第三十四話 魔物大量発生
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サミフロッグ王国を出発してから十日程が経過した。
馬車に揺られながら、ミント大橋へと向かっている。
ミント大橋に着いたら、次はシレジット大陸だ。
その後は妖精族〈フェアリー〉の村を目指す。
そんな感じの予定で考えているのだが、正直、少し時間が掛かりそうだ。
というのも、魔物と頻繁に出会うのだ。
倒して少し進んだらまた魔物に遭遇する。
それを何回も繰り返していた。
今まで魔物にあまり会わなかったのが嘘のようだ。
「ソラ!そっちお願い!」
「分かった!」
現在、俺達はいつものように魔物を倒している。
強敵という程でもないので苦戦はしないが、しかし、数が多い。
周りを見ると、魔物、魔物、魔物。
まるで、魔物の巣窟にでも迷い込んだみたいだ。
「『ライトニング・アロー!』」
「……ふう。これでやっと片付いたわね」
「ああ」
「手伝ってもらい、ありがとうございます」
「大丈夫ですよ。私達も乗らせてもらってますから」
「そう言ってもらえると助かります」
御者の男がわざわざ俺達に俺を言ってきた。
一応、護衛を雇っているがこの数だ。
流石に手が足りないだろう。
俺達もどうせやることがないんだし。手伝うぐらいはしないとな。
「もう少しで村に着きますので、そこで休んでください。宿代は私が払いますから」
「いいですよ、そんな!」
「戦ってもらってお金を払わないのは好きではないのでね。働きに見合った報酬は払いたいのです。気にしないでください」
「……では、お言葉に甘えて」
「はい」
「よかったわね。今日は宿よ」
「そうだな」
久々の宿で嬉しいのか、シャーロットが笑顔だ。
彼女もユリアと同じで綺麗好きみたいだしね。
それから馬車で小一時間程馬車で移動すると、村に着いた。
どこにでもありそうな村だ。
雰囲気はミーシャの故郷、ドーパン村に近いが、それより少し大きいかもしれない。
サミフロッグの首都を見た後だと小さく感じてしまうが、あの街が大きいのだ。
このぐらいの村の方が普通だろう。
「では、明日の朝、出発しますので遅れないように」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、早速行きましょう」
「そうだな」
俺達は三人部屋に泊まることにした。
正直、男一人に女が二人だと肩身が狭いが、馬車でも似たようなものだったのでよしとしよう。
ていうか、俺がよくても二人がダメというなら俺は別の部屋で寝ることになるので、そう考えると信用してもらえてるんだろう。
「よっと……ん〜……久しぶりのベッドはいいわね…」
「こらこら、ベッドに飛び込んじゃダメでしょ?」
「まあ、いいじゃないの。たまには」
「もう…シャーロットったら……」
彼女は幸せそうな顔をしてベッドに横になっている。
そんな様子を見てユリアも強く言えなくなったのだろう。
「あと二週間も馬車に揺られるなんて、体が痛くなっちゃうわ」
「歩くよりマシだろ?」
「そうだけどさ〜」
彼女は伸びをしながら、眠そうに大きなあくびをする。
「じゃあ、私、体を洗ってくるから」
「ああ」
「は〜い」
それからユリアは部屋を出て行った。
どうやらこの宿には洗い場があるらしい。
ユリアはこういう体を洗える場所があると必ず利用する。
俺も利用するが、彼女は毎日体を拭いているのでそこまでしなくてもと思いはするが口には出さない。
悪いことじゃないからな。むしろ、いいことだ。
俺もできる限り清潔でいようとしているし。
「それにしても、最近魔物の数が増えてるのかしら」
「ああ、それは俺も気になってた」
いくらなんでも多過ぎる気がする。
魔物の種類もバラバラで、ある一種が特別多いというわけでもない。
魔物全体が活性化してるって感じだ。
「もしかしたら、ルーンが壊されたことが関係するのかな?」
「ルーンが?」
「今までルーンが壊されるなんてことなかったと思うし、それが原因で何かしら異常が発生しているんじゃないかなって思って」
「それが魔物が大量発生している原因ってことか…」
確かに、星の恵みなんて言われるぐらいだしな。
壊されたら何か異常が起こる可能性はある。
「その辺は魔王様が詳しい筈だから、聞ければよかったんだけど…」
「そういえば、シャーロットと魔王ってどんな関係なんだ?」
「どんなか……私はあんまり喋ることはなかったんだけど、たまに話をしたりしたかな」
「へえ〜、どんな?」
「そうね、基本的には世界を侵略する為の作戦とか心構えとかかな。一応、私はパルデティア家だし」
「ふ〜ん」
「私はそれがあまり好きではなかったけど……」
シャーロットはそのことで色々悩んでるみたいなことを言ってたな。
穏健派。戦いを好まない魔人。
魔王にとっては裏切りに近い行為な気もするが、それでも彼女は自分の思いを伝えよと今も俺達と一緒に行動を共にしている。
今では俺達の大切な仲間だ。
俺もできれば戦いなんてしたくない。
平和な世界の方がいいに決まっている。
彼女の思いが伝わればいいんだが。
「思い返すと、その度に兄様が助けてくれた気がする」
「シグルドだっけ?」
「そう、シグルド兄様。私をよく助けてくれた」
「そうか、優しい兄さんなんだな」
「そうね。兄様はとても優しいわ。でも、今は当主だから前みたいには接してくれないと思うけど」
「当主だとなんかあるのか?」
「自分の行動や言動、全てに責任が伴うからよ。私が出来損ないって話を前にしたでしょ?そんな私に優しくしてたら、他の魔人達になんて言われるか分からないもの」
「そういうもんなのか」
「魔人は性格が悪いから。正直って言い方もあるけど、限度がないから」
「ふーん」
俺が会ったことある魔人はシャーロットとジークの二人だけだからな。
二人とも常識人だからそんな感じしないけど、二人が特別なのかもな。
それが魔人にとっては異常なのだろう。
でも、聞いた感じシャーロットの兄さんは常識人な印象を受けた。
案外、似た者兄妹なのかもな。
「それに比べると、人族は安心するわ。優しい人も多いし。たまに悪い奴もいるけど少数だしね」
「そうだな。俺もそう思う」
ミーシャやグラウス、カリム達も、俺が会った人達は優しい人がほとんどだ。
もちろん、そうでない者もいたが、少数だ。
「最近だと、カリム達には私の姿を見られたけど、特に何も言わなかったし」
「ああ、その話な」
馬車を出発させて直ぐの頃、シャーロットが翼と尻尾が生えた状態をカリム達に見られたと話してきた。
俺はそれを聞いて、正直、血の気が引いた。
世界的に指名手配されるのではと。
そうなったらかなり不自由な旅をしなければならない。
時間も掛かってしまう。
しかし、カリム達は深く追求しなかったらしい。
ユリアが俺とティサナに回復魔法を掛けた後、シャーロットのことを弁明したらしい。
最初は疑いの目を向けられていたらしいが、洗脳をされているわけではないと分かると、少し話し合いをした上で何も公言しないことにしてくれたらしい。
これには俺も頭が上がらない。
お礼を言いたものだ。
次に会ったら礼を言うことにしよう。
「今まであまり人とは関わらないようにしてたけど、その分を今消費してるみたい」
「どうだ?人と関わりを持つってのは?」
「……悪くないわね」
「だな」
彼女の表情は少し嬉しそうだった。
これからもずっとそう思ってもらえるといいな。
「さてと、私も洗い場に行ってこようかな」
「分かった。荷物は俺が見てるよ」
「ええ、お願い。…あっ、そうだ!」
「ん?」
俺は彼女の顔を見て少し嫌な予感がした。
その顔はイタズラを思い付いたような悪い顔だった。
「せっかくベッドがあるんだし、全身マッサージをしてもらってから行こうかな」
「ええ……」
「なによ?嫌なの?」
「いや、まあ、いいけど…」
たまーにこうやってマッサージを要求してくるんだよな、シャーロットの奴。
まあ、あんまり疲れないからいいんだけどさ。
〜ユリア視点〜
洗い場で体を綺麗にしてすっきりした。
やっぱり、水を使って体を洗うのは気持ちがいい。
いつもは布を濡らして体を拭き、頭も簡単に洗うだけなので、正直、もっと綺麗に体を保ちたい。
毎日洗い場を使えていたのが懐かしい。
今は旅をしているので仕方がないと割り切っているけど、できるのであれば毎日利用したい。
そんなことを思いながら、濡れた頭を布で乾かしつつ部屋へと戻る。
「ん〜……気持ちいい……」
と、部屋の中からシャーロットの声が聞こえてきた。
「ここ好きだもんな」
「うん。そっ…こは……」
「ここ、気持ちいいのか?」
「うん…」
私は部屋の扉に耳を当てて、中の声を聞く。
シャーロットの声が少し上擦っていて、妖艶な感じがする。
ま、まさかね。二人がそんなわけ……。
「じゃあ、次はもう少し強く、奥に入れてみるか」
「うん……」
ど、ど、ど、どうしよう。二人がそんな関係に…?
私が知らない間に……そういえば、最近、シャーロットの言動が怪しかったり、様子が変だったような気もする。
優しくなった気がするし、距離が近くなった気もしていた。
最初は私だけにかなとも思ったけど、ソラにも同じような感じだったし。
だから、仲間として気を許してくれたのかなって思っていた。
それだけだと。
でも、そうではなかったみたい。
まさか、こんなことになっていたなんて……私だって…………。
いや、よく考えて。
もしかしたら、いつものマッサージかもしれない。
いつもより少し声がアレなだけで。
そう、これはマッサージ。
そうに違いない。
大丈夫。
私が心配するようなことは…。
「ちょっと…痛い……」
「ごめん。もう少し優しくする」
私はそこで勢いよく扉を開けた。
「ああ…おかえり」
「おかえり」
「…ただいま」
私の目にはうつ伏せのシャーロットにソラが跨って襲っている……ように一瞬見えたが、マッサージをしているだけだった。
「…ふう…よかった」
私は胸に手を当てて、安堵の息を吐いた。
「…?どうかしたの?」
「ううん。なんでもない」
「でも、顔が赤いぞ?」
「えっ?!き、気のせいじゃないかな?」
「そうか?」
「じゃあ、次は私が行ってくるわ」
「ああ」
それから今度はシャーロットが洗い場へと向かった。
「ユリアもたまにはやるか?マッサージ」
「うん、そうしようかな…」
その後、シャーロットが戻ってきた時も私と同じような反応をしていたので、多分同じことを考えていたんだと思う。
そ、そんなに変な声出てたかな……。
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