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第百十三話 ヒカリとの別れ

〜ソラ視点〜


 次の日の早朝。

 暗い夜を太陽の陽射しが照らし段々と明るくなってきた頃、俺は目が覚めた。


「まだ早いな…」


 俺は眠い目を擦りながら身体を起こす。

 周りを見渡すと誰も起きていない。


 流石に早いしもう少し寝るか。


 そう思い二度寝をしようとした時、


「んん……」


 眠そうに目を擦りながらヒカリが体を起こした。


「ああ…おはようございます…」


「ああ、おはよう」


 ヒカリは眠そうだ。

 家が目の前なので家の中でもいいんじゃないかと言ったんだが、ヒカリは外がいいと言って結局みんなと一緒に寝た。

 最後だからな。

 寂しいのかもしれない。


 と、そんなことを考えていると、


「あの…ソラさん。少しいいですか?」


「ん? どうした?」


「一緒に顔でも洗いに行きませんか? 少し歩いたところに小川があるので」


「いいけど…」


 珍しいな。


「では私に付いてきてください」


「ああ」


 それから俺はヒカリに案内されて小川へと歩く。

 こうやってヒカリと二人きりでいるなんて今まであっただろうか。

 基本的にはみんなと一緒にいるからな。


「ソラさんには色々と迷惑を掛けてしまいました」


 前を歩くヒカリが言う。


「そんなことない」


「いえ。ソラさんだけじゃなくてみなさんにも迷惑を掛けました。エクスドット大陸に行きたいって我儘も聞いてもらって」


「別にそんなの気にしなくていいよ。迷惑なんて思ってるやつなんていない。ヒカリと一緒に旅を出来てよかったよ」


「…ありがとうございます」


 振り返り立ち止まったヒカリは猫耳をピンとさせながら礼を言う。


「前に私が言ったこと覚えてますか? 本当の絆を知りたいって」


「ああ」


「私、分かりました。私が感じた強い絆の正体」


「正体か…」


 そう言われると気になるな。

 ヒカリは俺達との旅でどう感じてどう思ったんだろう。


「私が感じた他の人とは違う、みんなから感じだ絆の正体。それは思いやりと信頼なんだと思います」

「今まで全くなかったとは思いませんが、本当の意味で思いやりや信頼はなかったんだと思います。どこか自分の為にやっておいた方がいいという考えがあったんだと今なら思います」

「でも、みんなはお互いを思いやり、お互いを信頼し、そして、それを自然と、当然のようにやっている。自分の為とかじゃなくて、相手の為にやってあげたいという無償の愛のような、そんな絆があったんだと私は思いました」


「…そうか」


 無償の愛か。

 確かに見返りを求めるみたいなことはないな。

 言われてみるとそうなのかもと思わされる。


「私もみなさんにお返しが出来るように頑張りたいと思っています」


「お返し?」


「私だけ貰ってばかりなので、私からもなにか与えられるような、そんな人になりたいんです」


「…そうか。随分立派になったな」


 俺は思わずヒカリの頭を撫でた。


 なんか嬉しくなっちゃった。


 すると、ヒカリはしっぽを左右にゆらゆらと揺らす。


「私、頑張ります! それでヒルダさんに負けないぐらい強くなります!」


「ヒルダよりか。じゃあ、猛特訓しないとな?」


「はい!」


「ヒルダが聞いたらきっと喜ぶぞ」


「えへへ…」


 ヒカリは照れくさそうに笑った。




 それから時間は経ち、朝食を済ませた俺達。


「では、改めて。これから師匠はホーラル大陸へお一人で向かうということでよろしいですか?」


「ああ。お前達には悪いがセレニス大陸は任せた」


「分かりました」


「じゃあ、私達はそろそろ行きましょうか」


「そうね」


「うん」


 俺達は出発の準備を進める。

 ヒカリとオルファリオンとはここでお別れだ。

 もう少しゆっくりしたいところではあったがあまり時間もないので仕方がない。


「よし。みんな準備は出来た?」


「ああ」


「ええ」


 シャーロットへみんなが返事をする。


「それじゃあ行きましょうか」


 全員が荷物を持つ。

 すると、エリシアとリフが、


「改めて、娘をここまで送っていただきありがとうございます」


「皆さんにはどれだけ感謝してもしきれません。本当にありがとうございます」


 そう言って頭を深々と下げた。


「気にしないでください。私達は当たり前のことをしただけですから。ヒカリちゃん、ここでお別れになっちゃうけど元気でね」


「はい。ユリアさんにはいつも優しくしていただきました。ありがとうございます」


「それじゃあ、またね」


「元気でいるのよ?」


「はい。シャーロットさんもジブリエルさんもお元気で」


「短い間だったがなかなか面白い時間だった。人の子供と会うことなんてほとんどなかったからな。元気でやれよ」


「ガルガンさんも」


「ヒカリ。わたくしが教えたことを忘れずに剣の鍛錬に励んでください」


「はい」


「でも、重荷に感じたら…」


 と、ヒルダが何かを言おうとした時、ヒカリがそれを遮って言った。


「私は強くなります。ヒルダさんといつか肩を並べるように」


 ヒカリの言葉を聞いたヒルダは少し驚いた反応をすると微笑んだ。


「分かりました。では、わたくしもうかうかしていられませんね」


 二人の会話を聞いてると心がほっこりするな。


「ヒカリ。最初にヒカリに会った時よりも精神的にも肉体的にも成長したと思う。俺が想像していたよりもずっとな。だから心配はしてない。ただ、無理はするなよ」


「はい。ソラさんには色々と迷惑を掛けてしまいました」


「別に迷惑なんて思ってないよ」


「…ソラさんならそう言ってくれますよね…。ほんとにありがとうございます」


 そう言うとヒカリは頭を下げた。


「それじゃあ、行きましょうか」


「お気を付けて」


「じゃあな!」


 俺達は手を振ってヒカリと別れる。

 すると、ジブリエルが、


「ヒカリ〜!!! 無茶しちゃダメよ〜!!!」


「っ…! はい!」


 ジブリエルは少し嬉しそうにしている。


「なんかあったのか?」


 俺は気になり聞いてみる。

 すると、ジブリエルはニヤニヤしながら、


「まあ、そのうち分かるわよ。どうなるかはまだ分からないけどね」


「??? どういうことだ?」


「大丈夫よ。ほら、これからまた長い旅になるわよ。セレニス大陸に向けて、しゅっぱ〜つ!」


「……」


 たまにあるジブリエルの意味深な発言はなんなのだろうか。

 教えてくれたっていいと思うんだが。


 まあ、ヒカリがこれからどうなるのか楽しみだな。

 次に会えるのはいつ頃になるんだろうか。

 その時はきっと今より強くなってるだろうな。


 こうしてヒカリと別れた俺達は獣人族の村を後にした。

見てくれてありがとうございます。

気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。

今週は四話連続投稿予定です。


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