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第三十九話 花畑へ

現在、21時毎日投稿中。

 ミント大橋の件から一週間が経過した。

 レッドモーとブラウンレミーを倒した後、俺達はミント大橋を守る護衛から何があったのかを聞かれた。

 というか、一度捕まって牢屋に入れられた。


 最初は怒りもしたが、状況的に俺達が犯人と見られても仕方なくはあったかもしれないので冷静になり、落ち着いて事情を話した。

 俺達三人の証言が一致していたということと、サミフロッグ王から貰った身分証明のペンダントが見つかり直ぐに解放された。

 まさかこんなに早くペンダントが役に立つとは思わなかった。

 無かったらヤバかったかもしれない。

 一応、ハート王女様から受け取った指輪もあったのでなんとかなったかもしれないが、まあ、とにかく感謝だな。 


「その本、面白いの?」


「ん〜、この大陸のことが書いてあるから何か役になるかもと思って買ったから、面白い、とかではないかも。でも、知識としては面白いかな」


「ふ〜ん。まあ、どうせ、暇だしね」


 ミント大橋で妖精族〈フェアリー〉がいるとされる花畑の近くまで移動する馬車に乗ることができた。

 この一週間、俺は魔法の練習をした。

 珍しくシャーロットが俺のことを見てくれた。

 というのも、ユリアが本を読んでいるからだ。

 ミント大橋で買い出しをしている時に見つけたシレジット大陸に関する本なんだそうだ。

 なので、いつも俺の魔法を見てくれているユリアに代わって暇そうなシャーロットが俺を見ているという訳だ。


 しかし、それももう終わる。

 馬車が目的地のソレイユという町に着くのだ。

 そこからは歩いて妖精族〈フェアリー〉の村まで行かなければならない。


「そろそろ着きますよ、お客さん」


「はい」


「馬車の旅もしばらくお休みね〜」


 シャーロットが伸びをしながら言う。

 彼女はこの一週間、とても暇そうにしていた。

 でも、歩いたら歩いたでなんか言うのでどうしようもない。

 彼女は適度に歩き、適度に飛び、適度に馬車に揺られるのがいいのだろう。

 そんな我儘言われても我慢してと言うしかないんだけどね。

 サミフロッグ王国からミント大橋へ向かう馬車は魔物が頻繁に出てきたから、彼女にとっていい気分転換になっていたのかもしれないな。


「ふう…これから妖精族と会うのか……」


 本を閉じ、心配そうに言うユリア。


「不安か?」


「協力はしてくれると思うけど、やっぱりちょっとね」


「大丈夫だよ。ユリアの思っていることを伝えたら、きっと手伝ってくれるよ」


「……そう、だよね。うん。ありがとう」


「ああ」


 いつもの感じに戻ったな。珍しく緊張しているのかもしれない。


「それにしても、妖精族に会うって具体的にどうするの?」


 妖精族〈フェアリー〉は滅多に人前へ姿を見せない。

 五つの種族の中でも一番会うのが難しいかもしれないという話だった。

 他の種族は姿を見せない訳ではなく、単純にその機会が少ないだけだが、妖精族〈フェアリー〉は姿を見せること自体に抵抗があるらしい。


「とりあえず、ソレイユに着いたら情報を集めようと思うの。それがダメだったら次は花畑に行ってみる」


「花畑って…めちゃくちゃ広いのよ?」


「それでも…行かないと」


「…………分かったわよ。どこまでも付き合うわ」


 シャーロットは少し困った顔をしたものの、ユリアの思いに負けたらしい。


「ありがとう」


「いいわよ。別に」


「それじゃあ、まずは情報を集めるか」


「うん」


「そうね」


 それから俺達はソレイユに着いた。

 御者と別れた俺達はまず、今日泊まる宿を探した。

 その時、花鉢をよく見かけた。

 花畑が近くにあるからだろうか。

 今までバスクホロウ王国とサミフロッグ王国を見てきたが、これほど花が印象的な町は無かった。


 しばらく歩いて、今日の宿を決めた俺達は妖精族〈フェアリー〉の情報を手に入れる為、町にある冒険者ギルドへ向かった。

 そこでヒカリの情報と魔王の情報、妖精族〈フェアリー〉の村についての情報を集めた。


「どうだった?」


「こっちはダメね」


「気になる情報があったよ」


 俺がヒカリのことを、シャーロットが魔王の情報を集めたが特に何もなかったみたいだ。

 が、妖精族〈フェアリー〉について情報を集めていたユリアは何かを聞いたらしい。

 今回、ユリアはやる気になってるみたいだからな。

 幸先は順調だ。


「なんでも、一ヶ月ぐらい前にここから北北東の方角に移動した花畑で妖精族らしき少女が目撃されたらしいの」


「へえ〜、妖精族の少女か…」


 妖精族〈フェアリー〉も長耳〈エルフ〉族みたいに見た目の割に年をとっている種族だった筈だ。

 少女らしいけど、年齢は多分、数十年とか数百年だろうな。


「じゃあ、明日から早速そこに向かって出発ね」


「うん」


「今日はゆっくり休んで、明日から頑張るわよ」


「ああ、そうだな」


「歩くことになるけど、大丈夫?」


 ユリアはシャーロットを揶揄うように言った。


「大丈夫よ。最悪、空を飛べばいいし」


「妖精族〈フェアリー〉の村に行くのに、翼とか尻尾生えてるのは不味くないか?」


「う、それは……確かにそうかも…」


 自信満々だったシャーロットの顔がどんどん曇っていく。


「説明すればなんとかなると思うけど……」


「ん〜、魔人はよく思われていない筈だからね〜。最悪、私は行かないで待ってるわよ」


「それはそれで後々何か言われないか?」


「ん……じゃあ、どうすんのよ」


「いや…まあ…それは…」


 どうしようか。

 一緒に行ったら何か言われるのは必然だ。

 最悪、俺達を追い出すみたいなこともありえるかもしれない。


 逆に後から魔人のシャーロットが仲間にいると知られると、騙されたと言われる可能性もでてくる。

 それによって、関係に亀裂ができるのは良くない。

 だとすると、最初からシャーロットと一緒に行動した方がいいような気がする。


「どっちにしろ、シャーロットが仲間ってことを伝えないといけないからシャーロットも一緒に行こう」


「そうだな。その方が良さそうだ」


「…分かったわ。できるだけ厄介事は避けたいけど、こればかりは仕方ないわね」


「頑張って説得したら分かってくれると思う」


「そうなることを祈るとしましょう」


「ああ」


 こうして、俺達は花畑にいたという妖精族〈フェアリー〉の少女を探すことになった。




 次の日の朝。

 俺達はソレイユを出発した。


 しばらく歩くと、ある場所を境に花畑になった。

 どこまでも続く様々な色の花の絨毯。

 風が吹けば花弁が空に舞い、花の香りが鼻を抜けた。


「凄い場所だね!」


「ああ」


 ユリアはこの光景に感動しているのだろう。

 目を輝かせ、口調もあからさまに明るくなっている。


「ここは私も通ったことがあるけど、いつ見ても綺麗ね」


「うん。素敵」


 どうやらシャーロットも似たようなものらしい。

 女性はこういうのが好きなんだろうか。

 いや、俺も綺麗だとは思うんだけどね?二人みたいには気分が上がらないかなって。


「ここは一年を通して気温が変動しないから一年中、綺麗な花が咲いているのよ」


「ああ、それ、本に書いてあったよ。後はシレジット大陸中央部と東部も似たような気候だって書いてあった」


「そう。世界地図で見た時に、中央部、東部は横並びだからね。そのすぐ側の南西部も似たような気候なのよ。まあ、季節によってはたま〜に花が咲かないこともあるんだけど」


「へえ〜」


「南西部、南部、南東部は季節によっては雪が降ったりするからね」


「南なのに雪なのか?」


「ん? そりゃあ、そうでしょ? 南は寒くて、北が暑いんだから」


「ああ……うん…」


 北が寒くて、南が暑いんじゃないのか。


「それじゃあ、行こっか」


「そうね。話は歩きながらでもできるし」


「そうだな」


 それから俺達は花畑の中を進んでいくのだった。

見てくれてありがとうございます。

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