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第五十八話 マジックショー

 ドラゴンを討伐した翌日。

 俺達は冒険者ギルドへ来ていた。

 理由は倒したドラゴンの素材の分配と今回の緊急依頼としての報酬だ。

 報酬の話は先に聞いていたのでそれだけ受け取ろう思っていたのだが、素材の分配の話は聞いていなかったので嬉しい誤算だ。


 俺達は赤竜と黄龍を倒したということでその素材を貰った。

 シャーロットの話だと黄龍の素材は価値が高いそうなので貰えてよかった。

 魔法を吸収する鱗は何かに利用できるかもしれないから何かの時に使えるといいな。

 防具とかに加工すれば魔法を使う相手に強く出れる。

 まあ、防具にしちゃうと俺の魔法も吸収されるだろうから盾とかにした方が使い勝手はよさそうか。


 そういえば冒険者ギルドに行った時、マルシラック達にあった。

 冒険者が呼ばれているんだから当たり前と言えば当たり前なんだが、昨日に引き続き何かと出会う。

 特にこれといって話すことはなかったんだが、改めて礼をされた。

 別にいいのにな。

 困った時はお互い様だ。

 今回みたいな時は自分の我儘も言ってられない。

 人の命に関わることだからな。


 これが昼までの出来事だ。

 今はご飯を食べ終わり、とある場所に向かっているところだ。


「昨日のドラゴンの件で兵士をよく見掛けるわね」


「そうね。これから街の復興もあるだろうし、しばらくは忙しいんじゃないかしら」


「フィーベルさん達大丈夫かな?」


「あの人なら大丈夫だろ。なんかタフそうな感じだし」


「確かにね」


「そうね」


「うーん」


「それより、今日はせっかく劇場に行くんだから。そんな顔しないの」


「確かにそうだけどさ…」


「リリって子とモモって子は手品はするの?」


「さあ? まだ六歳ぐらいだったし、お手伝いぐらいはするかもしれないけど…」


「ふ〜ん」


 なんでも昨日、シャーロットとユリアが迷子を助けたらしい。

 それでその子達は劇場で手品をやっている親の子供らしく、せっかく今日が空いたので見に行くということになり今こうして向かっている。


「まっ、フィーベルも私達に任せてくれって言ってたし。俺達は手品を楽しもうぜ」


「…うん」


 それから少し歩いて劇場に着いた。

 すると、長い列ができていた。


「凄い人の列…」


「もしかして、結構凄い人達だったりするのか?」


「さ、さあ…?」


「なんか世界の色んなところに行って手品をしている人気の手品師みたいよ」


「へぇ」


 なんか俺が思っていたより凄いかもしれない。


 それから小一時間並んでなんとか中に入ることが出来た。

 中は俺の知っている劇場とそっくりだ。

 椅子がずらっと並んでいて前の方にステージがある。


「入れはしたけど、最後列の席になっちゃったわね」


「まあ、いきなりだったし、こればっかりは仕方ないね」


「どんな手品をやるんだろうな? ここから見えるといいけど」


「見てからのお楽しみね」


 と、明かりがなくなり暗くなった。

 どうやらこれから始めるらしい。


「本日は我々のマジックショーにお集まり頂きありがとうございます」


 最初に出てきたのは髭を生やした年が若めの男性。

 三十代ぐらいだろうか。

 彼が挨拶をすると拍手が起こった。

 それからも挨拶は続いた。

 ここまでは至って普通って感じの挨拶だけど…。


「では、話過ぎてもなんですからそろそろ始めましょうか。それでは、お楽しみください」


 彼がそう言った瞬間、煙が足元から現れた。

 すると、その煙から鳩が数羽飛び去った。

 いきなりのことに驚いているとあの男性の姿がない。

 それを見てみんなが驚いていた。

 なるほど。これが手品ってやつか。


 それから手品は一時間ほど続いた。

 何故か一人でに紙が折られていき、折り鶴となって空を飛ぶ手品やコインが消える手品など種類は色々だ。

 手品ってこんなに種類があるんだなと思わされる。


「さあ、これで最後の手品となってしまいました。ここからはとある人達に協力してもらいましょう」


 そう言うと、女性と一緒に二人の女の子が出てきた。


「ねえ、アレってリリとモモじゃない?」


「本当だ」


「この子達は私の娘でリリとモモ」


 女性にそう言われると、二人が頭を下げる。


「今回はこの子達に手伝ってもらおうかなと思います」


「へえ〜あの子達も手品出来たのね」


「うん!」


 ユリアは少し興奮しているらしい。

 楽しみって顔をしている。


「まずはこちらの箱にこの子達二人が入ります」


 運ばれてきた箱はかなり小さいように思う。

 恐らくあの子達専用の箱なのだろう。


「そしたら、箱を鉄の鎖を使って出られないようにします。その後、この箱を剣を持った剣士の方に切断してもらいます」


 そう言うと客がざわざわし始める。


「それまでに脱出できるかという手品です。ですが、この子達はまだ子供ですから少し時間が欲しいですね。そうね…箱に入って鉄の鎖を巻いた後から十秒までに脱出。それでどうかしら?」


「うん」


「分かった!」


 客の不安は他所に子供達は平然と返事をする。


「それでは早速始めましょう」


 そう言うと子供達は箱の中に入る。

 そして、蓋を閉じた。

 すると、箱の周りに鉄の鎖を巻いて出られないようにする。

 と、その間に傍から剣を持った男が出てきた。

 それを見た客は大丈夫なのかと心配する声を漏らす。


「では、数えましょうか。十、九、八」


 どんどんカウントダウンをしていく。


「七、六、五、四…」


 と、その時、箱の中から


「あっ、どうしよう!」


「早く!」


 二人の声が聞こえる。

 それを聞いた客は更に心配する。

 が、しかし、カウントダウンは止まらない。


「三、二、一…」


 これは手品の演出なんだよな…。

 俺までドキドキしてる気がする。


「ゼロ!!!」


「はああああ!!! 『火炎斬り!』」


 カウントダウンが終わり、剣士が剣を箱に向けて薙ぎ払った。

 その際、悲鳴を上げる客もいた。

 が、箱には誰もいなかった。


「どうやら成功したようです。では、二人を呼んでみましょうか。リリ! モモ!」


 その瞬間、入り口の扉がバタンと開いた。

 逆光から現れたのは小さな影が二つ。


「「はいっ!」」


 決めポーズをしながら現れた二人に自然と会場から拍手が起こる。


「凄い! 凄い!」


「中々やるわね」


「私達のマジックショーは以上です。ありがとうございました!」


 会場から更に拍手が起きた。


「ねえ、アレって…」


「ん? アレ?」


 リリとモモがこちらの方を見て何か話している。




 それから俺達は控え室に案内された。

 ユリアとシャーロットに気が付いたリリとモモが俺達を誘ってくれたのだ。


「改めて、先日はリリとモモがお世話になりました」


「いえいえ」


 さっきの女性だ。

 リリとモモと同じ綺麗な白色の髪で顔もよく似ている。


「初めまして。私はこの子達の父です。お礼を言いたいと思っていたのですが、出来ずに申し訳ありませんでした」

「改めて、私からも。この子達をここまで送っていただきありがとうございました」


「気にしないでください。私達は送り届けただけなので」


 この男の人は最初に挨拶をしていた人だ。

 父と言われると目元とかが二人に似ている気がするな。


「それでも感謝しています。何があるか分かりませんからね」


「ねえねえ、私達の手品見てくれた?」


「うん、見てたよ」


「どうだった?!」


 モモが感想をユリアに聞いている。


「凄かったよ!」


「本当?! よかったね、リリ!」


「うん、よかった…」


 モモとリリはとても嬉しそうだ。


「まさかあなた達も手品をするとはね」


「へへ。凄いでしょ?」


「ええ」


 シャーロットに褒められたモモはとても嬉しそうだ。


「リリ、モモ。今回のマジックショーはとてもよかったわよ。でも、これで満足しないで一杯練習しないとダメよ?」


「は〜い!」


「はい」


「手品は初めて見たけどこんな感じなのね」


「そうだな。俺も初めてだ。どうだった?」


 俺が聞くとジブリエルは楽しそうに微笑むと、


「面白かったわよ」


「そうか」


 気に入ったようで何よりだ。


「特に、ドキドキしながら手品をやっている子ども達がね」


 そういえばジブリエルは心の声が聞こえるから俺達には聞こえない何かが聞こえてたのかもしれない。


「それじゃあ、長居しても邪魔だろうし。そろそろ行こっか」


「そうね」


「ええ〜」


「もう行くの?」


「こらこら、あまり困らせないの。これから予定があるかもしれないでしょ?」


「う〜ん…また会える?」


「またいつかね」


「分かった」


「その時はもっと上手くなってる」


「それは楽しみね」


「じゃあ、次会うのを楽しみにして、行きましょうか」


「ああ」


 それから俺達はリリとモモ達に見送られながら劇場を後にした。

見てくれてありがとうございます。

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