第百三十三話 ヒビ砂漠の異変?
セレナロイグを出立してからはや一週間が経過した。
セレナロイグでの最終日はガルガンも泊まることができる大きい宿に泊まった。
そこが少し値が張るところだったので少し贅沢になったが、高いには高いなりの理由があると分かった。
そこの宿は大きいのはそうなんだが、まず入って装飾が明らかに豪華だった。
高すぎて払えなかったらどうしようかと身構えたが、結構探した上に夜遅くなっていたということもありそこに決めた。
が、値段は俺が想像していたよりは良心的で助かった。
でだ、そこの宿の凄いところはいくつかあるのだが、やはり一番は部屋の大きさだろう。
俺達七人が全員入っても何ら不自由ない広さだった。
更にサービスも素晴らしかった。
部屋は八人部屋だったらしいので余ったベッド
を動かしてガルガンがベッドの上で寝られるようにしてもらった。
その時にこれで大丈夫でしょうかと一言あったのも素晴らしい。
他で言うと、宿の利用客専用の風呂があった。
家族風呂なるものもあるらしく一緒にみんなで入れるらしいが、流石に普通の風呂に入った。
後は夜遅くに宿に入ったので夕食はなかったのだが、朝食が付いてきた。
その朝食も体に優しい味でとても美味しかった。
全体的に全てが最高級のサービスだったと言ってもいいだろう。
みんなあの宿は良かったねと言っていた。
途中、リヴィアだけが一度宿から抜けていたが何をしていたんだろうか。
まあ、それはいい。
また機会があれば是非行きたい。
そんな俺達は今……、
「暑い……」
「頑張りなさいリヴィア…」
「やっぱり暑いね、ここは」
ビビ砂漠の暑さにやられかけていた。
前回ここを歩いた時にジブリエルが編み出した暑さ対策の魔法があるのだが、ずっと使うわけにもいかない。
暑い時間は必ずあるのだ。
そんな中、暑さに弱いと宣言していたウンディーネのリヴィアさんは今、怠そうにテボテボと俺達に付いてきていた。
「大丈夫か?」
「大丈夫に見える…?」
「いや、見えないけど…」
どうやら本当に辛そうだ。
仕方ない…。
「リヴィア、そんなに辛いなら俺がおんぶしてやろうか?」
「いいの…? ありがたいわ…じゃあ、お願い」
ということで俺がリヴィアをおんぶすることに。
「ありがとう…」
「おお…」
暑いからだろう。
リヴィアが俺に体重を預けているから背中に柔らかい感覚がある。
リヴィアの体温もあって少しドキドキする。
「いいご身分ね…私もおんぶされたいわよ…」
「でも、おんぶはおんぶで暑いかもね。楽なのは間違いないけど」
「そんなにおんぶされたいならソラにお願いしたらシャーロット?」
ジブリエルがニッコリ笑顔で言う。
「…いや、別に…」
「そんなに疲れてるならわたくしがおんぶしましょうか?」
「ううん。大丈夫。ありがと」
そう言うとジブリエルを睨むシャーロット。
すると、
「ヒルダ、実は俺も疲れてき…」
「あなたは自分で歩きなさい」
「はい…」
「なんならわたくしがあなたにおんぶしてもらいたいぐらいですよ。ここは相変わらず…」
「おんぶ、させてください」
「え?」
「おんぶ、させてください」
「いや、あなた今疲れてきたって…」
「言ってない。そんな気がしただけだ。気の所為だった」
「ええ…」
「さあ! さあ!」
ガルガンは腰を下ろして準備万端だ。
「たまには楽したらどう? ガルガンもこう言ってくれてるんだし」
ジブリエルのニヤケ顔。
こいつは本当に好きだな。
当人の内心が分かってるから更に面白いんだろうけど。
「…では、少しだけ…」
ヒルダは恐る恐るといった感じでガルガンの背中へ。
「ひゃっ?!」
ヒルダが珍しく高い声を出す。
「どこを触ってるんですか!?」
「どこって尻の近くを手で持たないと重く感じるだろうが」
「それは…図りましたね…」
「な、なんのことかな…」
「後、重いと言ったこと、忘れないですよ」
「別に重いなんて言ってない」
「覚えておいてくださいね」
「ああ。この感触を覚えておく」
「っ…?! もう!!!」
「あだ?!!」
ガルガンは頭を思いっきり叩かれた。
砂漠の中を歩いて十日が経過した。
前回と同じ感じなら後一週間ぐらいでストライドに着くは筈だ。
しかし、俺達の前方に異変を見つけた。
砂が吹き飛ばれたようにその一帯だけ地面の土が見えていたのだ。
「これ、どう思う?」
「最初からこうなってたってわけじゃないのよね?」
「ああ。前にこの辺りを通った時はこんなのはなかった」
「見に行ってみよう。何か分かるかも」
「危なくないか?」
「何も分からないまま先を進む方が危険です。向こうにもいくつか見えてますし、これがなんなのか知っておいた方がいいと思います」
「そうね。行きましょう」
俺達は砂を下って下の地面へと足を踏み入れる。
「普通の地面みたいだけど…」
「そうね…」
実際に地面を触ってみると確かに普通の土の感触だ。
特にこの地面が特別という感じはない。
何処にでもありそうな普通の土だろう。
一体なんなんだこれ。
ここでなにかあったとは思うんだが…。
「他のところも見てみましょう」
「分かった」
それから俺達は他にもあったこの不思議なクレーターを探ってみた。
が、特にこれといって変わったところはなく、至って普通の地面だった。
「特におかしなところはなかったですね」
「そうね。一体誰がこんなこと…」
「何はともあれ害はなさそうでよかったわ」
「うん」
「どうする? もう少し探ってみるか?」
「いえ、ここまでして何も無いなら恐らく何も無いでしょう。魔物や人の気配もないですし、先に進みましょう」
「そうだな。何かあったら教えてくれ。いつもより警戒して歩こう」
「そうですね」
それから俺達はストライドに着くまでの一週間程の砂漠の旅を警戒しながら進んだ。
しかし、警戒とは裏腹に特に何かあるというわけではなかった。
逆に何も無さ過ぎて不気味なぐらいだった。
魔物もいなければ、砂嵐を見ることもなかった。
恐らく前回より早くストライドまで来れたと思う。
もしかしたら、カリム達なら何か知っているかもしれない。
ストライドに着いたら聞いてみよう。
街を立て直すみたいなこと言ってたしまだ居る筈だ。
そういえばあの七武衆達どうしてるんだろうか。
しっかり仕事をして冒険者ギルドを立て直してるんだろうか。
まあ、その辺のことも行けば分かるだろう。
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