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第二話 青い炎

 ふと目が覚めた。体を起こし窓の外を見る。

 すると、暗い外で雨がザーザーと音を立てながら降っている。大雨だ。


 雨か…これは明日は外に出れないかもな……


 俺はそんな事を考えていた。すると、その時、雨の音が大きくなった。不思議に思った。なんで雨音が大きくなるんだ?そんな事を考えながら雨音が大きくなった方へとゆっくり進む。何故ゆっくり進んだのかと聞かれたら、それはただの感だった。それも嫌な感ってやつだ。俺はゆっくりと玄関の方へ進んだ。すると、そこには黒いフードを被った顔の見えない人が居た。


 誰だ?


 俺はそんな事を考えた。すると、向こうがこちらに気づいた。そして、自分が見られた事が分かると物凄い速さでこちらに向かって来る。


 なんかヤバイ!


 それだけは分かった。こいつは恐らく敵だと。そして、それは確信に変わった。相手は胸元に手を伸ばし、右手に何かを持った。良く見えないが、あれは多分ダガーと呼ばれるものだ。


 何とかしないと。何か、何かしないと。


 そう考えているうちにダガーが上に振り上げられている。


 このままじゃあ、明日のミーシャとの約束を守れない。この焦るような気持ちは何だろう。この嫌な気持ち、不安な気持ちは何だろう。


 そう考えている間にダガーは自分の頭の上にまで振り下ろされていた。その瞬間、俺はこんな事を考えていた。


 嫌だ…死にたくない…そうだ…


 これは『死』という恐怖の感情だ。俺は今まで感じた事が無かったから分からなかった。でも、今この状況になってやっと。この気持ちが分かった。


「嫌だ!!!」


 自分の気持ちに気づいた瞬間、俺は自然と言葉を発していた。そして、その言葉と共に俺の心臓から何かが漏れ出したのを感じた。力が溢れてくる。そんな感覚が…


「なんだ?!」


 相手の驚いた声。だが、俺はそんな声なんか気にせず右手に力を溜める。視界がやけに青い。まるで青い炎を通して見ているみたいだ。


「『コアドライブ!』」


 そう言うと青い炎は更に激しくなった。そして、俺は全身の力を右手に集めるイメージをする。この敵を吹っ飛ばすぐらいの力を。


「はあああああ!!!!」


 俺は右手に溜めた力を全て相手に解き放つように殴った。


「うおあああああ!!」


 相手は家の壁を壊しながら村の中心の方へと吹っ飛んでいった。


「はぁ…はぁ…」


 体が少しだるい。使った事が無い能力を使ったからか?にしても…


 俺は自分をよく見てみた。すると、心臓、両手、右目から青い炎のようなものが溢れ出ていた。


「これがコアドライブ…初めて使った。思ったより疲れるかもな…」


 それから俺は自分がぶっ飛ばした相手の方へと向かっていく。雨に打たれながら、暗い道を歩いて近づく。


「くっ…お前は…」


 相手の所まで近づくと蹲りながらそんな事を言ってきた。


「お前は誰だ。一体、何故こんな事をした」


「……」


 相手は何も答えない。


「そうか…何も言わないのか…」


 俺はそう言うとまた右手に力を溜め始めた。


「……ククク」


 不気味な笑い。俺はそう感じた。地面に横になっているこいつを見て。


 何だ、この笑いは。不気味だ。何故か不安になる。


「何が可笑しい」


「後ろを見な」


「何っ??!」


「ソラっ!!!!」


 俺の目に映ったのは銀髪の男がミーシャの首元にダガーを突き付けている姿だった。


「お前、中々凄いじゃないか。褒めてやるぜ。この黒翼団からの奇襲を防いだ。今までに無かった事だ。色々工夫して考えてたはずなんだけどな……」


 こいつが黒翼団とかいうやつのリーダーなのか?


「お前さ〜、何なの?その体から出てる青い炎みたいなやつ。うちの仲間を見るに本物の炎って訳でも無さそうだけど?」


「そんな事はどうでもいい!」


 今はそんな事よりミーシャの安全が第一だ。


「ん……そうか…どうでもいいか…」


「きゃっ!!!」


 ミーシャの首元から赤い血が垂れる。


「おいおい、騒ぐなよ〜…死にたくないだろ?嬢ちゃん?」


「お前……」


 くそっ…どうすれば良いんだよ。


「そうだな…取引しようじゃないか。俺はお前のその能力が欲しい」


「俺の能力…?」


「そうだ。簡単だ。俺の奴隷になれ。その力を俺たち黒翼団の為に使え。どうだ?それだけでこの村の住人には何もしない。約束しよう」


「それは本当なんだろうな…」


「ああ…」


 こいつらの言葉を信じろってのかよ。人を襲うような奴等の言葉だぞ。…でも、言うことを聞かないとみんなが……ミーシャが……


「頭、準備できました」


「おお、いいね」


 俺の目の前には拘束された状態の村人たちが集められた。その中にはドリアやレインも居た。そして、いつでも殺せるようにダガーを構えてる黒翼団の奴らが十人以上。

 俺がどんなに頑張っても精々五、六人倒したぐらいで村のみんなが殺される…もうここは大人しく言うことを聞こう。それしかない。


「分かった…お前らの奴隷になる。だから…みんなには手を出すな」


「チッチッチ」


 舌で音を鳴らしながら首を横に振る男。


「違うだろ?奴隷になるって事はさ?」


 なるほど…それ相応の態度をってやつか…


「俺はどうなっても良いので村のみんなを助けて下さい」


 俺は人間のクズに向かって土下座をしながら言った。


「良いねぇ。及第点だ」


「ソラっ!!!こんな奴らやっつけて!!!」


「ミーシャ…」


 俺は男の腕の中で暴れるミーシャを見つめる。


「はぁ…うるさいガキだ…腕はいらねぇ…か!!」


 そう言って男はミーシャの右肩部分にダガーを突き刺した。


「きゃあああああ!!!!」


「ミーシャっ!!!!」


 ミーシャの悲鳴が辺りに響く。


 俺は自然とミーシャの名前を呼んでいた。そして、それと同時に何か分からない感情がまた芽生えた。


「ミーシャには手を出さないんじゃ無かったのか!!」


「そのつもりだったさ。でも、余計な事を言うもんだからよ…」


「お前…」


 この感情は何だ?この煮え滾るような感覚は…怒り?嫌、それだけじゃ無い。これは恨み、憎しみの感情だ。恐らくこれは無い方がいい感情。『殺意』だ。


「お前は…約束を破った…」


 俺はその場で立ち上がりながら言う。


「どうして…お前はそんな事が出来る?」


 どんどん心の内から溢れ出す感情。それに伴って青色の炎が勢いを増していく。


「何のつもりだ?このガキが死ぬぞ」


「何故だ?何故、貴様らはこんな事が出来る?」


「…ソラ……」


 青い炎は更に勢いを増す。


「おい、人間。貴様は今まで何人殺した?何人の夢や希望を奪った。笑顔を、日常を、明日を、命を…」


「おいおい、勘弁しろよ…ったく……」


 そう言うと男はミーシャを適当に投げ、腰に下げていた剣を抜いた。


「当たりだがハズレって感じだな」


 この時の事を俺は良く覚えていない。ただ、俺は抑えきれなくなったんだと思う。ミーシャが傷つけられた時のあの感情を『殺意』を…


「こいつ…もう意識無いでしょ…」


「お前をここで殺す」


「怖いね…」


 ソラの青い炎は体を覆う程に燃え上がっていた。それはまるでこの世の生き物では無いかのような容姿だった。全身の輪郭がハッキリせず、ゆらゆらとそこに漂っている。しかし、確実にそこに存在する何か。それは『殺意』を具現化したものと言われたら納得する程、悍ましい容姿。


「頭!!」


「まあまあ、大丈夫。多分ね」


「…ここで死ね!!」


 暗い夜を明るく照らすほどの青い炎が大粒の雨を掻き分けて男に猛スピードで突進していく。それを受けようと男は腰を低く落とす。そして、お互いの距離が近づいた時、


「『カオス・コアドライブ!』」


「『合技、焔返し!』」


 ソラの右手と男の炎を纏った剣が打つかる。その瞬間、ソラの青い炎と男の剣に纏った炎がぶつかり合った。そして、その勢いは更に増していく。だが、次の瞬間、一気に燃え広がった剣の炎がソラを向こうの方まで弾き飛ばした。


「はぁ…流石に疲れたな…」


 ソラの方に近づく男。


「お前は俺の奴隷だ。俺の言うことは絶対だ。じゃないとこいつらが死ぬことになる。いいな。後、あのガキは俺が個人的に持って帰る。大丈夫だ。約束は守ってやる。おい、聞いてるか?」


 そう言ってソラを足で突く男。


「じゃあ、行きますか。お前ら後はよろしく」


 男がソラから離れながら言った。すると、


「おっと、そうだ。俺はダリウス・フィール。お前の主人だから名前ぐらい覚えろよ?じゃあ、また後で」


 ソラは大雨の中を悠々と歩いていく銀髪の男、ダリウス・フィールの背中を薄れゆく意識の中で見つめていた。


「ミーシャ……」

のんびり書いていきたい。

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