第五十四話 似た者同士
〜シャーロット視点〜
「どうしようかな…」
みんなと離れてから少し歩いてみたけど、これからどうしようかな。
特に用があるわけじゃないし。
セレナロイグを観光できるのはいいけど、せっかくだから何か目的を持って歩きたいわよね。
と、私がこれからどうしようか迷っていると気になる店を見つけた。
「服屋か…」
せっかくだし服でも見ようかな。
この服を気に入ってからかなり長いこときてるし。
何か今時の目新しい服あるかな。
ということで私は少し服屋で時間を過ごすことにした。
ここは女性向けの服を置いている店のようで私にとってはとても楽しい。
最近こうやってゆっくりと服を見ることはしていなかったから尚更かも。
見ている中で私が目を引いたのは黒の生地に灰色の雲がある和服。
落ち着いた雰囲気だし、背の高い人が着るとすらっとした感じになってとても綺麗な気がする。
私は背が高くないから自分では着ようと思わないけど素敵な服だわ。
他には黒と赤のドレスが印象的だったかしら。
どこかのお嬢様が来ていそうな感じで装飾もかなりこだわっていた。
もし私がああいう服を着ることがあったら何かを成し遂げた時かな。
ゆっくり見て回ったけど素敵な服なだけにお値段がそれなりにするから今は買えないかな。
いつかああいう素敵な服が着れるといいけど。
そんなことを考えながら店を後にした。
〜ユリア視点〜
みんなと別れてから少し歩いた私はアクセサリーを売っているお店にいた。
特にやることもなかったから何となく歩いて目に付いたこのお店に入った。
最初は少し見るだけのつもりだったけど見ていると楽しくなっちゃって長居してしまった。
それでせっかくだから気に入った髪飾りをジブリエルにプレゼントすることにした。
枝からフサフサした花が咲いている金色の髪飾り。
気に入ってくれるといいんだけど。
「ありがとうございました」
私はそんなことを考えながらお店を出た。
「これからどうしようかな…まだ時間はあるし」
と、私がこれからどうしようか迷っていると白髪の少女が目に付いた。
その少女は不安そうな顔でキョロキョロ周りを見ていた。
私は気になりその子に話し掛けることにした。
「あなた、もしかして迷子?」
「…?」
少女は不思議そうに私を見る。
「お父さんかお母さんは?」
「……分かんない」
「そっか」
やっぱり迷子みたい。
探してあげたいけど私もここは初めて来た場所だからどうしようかな。
「とりあえず、どこで逸れたか分かる?」
「ううん。違うの」
「? 何が違うの?」
「私達から離れたの」
「私達? 他にも誰かいたの?」
「うん。モモと一緒だった。でも、逸れちゃった」
「そっか…そういえば、あなたのお名前は?」
「私はリリ」
「リリちゃんか。私はユリア。それじゃあ、リリちゃんはモモちゃんと一緒にいたの?」
「そう。私の妹」
「妹…」
つまり、二人で両親から逃げ出したら迷子になっちゃったって感じかな。
だとしたら、妹のモモちゃんも探してあげないと。
「最後にモモちゃんと一緒にいた場所は?」
「それならこっち」
それからリリちゃんに案内されてモモちゃんと逸れた場所まで歩いた。
「ここ」
そこは人や馬が多く行き交う場所だった。
確かにこの人の量だと逸れるのも納得した。
「じゃあ、ここで少しモモちゃんを探してみようか」
「うん」
「あっ! リリ!!!」
私はその声がした方へ振り返った。
すると、そこにはリリちゃんに瓜二つの白髪の少女がいた。
そして、そのすぐ側に見慣れた人物がいた。
「シャーロット?!」
「ユリア? どうしてここに?」
そこにはシャーロットがいた。
「私はたまたま迷子のリリちゃんを見つけて…」
「リリ? ああ、そういうこと」
「モモ、心配したんだよ?」
「私もリリのこと心配だったんだよ?」
私達が話しているとリリちゃんとモモちゃんが手を合わせながら話をする。
「私もたまたまモモを見つけてね。それで特に用もなかったからこうして一緒にリリっていう姉と両親を探してたのよ」
「そうだったんだ」
「リリ! この人はシャーロットって言うの! 私と一緒にリリを探してくれたんだよ」
「そもそもいなくなったのはモモの方だよ?」
「そうかな…」
モモがそっぽを向く。
「…まあ、いいや。私もユリアさんにモモのこと一緒に探してもらってたんだ」
「へえ」
モモが私に目線を向ける。
なので、腰を下ろして、
「初めまして。私はユリア。たまたまリリちゃんと会って一緒にモモちゃんを探してたんだ」
「そうなんだ」
「二人ともお父さんとお母さんがどこにいたか分かる?」
「うん」
「そっか。じゃあ、案外早く見つかるかもね」
私はシャーロットに視線を向ける。
「そうね。それで、どこにいたの?」
「劇場だよ」
「お父さんもお母さんもそこで手品をやってるの」
「へえ。凄いわね」
「だったら、劇場まで行けば大丈夫そうだね」
「ええ。今頃両親は心配して探し回っているだろうから急ぎましょう」
「怒ってるかな?」
「多分ね。やだなぁ〜怒られるの…」
「う…」
リリちゃんとモモちゃんがこれからのことを想像して嫌そうな顔をしていた。
それから私達は二人の両親がいるであろう劇場まで歩いた。
その道中、話した会話といえば二人のどちらが悪いかという言い合いだった。
最初に誘ったのはモモだとか、でもリリも一緒についてきたとか、そんな感じのことをずっと。
流石に喧嘩になりそうだったので止めようとしたらシャーロットが一言言ってそれを納めてくれた。
シャーロットはこういう時に頼りになるね。
しばらく歩いて劇場に着いた。
劇場はかなり大きく荘厳な感じがした。
雰囲気が周りの建物と少し違うので、もしかしたら古くから立っているのかもしれない。
こんなところで手品をやるなんて二人の両親は凄い人なのかも。
「ここで合ってる?」
「うん」
リリちゃんが返事をする。
「じゃあ、中に入って二人の両親を探しましょうか」
「そうだね」
と、そんな会話をして私とシャーロットが二人を連れて劇場の中へ入ろうとした時、劇場の方から急いで走ってくる女性の姿が見えた。
「リリ! モモ!」
「あっ! お母さん!」
どうやら二人の母親らしい。
見ると白髪で二人によく似ている。
「二人とも、どこにいたの? 心配したのよ?」
そう言うと、母親は二人を抱きしめた。
「ごめんなさい」
「ちょっと、お外に…」
「もう…今度からこんなことしないでね」
「はい…」
「うん…」
二人が謝ると母親が優しく頭を撫でた。
懐かしいな。
私も何か悪いことをした後、ああやって謝ってお母さんに頭を撫でられたっけ。
「それじゃあ、私達は行こっか」
「うん。そうだね」
「あの…」
私とシャーロットが行こうとすると二人の母親が話し掛けてきた。
「もしかして、この子達をここまで送ってくれたんですか?」
「ああ…ええ、まあ」
「どうやら迷子みたいだったので」
「そうでしたか。ありがとうございました」
そう言って頭を下げる。
「大丈夫ですよ。特に気になさらないでください」
「ほら、二人ともお礼を言って」
「ユリアさん、シャーロットさん、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
リリちゃんとモモちゃんが頭を下げて私達に礼をする。
「もう逃げ出したらダメよ?」
「お母さんとお父さんの言うことを聞いてね」
「はい」
「うん」
「それじゃあ、私達はこれで」
「本当にありがとうございました」
「いえ、それでは。二人とも元気でね」
「ユリアさんとシャーロットさんも」
「元気でね!」
それからリリちゃんとモモちゃんに手を振られながら劇場から離れた。
「まさか、ユリアもあの子達のことを助けてるとはね」
「そうだね。私もビックリしちゃったよ」
「困ってそうだったからついね」
「私もだよ」
「やっぱり?」
「こういうところは似てるね」
「そうね」
「もしかしたら一緒にいるから考えが自然と似てきてるのかも」
「誰だって子供が困ってたら助けたくなるわよ」
「でも、あそこまで親切にする人はそんなに多くないと思うよ?」
「ユリアもしてるじゃない」
「それはそうだけど…」
「ほら、もう日が暮れてきているわ。さっさと噴水まで戻りましょう」
「ああ…ちょっと」
それから少し早足になったシャーロットに追い付くと二人で噴水まで歩いた。
見てくれてありがとうございます。
気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。




