第三十五話 ミント大橋
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馬車に乗り、ミント大橋を目指して四週間が経過した。
俺達はやっとここ、ミント大橋まで辿り着いた。
予定より遅くなってしまったが、原因は道中の大量発生した魔物達が原因だ。
こればかりはどうしようもできないので仕方がない。
「ここからは私も全然知らないからシャーロットに頼ることになるからよろしくね」
「うん。でも、私もある程度知ってるぐらいだし、時間が経って今までの知識が使えないみたいな可能性もあるから、期待は程々にね」
「今回は随分と弱気なんだな」
「弱気っていうか、慎重って言ってよ。私だって色々心配なんだから」
「ごめん、ごめん」
シャーロットが少し膨れながら言ってきた。
「それにして、このミント大橋って凄いね。どこまでも向こうに続いてるみたい」
「確かにな」
ミント大橋。
横幅は馬車が十台程擦れ違う事ができる程の幅。
それが、ライザレンジ大陸からシレジット大陸までずっと続いている。
そして、この橋の下は『エンドライフ』と呼ばれる海峡で、海の魔物の弱肉強食が行われているということらしい。
聞いた話だと、このミント大橋の中央部分にはちょっとした町があり、馬車はそこまで送ってくれるらしい。
そこからは馬車を乗り換えるか、歩いて移動することになる。
できれば馬車に乗って移動したい。
魔物退治で遅れた分を巻き返したいからな。
「もう少しで着きますよ」
「分かりました」
「昔はこんな橋無かったんだけどね」
「そうなのか?」
「確か、魔王様を封印してからしばらく時間が経った頃、ライザレンジ大陸とシレジット大陸とを繋げる大きな橋を造るってことになって、人族と巨人族〈ギガンテス〉、魚人族〈ウンディーネ〉が協力してこの橋を完成させたんじゃなかったかな」
「へぇ〜、流石、シャーロットは物知りだね」
「ま、まあね」
シャーロットは褒められたことが嬉しそうな顔をしている。
言い方は悪いが、ちょろいな。
今まで騙されたりしなかったんだろうか。
それから少し馬を走らせると、関所のような場所に辿り着いた。
辿り着いたのだが、少し様子がおかしい。
まるで何かが強引に突き破ったような大きな穴が空いていたのだ。
「なんだ?あれ?ああいうものなのか?」
「いえ、私も初めてみますね。ちょっと聞いてきます」
そう言うと、御者は馬車を止め、ここの兵士らしき人物に話し掛けた。
「なんだろう?」
「さあ、なんだろね」
しばらく待っていると、御者が戻ってきた。
「お待たせしました」
「なにか分かりましたか?」
「はい、それが……よく分からない生物がここを勢いよく突き破って行ったようで……」
「…?生物?」
「ええ。夜なのでよく見えなかったようですが、角の生えた何かがシレジット大陸側からライザレンジ大陸へ突破したようで、シレジット大陸側の関所もこうなっているんだとか」
「そりゃ、大変だな」
「通り過ぎただけなので大きな被害はなかったようですが……少し不気味ですよね?」
「まあ、そうだな」
「とにかく、入る分には軽い荷物を検査するだけでいいそうです。出て行く時にお金を払えと」
「分かりました」
「じゃあ、行くか」
「……ええ、そうね」
それから俺達は無事に関所を通過した。
すると、ここからは横幅がかなり広くなっているようで、そこには町があった。
家もあるので人も暮らしているのだろう。
予想していたより大きな町に見える。
「それじゃあ、ここでお別れですね」
「はい、ありがとうございました」
「どうも」
「助かりました」
「では、私はこれで」
そう言うと、御者は馬車を走らせて町へと消えていった。
「ここがミント町か……」
ミント大橋が石のような物で造られている所為か、石を使った家が多く見られる。
流石にこの橋と同じ素材ではないようだが、統一感はある。
因みに、このミント大橋とサミフロッグの城壁の素材は同じなんだそうだ。
貴重だという話だったが、これ程の量を集めるにはさぞ苦労しただろう。
「とりあえず、宿を探しましょう」
「うん」
「そうだな」
ということで、俺達はまず宿を探すことにした。
町を色々と観察しながらだ。
露店が多く並ぶ通りには結構な人が行き来している。
恐らく、このミント町ではライザレンジ大陸産の物とシレジット大陸産の物があるからだろう。
いち早く他の国の物を手に入れるならここが一番早い筈だ。
それ目当ての商人なんかもいそうだな。
なんて思っていたら花の香りのようないい香りがしてきた。
気になって匂いの出所を探していると、透明な液体が入った小瓶が目に入ってきた。
「お、あんちゃん、彼女さんのプレゼントにどうだい?」
「え、俺?」
「そうだよ。これはシレジット大陸の花畑で採れた花を香水にした代物なんだ。一本どうだ?」
「へえ〜、いい匂いね」
シャーロットが小瓶を手に取って言う。
「おっ、そっちの嬢ちゃん、お目が高いね。これはあの妖精族が出るって噂の花畑から採ってきた物を使っててな。香りが良くて人気の品なんだよ」
「ふ〜ん」
俺は香水とかよく分からないけど、シャーロットは興味がありそうだな。
「そんなのあるんだね」
ユリアが俺達の間に入って興味深そうに小瓶を見ている。
「毎年収穫できる花の量は決まっててな。花は見渡す限り広がってるから採っても問題はないんだが、一応、採り過ぎないようにって国が制限をかけてるんだよ。そのおかげで高く売れるんだがな」
「う〜ん。どうしよっかな…」
「シャーロットって香水とか使ってたっけ?」
「ううん。使ってないけど、その……たまには気分転換に、みたいな?」
「ふ〜ん…気分転換か〜…」
少し挙動が変なシャーロットをユリアが訝しそうに見ていた。
二人とも、そんなにこの香水が気に入ったんだろうか。
今まであまりお金は使わないようにしてたし、たまにはお礼として買ってあげようかな。
「じゃあ、この香水二つください」
「おっ!まいど!」
「「えっ?!」」
「ん?二人とも欲しかったんじゃないのか?」
二人して驚いた顔してどうしたんだろう。
「いや、まあ…」
「そうだけど…」
「ん?」
「はい、どうぞ」
「ああ、どうも。代金です」
「ありがとな」
そうして、俺は商人から香水を二つ受け取った。
「はい、二人とも」
「あ、ありがとう」
「……なんか、悪いことしちゃったかな」
「ん?」
俺は二人の反応を不思議に思いながら宿探しに戻った。
結局、俺達が泊まることにしたのはどこにでもありそうな宿屋だ。
洗い場が付いているので相場よりは少し高いのかもしれないが、二人が喜ぶので少しぐらいの贅沢はいいだろう。
いつもは野宿だしな。
洗い場で体を綺麗にした後、俺達は晩御飯を食べることにした。
この橋の下が海ということもあってか魚料理が名物らしい。
楽しみだ。
それから少し歩いて良さげな店に入った。
そして、中でそれぞれが好きな物を注文した。
「それじゃあ、少しお待ちください」
「はい」
中はどこにでもありそうな感じだが、釣り竿や錨といった少し変わったものが置いてある。
あまり見にする機会はなかったので少し面白い。
「魚料理、楽しみね」
「ああ」
最近思ったが、シャーロットとはかなり料理の嗜好が合う。
俺も彼女も嫌いな食べ物がなく、結構なんでも食べるからだろう。
特に肉と魚は好きだからな。
「それにしても、あの関所の人が言ってた角の生えた何かが気になるわね」
「ああ、そうだな」
「私もそれ気になってたんだよね」
「ユリアもか」
「もしかしたら、なんだけど……」
「ん?何か心当たりでもあるのか?」
「うん……」
シャーロットは煮え切らない態度だ。
しかし、少し間を空けると、
「確か、魔王様の使い魔に聞いた特徴と似たようなヤツがいた気がする」
「つまり、魔王の使い魔がここを通ったってことか…」
俺がそう言うとどこからか爆発音がした。
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