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第五十二話 信頼

 冒険者ギルドを離れた俺達は王城がある街の中心へと向かっていた。

 王城は今までの国の王城と同様によく目立つ。

 高い壁が周りを囲み、荘厳な印象を受ける城を守っている。


 そういえば、城っていくらぐらいするんだろうか。

 まあ、どう考えても俺が一生お金を稼いでも建てることはできないだろうな。

 と、そんなことを考えながら歩いていると城の城門へと着いた。

 そのすぐ側に門番が立っている。


「どうやって聞こうか」


「そうね」


「普通に会えるかどうか聞いてみたら?」


「そうだな。まずは聞いてみよう」


「分かった。じゃあ、聞いてみる」


 俺達は会話を手短に済ませ、ユリアが門番へ話し掛ける。


「あの…」


「どうかしたか?」


「私達、王様にお会いしたいんですけど…」


「ん? 面会か? すまないが予定が一杯でな。面会の約束をしてもらわなければ会うことはできない規則になっているんだ」


「そうですか……どうしよう。ハート様のこととか言った方がいいかな」


 困ったユリアが俺達に話し掛けてくる。

 ハートのことを話すかどうか。

 話した方が良いとは思う。

 が、指輪とかあるし変に誤解されないとも限らない。

 一応、手紙もあるから大丈夫だとは思うが自分の国の王女様が何か事件に巻き込まれたとかなっても面倒だ。

 できるだけ穏便に物事が進むに越したことはないが、そうだな。やっぱりここは正直に話そう。


「言っといた方がいいんじゃない? 一応、手紙もあるわけだし」


「私もそう思うわ」


「まあ、だよな」


「そうだよね。ありのまま言えば変に誤解されないよね」


 そう言うと、ユリアは門番へ振り向く。

 少し不安もあるが、大丈夫だ。


「実は私達、サミフロッグでハート王女様に会いまして」


「ハート王女様に?」


 門番の一人が不思議そうな顔でユリアを見る。


「はい。それでセレナロイグへ寄ることがあったらこの手紙を渡して欲しいと」


「手紙…」


 門番はユリアから手紙を受け取るともう一人の門番と共にそれが本物なのかを確かめている。


「この封蝋。確かに、これはハート様の手紙で間違いない」


 俺達は門番のその言葉で安心した。


「それと指輪も渡されてまして…」


 ユリアが持っていた指輪を門番へ渡す。


「これは?! 王族だけが持つ指輪!?」


「やはり本物で間違いないな」


「ああ。しかし、どうしたものか。今日は予定が一杯でいきなり予定を入れる空きはないと思うが…」


「どうかしたのか?」


 と、城の方から歩いてくる者から門番へ声が掛けられた。

 声的に女性だが、女性にしては男勝りな印象の声だ。

 銀色の鎧を着けているからどんな見た目かは分からないがすらっとしている感じがする。


「おお、フィーべル様!」


「実はハート様から手紙と指輪を任されたという方達がいらっしゃいまして」


「ハート様から? どれ」


 それからフィーベルと言われた女性は門番から指輪と手紙を受け取る。

 様ってことはそれなりに偉い人だよな? どんな人なんだろうか?

 と、そんなことを考えているとその彼女がハート王女様の手紙を勝手に開けて中身を見た。


「「「えっ?!」」」


 俺達が意外すぎた行動に驚いていると門番も慌てた様子で何か言いたそうにしている。


「あの…フィーベル様…」


「それはまずいんじゃあ……」


「大丈夫だ。私はハート様が生まれた時から知っているのだぞ? こんなことぐらいでどうこうなるわけないだろう」


「……」


 なんか凄い人だな。


「ふむふむ……どうやらクルト様向けに書いた手紙のようだな。……なるほど」


 フィーベルは読み終えたのか手紙を元に戻した。


「これは私からクルト様に直接届けよう」


「そうですか」


「分かりました」


「しかし、せっかくここまで手紙を持ってきてくれたんだ。少しでも良いから礼がしたいな」


「いや、私達は別にそういうつもりで来たわけじゃ…」


 ユリアがそう言うとフィーベルは首を横に振る。


「これはハート様の為、そして、クルト様の為でもある」


「?」


「ハート様は賢いお方だ。信頼できる人しか頼らない」


「ふ〜ん。ハートはそんなこと言わなかったけどね」


 シャーロットが一言言う。


「ハハ。ハート様も素直じゃないな。まあ、こうやって手紙や自分の指輪を渡してるんだ。これだけでも貴方達は信頼されているということだ」


「……」


 ハート王女様から指輪を貰った時、どうしてこんな大切な物を俺達に渡したのかと疑問に思った。

 だが、私には必要なくなる物だから、と言われて確かになと納得して深くは考えなかった。

 でも、今になって思うとあれは信頼の証だったということだ。

 彼女は俺達が思っている以上に俺達のことを信頼してくれていたらしい。

 それならもう少し態度や言葉に出してくれればいいのにと言いたいが、本人は遥か遠くだ。

 なんかしてやられたって感じだ。


「そんな人達を無下にはできない。これはハート様から貴方達のことをお願いすると言われているのと同じことだ。そんな相手を無下に扱ったとなればクルト様の名に傷が付く」

「そして何より自分の娘を助けてくれた恩人に何もしないというのは一人の親として失格だろ? 一言お礼ぐらいは言うべきだ」


「って、言ってるけど?」


「うん…」


「お礼を言われるぐらい良いんじゃない? 気分が良いし」


「気分って…まあ、どちらにしろ少しの間ここにいる予定だったんだし良いんじゃないか?」


「なんか悪い気がするけど、そう言うなら…うん。分かった」


「よし。なら、今日はいきなりのことで厳しいだろうから、明日の正午なら少し時間があったはずだ。その時にここに来てくれ」


「はい」


「一応、名前を教えてくれ。何かあった時に便利だ」


「俺はソラだ」


「私はシャーロットよ」


「私はジブリエル」


「私はユリアです」


「うむ、分かった。私はフィーベルだ。では、手紙と指輪は私がクルト様に渡しておく。また、明日ここで会おう」


「はい」


 こうして俺達は約束をしてフィーべルと別れた。

見てくれてありがとうございます。

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