第四十三話 妖精族の村
現在、21時毎日投稿中。
妖精族の村。
そこは妖精の森のどこかにある村だ。
妖精族の案内がないと森の中を彷徨うことになる。
といっても、妖精の森自体、簡単には入れないのでそんなことになる状況は皆無といっていいだろう。
もちろん俺達もジブリエルの案内で無事に妖精族の村に着くことができた。
そう、着くことはできたのだ。着くことは……。
「なんのつもりだ!」
「どうしてジブリエルが…」
「……」
現在、俺達は村の入り口で冷たい視線を受けながら立ち往生している。
「シェイクを呼んできてくれないかしら?」
「今、シェイクは族長の仕事で忙しい」
「そう…シェイクが…」
そう言うと、ジブリエルは何かを考えるように下を向いた。
「なんの騒ぎだい?」
と、群衆から出てきたのは見た目が青年の妖精族。
人族の青年と大差無いその人はジブリエルを見ると驚いた反応を見せ、
「今更、どうして姉さんが?」
「姉さん…ってことは…」
「この方がシェイクスピアさん?」
「ええ。私の弟よ」
どうやら彼がシェイクスピアらしい。
どことなくジブリエルに似ていると感じるのは髪色が同じだからだろうか。
ここに来るまでに話で聞いていたので変に親近感を覚えるが、俺達は初対面だ。
出来るだけ無礼はないようにしないと。
それにどうやら今は彼が族長らしいからな。
「……この人達は?」
シェイクが訝しげな視線を俺達に向ける。
「彼女達は魔王から世界を救う為に旅をしているの。私はたまたま会ったんだけど、この妖精族の村に入れなくて困ってたみたいだったから連れてきたのよ」
「そうか。それで、あなた達はどうしてこの村に?」
「魔王を封印する為に力を貸して欲しいとお願いする為です。かつて、一緒に協力したように」
「人魔大戦の頃のようにか……」
ユリアの話を聞いたシェイクは少し難しい顔をする。
と、その時、
「おい、シェイク。こいつら信用できるのか?」
「そうだ!素性も分からん奴と一緒に協力するなんて…」
群衆のあちこちからそんな声が聞こえる。
もしかしたら、妖精族って排他的なんだろうか。
そういえば、ここに来るまでに妖精族はできるだけ人と会うのを避けているとか聞いていたような。
「まあまあ。みんなの言いたいことも分かる。魔王の件もあるし、慎重になるべきだ。でも、この人達の言っていることは尤もだ。かつて、ティターニア様が協力して魔王を封印したように、魔王が復活した今、もう一度協力して再封印する。それが世界にとって、ないしは我々にとって価値のあるものになる」
「でもよ…」
「なに、今すぐ協力するという訳じゃない。少し話の場を設けようじゃないか」
「……それなら」
なんか上手いこと纏ったみたいだな。
「ということで、今すぐに協力するとは言えないが、それでもいいですか?」
「はい。協力してくれる可能性が少しでもあるなら」
「そうですか。では、ひとまず話し合いができる部屋まで案内します。付いてきて下さい」
シェイクは俺達にそう言うと、ジブリエルを一瞥して歩き出した。
「なんとか上手いこと纏まりそうね」
「うん」
「そうだな」
「……行きましょうか」
「そうね」
それからシェイクの案内の下、村の中を歩いた。
村の人達からの視線が気になるが、俺達を見ているというよりもジブリエルを見ているという感じがする。
やはり、追い出された人が村にいるってのがよくないのだろうか。
「あっ!ジブリエル様だ!」
歩いていると、とある少女に話し掛けられた。
「こんにちは。元気にしてたかしら」
「うん。でも、ジブリエル様と会えなくなって寂しかった」
「そう…」
ジブリエルは少女の頭を撫でる。
その顔には寂しさがあった。
「うわぁ!?」
いきなりユリアが声を上げたので何かと思い振り向くと、精霊がまた出てきていた。
「これは精霊か?」
シェイクが驚いた反応をする。
「いきなりどうしたんだろう?」
不思議そうにするユリア。
と、そんなことはお構いなしにゆらゆらとどこかに行く精霊。
「ああ、ちょっと…」
「そっちに何かあるのかしら?」
「そっちは…」
「そっちには風のルーンが守られていた場所があった。今は壊されてしまったけど……もしかしたら、この精霊は壊された風のルーンに何か用があるのかもしれないね」
そんな会話をしていると、先に進んでいた精霊はぴたりと止まった。
まるで俺達が付いてくるのを待っているかのように。
「付いて行ってみようか。この精霊に」
「でも、話し合いが……」
「多少遅れるぐらい大丈夫ですよ。ナンナ、悪いけど族長の家に集まっている人達に少し遅れると伝えてきてくれないかな?」
「うん。それじゃあ、ジブリエル様またね」
「……ええ」
そんな会話をした後、ナンナと呼ばれた少女は走って行ってしまった。
「さてと、それじゃあ、行ってみましょうか」
「え、ええ」
「この精霊の行動は読めないわね」
「ああ」
呆れた感じで言うシャーロットに俺は返事をする。
しかし、この精霊が現れる時は何かしら重要なことが起こっている気がする。
もしかして、俺達を導いてくれていたりするんだろうか。
俺はそんなことを考えながら精霊に付いて行った。
少し歩いて、俺達はとある建物の前に着いていた。
その建物は白い石のような素材で出来ており、この多彩な森でもよく目立つ色をしていた。
が、目立つ理由はそれだけではなかった。
所々破壊されていたのだ。
「ここは、風のルーンを守る神聖な場所として長い間、我々妖精族が管理をしてきたんです。今はこんなにボロボロになってしまいましたけどね」
「……」
俺達は何も言えずに固まってしまった。
ジブリエルの話を聞いた後だと仕方がない気もするからだ。
村の人を守るか、風のルーンを守るか。
正解は、無い様な気がする。
どちらを選んでもああすればよかった、こうすればよかったとなるだろう。
「まあ、とにかく先に進みましょう」
「ああ」
それから俺達は精霊を先頭にシェイクの案内の下、建物の中に入っていく。
どうやら一階建てだったらしく、中に入ると直ぐに風のルーンらしき物が粉々になっているのが分かった。
こうして実際に破壊されているのを見ると悲しい気持ちになる。
それと同時に、これ以上ルーンを破壊させないという気持ちが強くなる。
「一応、結界を張っていたんですが、今は守る物も無くなってしまったので何もせず、ルーンもそのままにしてあるんです」
「ふ〜ん。確かにどうしようもないもんね…」
そう言って、ルーンの方に歩いていくシャーロット。
「付いてきたけど、ここに何かあるの?」
ユリアが精霊に聞くと、精霊は彼女の周りをグルグルと何周かしてシャーロットの後へ続いた。
「……」
ユリアは不思議そうにしながらも精霊に付いていく。
と、俺は先程から何も話していないジブリエルが少し気になった。
「ジブリエル、大丈夫か?」
「えっ…?!ああ、大丈夫よ。少し考え事をしていただけ」
「そう、か」
考え事か。彼女はこの現状を見て色々と思うところがあるのだろう。
あまり考え過ぎるのもよくないと思うがな。
「……姉さ…」
「うわぁ!?」
今度はシャーロットが声を上げたので振り向くと、彼女の前にある粉々になった風のルーンが薄く緑に光っていた。
「これは?!」
「シャーロット!一応、離れるんだ!」
「う、うん」
それからシャーロットは風のルーンから直ぐに離れた。
すると、
「ちょっと…?!」
ユリアが声を上げる。
精霊が光を放つルーンの上を旋回し始めたのだ。
俺達はそれを見ることしかできなかった。
何があるか分からないからな。
と、そんなことを思っていた矢先、緑色の光が宙に集まり始めた。
そして、その光がある程度一カ所に集まったかと思うと、それはゆらゆらと空を彷徨い始めた。
「これって……」
「精霊?」
シャーロットとユリアが驚きの声を漏らす。
が、その場にいた全員が声には出さなくとも同じように思っていただろう。
俺もそうだ。まさか精霊が自分達の目の前で誕生するなんて。
「まさか、ルーンから精霊が誕生するとは」
「私も、精霊が誕生したところは初めて見たわ」
「でも、どうして?」
「さあね。でも、精霊がここに連れてきたって考えるとこれはこの子にとっては想定の範囲内だったのかもね」
「精霊は選ばれた者に力を貸すと聞いたことがあるが、あれは本当だったのか」
「あなた、このことを知って連れてきたの?」
ユリアが白の精霊に話し掛けると精霊はその場で上下に動いた。
そうだと言っている様に見えるが、意思疎通ができるような動きをいつの間に覚えたんだ?
と、白の精霊はユリアの体の中に入っていった。
「……自由な子ね」
「それで、この子どうするの?」
「う〜ん。あなたはどうしたい?」
緑の精霊にユリアが聞いた。
すると、精霊はユリアの周りをぐるっと一周回ってから体の中に入った。
「この子達、喧嘩とかしないよね?」
「大丈夫じゃないか、多分」
「そう、だよね」
「それにしても、精霊はやっぱりユリアを選ぶのね。精霊に愛される体質なのかしら」
「う〜ん、どうなんだろう。自分では分からないから」
「でも、これで精霊が二人?になったな」
「うん。この子達がどうして私に付いてくるのかは分からないけど、何か特別な意味がある気がする」
特別な理由か。
確かに、ここまで精霊がユリアに付いてくるのは何か理由がありそうだ。
あの手の甲の紋様のこともあるし、ユリアはやはり世界を救う定めの者なのだろう。
「とりあえず、一件落着かな」
「はい」
「まさか、こんなことになるとはね。それに、今の手の甲の光は姉さんと同じだ」
「……そうね」
ジブリエルは自分の手の甲にある紋様を見つめる。
「戻ってきた姉さんが、たまたま姉さんと同じ紋様を持ったエルフと一緒に現れた。しかも、このタイミングで精霊が誕生。これが偶然とは思えない。これから移動する間に色々と今までのことを聞きながら向かいたい。いいですか?」
「はい」
「ああ〜、いいんだけど…」
「あなたのことは私からも説明するわ」
「……そうしてもらうわ」
「じゃあ、とりあえず族長の家に行きましょうか」
それから俺達はこの場所を後にして、族長の家に向かった。
見てくれてありがとうございます。
気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。




