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第三十七話 ”返り血”

現在、21時毎日投稿中。

 モーが俺に向かって突進をしてきた。

 俺はそれを正面から受け止める。

 しかし、モーの怪力によってどんどんこの場から離される。


「中々根性のあるやつだな。これでも魔王様の使い魔の中では結構力がある方なんだが」


「そうかよ!」


 俺は足を地面にめり込ませ、それを利用して力でモーを押し飛ばした。


 二人から少し離されたか……でも、あの二人なら大丈夫だ。俺はこいつを倒すことに専念しよう。


「俺は細かいことが分からないからな。殺すか殺さないかぐらいしか判断できないんだ」


 そう言うと、影から一本の戦斧が這い出てきた。

 これはさっきのと同じ物だろう。


「早く二人のところに戻らないとな」


「それは俺も同じだ。レミーに加勢しないと後で怒られるからな」


 俺達は向かい合い、今にも殺し合いが始まりそうな鋭い視線を向けていた。


「はあああああ!!!」


 先に仕掛けたのはモーだった。

 奴は走り出し一瞬で間合いを詰めると、手に持った戦斧を俺に向かって勢いよく振り下ろした。

 それを済んでのところで回避し、その振り下ろされた腕を踏んで飛び上がると、右足に思いっきり力を込めて顔を蹴り飛ばした。


「うぐっ!!」


 モーは体を回転させながら家の壁を突き破り、向こうまで飛んでいった。

 これで終わりではないだろうが確実にダメージを与えた。

 その手応えがあった。


「うう……レミーだったら気絶してたかもな」


「……」


 家から出てきたのは黒い影。

 ダメージを負っているのか見た目では分からないが、家の壁に手を触れているところを見るに効果はありそうだ。


「頑丈なんだな、お前」


「俺は接近戦が得意だからな。まあ、俺は二番目にだが…」


 結構タフそうな感じだが、これで二番目なのか。


「完全な状態ならもう少し上手く体を動かせるんだけどな…魔王様自体が不完全な状態だったから仕方ないけど」


 今で完全な状態じゃないっていうなら、こいつらの本来の力は一体どれ程のものか、考えたくないな。


「あんまり時間は掛けれないからな。俺もここからは最大限の力でお前を殺すとしよう」


「ここからが本番ってことか…?」


「そうだ」


 俺は腰を落とし、警戒する。

 そこで額から汗がすぅっと流れるのが分かった。

 緊張しているのだろう。


「俺は”返り血”のレッドモー!戦場で殺した者の血を浴びた姿からその名がついた」


 奴がそう言うと、体が少し肥大化した。

 頭部から生えていた角も大きくなり、影でなければその姿はより禍々しいものになっていただろう。

 しかし、俺を威圧させうるには十分だった。

 奴の殺気もより濃くなっている。


「お前、名前は」


「……ソラだ」


「そうか。じゃあ、”蒼炎”のソラと記憶の片隅に覚えておこう」


 モーは姿勢を落とし、今にも襲い掛かってきそうだ。

 だが、負けるわけにはいかない。

 ユリアとシャーロットの為にも。

 そして、俺の為にも。

 まだまだ三人で一緒に旅をしたい。

 いろんな場所に行って、色んな物を見て、色んな人に会って、色んな物を食べて、そんな旅の終わりに俺は魔王を封印する。

 だから、こんなところで死ぬわけにはいかない!


「……ふう……俺はお前を倒して、二人を助ける!」


 深呼吸をし、落ち着かせ、体の青い炎を激しく燃やす。


「はあああああ!!!」


「はあああああ!!!」


 俺の拳とモーの戦斧が打つかる。

 その瞬間、俺の青い炎が燃え広がりモーの体を包み込んだ。


「この炎、ただの火じゃないな」


 しかし、そんなことは関係ないとモーは戦斧に更に力を込めた。

 俺の足元がドズンと音を立てて陥没する。


「なんてバカ力だよ!」


「お互い様だ!」


 ジリジリと地面に沈んでいく。


 このままじゃあ押し負けるな。

 

 俺は一旦、モーから距離をとった。

 奴の戦斧を上手く往なし、その隙に後ろへと飛んだ。


「っ…!器用だな。だが、逃がさん!」


「くっ…!!」


 モーは図体の割に動きが機敏で、直ぐに俺に襲い掛かってきた。

 一回、二回、三回と、奴の攻撃を躱す。

 が、一向に攻めが終わることはない。


「逃げてばかりか!」


「分かってるよ!」


 俺はモーの攻撃を躱す。

 そこからカウンター気味に奴の左足に蹴りで攻撃する。

 奴はふらっとするが、体勢を完全には崩さなかった。

 が、俺が力を溜めるには十分だった。

 右手に青い炎を集める。そして、その周りに赤い炎を纏わせる。


「『バーニング・インパクト!!!』」


 モーの心臓部分に思いっきり拳を入れる。


「うぐっ…!!!」


 が、奴は右足を後ろ伸ばし、この攻撃を受け止める。

 普通の人間だったら貫通してもおかしくない一撃。

 だが、相手は使い魔。人間ではない。

 奴の体は硬く、頑丈だった。


「くっ…まだだぁぁあああ!!!」


 俺は更に魔力を込める。

 青い炎も激しさを増し、俺とモーは二つの炎で覆われていた。


「ぐっ…俺を炎で焼き切るつもりか!!!」


 モーは自分の右手に持っていた戦斧で薙ぎ払った。


「くっ…!!!」


 戦斧は俺の左腕に食い込んだ。

 このままいけば俺の左腕は飛び、次は体に食い込むだろう。

 その前にこいつを殺す!!!


「だあああああ!!!」


 ありったけの魔力を右手に込める。

 今までの比ではない程の炎の勢いで辺り一面炎の海となった。

 しかし、モーも負けじとより一層、戦斧に力を込める。


「うおおあああ!!!」


 自分の左腕がどんどん力に押され、骨の部分まで到達してるのが感覚で分かる。

 しかし、興奮しているからか痛みはない。

 俺は構わず自分の右手だけに集中した。


「ぐは”あ”っ…!!?」


 そして、ようやっと俺の右手が奴を貫通したのが分かった。

 その後、俺は勢い余って奴を押し倒しながら体勢を崩し、地面に倒れ込んだ。

 俺は直ぐに体勢を戻そうとするが、奴の心臓部分には大きな穴が空いていた。

 心臓がないとかでなければ確実に死ぬ程の大きな穴。

 俺はそれを見て、ゆっくりと立ち上がろうとして、違和感に気付いた。


 俺の左腕が無かった。


「…………うぐ……」


 それに気が付いた瞬間、痛みがきた。

 全身から冷や汗が流れる。

 よく見ると、切られた部分から血がだらだらと垂れている。

 早く止血しないと。


「次……」


 俺はその声を聞いてビクリと体が震えた。


 こいつ、まだ生きて……。


 俺は急いで立ち上がり、モーから距離をとった。


「次があれば、完全な状態で殺し合おう…………」


 そう言うと、モーの黒い影はその場から消えた。


「死んだ、のか…?」


 俺は辺りを見渡しながら警戒する。

 が、どこにも姿、気配はない。


「次か……」


 俺は自分の左手を持ち上げる。


「できれば会いたくないな」


 魔王の使い魔ならまた会うかもしれないが、戦いたくはない。


「『ロード・コアドライブ』」


 俺は自分の左腕を元の位置に当てながら、『再生』の能力を使った。

 初めて見たのだが、俺の骨の部分は鉄のような硬そうな物で作られていた。

 ああいうのを見ると俺は本当に人間ではないんだと実感する。

 でも、大事なのは心だ。

 俺はそう言ってくれた人の元へと急いだ。

見てくれてありがとうございます。

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