第二十七話 王城の中へ
俺は今、カリムと共に行動している。
現在、俺、ユリア、カリムの三人で王城の門の近くに来ていた。
どうしてここに来ているのか。
それはカリムが俺達に告白した内容が原因だった。
それはハートに関すること。
彼女の本名はセレナロイグ・ハートという。
そう、あの貨幣の名前にもなっているセレナロイグだ。
シレジット大陸に存在する人族最大の王国、それがセレナロイグ。
結論から言うと、ハートはこのセレナロイグ王国の第二王女らしい。
彼女は王女様だったのだ。
お嬢様と呼べれていたから貴族の娘さんかなにかだと思っていたが、まさか王女だったとは。
これには俺もユリアも驚いた。二人して、顔を合わせるぐらいには。
それでだ。そんな彼女に現在、何が起こっているのか。
それは彼女がいなくなったらしい。
気が付いたのは昼のご飯を運んだ時、彼女の姿がないというのが発端らしい。
それからパーティーメンバーで手分けして探しているんだとか。
しかし、あの王女様は結構狡賢い性格らしく、なかなか見つけられないらしい。
王城からは逃げ出していないとは門番の話だったが、あの王女様なら逃げ出すことはできるだろうとカリムは語った。
それで街の中を探している途中、偶然、俺達にあったらしい。
俺達はカリム達を探していたから、偶然ってわけではないんだがな。
因みになんでセレナロイグの王女様がここ、サミフロッグ王国に来ているか。
理由は簡単だ。
ハート王女様がここサミフロッグ王国、第一王子のお嫁に来たからだ。
後の王妃ってことだな。
それで明日、王女様を乗せている筈の馬車がここに着き、大々的に歓迎されるらしい。
なので、なんとしてもそれまでに王女様を見付けなければいけないらしい。
なら、どうして彼女が既にここにいるのか。
それは彼女の狡賢さと好奇心が原因ということらしい。
まあ、要は逃げ出してきたってことだな。大変だね、護衛というのも。
「でも、まさかお前達の仲間まで行方不明とはな」
「まあな」
俺もこんなことになるとは思わなかった。
「しかし、話を聞いた感じ、俺が聞いていたより厄介なことになってるっぽいな」
「ん?何か聞いてたのか?」
「まあな。ただの噂だと思っていたんだが、どうやらその噂は事実だったらしい。しかも、自分の嫁さんが来る前日までって…どうなってんだか…」
カリムは呆れた感じで肩を竦めて言った。
嫁の前で他の女性に色目を使っていた奴もどうなってんだと思うのだが、まあ、触れないでおこう。
「それはともかく、俺達の今の目的はうちのお嬢様とお前の仲間の二人ってことだ。で、今までの感じだとここにいる可能性が高いってわけだが…」
カリムはそう言って、赤い夕陽に染められた王城を見た。
「さて、どうにかしてお前達を中に入れてやりたいんだが、上手くいくかね」
俺達はカリムと共に街を少し探し回った。その後にここに来ている。
他のパーティーメンバーは各自で探しているらしい。
だが、発見の報告がないところを鑑みるに、城の中にいるのではという仮説がたったわけだ。
今はどうやって中に入るかというところで躓いている。
「一応、俺達のパーティーメンバーってことにして入れると思うが、怪しまれるだろうな。二人とも、俺に口裏を合わせてくれよ」
「ああ」
「はい」
「よし、じゃあ、行きますか」
それから俺達三人は王城の門の前まで歩いた。
門の前には二人の武装した門番。
「中に入りたいんだが」
「ああ、昼の」
「構わないが、後ろの二人は?」
訝しげな目を俺とユリアに向ける門番二人。
城を出る時にいなかった奴が二人もいれば疑いの目を向けるのは当然か。
「ああ、この二人は俺達のパーティーメンバーだ。この街の情報収集の為に動いてもらっていたんだが、さっき合流したんだよ」
「ふむ…だが、お前達のパーティーの中にはシーフがいたと思うが、なぜあの者に任せなかったんだ?」
ああ、そういえばいたな。金髪の、名前は確かトレサだっけか?
「ああ……あいつは戦闘が苦手でな。それで、街中とはいえ、一応、この二人にお願いしたんだよ」
「う〜む。どう思う?」
「ふむ。確かに少し怪しい。因みに、そっちのフードを被っている者、フードをとれるか?」
これは結構怪しまれるな。
でも、確かに怪しいよな。引っ掛かる部分がいくつかある。
なんとかなればいいが……。
と、俺がそう考えていると、ユリアがフードをとった。
「「っ…!?」」
「エルフだったのか……!?」
エルフはよほど珍しいのだろう。そんな顔をしている。三人が。
ていうか、カリムが驚いてるのはまずいだろ。
バレないといいが……。
「なるほど、それでフードを…失礼、もう大丈夫です」
「はい」
そう言われると、ユリアは再びフードを被った。
この反応的に、エルフはやはり珍しいのだろう。
「しかし、どうする?通すか?」
「うん……」
門番は迷っているらしい。
どうやらバレなかったみたいだ。
できればこのまま入りたい。でないと、俺はこの王城に侵入しなければならない。
そして、そうなったら俺はお尋ね者だ。
「あれ?カリムもいま戻ってきたの?」
と、向こう側から女性の声がした。
その女性は赤い髪で、背中から杖が少し見えている。
彼女はカリムの嫁で名前はルビーだったか。
「おお、愛しの妻、ルビーよ。そうなんだよ。で、途中でこいつらと合流したってわけ」
「ん?」
ルビーが不思議そうに俺とユリアのことを見ている。
まずい。彼女には俺達のことを言っていない。
最悪の場合、俺達がパーティーメンバーじゃないとバレて捕まるということもありえる。
「ああ、なるほどね。合流したんだ」
「ああ、たまたまな」
俺の心配とは裏腹に、彼女は何かに気付いたような反応をして、カリムに合わせた。
よかった、助かった。
と、カリムとルビーの二人の会話を聞いて、門番の二人が顔を合わせると、
「分かった。通っていいぞ」
「だが、くれぐれも問題は起こさないように。礼儀も忘れるなよ?」
「「はい」」
「じゃあ、中に入るか。その後は城の中を探そう」
こうして、俺とユリアはカリムとルビーの協力で城の中に入ることに成功した。
これで第二段階突破といったところか。
これからは王女様を探しつつ、シャーロットを探す。
だが、これからが一番危険な筈だ。
ジークの助言だと、俺からは死の匂いがするらしいからな。
警戒は最大限した上で探そう。
「で?これはどういうこと?」
中に入ると、ルビーが説明を求めてきた。
彼女は俺達に合わせてくれただけだからな。なんで俺達がいるのか知らない。
カリムは簡潔にルビーに今までにあったこと、作戦を伝えた。
「なるほど。それは災難だったわね」
「ええ、まあ」
「でも、王族とか貴族とかそういう位の高い奴らはそんな感じの多いからね〜…」
口振りから察するに過去にそういった経験をしたんだろうか?
「まあ、他の国のことにはあまり足を突っ込まないのが一番だ」
「そうね。それで?これからどうするの?」
「ああ。まずは、この城の中を探す。好き勝手調べるわけにはいかないが、それでも時間を掛けて虱潰しに探せば見つかるだろう。うちのお嬢様もお前達の仲間もな」
「ああ」
「はい」
ここからの作戦はこうだ。
まず、俺とユリアとカリム。この三人で一緒に城の中を探す。
ルビーは城の中を探していたという大男のアーダンと共に探すらしい。
つまり、二手に分かれて探すわけだ。
バラバラに探すと早いんだが、ジークの助言のこともある。
何より、城の中を一人で、それも何人も彷徨いていたら怪しいだろうという理由だ。
後、セレナロイグの王女様が既にいるということは一部の者しか知らないらしい。
色々あるんだそうだ。
身の安全だとか、混乱を避けるとかな。
とにかく、早くシャーロットに会いたい。
彼女が安全だということ祈ろう。
のんびり書いていきたい。
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