第七十三話 ストライド出立
次の日の朝。
俺達はここストライドを出発する前にカリム達へ挨拶しようと昨日来た家まできていた。
「ルビー達居るわよね」
「多分な」
「ごめんください」
扉をノックしてヒルダが言う。
「ああ…」
「ん?」
ジブリエルがいきなり残念そうな声音で声を漏らしたが何かあったんだろうか。
と、そんなことを思っていると扉が開く。
「みんな揃ってきたのか」
「ええ」
トレサが出てきた。
「その荷物量ってことはもう出発するのか?」
「はい。なのでここを出発する前に挨拶をしようと思いまして」
「そうか。あっ…ヒカリ…」
「……」
トレサが俺の服を掴んでいるヒカリに気が付く。
どうやらヒカリは誰かと居るのがまだ無理らしく、俺以外の人には怖がってしまう。
ここにくる時も下を向いて俺の服を力強く掴んで放さなかった。
「まあ、とにかく上がって。ちょっと面倒なことになってるけど」
「「「?」」」
それから俺達は家の中に入った。
そして、昨日の七武衆達がいた部屋まで移動したのだが…。
「なあ、ルビー! 本当に違うんだよ!」
何故かカリムが七武衆の入っていた檻に入れられていた。
そして、その前にはルビーが腕を組んでカリムを見下している。
どう言う状況だ?
ルビーの後ろには七武衆の女性達が立っている。
何かあったのは確かだろうがどうしてカリムが檻の中に入ってるんだろうか。
そう思っていると俺達に気が付いたルビーが、
「あれ? シャーロット達じゃない。どうしたの?」
「どうしたのって…」
それはこっちのセリフなんだが…。
「ここを出ることにしたからその前に挨拶しに来たのよ。それで? これはどういう状況?」
「ああ、このゴミがまたちょっかい出してたからもう殺しちゃおうかと思ってね」
満面の笑みで言うルビーの顔がとても怖い。
「いや、だからそれは誤解…」
「うるさい! あんたは黙ってなさい!」
「……はい」
カリムが檻の中で置物になる。
「何かあったの?」
「カリムがこのクロエとアルマに手を出してたのよ」
「ああ…」
ユリアがなるほど…みたいな反応をする。
「しかもアルマに至っては抱き付いてたし」
何してんだコイツは…。
「あの…私に抱き付いてたのはクロエが押したからで…」
「いいのよ。そう言えって言われたんでしょ? 可哀想に。私はあなたの味方よ」
「ああ……はい…ありがとうございます…」
なんか煮え切らない反応だな。
もしかして本当にカリムは何もしてないんだろうか。
そう思ってカリムを見る。
すると、カリムは口をパクパクして何かを伝えようとしてくる。
「私達…無理矢理触られて。それでこのことをバラしたらどうなるか分かってるなって脅されて…」
クロエが手で顔を押さえながら言う。
「そんなことまでしたなんて。遂に私の堪忍袋の緒が切れたわ…」
なんかヤバい気がする。
カリムも顔が真っ青だ。
と、その時、
「はぁ…クロエ。あなたまたイタズラして困らせようとしてるわね?」
エレノアが言う。
「そうですよ。カリムさんはそんなことをする方ではないと思います」
と、フレイアも言う。
「私達を見る目はやらしいけど、私もそう思います」
と、ペトラ。
「ん? ねえ、クロエさん。みんなはこう言ってるけど本当はどうなの?」
ルビーが聞く。
すると、クロエがいきなり走り出して窓から外へ逃げ出した。
「あっ!!! ちょっと!」
「追い掛けますか?」
刀に手を置くヒルダが聞く。
「クロエなら戻ってくるはず。いつものことよ」
マルティナがそう言う。
「なら大丈夫でしょ」
「そうですか」
トレサに言われたヒルダは刀から手を離す。
「てことは、カリムは無罪ってこと?」
「俺はそう言ってただろう?」
疲れた様子のカリムが言う。
「まあ、日頃の行いにゃ」
「カリムもこれに懲りたら少しは落ち着くど」
部屋に入ってきたティサナとアーダンが言う。
「最近は何もしてないのに…」
「ごめん、ごめん。またいつもみたいにやったのかと思っちゃった」
そう言って檻の鍵を開けるルビー。
ぐったりとした様子のカリムが檻から出てくる。
「はぁ…それでなんだって? なんでお前らここに来たんだっけ?」
「ここを出るから挨拶しに来たんだよ」
「おお、そうか。気を付けてな」
「ああ」
「……その子。大丈夫なのか? 体が少し震えているみたいだが」
「ああ。実は人間恐怖症みたいになってな。俺以外の人とは基本的に目も合わせない」
「……心の傷が大きかったみたいだな」
「他のみんなは大丈夫なのか?」
俺はそう言って七武衆達へ視線を向ける。
「私達はそれなりに経験を積んできてますから」
「そうか」
エレノアが言う。
確かに、今まであのボスの手下として色んなことをしてきたんだもんな。
そう言うのも頷ける。
「……ヒカリ」
ジャンヌがヒカリに近付く。
すると、ヒカリの俺の服を掴む力が強くなる。
緊張や恐怖しているのかもしれない。
「……あなたはまだここにきて日が浅いです。だから、きっとやり直せます。心を閉さずに、強く生きてください」
「……」
ヒカリは何も言わない。
が、少しだけ握る力が緩くなったような気がした。
「それじゃあ、挨拶も済んだし行きましょうか」
「ああ。そうだな」
それから俺達はカリム達に見送られた後、街の外れへと向かった。
「それでは、ここからはわたくしが案内をします」
「ああ、頼む」
「またしばらくは歩きね」
「そうなのよね…」
ジブリエルに言われてシャーロットが怠そうにする。
「ヒルダ、次の目的地まではどれぐらい掛かりそうなの?」
ユリアが聞く。
「ここから東へ行ったところにクライシス神聖国という国があります」
「神聖国?」
クライシスという名前はたまに聞いたりするが、それの神聖国があるのか。
「わたくしはあまり寄りたくないですが、そこがひとまずの目的地です」
「どうして寄りたくないの?」
俺も気になる。
「あそこは罪を犯すと必要以上に詰められて面倒なことになりますからね。できるだけ厄介事は避けたいからです」
「罪なんてそうそう犯さないでしょう?」
ジブリエルが言う。
「あの国独自の法があって全部把握はできないんですよ」
「へえ、そうなの」
それは怖いな。
俺も面倒事はできるだけ避けたい。
「それで…そうですね、歩いて大体三週間ぐらいでしょうか」
三週間か。
「ヒカリが居ますから少し遅くなると考えてそのぐらいになると思います。途中で馬車にでも乗れたらいいのですが、六人もいますからなかなか難しいでしょうし」
「まあ、乗せてもらえたらラッキーぐらいで考えよう」
「だって、シャーロット」
「はいはい」
こうして俺達はストライドを後にした。
結局、ここのボスの名前も十年前のダリウス・フィールの家を消すように命じたやつも分からなかったけど、今は先を急ごう。
できる限りのことはやったんだ。
フィールもきっと分かってくれる。
もしミーシャに会うことがあったらこのことを伝えよう。
多分知りたいと思うから。
見てくれてありがとうございます。
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これでソラ達の旅は一旦休憩です。
次の一話は間話です。




