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第百六話 黒幕

「なあ、一体何があったんだ?」


 ジブリエルと一緒に外に出てきて真っ先に聞く。

 すると、彼女は周りを気にしながら誰もいないことを確認すると深呼吸をし、


「実はさっきの族長と一緒に来た男の獣人がいたでしょ?」


 そう話を始めた。

 俺はああと返事をするとジブリエルが続けて話す。


「あの獣人、今までこの村の子供達を売っていた犯人よ」


「はあ?!」


「ちょっと! 声が大きいわよ!」


 あまりの唐突の告白に大声を出してしまった。

 あの獣人が子供達を売っていた犯人。

 ということはヒカリもあの男に売られたということか。

 でも、どうしてそんなことを…。

 わざわざ自分の村の子供達を売るなんて。


「私も詳しくはまだ聞けてないけど絶対ヤバい奴なのには違いないわ」


「おお…」


「あの男、私達で何とか出来ないかしら」


「何とかって何する気だ?」


「あいつを捕まえるのよ。じゃないとこれからもヒカリみたいな犠牲者が出るのよ?」


「それはそうだが…」


 確かにそれはそうなんだが、問題はいくつかある。

 そもそもどうやってあの男が誘拐事件の黒幕だと証明するかだ。

 何も証拠がないのに言っても俺達が悪者扱いだ。

 ジブリエルが言ってるから真実かどうかは確かめなくてもいいんだけどな。


 後はあの男を告発することによってこの村がどうなるかだ。

 族長の息子が実は裏で子供達を売っていたなんて知れたら大混乱だ。

 混乱は免れないだろう。

 もしかしたら暴動が起きるかもしれない。

 他にも協力者がいて俺達が危なくなるとか。

 まあ、他にも考えればありそうだが、今回の件は俺とジブリエルだけで判断していい案件じゃない。

 まずはみんなに相談だ。


 俺はそう結論を出す。


「ジブリエル、これは俺達で判断できる案件じゃない。みんなに相談しよう」


「それはそうなんだけど、このままだとここを出立しそうじゃない。なのに、いきなりここに留まらせてくれって言ったら怪しまれないかと思って」


「それは…確かにその可能性はあるが…」


 じゃあどうする。

 どうやってみんなに伝える。

 それに、そもそもそうしたからって怪しまれるって言うのも考えすぎな気がする。


「とにかく一回みんなと合流しよう。これ以上は逆に怪しまれる」


「……分かったわ。でも、この件はどうにかするべきよ」


「それは俺もそう思ってる」


 それから俺達は何事も無かったようにヒカリの家へと戻る。


「落し物はあったの?」


 シャーロットが入ってきて早々聞いてくる。


「ええ」


 とりあえずみんなに伝えたいが、どうしたものか。


「それじゃあ長居するのも悪いしそろそろ行こうか」


「あ、いや…」


 ユリアの言葉に思わず声が出てしまった。

 ユリアが不思議そうな顔で俺を見る。


 どうしよう、何かいい手はないか……。


 俺は思わずヒカリの方へ視線を向ける。

 すると、彼女も不思議そうに俺を見ていた。


「「「?」」」


「どうかしたんですか?」


 みんなが俺に視線を向ける。

 流石にこれ以上は怪しまれる。


「いや…その…ヒカリとこれで別れるのかと思うとなんだかなと思ってさ」


「そうですね。わたくしももう少しヒカリに剣を教えたかったです」


 よし。この流れで言うしかない。


「後一日だけ、ここに残るのはダメか?」


 どうだ? 悪くない作戦だろ。


 俺はジブリエルを見る。

 すると、なかなか気が利くわねとでも言いたげな顔で俺を見ている。


「私達は大丈夫だけど、ヒカリちゃんやヒカリちゃんのご両親がいいって言わないと…」


 と、ユリアのその言葉を聞いたヒカリが、


「是非! いいよね?!」


 エリシアへ勢いよく聞く。


「ええ。ヒカリの命の恩人ですもの。ゆっくりしていってください」


 エリシアの言葉にひとまず安堵する。

 これで一日だけはここに残れることになった。

 魔王の件も考えると一日で何とかしないとダメだろう。

 さて、これからどうするか。


「ワシらも歓迎しよう。ヒカリをここまで連れてきてくれた例にご馳走を用意しよう。アパン」


「はい」


 族長が例の男に声を掛けると一人で何処かへと出ていく件の男、アパン。


「それじゃあもう少しだけ一緒だね」


「はい!」


 ユリアの言葉にヒカリは嬉しそうに答えた。




 この日の夕方。

 ヒカリとの最後の時間を過ごした俺達。

 アパンのことを話すタイミングを見失った俺とジブリエルは夕食を摂る前に話すことにした。


「実はな…」


 ヒカリを除いたいつものメンバーにアパンが子供誘拐事件の黒幕だということを伝える。


「何よそれ?! じゃあ、自分の村の子供を売っていたってこと?」


「酷い……」


「許せませんね」


「……」


「だから、私達で何とかしたいと思ってるのよ」


「ふーん。それで泊まりたいっていきなり言ったって訳ね」


「ああ」


「でも、どうするの? いきなり言ったって信じてもらえないどころか余所者が失礼なことを、とかで追い出されるかもしれないわよ?」


「そこが問題なのよね。私もどうしようか困ってるのよ」


 せめて何か証拠でもあればいいんだが…。


 と、その時、


「遅くなった。獲物を狩るのに少し時間が掛かった」


 アパンが縄で縛られたデカい猪を持って俺達の前に現れた。

 俺は自然と緊張した。

 俺だけじゃない。

 みんなも多少は緊張しただろう。


 だからだろうか。


「何かあったか?」


 空気の違いに勘づいたのかアパンが尋ねてきた。


 どうする。もしかして、勘づかれたか?


「いえ、これからのことで少し話し合ってたの」


 ジブリエルが誤魔化す。


「今後…か。ふむ……お前達もしかして…」


 と、アパンがそこまで言い掛けた時、


「皆さん! 晩御飯の準備が出来ましたよ…ってアパン様! それはアロマポークじゃないですか! 良いんですか? こんなご馳走?」


「……ああ、問題ない」


 家から出てきたヒカリが興奮している。

 よっぽど珍しい猪なのだろう。


「ありがとうございます」


「気にするな。……お前達、今晩少し話がある」


 アパンのその言葉に俺達は警戒した。

 俺達に話とは一体なんの話だろうか。

 いや、このタイミングで話となれば恐らくそういうことだろう。

 俺はジブリエルへ視線を向ける。

 すると、難しそうな表情のジブリエルが、


「分かったわ」


 返事をした。


「うむ。では、また後で」


 そう言うとアパンはアロマポークを置いて離れて行った。


「なあ、どう思う?」


「まあ、バレてるわね」


 やっぱりか。

 でも、どうして俺達がアパンが黒幕だと分かったということがバレたんだ?

 そんなに会ってる時間も長くないのに…。


「あの…どうかしたんですか?」


 ヒカリは少し不安そうな表情をしていた。

見てくれてありがとうございます。

気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。

週一から三話投稿予定。

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