表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/153

第三十一話 事件解決

〜ユリア視点〜


 私達四人は急いでソラ達の後を追った。

 シャーロットの毒を解毒魔法で治し、できるだけ早く追い付けるように。

 どこに行ったのか分からなかったが、そこはシャーロットが血で使い魔?を召喚し、ある程度の方向を絞った。

 それによりサミフロッグより東に位置する森に向かったということが分かった。

 その際、カリムさん達がシャーロットとのことを不思議そうに見ていた。

 正体がバレてしまうのではとハラハラしたが、その場は先を急ぐということで有耶無耶になった。


 それから森に入った私達はシャーロットの使い魔の案内の下、ソラ達を追った。

 しばらく森の中を走っていると、大きな音と共に青色の何かが見えた。

 それに気付いた私達は急いでその方向へ向かう。

 すると、その近くには人が倒れていた。

 その人は頭から猫耳を生やし、ピンクの髪色をしていた。

 ティサナだ。

 彼女が足を斬られて、その場に倒れていたのだ。

 それを見たカリムとルビーは急いで彼女の方へ駆け寄った。

 もちろん、私もシャーロットも同様に。

 しかし、彼女は私達の存在を匂いで分かっていたのか、声を掛ける前に大声で言った。



 『ソラが死んじゃうにゃ』



 その言葉を聞いた時、私から血の気が引くのが分かった。

 ソラが死ぬ。

 そんな…………。

 私の心臓が早鐘を打っている。

 心がざわざわと落ち着かない。

 私はこの感覚を以前に経験したことがあった。

 魔王ガラムーアから逃げた時、あの時と同じだ。

 体が固まり、自分ではないような感覚。

 なにが起こっているのか頭で理解できていない。そんな感覚。


 怖い。嫌だ。


 そう思った。

 また、私の大切なモノが無くなってしまう。

 と、その時、私の直ぐ後ろにいた者が空へと飛び出した。

 そう、シャーロットだ。

 彼女が黒の翼を大きく広げ、空へと飛び出したのだ。

 カリム達がいるのにも関わらず。

 その行動から、彼女も私と似たようなことを思ったのだろう。

 でも、彼女は動いた。一切の迷いなく。

 シャーロットは早く助けに行かなければと、直ぐに行動へ移したのだ。

 私はそれを見た時、自分もそうしなくてはと思った。


 それから私はシャーロットの後を追うように走った。

 支援魔法を使い、なんとか追い付けるようにして。

 それから少し走ると、近くで赤い光が唐突に現れた。

 そして、その光の下でソラを見つけた。

 が、彼は今にも殺されようとしている寸前だった。

 私は自分の限界を越える速度で魔法を詠唱していたと思う。


「『ライトニングボルト!』」


 言い終わるより前に発動したようにも思える魔法は彼の命を狙う者に向けて一直線に放たれた。

 それと同時、黒い稲妻も空から降ってきた。

 シャーロットの得意な闇魔法と雷魔法の複合魔法だろう。

 白と黒の稲妻は彼の命を狙う者を貫いた。

 彼が梟であろうことは状況から察するに分かった。


「間に合った!」


「ソラ!」


 自然と私は彼の名前を叫んでいた。

 と、その時、彼は力尽きるように膝から倒れてしまった。


 まさか……!


 そう思い、急いでソラに近づく。

 心臓はバクバクと大きな音を鳴らし、しかし、キュッと締め付けられるようになる。

 呼吸も荒かっただろう。

 が、私の心配とは裏腹に、彼は生きていた。

 呼吸もしている。

 火傷の痕が目立つが、私が治してあげればいいだけの話だ。

 彼が、ソラが生きている。

 それだけで嬉しかった。

 自然と涙が溢れた。


「ソラは…!?」


 空から降りてきたシャーロットが私に尋ねてきた。

 なので今のソラの状態を伝えると、心底安心したような顔をした。

 彼女も私と同じ気持ちなのだろう。


「彼の者の火傷と傷を癒やし、再び立ち上がる力を『ハイヒーリング!』」


 私は魔力を普通より多く使い、上級回復魔法を唱えた。

 彼の傷を見るに、これで大丈夫な筈だ。

 ひとまずこれで安心だ。

 そう思い、私はふぅと安堵の息を吐く。

 と、その瞬間、


「……はぁ……はぁ……」


「シャーロット!?」


 シャーロットは過呼吸になっていた。

 額からは大量の汗が流れ、顔色も悪く、目からは動揺の色が窺える。


「私……人を……」


「大丈夫、大丈夫だよ。私が付いてるからね。シャーロット一人の所為じゃないからね」


 私は彼女を抱きしめながらなんとか心を落ち着かせようとした。

 すると、彼女はその場にへたり込んでしまった。


「大丈夫…?」


「……ええ。少し楽になったわ。ありがとう……」


「……」


 そう言うシャーロットの顔色は出会ってから一番具合が悪そうだった。




〜ソラ視点〜


 目が覚めると、自分の手が握られていることに気が付いた。

 しかも両手だ。

 俺は自分の手の方を見る。

 そこには、左手にユリアが、右手にシャーロットが俺の手を握りながら眠っていた。

 窓から差し込む光は明るい。

 どうやら気を失ってから時間が経ち、今は昼頃になっているようだ。

 二人の様子から見るに、俺の看病をしてくれていたんだろう。

 ありがたいな。


 シャーロットには死なないでと言われたが、正直、俺は梟に剣を突き刺されそうになった時、もうダメだと思った。

 でも、ユリアとシャーロットが魔法で俺のことを助けてくれた。

 二人にはお礼を言わないとな。

 それに謝罪もだ。

 二人には心配を掛けた。


 と、そんなことを思っていると、ユリアの方が顔を上げた。

 眠そうな顔をして、俺のことを見ている。

 寝ぼけているのだろうか?


「……っ!?ソラ!」


「おっ…!?」


 俺に気付いたかと思ったら、いきなり抱き付いてきた。

 よっぽど心配させてしまったらしい。


「体は?なんともない?痛くない?」


「ああ。大丈夫だ」


 そう言うと、心配そうな顔をしていたユリアだったが、胸に手を当て、ふうと安堵の息を吐いた。

 今、その顔にはよかったと、嬉しさと安堵の表情が浮かんでいる。


「……っ!?ソラ!起きたのね」


 俺の右手の方から声が聞こえた。

 シャーロットが起きて、俺に気が付いたのだろう。

 まあ、ユリアが結構大きな声で俺に話し掛けてきたからな。


「ああ」


「そう。体は?なんともない?痛みとかは?」


「ハハ。なんともないよ」


 二人して同じこと言ってるな。

 不意に笑ってしまった。


「……?」


「私と同じこと聞いてるよ」


「ああ、そういうこと」


 不思議そうにしていたシャーロットにユリアが答える。


「でも、本当に無事で良かったわ」


「そうね。本当に……」


「二人とも、心配掛けて悪かったな」


「うん」


「全くよ。死なないでって言ったのに、無茶して!」


「ほんと、ごめんな」


 シャーロットは腕を組み、俺に鋭い視線を向ける。

 彼女にとって俺の行動は裏切りに当たるだろうな。

 申し訳ないことをした。

 言い訳をすると、あそこで梟を逃してしまったら後悔するような気がしたんだ。

 よくないことが起こりそうな気がした。

 だから、無理をして戦いを挑んだ。

 戦いは案外、上手いこといったが、最後の最後で甘さが出てしまった。

 不意を突かれて、後一歩で死ぬところだった。

 実際、二人が来なかったら俺は死んでいただろうしな。


「……本当に…心配したんだからね……」


 シャーロットの目の端に涙が溜まる。

 目元にクマがあるところを見るに、よほど心配を掛けたようだ。


「……ごめん」


「結果的になんとかなったからいいわよ…」


 そう言いながら、溜まった涙を手で拭き取った。


「おっ、起きたか」


 ドアを開け、そう言いながら部屋に入ってくるのはカリムだ。

 その後ろをパーティーメンバーが付いてくる。

 ルビー、アーダン、トレサ、ティサナ、全員だ。


「調子はどうだ?」


「問題ない」


「そうか。しかし、お前も罪な奴だな」


「……?どういうことだ?」


「ん?いや、なんでもねぇ。仲間を大事にしろってことだ」


「?そんなの当たり前だろ?」


「ソラ!お前には色々と助けられたにゃ!礼を言うにゃ。ありがとう。命の恩人にゃ」


 ティサナは頭を下げながら言う。


「俺達からも礼を言うぜ。助かった」


 カリムがそう言って頭を下げると、それに続くようにみんなが頭を下げた。


「いや、別に…お互い様だろ?そう畏まらなくてもいいよ」


「ああ、だが、本当に助かったよ」


 なんか、カリムにこうやって改まった態度をされると変な感じだ。


「二人にも世話になった。助かったよ」


「はい。お互い様です…」


「…………そう」


「?」


 何故かシャーロットは下の方に視線を逸らしながら言う。

 何かあったんだろうか。


「話は変わるんだが、起きて直ぐに悪いが、国王様がお呼びだ」


「……国王が?」


 俺は少し不安を抱えながらも、王の待つ謁見の間へ行くことにした。

のんびり書いていきたい。

気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。

毎週金曜日投稿予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ