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第五十一話 次の目的地

 宿を出た俺達は冒険者ギルドへと向かった。

 冒険者ギルドは街の中心から少し南西にあるらしい。

 ちなみにこの街の中心には王城がある。

 街の造り的にはサミフロッグ王国と似ている感じだな。

 歩いて移動するとかなり時間が掛かるから街中でも馬車を使う人も多いらしい。

 この街は馬車が多い気がしていたがそういった理由があるからだろう。


「ここが冒険者ギルドみたい」


「へえ…」


 俺達の目の前には立派な建物が建っていた。

 見た目は神殿に近いだろう。

 全体を白で統一し、正面側には大きな柱がいくつもあり荘厳な感じがする。

 本当にここが冒険者ギルドであっているのだろうか。

 今までの冒険者ギルドとは明らかに違う。

 人の出入りも多い。


「大きいわね」


「そうね」


 冒険者ギルドを見たシャーロットとジブリエルが言う。


「入ろうか」


「ああ」


 それから俺達は冒険者ギルドの中へと入った。

 中に入ると、まず目に入るのは中央にあるかなり大きな人型の像だ。

 槍を持っているところを見ると有名な冒険者とか戦士とかそんな感じだろうか。


 それにしても人が多い。

 依頼掲示板、受付カウンター、伝言板と至る所に人がいる。

 そして、その殆どの人が防具を身に付けていたり、武器を持っている。

 流石は冒険者ギルドってところだな。


「じゃあ、私はヒカリのことを調べてくるね」


「ああ、頼む。俺は魔王のことについて調べてみるよ」


「うん」


「私はどうしようかしら」


「何よ、一緒に情報収集しないの?」


 と、シャーロットが不思議そうに聞く。


「私、冒険者ギルドは初めてで、前から少し興味があったのよね」


「ふ〜ん。まあ、あの村にずっと居たんだったらそういう興味も生まれるか」


「たま〜に抜け出してソレイユまで行ったりしてたけど中までは入れなかったからね」


「おいおい」


 もしかして、俺達が聞いた妖精族の目撃情報とかは殆どがジブリエルによるものなんじゃないか?


「そういうことならジブリエルは好きに過ごしてていいよ。私とソラで情報は集められるだろうし。シャーロット、ジブリエルについてあげて」


「ええ〜なんで私が…」


「まあまあ、そう言わずに。ね?」


「…分かったわよ。ほら、じゃあ行くわよ」


「あ…うん」


「後でこの像に集合ね」


「分かったわ」


 そう言うと、シャーロットはジブリエルを連れて人混みへと消えた。


「じゃあ、私達は情報収集といきますか」


「そうだな」


 ということで、それからユリアとも別れて各々時間を過ごした。


 再び集まったのは解散してから一時間程が経った頃だろう。

 俺が魔王についての情報を集めて像へと向かうとそこには既にユリアが待っていた。


「あっ、ソラ」


 俺に気付いたユリアが小さく手を振る。


「おお、ユリア。どうだった?」


「う〜ん。まあ、二人が来てからかな」


「そうか」


 反応から察するに情報は無かった感じかな。


「二人はまだか…」


 周りを見渡す。

 と、人混みから丁度二人が抜けてきた。


「お待たせ」


「こんなに時間が掛かるなんて…」


 満足そうなジブリエルとは対照的にシャーロットはとても疲れているように見える。


「どうした?」


 俺は気になりシャーロットに尋ねた。


「ジブリエルがせっかくだから冒険者として登録しておこうかなっていうからそれを手伝ったのよ。その後は冒険者ギルドの説明なんかを受けて、なんで自分が冒険者になるわけじゃないのに一緒に聞かなきゃダメなのよ…離れようとしたらジブリエルに手を掴まれるし…」


「……」


 どうやらジブリエルに捕まっていたらしい。

 シャーロット的にはすぐに用を済ませるつもりだったのだろう。

 それが予想以上に時間が掛かって疲れたって感じか。


 と、そこでジブリエルの方を見ると嬉しそうにしている。


 もしかして、これわざとやったんじゃないか?


「なあ、ジブリエ…」


「さて、それじゃあどんな感じだったか教えてもらおうかしら」


「そうだね」


「……」


 ジブリエルに遮られてしまった。

 ていうか、この感じはわざとだな。


「じゃあ、まずは私から」


 それから俺達はユリアの話を聞いた。

 ヒカリという獣人族の女の子についてだ。

 結論から言うとここでも情報は無し。

 というか、ここは情報があり過ぎて逆にヒカリのことを探すのが難しい。

 ここには多くの獣人族がいるらしい。

 それによって、俺達が探しているヒカリがどのヒカリなのかという特定が難しいということだった。

 確かにここは人族最大の国と言われるだけあってか人族以外もよく見かける。

 虱潰しに全て探すというのはかなり厳しいだろう。


 それにヒカリは攫われた。

 となれば、正式な形でこの街に入ったという可能性は少ないかもしれない。

 この広い街でヒカリという獣人族の女の子を探すだけでも大変なのに、街のどこにいるかも分からないとなれば不可能に近い。

 今までは情報がないってのが基本だったが、今度は多すぎる。

 なんかもどかしいな。


「う〜ん。居るかもしれないのに素通りするしかないってのは気持ち悪いわね」


「そうね…私もこんなに人が多いと声が聞こえ過ぎて使い物にならないし。困ったものね」


「これから城に行く予定もあるから王様に会えたら探してもらえるか聞いてみるか」


「そうだね。それができたら一番いいかも。私の話はこんな感じかな。ソラはどうだった? 何か魔王について分かった?」


 ユリアが俺に話を振る。


「いや、魔王について有力な情報は得られなかった」


「そっか…」


 ユリアが少し落ち込む。


「でも、気になる情報が手に入った」


「気になる情報? 何よ?」


「実はなここ最近、世界各地の主要な街で謎の生物が現れて暴れ回っているらしい」


「謎の生物?」


 シャーロットを始め、みんなが不思議そうにしている。


「その生物は共通して黒いモヤに覆われていた」


「黒いモヤ?! つまり…」


「そう。レミーやモー、キャッツとかと同じだ」


「じゃあ、魔王の使い魔が世界各地で暴れているってことね…」


「でだ、これを見て欲しい」


 と、俺はポケットにしまっていた紙を取り出した。

 一枚だけの大きめの紙。

 そこに書かれていた見出しは、


『サミフロッグ王国で謎の生物が大暴れ!? 被害大!!! 魔王によるものか?!』


「サミフロッグ?! どういうこと?!」


 慌てたシャーロットが俺から紙を奪い取った。

 そして、その紙を見ようと横からジブリエルとユリアが覗く。


「えっと…………つまり、この新聞の書き方的に街は結構破壊されたけど、サミフロッグでの死者はいなかったみたいね」

「とりあえず良かったけど…『この事件を記事にしようとしたところ、世界各地で似たようなことが起こっていたという報告があり、有識者によると復活したとされる魔王によるものではないかという見解を示している』って…」


「俺も最初は驚いたよ」


 魔王のことを聞こうかと思ったらこれが目に入ったからな。


「確かに、魔王については分からないけど関係はあることね」


「ああ。魔王が何かしら動いていたことがこれで確定した」


「う〜ん。世界各地か…どこに向かってるか分からないわね」


「そうなんだよな。困ったもんだ」


「……何をしているのか私達には分からないけど、目的地は分かってる。ルーンが守られている残り三つの場所。そのどれかに必ず魔王は向かっている筈」


「そうだな」


「これからどこに向かうか決めた方が良さそうね。何かここで有力な情報が手に入れば良かったけど…これだと逆に攪乱されてるみたいだわ」


「攪乱…確かに、そういう考え方もできるか…どうする? 因みにここから一番近いルーンが守られている場所はどこなんだ?」


「あまり差はないけど、ここから北の龍人族〈サラマンダー〉が守るホーラル大陸がいいと思う」


「どうしてだ?」


「ホーラル大陸には海を渡る必要があるんだけど、その時に必要な船の用意がストライドで出来るのよ」


「ストライド…」


 バスクホロウ王国で出会ったダリウス・フィールの最後の言葉。

 ストライドに自分の家族を殺した奴がそこに居ると言われた。

 別に俺がどうこうするという話はしなかった。

 が、少し心残りにはなっていた。


「どうせ船が必要なんだったら、せっかくだからストライドへ行くのがいいかなって」


「……分かった。俺はそれでいい。二人は?」


「いいと思う」


「私もそれでいいわ。二人から聞いてて少し気になってはいたしね」


「じゃあ、次の目的地はストライドに決まりね」


「ああ」


「それじゃあ、情報交換も終わったことだし王城へ行ってみようか」


「そうだな」


「ええ」


「そうね」


 それから俺達は冒険者ギルドを後にして王城へと向かった。

見てくれてありがとうございます。

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