第六十二話 ストライドと灰
俺達はストライドまで後少しというところまで来た。
暑いことには変わりないが砂の量が少し減ったように感じる。
途中に何回か見た砂嵐もここ二日ぐらい見ていない。
これもストライドに近付いた影響なのだろうか。
それともストライドの近くにある海が原因なのだろうか。
まあ、どちらにせよいいことだからいいんだがな。
と、思っていたのだが、
「雪…?」
どんよりした曇り空から灰色の何かが降ってくる。
「いや、これは多分火山灰ね」
「火山灰? 近くに火山があるのか?」
「そんな筈はないんだけど……まあ、ストライドに着けばこれがなんなのか分かる筈よ」
「ふ〜ん」
「この色を見ると『白い森』を思い出すな……」
「あの石化の森か。確かに少し似てるかもな」
「嫌なことを思い出すわね」
「ごめんね。珍しくてつい」
「いいけどね」
「火山灰ってできるだけ吸わない方がいいわよね…」
俺達が会話をしている時ジブリエルはどうやって火山灰を吸わないようにするか考えていた。
火山灰対策でローブを付けてから数時間歩くと街が見えてきた。
火山灰によって全体的に灰色って感じの印象だが、離れているのに街があると分かる。
あれが恐らくストライドだろう。
「着いたわね」
シャーロットが言う。
「大きな街ね」
「うん」
「そうだな」
俺が想像していたよりかなり大きい。
大小様々な建物が並んで城壁も何一つない。
あれで街の守りとかは大丈夫なのかと不安になる。
「行きましょう」
シャーロットを先頭にストライドへ近付く。
しばらくすると街が近付いてきて様子がよく見える。
街を歩く人はそこそこ。
皆頭に被り物なんかをしている。
恐らく火山灰の対策だろう。
番兵なども居ないのでそのまま街の中に入る。
ここら辺は新しくできた建物なのか比較的新しいように思もう。
「何があるか分からないから一応注意ね」
「うん」
「分かった」
「はーい」
それから街の中心部へと向かった。
すると、やはりと言うべきか、さっきよりもずっと前に建てられたであろう建物がちらほら見える。
恐らくだが街が発展していきどんどん建物が増えていったのだろう。
その時に今までと同じ面積だと狭いので外へ外へと建てられたのではないだろうか。
そんなことを考えながら歩いているとシャーロットが振り返り、
「これからどうする? まずは宿を探そうかと思うんだけど」
「そうだね。いつも通りでいいと思う」
「まあそうだな。宿を見つけたらその後は冒険者ギルドに行って色々情報収集でもしよう」
「よし。じゃあ、決まりね。行きましょう」
「宿に、情報収集ね〜…」
「なんか言ったか?」
「ううん。なんでもない」
それから俺達は泊まる宿を探した。
探したのだが、
「ダメね」
「またぁ?! これで何件目よ?!」
「ジブリエル、どうしてダメなの?」
「私の好みよ」
「……あのな…」
ジブリエルが行く宿行く宿ノーと言うのだ。
理由を聞いてもこの通り好みとしか言わない。
俺もただのわがままだったら強く言って宿を決めるんだが、俺には分かる。
ジブリエルは好みでは決めていない。
今までこんなことは無かった。
それに基本的に面倒だからか俺達に任せている。
なのにこの街ではここまで言ってくる。
普段では考えられないことだ。
つまり、普段では考えられないことが起こるほどの何かがジブリエルには分かるのだろう。
だからノーと言うのだ。
ていうか、これで本当に我儘だけだったらデコピンの一つでもしなければならない。
「もう…ここもダメっていうならあんたが決めなさいよ」
「……めんどくさ…まあ、いいか。行くわよ〜」
「ちょっと!? あんた今めんどくさって言ったでしょ!?」
「さあ? 気の所為じゃない?」
「ぐぬ…」
ジブリエルさん? シャーロットがお怒りですよ?
その辺にしないと後で俺にとばっちりが来るんだよ。
それから泊まる宿が決まったのは五件ほど宿屋を回った後だった。
ここが宿が多い街で助かった。
「ふう…少しボロいけどここなら大丈夫そうね」
「あんたがここにするって言ったんでしょうが」
キレ気味のシャーロットが突っ込む。
「はいはい。私は今機嫌が悪いからあまりうるさくしないで」
「私もあんたの所為で機嫌が悪いんですけど…?」
「まあまあ二人とも…」
「そうだぞ。それに、ここまでジブリエルが駄々を捏ねるなんて今までなかっただろ?」
「まあ…」
「駄々を捏ねるって言うな」
そう言うと寝そべっていたジブリエルがベッドに座り直した。
「なんで私がこんなに駄々を捏ねたか説明するわ」
認めるんだ。
「どうやらこの街、ストライドは腐ってるらしいわ」
「腐ってる?」
「どういうこと?」
「私達がこの街に入ってからどのぐらい歩いた?」
「? 大体二時間ぐらいかな?」
「そうね」
「それなりに歩いたはず。だけど、ずっと消えなかった声がある」
「心の声か?」
「そう。それは「私達をいつ攫おうか」って言ってたわ」
「攫う…」
ユリアが手を握り締める。
「楽しそうにその後の想像をしたりしてね。とても気持ちが悪いでしょ?」
「……」
「それに加えて今までの宿は何かしらそういう奴らと関わりがあるみたい。街全体が犯罪し放題の楽園ってところね。会う人会う人終わってて言い方がキツくなってたわ。ごめんなさいね」
「そういう理由があったわけか」
何か理由があるとは思っていたけどやっぱりって感じだな。
「私も…なんかごめん…」
「いいのよ」
シャーロットがしゅんとしている。
「でも、それならどうしてここならいいの?」
ユリアが聞く。
「ここは街の中心に近くて昔からある宿みたいだから。あのおばあちゃんも良さそうな人だったし、それでここにしたの」
「そうだったんだ」
「それにここは声が少なくていいわ。あの気持ち悪い奴らの声を聞きながらは寝れないもの」
「そういえば、ずっと付いてきてたって言ったろ? 今は大丈夫なのか?」
「途中で諦めたから大丈夫よ。文句を言いながらどっか行ったわ」
「そうか…」
ならひとまず安心か。
「にしても、ユリアは人気者ね」
「私?」
「隠しきれない人はどうしてもね」
「っ……!」
ユリアが瞬時に胸を抑える。
まあ、見た目で女性って一発で分かるからな。
ジブリエルとシャーロットはなんとも言えない感じだし。
「なんか失礼な奴らね…」
お前は何にイラついてるんだ。
「はぁ…聞こえてよかったけど、聞きたくはなかったわね…」
しばらく休憩した後、俺達は冒険者ギルドへ向かっていた。
冒険者ギルドは街の中心にあるらしく宿から近い。
なので時間は掛からないのだが、宿のおばあちゃんから気になることを言われた。
「あそこに行っても意味がない」だそうだ。
どういう意味なのか聞くと行けば分かるとそれだけだ。
行かせたくないのか行かせたいのかよく分からんが、行くことにした。
「ここね…」
「これは…」
「廃墟?」
木でできた壁には無数の穴が空き、看板もなんと書いてあるのか分からない。
全体的にボロボロでジブリエルの廃墟という例えが正しい。
これが本当に冒険者ギルドなのだろうか。
「入ってみるか」
「う、うん」
「大丈夫だよね」
「さあね。でも、ここに人はいないみたい。声はしないわ」
俺は恐る恐る両開きの扉を開ける。
中を見ると、埃なのか砂なのか。
とにかく人が長い間居ないことが分かる。
「これは…情報収集は無理ね…」
「うん…」
中に入って周りを見てみるがいつのものか分からない依頼が掲示板に貼られたままだ。
と、その時、
「ねえ、こっち来て!」
ジブリエルが声をあげた。
俺達は急いで向かう。
「これ見て」
ジブリエルの前には布団のような毛布のような布が一枚ある。
「なんだ。ただの布じゃないの。驚かせないでよ…」
「いえ、これだけ新しいわ。多分ここで誰かが寝てるのよ」
「こんなところで?」
ユリアが不思議そうに聞く。
確かに、布はカウンターの内側なので寝やすいといえば寝やすいかもしれない。
が、こんなところで寝るなんて普通は考えない。
もしかしたら、犯罪者がここで寝ているのか?
「まあ、それだけなんだけどね。もう行きましょうか」
「おい」
適当すぎるだろ。
「はあ…あんたね…」
「ん? 長い髪の毛?」
「ユリア? 行くわよ?」
「あっ、うん!」
俺達は冒険者ギルドを後にした。
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