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第五十七話 共闘

 俺達はフィーベルと一緒に他のドラゴンがいるであろう場所へと走って向かっていた。


「情報によれば多くは赤竜だそうだ。他にもさっきの黄龍や蒼龍なんかも目撃されていると聞いた」


 どうやら色々な種類のドラゴンがここに来ているらしい。


「赤竜っていうのはどんなドラゴンなんですか?」


 気になり聞いてみた。


「うむ。赤竜は攻撃的でよく暴れ回っている困った竜だ。人里に現れて村を破壊したり家畜を食べたりする厄介者だな」


「なるほど」


「更に赤竜は他のドラゴンに比べて数が多いのも特徴的だな」


「だから赤竜が多いんですか?」


「恐らくな。我々も今回のようなことは初めてでな。この件が終わったら調査しようということになっている」


「そうなんですか」


「!? 近いな」


 先頭を走っていたフィーベルが何かに気が付いたらしい。


「何か分かったの?」


「ああ。近くで誰かが戦っている」


「私には分からないわね」


「私も」


 俺達には何も分からないがフィーベルには何かが分かったらしい。


「こっちだ」


 それからフィーベルに案内されるがまま走る。




 少しすると何か音が聞こえてきた。

 ドラゴンの声と人の声だ。

 どうやら既に戦っているらしい。


「もうすぐだ」


 俺達は開けた場所に着いた。

 すると、そこには、


「よし、次だ! マルシラック!」


「おお!」


「イルミナ! 攻撃魔法を」


「分かってるわよ!」


「フォイ、お前は右から。俺は左から攻める」


「分かった」


 マルシラック達がいた。

 赤い竜と戦っている。

 恐らくあれが赤竜だろう。


「『流星槍!』」


 マルシラックが赤竜の攻撃を華麗に躱しながら流れるように反撃に移った。

 奴の槍は赤竜の顔を攻撃するとすぐに首へ攻撃。

 そして、更に腹、脚、尻尾へと移動していきながら攻撃をした。


「ガアアア!」


 赤竜が叫ぶ。

 と、その間に左右に分かれたアッシュとフォイが挟み撃ちするように両方から攻撃する。


「『アイスクラッシュ!』」


「『火炎斬り!』」


 アッシュの冷気を帯びた拳とフォイの炎を帯びた剣が赤竜の体に直撃した。


「これで終わりよ! 『ライトニングボルト!!!』」


 イルミナが最後のトドメと雷魔法で追撃する。

 すると、赤竜は体から黒い煙を上げて動かなくなった。


「どうやら少し遅かったみたいだ」


「あなたはフィーベル殿。そうか、あなたもここに来ていたのか」


「ああ。こんな事態だからな」


「なんだ、お前達も来たのか」


 俺達に気が付いたマルシラックが言う。


「当たり前だろ?」


「ん? 知り合いだったのか?」


「ええ、まあ…ちょっと…」


 ユリアが言葉を濁しながら言う。


「おっ! お前達も来てくれたのか! 助かるぜ!」


「あんなことがあったのになんかごめんなさいね」


 アッシュとイルミナも気付いて話し掛けてきた。


「あんなこと?」


「その話は後よ。今はドラゴンのことに集中しましょう」


「あ、ああ」


 ジブリエルに言われたフィーベルは少し困惑している。


「そちらの状況はどうでしたか?」


「そうだな。黄龍を一体討伐してきた」


「そうですか。我々はこの赤竜が一体目です。今から急いで他の場所に向かおうと思ってます」


「ああ、そうだな。私達もそのつもりだ」


「では、お互い気を付けて」


「ああ。…っ!? 一気に近付いてくる!」


 フィーベルがそう言った瞬間、周りの建物を壊して何かが現れた。


「グガアアア!!!」


「グガアアア!!!」


 そこには黄龍と赤竜がいた。

 どうやら喧嘩をしてここまで争いながら来たらしい。

 全身の至る所に傷がある。


「赤竜と黄龍か…」


「いや、まだ居る」


 フォイの言葉を訂正するようにフィーベルが言う。

 と、その時、空から赤い竜が舞い降りた。


「もう一体、赤竜か…」


「これは中々大変なことになってきたな」


 三匹のドラゴンを見たマルシラックとアッシュが言う。


「全員で協力して討伐するぞ!」


「分かりました」


 フィーベルの言葉にフォイが応える。


「俺達もやるぞ」


「うん」


「「ええ」」


 俺の言葉にユリア達が応える。


「黄龍は魔法が効かない。魔法を使うものは赤竜の相手をお願いしたい。そうだな…赤竜二体はアッシュとフォイをそれぞれ先頭にシャーロット、イルミナ、ジブリエルが援護」

「黄龍はマルシラック、ソラを先頭に私とユリアで援護。これでどうだ?」


「それでいきましょう」


「俺達もいいよな」


 ユリア達に聞くと皆首を縦に振った。


「よし。では、行くぞ!」


 それからドラゴン三体と俺達の戦いが始まった。

 まずは話にあった通り三つに分かれた。

 アッシュとイルミナ、フォイとシャーロットとジブリエルがそれぞれ赤竜と戦う。

 俺とマルシラック、ユリア、フィーベルは黄龍の相手だ。


「おい、俺とお前で黄龍の両側から攻めるぞ」


「分かったよ」


 マルシラックに言われるのは少し癪だがそうも言ってられない。

 俺とマルシラックで左右に分かれた。

 その間にもフィーベルが弓で黄龍の顔を狙う。

 ユリアはフィーベルに支援魔法を掛けて、隙があれば先程と同様に黄龍の行動を妨害してもらう。


「グガアアア!!!」


 黄龍が咆哮した。そして、胸を張る。

 これは炎のブレスだ。


「ブレスだ! 避けろよ!」


 マルシラックが声を掛ける。


「分かってるよ!」


「私が守ります。『ハイネス・マジックバリア』」


「すまない」


 黄龍が口から炎のブレスを吐いた。

 俺とマルシラックはそれを黄龍の体を使って器用に躱す。

 ユリアとフィーベルは守護魔法で身を守っている。


「隙だらけだぜ!」


 マルシラックが槍を黄龍の首に突き刺す。


「グガアアアア!!!」


 黄龍がたまらず暴れ出す。

 チャンスだ。

 俺はさっきやったように右拳に青い炎を集める。


「青い炎?」


「あれは一体…」


 俺は力を精一杯込めて黄龍の頭に目掛けて殴り付けた。

 すると、黄龍は頭を地面に打つける。

 地面がひび割れて、黄龍は動かなくなった。


「よし」


 後は赤竜だな。

 俺は赤竜の方へ視線を向ける。


「これで赤竜は倒したな」


 赤竜が二体地面に倒れている。

 どうやらもう二体とも倒したらしい。


「これでここは大丈夫だろう。みんなありがとう。助かった」


「いえ。他の場所にまだドラゴンがいるかもしれない。我々はこれから別の場所へ行こうと思います」


「そうか。私もそのつもりだ」


 と、その時、何か大量の足音が聞こえた。


「ん? これは…」


 すると、武装した人が大量にこちらに来た。


「フィーベル様! お待たせしました! 後のことは我々、セレナロイグ兵にお任せください!」


「やっと来たか」


「はっ! 申し訳ございません。突然のことでしたので」


「まあいい。現在の状況はどうなっている?」


「現在、確認されているドラゴンは残り二体になりました。それも既に冒険者の方々が戦っているようです。他にもドラゴンが居たようなのですが空を飛んで逃げたようです」


「なるほど……分かった。だとすると、今戦っているドラゴンはなんとかなりそうだな。問題は逃げたドラゴンか…他の場所で被害が出るかもしれないな…では、できる限りその逃げたドラゴン達の行方を追ってくれ」


「はっ!」


「手の空いている者は私と一緒に残りのドラゴンの元へ急ぐぞ。それが終わったら街のドラゴン達の残骸の処理と街の復興だ」


「はっ!」


「最後までお供しますよ」


 フォイが言う。

 が、フィーベルは首を横に振った。


「君達はよくやってくれた。もう大丈夫だ。後のことは我々に任せてくれ」


「……分かりました」


「君達も、とても助かった。ありがとう」


「いえ、俺達はできる限りのことをしただけです」


「そうか。そういえば明日の件だが、悪いが明後日に変更してもらえるだろうか? これから少し忙しくなりそうだ」


「それは全然大丈夫です」


「助かる。では、行くぞ!」


「はっ!」


 それからフィーベルは兵を連れて行ってしまった。


「ソラ、ユリア、シャーロット、ジブリエル、君達には色々と世話になった。礼を言う。助かった」


 フォイがそう言って頭を下げる。


「気になさらないでください。私達はできることをやっただけですから」


「なんて健気なんだ…」


「お前は少し黙ってろ」


「せっかく感動してたのに台無しじゃないの…」


「うるせぇ…」


 アッシュとイルミナに文句を言われたマルシラックが不貞腐れながら言う。


「まあ、何はともあれ、なんとかなってよかったわ」


「そうね。黄龍に魔法が効かないって聞いた時はどうしようかと思ったけど」


「そうだな」


 本当になんとかなってよかった。

 俺達は今回の件がひとまず落ち着いたようで安心したのだった。

見てくれてありがとうございます。

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