第六十一話 ビビ砂漠
セレナロイグを出発してから一週間ほどが経った。
俺達は今ビビ砂漠を歩いている。
照り付ける太陽の所為で汗が止まらない。
フィーベルに水を大切にしろと言われていた意味が分かった。
水がないと本当に死んでしまう。
俺は機械だが、限りなく人間に近い。
水を飲まなくてやっていけないのだ。
「暑すぎなのよ…!」
俺達より少し太陽に近い者がこのようにたまにキレている。
砂漠に入ってからこんな感じだ。
「空はどう? 歩くのとどっちがいい?」
「大して変わんないわよ」
「そう。じゃあ、私は歩きね」
「それにしても本当に暑いね…」
「そうだな」
日光対策でローブを日除けにしても暑いものは暑い。
「何かこの暑さをどうにかできる方法はないのか?」
「う〜ん…」
「あったらやってるっての…」
「それもそうか」
「だったら作ればいいわ」
「作る? 何を?」
「どうにかする方法よ。私達には魔法があるじゃない」
「つまり?」
「暑さをどうにかできる魔法を工夫して作ればいいってことよ」
「ほう」
それから歩きながら魔法を使ってこの暑さをどうにかできる方法を模索した。
まずはなんと言っても暑さをどうにかするしかない。
そこで氷魔法をどうにかして自分達の体を冷やすことに利用できないかと色々試してみた。
「よし、これでどうかしら」
ジブリエルはそう言って俺達の手に掌を翳す。
すると、ひんやりとした冷気が手に伝わってきた。
これは凄いかもしれない。
「後はこの冷気を風魔法で飛ばしてあげれば…」
「「「おお!!!」」」
なんと冷たいひんやりとした風が俺達を撫でた。
これならなんの問題もなく砂漠を進むことができる。
「どうよ? 凄いでしょ?」
ジブリエルが渾身のドヤ顔を見せる。
普段ならなんて顔をしてるんだと一言言ってるところだが今回は許すことにする。
「これなら私達にもできるかも」
「そうね」
「ふふん」
ジブリエルはもっと褒めてと言って欲しそうな顔をしている。
「でも、これやっている本人はどうするんだ?」
「ん?」
「えっ?」
俺がそう言うとユリアとシャーロットがジブリエルの方を見る。
「…………」
ジブリエルは笑顔を絶やさない。
「あの…ジブリエル?」
「なにシカトしてんのよ?」
二人が詰める。
と、その時、ジブリエルは足を早める。
「ねえ、まさかとは思うけど…」
シャーロットが何かを言おうとしたその瞬間、ジブリエルは振り返り、
「よく聞いて…人っていうのはね。時に、気合が大事なのよ」
「私、人ではあるけどその前に一応、魔人なんですけど?」
「……後は任せたわ!」
「あっ!?」
ジブリエルは走って俺達から離れる。
「このポンコツ!!!」
「私はできる限りのことをしたんだから後は三人でなんとかしてよ!!!」
シャーロットとジブリエルが言い合っている。
「何やってんだか…」
「ん〜……」
俺が二人を呆れながら見ているとユリアが難しそうな顔をして唸っている。
「もしかしたら…」
「?」
それからジブリエルの魔法をユリアが改良。
暑さに対抗する為の魔法が作られた。
「出来ました!」
「今度はどんな魔法なの?」
シャーロットが疑いながら言う。
「これは冷たい風で常に出して、自分達の周りを涼しくするっていう魔法だよ」
「ふ〜ん。なんか良さそうね」
「待ってね」
そう言うとユリアは左の掌を上に向ける。
すると、その掌の上に風が集まってくる。
「ここに氷魔法を合わせると…」
段々と雪のような白いモノが風と一緒に回り始める。
「ここまできたらだんだん上に伸ばして…」
掌に収まっていた風はどんどん上へと膨らんでいく。
すると、掌サイズの氷の竜巻が出来ていた。
「どう? これなら涼しいでしょ?」
「確かに……これは涼しいわね」
「うん。涼しさは私の方が上だけどあれにはちょっと欠点があるからね」
「何がちょっとよ…」
「これなら大丈夫そうだな」
「でしょ?」
ユリアが嬉しそうに言う。
「でも、これ魔法の扱いが難しい上に魔力を思ったより使うから常には出来ないかも……」
「「「……」」」
「いやっ?! そのね? これでも頑張ったんだよ?? だからそんな顔をしないで!」
それから俺達は結局暑さに耐えながら進むこととなった。
結局、今まで考案された魔法は休憩をする時に少しだけということになりました。
砂漠を歩き始めてから十日ほどが経った。
毎日砂漠を歩いているので暑さにも少し慣れてきた。
最初の頃程は暑い暑いと言わなくなった気がする。
シャーロットに聞いた話だが後一週間ほどでストライドへ着くらしい。
この砂漠生活も残り一週間だ。
そう考えれば少し元気もでる。
少し歩けば靴に砂が溜まり、ちょっとした砂の山を越えたらすぐにまた砂の山。
休憩しようにも日陰になっている場所がなくて探すの一苦労だ。
それに加えて砂漠の魔物もいる。
今のところ戦ったのは『デザートスコーピオン』と『サンドトレント』の二種類。
デザートスコーピオンは蠍の魔物だ。
砂の中で獲物が通るのを待ち、通った瞬間一気に襲う奇襲型の魔物だ。
一度俺が挟まれそうになった時は流石に焦った。
少し地面が揺れたと思ったら鋏が飛び出してきたからな。
その時は三人が助けてくれてなんとかなった。
俺一人だけだったら危なかったかもしれない。
サンドトレントは砂漠で木に擬態しているトレントだ。
こいつは基本的に砂漠のポツンと生えている木に擬態していて分かりやすい。
なので警戒していればそこまで危険な魔物ではないのだが、問題は例外の方だ。
たまに砂漠にはオアシスと呼ばれる水があったり、木が生えていたりする場所がある。
こいつはそのオアシスに生えている木にも擬態する。
水があるとまんまと近付いた奴を襲うのだ。
なんてタチが悪いやつだろう。
信じられん。
喜んで気が緩んでいるところを襲うなんて……あの時は迷惑掛けてすみません。
助かりました。
他にも砂漠には魔物がいるみたいだが今のところは会ってない。
中でもこの砂漠限定のデザートドラゴンというドラゴンがいるらしい。
こいつは擬態が得意なドラゴンなのでそこまで強くはないらしいが会いたくはない。
ここ最近俺はお荷物になっているので警戒は怠らないようにしよう。
「ご飯できたよ!」
俺がシャーロットをマッサージしているとユリアのご飯ができたという声が聞こえる。
「はーい」
「分かった」
「今日のご飯はなんなの?」
「この前のデザートスコーピオンを香草とかで煮た物だよ」
「へえ、美味しそうね」
「味見もしたからバッチリだよ」
「楽しみね」
それから俺達はそろって晩御飯を食べた。
「ふう…美味しかった」
「ユリアが料理上手で助かったわ」
「えへへ。ありがとう」
「ユリアの料理はいつ、何を食べても美味しから凄いよな」
「そ、そうかな…」
みんなに褒められて嬉しいのかユリアが照れている。
「ふ〜ん」
ジブリエルがニヤニヤしながら俺を見ているんだが、なんだろうか。
この顔は何かを企んでいる時が多いから怖いんだよな。
「んん……早くベッドで休みたいわね…」
体を伸ばしながら言うシャーロット。
「後一週間ぐらいだっけ?」
「そうね。このまま行けばそれぐらいで着きそう」
「ストライド…フィールが言っていた何者かがそこに居る…」
「今までの噂を鑑みても警戒した方がいいところなのは間違いないわね」
「街なのに警戒か…」
「治安が悪い場所はしょうがないわよ」
「……」
俺は少し不安に思いながらストライドへ向かうのだった。
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