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第三十六話 鼠と牛の使い魔

現在、21時毎日投稿中。

 俺達は店の外に出た。

 町は爆発の音を聞いてか、逃げ惑う人達でごった返していた。


「一体、何があったんだ?!」


 何かが起こった。

 それだけは分かる。


「あれ見て!」


 そう言われて、ユリアの指差す方を向く。

 そこからは赤い炎と一緒に黒の煙が上がっていた。


「あそこでなんかあったみたいね」


「ああ、行ってみよう」


「うん」


「ええ」


 それから俺達は爆発の原因と思しき場所へと向かった。


 走って数分が経ち、俺達は赤い炎の元まで来ているのだが、そこには二つの黒い影があった。

 それは本当に黒い何かの形をした奴らだ。


「こんなことして意味あるのか?」


「意味など無い。ただ、強い者を集めるには効果的だろ」


「う〜ん…よく分かんねえ」


 片方は三メートルは裕に超える体格の良い人型をした影。

 しかし、頭からは角のような突起がある。

 人間ではないらしい。


 もう片方も人によく似た形の影だ。

 頭はハットのような帽子を被っているようだ。

 そして、手元には錫杖のような物を持っている。


「っ…!?あんた達!ブラウンレミーにレッドモーね」


「シャーロット、こいつら知ってるのか?」


「ええ……魔王様の使い魔達よ……」


「魔王の使い魔……」


 こいつらが魔王の使い魔ということは、俺達の動きがバレているってことか。

 少しまずいかもしれないな。


「おおっ!?これはこれは。誰かと思えば、”落ちこぼれ”のシャーロット殿ではありませんか」


「結構な挨拶ね、ブラウンレミー?」


「ちょっとした戯れではありませんか。そうかっかしないでください」


「あれ?どっかで見たことある気がする……」


「君は直ぐに忘れるね……シャーロット殿は魔王様の四大家の一つ、パルデティア家の息女だ」


「ん?やっぱ、知らないかもしれない」


「いや、知ってるって」


「ん……?」


 失礼だけど大きい方はあんまり賢くなさそうだな。


「なんであんた達がここにいんのよ!」


「それは魔王様が我々を召喚したからですよ」


「我々って…まさか…!?」


 シャーロットの顔から汗がすうっと垂れる。


「ええ。完全ではありませんが、全員を呼びました」


「……まずいわね」


「何がまずいんだ?」


 難しい顔をするシャーロットへ質問する。

 彼女のこういう顔はあまり見ない。

 こういう顔をする時は大体良くないときだ。


「こいつらは魔王様の使い魔で、情報を常に交換できるのよ」


「じゃあ、私達がここにいるってことが…」


「魔王様にバレた可能性が高いわね」


「……」


 だとすると、魔王本人が邪魔な俺達を消しに来る可能性もあるってことか。


「ん?何かまずいのですか?というか、さっきからシャーロット殿の隣にいる人間とエルフ、殺さないのですか?」


「……殺さないわよ、絶対」


「ああ、そういえば、殺せないんでしたか?これは失敬。気にしておられたのに悪いことをしました」


「……」


 レミーの言葉をシャーロットはただただ黙って聞いていた。


「なるほど!分かりました!あなたの魔性の能力で操っているのですね?!あなたの能力は便利ですからね」


「そんなんじゃないわ」


「おや……?では、なぜそのような者達と一緒に並んでいるんですか?」


「……私の仲間だからよ」


「仲間…ですか?」


 レミーは不思議そうにしている。

 理解ができないって感じだ。


「ふむ。シャーロット殿、あなた、まさか…魔王様を裏切るおつもりですか?」


 雰囲気が変わったのが分かった。

 肌に伝わる何かが冷たくなったのだ。


「私は……もう戦争なんてしたくない!誰かが死ぬのは嫌なの!」


「ほう…それで?」


 シャーロットの必死の訴えにもレミーは冷たく返した。

 これは、よくない流れだ。

 会話だけで穏便にとはいかないだろう。


「だから、私は魔王様にお願いするの。戦争はやめてくださいって」


「はぁ……」


 レミーはため息を吐き、首を横に振る。


「あなたは分かっていない。魔人とは本能に忠実であるべきなのです。人間を従え、飽きたら殺し、次の人間へ。それが魔人の本来の姿」

「人間が抵抗するなら戦争は必須。戦争が嫌なら大人しく我らに従うべきだ」


「それじゃあ、どちらにしろ多くの人が死ぬわ!」


「それでいいではありませんか。何が問題なのです?我々は魔人で、魔人以外はそれ未満の存在。家畜のようなものです」


「っ…!……私は、そんな風には思えない。思いたくない」


「我が儘はもうよしてください。あなたもかなりの歳月を生きてきた筈です。それでも尚、そのような考えをお持ちなのですか?」


「私のこの気持ちは変わらない」


 胸に手を当てるシャーロットの顔は辛そうだ。

 だが、その口調はとても力強い物だった。


「……ふむ。ダメだな…」


 レミーがそう言った瞬間、何かが動き出した。

 俺は反射的に体を青い炎で覆い、シャーロットの前に出た。

 そして、振り下ろされる何かを腕で受け止めた。


「これは驚いた。モーの速さに付いてくるとは」


「お前、硬いな。人間か?」


「シャーロット!無事か!?」


「う、うん…」


 シャーロットは驚き戸惑っている。

 攻撃されるとは思わなかったのか。

 それとも、攻撃されたことがショックだったのか分からないが動きが止まっている。


「無視された…」


「ユリア、シャーロットを頼む」


「うん」


 ユリアはシャーロットの手を引いて、俺から少し離れた。

 それを見届けてから、青い炎の勢いを激しくする。


「なんで炎なのに熱くないんだ?」


「俺も知らねえよ!」


 腕の力を使って強引にモーの斧のような武器を弾く。

 それと同時に、モーは俺から距離をとり、レミーの元へと戻った。


「どうやらただの人間ではないようだ。三対二ですが、なんとかなるでしょう」


「あいつらみんな殺していいの?」


「ええ。シャーロット殿には裏切りの兆候がある。いくらパルデティア家でも許されることではありません。これは仕方のない犠牲です」


「分かった。じゃあ、俺はあの人間を殺す」


「では、私はエルフとシャーロット殿を」


「……」


 俺は警戒をする。

 いつでも動けるように腰を落としながら。


「シャーロット、大丈夫?」


「……ふう……大丈夫」


 シャーロットは深呼吸をして落ち着いたようだ。

 動揺していたみたいだけど、今は大丈夫そうだな。


「それでは、約二千年ぶりの殺し合いといこうか」


 それが戦いの合図となった。

見てくれてありがとうございます。

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