドに寄ってから宿へ戻ることに。
が、せっかく冒険者ギルドに寄ったのに魔王について新しい情報はなにもなかった。
魔王は一体どこでなにをしているのやら。
「ねえねえ。そういえばカイザーとはどうだったのよ」
冒険者ギルドから宿へ戻る途中、シャーロットが揶揄うようにジブリエルへ聞く。
カイザーと話して分かったが、彼はなかなかいいやつだ。
明るい感じで、ユーモアがあるし、気が利く。
女の人だったら好きになる人は多そうだ。
俺もどうだったのか少し気になる。
「そうね。なかなか面白い人だったわよ。私がもう少し若かったら危なかったかもしれないわね」
「なによそれ」
そういえば、ジブリエルって何歳ぐらいなんだろう。
気にしたことなかったから聞いたことなかったな。
「まあ、いい人だったってことよ」
「へえ〜」
シャーロットはニヤニヤしながらジブリエルを見る。
「でも、まさかジブリエルがお茶のお誘いを受けるなんてビックリしたよ」
「どうしてドラゴンと仲がいいのかとか気になってね」
「そうなんだ」
「楽しいお茶だったわよ」
「そっか、よかったね」
「ええ」
そんな会話をしながら宿へ戻るのだった。
次の日の朝。
俺達はイーストポート行きの馬車に乗る為に昨日の建物まで来ていた。
「カイザー遅いわね。もうそろそろ出発するわよ?」
腕を組みながらシャーロットが言う。
「彼も領主の息子みたいですから忙しいのでしょう」
「そうだな」
昨日も途中で帰ってたし。
と、そんな時、頭上に影が掛かった。
俺は上を向く。
すると、
「すまない。遅れてしまった」
白龍から飛び降りてきたカイザーが言う。
「随分派手な登場ね」
「本当は歩いてくるつもりだったんだがな。気が付いたら遅くなってしまっていた。なんとか間に合ってよかったよ」
「また機会があれば会いましょう」
「ああ。その時は歓迎するよ。みんなもドラグナーの近くを通ることがあったら是非寄ってくれ」
「「ええ」」
「「はい」」
「ああ」
「それじゃあまた」
こうして俺達はカイザーと別れてドラグナーを後にした。
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