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第二十五話 警告

 ジークのいる露店へ向かっている道中。

 俺はユリアに対してどう謝ろうか考えていた。

 焦っていたとはいえ、言い方が良くなかった。

 怒鳴りつけるような、キツい言い方をしてしまった。

 俺は誰かと喧嘩みたいなことはしたことがない。

 だから、どうやって、どんな風に謝るべきか。どうすれば相手に俺の気持ちが伝わるのかが分からない。

 言うだけなら誰でもできる。だが、相手に伝わらなければ意味がない、と思う。


「確かここだよね」


「ん…?ああ」


 考えているうちにジークのところに着いたらしい。

 俺達は路地裏へと入っていく。

 昼間とは違い、真夜中の裏路地は不気味な雰囲気があった。


「あっ、いるみたい!」


 俺達の目線の先に、暗がりをうっすらと照らす光が見えた。

 近づくと、蝋燭の光で露店に立っているジークの姿が見えた。

 見た目は完全に危ない店だが、俺達は昼間来ているので大丈夫だ。


「おや、やはり、来ましたね」


 俺達がここに来て、ジークの第一声はそれだった。

 まるで、想定の範囲内だったと言わんばかりの口調だ。


「シャーロット様に何かあったようですね」


「っ…!?シャーロットが攫われたんです!何か分かるんですか?!」


「ふむ。私は『風読み』の魔人ですからね。なんとなく予想はできますよ。それに、魔人は昼より夜の方がほんの少しだけ力が増すので、新しい風が吹くこともあります」


「つまり、その能力によって、シャーロットの身に何かが起こることが分かったと?」


「はい。ですが、まだ時間はあるようです。明日の夜中までになんとかできれば、シャーロット様の身に危険が及ぶことはないでしょう」


「明日の夜中……」


 つまり、それまでにシャーロットを助けられなかったら、後は想像に難くない。

 そうなったら、俺は正気でいられるだろうか……いや、まずは、シャーロットの救出だ。


「シャーロットを助けるにはどうすればいいんでしょうか?私達、シャーロットを助けたいんです!」


「ふむ。少し待ってください」


 ジークがそう言うと、じっと何もせず黙ってしまった。

 しかし、少しして微風が俺達を撫でた。


「ん……なるほど……」


 ジークの顔は少し難しそうな顔をしている。

 何かよくないことでも分かったんだろうか?心配だ。


「私があなた方に教えられる要点は三つです。これを破ったら、私の経験上、間違いなく後悔します」


「「っ……」」


 俺とユリアはその言葉にゴクリと唾を飲む。


「一つ目は昼間に会ったあの者達を探してください」


「あの賑やかだったパーティーですか?」


「はい。彼らの匂いが色濃くします。恐らく、彼らと行動を共にすればシャーロット様に会える筈です」


「「!!!」」


 俺とユリアはそう聞いて、顔を合わせる。


「ですが、問題が一つあります」


「問題?」


「ええ。これは言い辛いのですが……」


 そう言って、煮え切らない反応をするジーク。

 が、しかし、ジークは何かを決心したようにコクリと頷くと、俺に向かって言った。


「ソラさん……あなたはこのままだと、死にます」


「えっ…!?」


「っ……!!?」


 ジークの冷たい声音。真剣な表情。

 それは俺とユリアに本当のことなんだと思わせるには十分だった。

 どうやら、俺はここで死ぬらしい。だが、


「このまま、ということは、何か策でも?」


「そうですね。まず、絶対に一人で行動しないでください。必ず死にます。あなたの死の匂いは昼間にはしなかった。だとすると、シャーロット様に会う。もしくは、探すことによって発生したと思われます」

「何が起こるかまでは分かりませんが、シャーロット様が攫われたことによって起こるソラさんの行動の変化が原因でしょう。注意してください」


「分かりました」


「それと、あのパーティーの中でも、金髪のお嬢様の匂いが特に濃いです。もしかしたら、近くにシャーロット様が居るのかもしれません。ですが、先に探すのは、あのパーティーメンバーの誰かに会って行動を共にしてからでお願いします。ソラさんの策について言えることはそのぐらいでしょうか」


「了解です」


 つまり、シャーロットは今、あの金髪のお嬢様と一緒にいる可能性が高い。

 何故かは分からないが、もしかしたら、あのお嬢様も同じように巻き込まれたのかもしれない。

 それで、あのパーティーに会わず、先にシャーロットを見つけると、俺が何かしらの理由で殺される。

 ん?ということは、あのお嬢様に何か秘密が?実は今回の真犯人だとか?

 う〜ん、真相は分からないな。

 でも、彼女のパーティーと一緒にいないとダメらしいからな……。


 まあ、とにかく、俺は誰かと一緒に行動しないと死ぬ。

 だから、必然的にユリアと一緒にあのパーティーを先に探す。

 見つけて合流したら、シャーロットを探すと。

 すると、何故かお嬢様も一緒に見つかって……しかし、だとすると、あのお嬢様もやっぱり攫われてるってことにならないか?

 だから、あのパーティーメンバーと一緒に探すのか?

 彼らも困っているから?

 ん〜、分からないな。何が起きてるんだ?


「それと最後の要点を」


「ああ、はい」


「暗闇に決して入ってはいけません」


「暗闇…?」


「これはソラさんもユリアさんもです」


「私もですか?」


「はい。不気味な匂いがお二人からします」


「……」


 なんというか、抽象的でよく分からないな。

 まあ、暗いところに行くなってことだろう。

 俺は誰かと一緒にいて、暗闇に行かなければ死にはしないってことでいいんだよな?


「今日はもう帰って休むのがいいでしょう。明日に向けて少しでも休むのが吉です。今の時間に探しても、いい結果は無いようですしね」


「……」


 シャーロットが攫われ、誰が攫ったかも分かってるのに、何もしないというのは、正直心にくるものがある。

 何かしたいのにできないというのは辛いな。


「ソラ、今日はほんの少しだけ休んで、明日の朝から探そう?」


「…分かった」


「私も個人で動きます。戦いはからきしですが、人探しとあらば、お役に立てるでしょう」


「ありがとうございます、ジークさん」


「いえいえ、私はこれでもシャーロット様とは長い付き合いですからね。当然です」


 そう言うと、ジークは腕を胸のところに持っていき、ポンと胸を叩いた。


「シャーロットのことお願いします」


 俺はそう言って、頭を下げる。


「ええ」


 それから俺達はジークと別れ、自分達の宿に戻った。




 次の日の朝。

 俺とユリアは昨日会ったパーティーを探す為、街の中を走り回っていた。

 冒険者ギルドに行ったり、昨日会ったジークの露店の辺りを探してみたり。

 だが、一向に見つからない。


 しかも、ジークが露店にいなくなっていた。

 自分も個人で動くと言っていたので、探してくれているのだろうが、頼りになる者がいないのは焦りがでる。


 そんなこんなで俺達の頑張りも虚しく、時刻は午後三時を過ぎた。


「どうしよう…マジでこのまま見つからないんじゃ…」


「もう一度、冒険者ギルドに行って、聞いてみよう?」


「あ、ああ」


 このまま見つけられないと、俺は城に攻め込むことになる。

 できればそれは避けたいんだが……。

 なんて思いながら、本日二度目の冒険者ギルドに向かったのだが、そこに居たのだ。

 一人で、銀髪の男が。

 名前は確か、カリムと言ったか?

 腰に剣を挿し、慌てた様子で受付のお姉さんに話し掛けている。


「やっと見つけた……」


「ああ」


 とりあえず、一安心だ。

 ここからは、彼と話して何があったのかを聞いて、それから俺達の話をしよう。


「はぁ……ん?お前ら…!」


 ため息を吐いたカリムが俺達に気付いて、急いで向かってくる。


「なあ、あんたら、昨日会ったボイ……じゃなくて、綺麗な姉ちゃんと小僧だろ?」


「ああ、そうだよ」


 こいつの覚え方酷いな。


「実はな、これは秘密にして欲しいんだが、うちのお嬢様がいなくなっちまったんだ」


「な、なんだって!?」


 俺はわざとらしく、大仰に反応する。

 一応、今知ったみたいな反応をした方がいいだろうからな。


「それでだな、あんたらにも探すの手伝って欲しんだよ」


「なるほど。実はさ…」


 それから俺はシャーロットが攫われたことを話した。

 カリムは驚いた反応をしたが、お嬢様を探してくれたら必ずシャーロットの捜索に手を貸すと言ってきた。

 これで後はカリムと行動を共にすれば、シャーロットも見つかり、あのお嬢様も見つかる筈だ。

 まずは第一段階突破といったところだろうか。

 一安心だ。油断はできないがな。

 今日の夜中までにお嬢様を見つけなければならない。


「それで、あのお嬢様について何か思い当たることはないのか?最後に見た場所は?」


「ああ…それなんだが…………」


 カリムは頭を掻いて、実にバツが悪そうな顔をしていた。

のんびり書いていきたい。

気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。

今週は金、土、日曜日に投稿します。

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