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第四十六話 違和感

現在、21時毎日投稿中。

〜少し前のユリア視点〜


「ここが私達の家よ」


 ジブリエルさんに案内され、やってきたのは族長の家から少し離れたところにある家。

 家といっても、大木をくり抜いて作った少し特殊な家だ。

 族長の家やここに来るまでに見かけた家も同じ作りだったので妖精族の家はこういうものなのだろう。


「これからご飯の用意をしないとね」


「ああ、はい」


「悪いけど、少し手伝ってもらうわよ」


「分かりました」


「とりあえず、中に入って。部屋の場所を教えるわ」


 それから私達は家の中に入った。

 中は食事がとれそうな大きめのテーブルと椅子。

 そして、台所が見えた。


「部屋は…そうね。三階の部屋を使ってもらおうかしら」


「さっきも見たけど、妖精族の家って独特よね」


「確かに、そうかもしれないわね。ここは大きな木が多いから自然とそれを利用して暮らすようになったのかもね」


「なるほど。エルフの村だと木で家を作ってたけどこんなに大きな木はなかったから、なんか壮観って感じですね」


「フフッ。そうかもね」




 そんな会話をした後、私達は案内された部屋に荷物を置き、ジブリエルに案内されながらとある場所へと向かった。


「ここよ」


 私達の前にはキノコの生えた木と何かの草が植えられている畑のようなものがあった。


「へえ」


「凄いですね」


「ここはキノコとか薬草とかを育ててるの。私の趣味みたいなものだったんだけど、シェイクは私の代わりに管理をしてくれてたみたいね」


「薬草は回復魔法とか解毒魔法があるから余程貴重な薬草でない限りはあんまりお金にならないから育てる人なんていないもんね」


「私も一応、回復魔法は使えるけど解毒魔法は使えないから、それで薬草に興味を持って色々試しながら育ててるの」


「なるほど。でも、薬草を育てるのって大変なんじゃないですか?」


「まあね。でも、いつの間にか私の趣味みたいになってたわ」


「なんか歳をとった人がのんびりやりそうな趣味ね」


「そうね。あなたなら丁度いいかもしれないわね」


「私はそこまで年齢重ねてないわよ!もう、失礼しちゃうわね!」


「あら?そんなに拗ねなくてもいいのに」


「別に拗ねてないし」


 二人の会話を聞いていると仲がいい同士の喧嘩に聞こえる。

 微笑ましい光景だ。


「と、早くキノコを摘んで帰りましょう。今日はキノコ鍋にするつもりよ」


「キノコ鍋!」


 シャーロットが嬉しそうな顔をしながら言う。


 本当にシャーロットは食べるのが好きなんだな〜。 いつも美味しそうに食べてくれるから私も嬉しくなっちゃうんだよね。


「フフフ。仲良いわね」


「ん?なんか言った?」


「いいえ。それじゃあ、採りましょうか」


「はい」


「キノコ鍋…楽しみね…」




 それから持ってきたカゴ一杯にキノコを採り、家へと戻った。


「よし。それじゃあ、ユリアは家の後ろにある井戸から水を汲んできて。その間に私とシャーロットでキノコに付いた泥とかを落として鍋の準備よ」


「分かったわ」


「はい」


 それから私はジブリエルに言われた通り家の後ろにあるという井戸へ向かった。


「ああ、あった」


 井戸は普通の井戸だ。

 私は蓋をとって水を汲む。


「よし。これでいいかな」


 器一杯に入れた水を確認して家に戻ろうと振り返った。

 すると、そこにはシャーロットが立っていた。


「ああ、シャーロットも水を頼まれたの?」


「うん。まあね」


「そっか。もしかして、ジブリエルさんに何か言われちゃった?」


 私は少し揶揄うように言う。

 ちょっとしたおふざけだ。


「うん。少しね」


「ああ…そうなんだ」


 いつものように「そんなわけないでしょ!馬鹿にしないでよね!」とツンツンするかと思っていたけど、そんなことなくあっさりしていた。


 もしかして傷付けちゃったかな。


 少し不安になる。


「それより、私も手伝うわ」


「うん…」


 後で謝った方がいいかな。


 そんなことを考えながらシャーロットとすれ違う。

 少し元気がなさそうに見えるけど何かあったんだろうか。

 聞いた方がいいよね。


「ねぇ、シャーロット。何か…」


 シャーロットへ振り返った瞬間、お腹の辺りに違和感があった。

 そして、直ぐにそれは激痛へと変わった。


「シャーロット……???」


 シャーロットが私のお腹に短剣を刺していた。

 なんでこんなことになっているのか分からず困惑する私。


 どうして?


 そう思わずにはいられなかった。


「私、あなたのこと嫌いだったんだよね。だから、いつかこうやって襲ってやろうって思ってたの」


 冷たいシャーロットの言葉。


 私のことが嫌いだったなんて……私はシャーロットのことが大好きなのに……。


 目元に自然と涙が溜まった。


「どう?私に刺された感想は?」


 そう言うシャーロットはニヤリと笑った。

 そこで私は違和感を覚えた。

 何かがおかしい。

 そして、私は今までのシャーロットと過ごした日々を思い出して一つの結論に至った。


「あなた、シャーロットじゃないわね」


「何言ってるの?私はシャーロットよ?現実を見なさい。あなたを刺してるのは誰?」


「あなたはシャーロットじゃない。シャーロットは人を襲ったりできない。あの時も過呼吸になっていたから間違いない」


 私は梟に止めを刺した時のことを思い出していた。

 あの時はシャーロットが過呼吸になってとても心配した。

 顔色も悪かったし、冷や汗も掻いて。

 なのに今はそんなこともなくニヤリと笑みを見せた。


「それは演技よ。この時の為のね」


 そう言って私から短剣を抜く。


「そうかしら。私はシャーロットのことを信じているから…『ライトニング!』」


 私の右手から放たれた光魔法がシャーロットに向かって飛んでいく。

 それを彼女は背中から翼を生やし、それを利用して空へと飛んで躱した。

 その姿は私が見たことがあるシャーロットの姿と同じだった。

 もしかして、本当に彼女はシャーロット本人なのだろうか。

 不安になる。


「いきなり酷いじゃない。私達、仲間だったんじゃないの?」


 シャーロットの声でそう言われると心が苦しくなる。


「そうね。でも、だからこそよ…」


「ユリア!!!」


 私の後方から今一番聞きたい声が聞こえた。


「これはどういうこと?どうしてシャーロットが二人いるの?」


「あらら。被っちゃったか。しかも、面倒なのもいるし」


「ユリア!大丈夫?!」


「うん。なんとかね」


 不安そうな顔で私に駆け寄ってくれたシャーロットを見て、心底安心した。

 その所為か、足から力が抜けてその場に座り込んでしまった。


「ユリア!」


「私は大丈夫だから。今は彼女をどうにかしないと」


「また聞こえない…」


「毒が効いてきたっぽいけど、バレちゃったら仕方がないか……いや、まだ居たじゃん」


 空にいるシャーロットは悪い顔で言う。


「あんた、私の仲間にこんなことしてタダで済むと思わないことね」


「フンッ。こういう時は逃げるに限るわ」


 空にいるシャーロットはそう言うと、かなり速い速度でどこかへと飛んでいった。


「あっ!!!待ちなさい!!!」


 シャーロットはそう言って後を追い掛けようとして、しかし、私のことを見て飛ぶのを止めた。


「私なら大丈夫だから。行って!」


「でも……」


「お願い。なんか嫌な予感がするから」


「もしかしたら、ソラのところに行ったかもしれないわね。なんか悪い顔していたし、私達と一緒にいるところを見られてたのかも。急いだ方がいいわ」


「…………分かった。急いで戻ってくるから待っててね」


「うん」


「毒が効いてきたとか言ってたからシェイクをここに呼んでくるわ」


「でも、私は自分で解毒魔法が使えるから…」


「それでも一応よ。シェイクは回復魔法も解毒魔法もどっちも使えるから応急処置だけ自分でして後は安静にしていて」


「……分かりました。二人とも気を付けて」


「うん」


「ええ」


 それから二人は偽物のシャーロットの後を追った。

見てくれてありがとうございます。

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