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第百三話 二度目のイーストポート

 船で揺られて二日が経った。

 その間、特にできることもないので俺達は束の間の休憩をしていた。

 歩くことも無くただ船に揺られるだけというのはこれから先、そう多くはないだろう。

 そう思って俺は横になっているユリアとその看病をしているヒカリと一緒に過ごした。


 シャーロットはたまに船の甲板へ出ていたがある程度時間が経つと戻ってきた。

 気分転換したかったんだろう。


 逆にヒルダは基本的に外にいた。

 たまに戻って来た時に何をしているのか聞いてみたが、なんでも体に帯びている電気の量を少し増やしてより早く動けるようにしているんだそうだ。

 それがどれだけ大変なことなのか俺には分からないが、俺で言うとずっと青い炎を纏ってるみたいなことなのだろうか。

 俺はあまり無理はするなと伝えたが、ヒルダはありがとうございますとだけ言ってすぐにまた部屋から出て行った。

 外にはガルガンもいるから大丈夫だとは思うが無理し過ぎて体を壊さないか少し心配だ。


 と、そんな船旅ももうすぐ終わる。

 シレジット大陸のイーストポートの港が見えてきた。


「イーストポートが見えたぞ」


「そう。それじゃあ、ここからは歩きか馬車ね」


「そうね。獣人族の村にも寄らないとダメだし。これからはこんなに休んでいる暇はないわね」


 そうか。

 ヒカリとはもう少しで別れるのか。

 そう思うも寂しいな。

 今まで一緒に旅した仲間と離れたことはなかったからな。


 と、その時、ヒルダが部屋に入ってきた。


「そろそろ上陸の準備をしましょう」


「やっと長い船旅が終わったわよ、ユリア?」


 ジブリエルの言葉にユリアは消えそうな声でうんと答えた。




 それからイーストポートへ上陸した俺達。


「やっと陸に着いた……」


 ユリアが疲れきった声で言う。

 戻ってきた第一声がこれか。

 余程辛かったのだろう。

 これから船に乗る機会があったとしてできるだけ避けた方がいいかもしれないな。


「そしたらこれから馬車があるかの確認と食料の調達をするわよ」


 シャーロットが意気込む。


「どこ行きの馬車に乗るんだ?」


「そうね…とりあえず西の方角に進めればいいから適当に探してみましょう。どの馬車に乗ってもどうせ途中で降りることになるだろうし」


「そうか。だったら馬車を探してくる組と食料調達組で二手に分かれるか。その方が早いだろうし」


「そうね。なら、私は良さそうな馬車がないか見てくるわ。ジブリエルは?」


「そうね〜私も馬車を探す方にしようかしら」


「私は食べ物を調達してくるね…」


 体調が悪そうなユリアが言う。

 歩けるんだろうか。


「じゃあ、俺もユリアの方に行くよ。ヒカリ、手伝ってくれ」


「分かりました!」


「では、わたくしはシャーロットの方に行きます」


「おっ、なら俺も一緒に…」


 と、ガルガンがヒルダと同じ方に行こうとすると、


「いえ、あなたは大きくて建物の中に入れないと思うので食材を運ぶのを手伝ってあげてください」


 そう言ってガルガンを別の方へ行くことを勧めた。


「なに?!」


 ガルガンは思わず声が漏れる。

 すると、その時、


「なら、私がユリアの方に行くから代わりにガルガンが一緒に行ってあげなさいよ」


 ジブリエルがニコニコしながら言う。

 今までジブリエルがこういう顔をする時は何かを企んでいる時だ。

 何する気だ?


「ですが、それでは…」


「まあまあ。いいからいいから」


 そう言ってユリアの方へと近付くジブリエル。


「それじゃあ、後は自分次第よ、ガルガン?」


「お、おう…」


 ガルガンは戸惑いながらヒルダの方へ近付く。


「さ、私達は食料の調達に行くわよ」


 そう言うとジブリエルは一人で先を行く。


「おい! 全く…一時間後にここで落ち合おう」


 俺はそう言ってジブリエルの後を追う。


「ユリアさん、行きましょう」


「うん」


「それじゃあ、私達も行きましょうか」


「ええ…」


「おう」


 それから二手に分かれた俺達、食材調達組は旅に必要な食材を調達した。

 あまり買いすぎても色々不便だということで必要な分しか買わないのだが、ガルガンがいるのでいつもよりも多めに購入した。

 足りない分は何処かの村に寄ったり、現地で調達すればいいだろう。


「さて、それじゃあ元の場所に戻りましょうか。そろそろ一時間経つ頃でしょう」


 ジブリエルがそう言って前を歩き出す。


「なあ、なんでガルガンをあっちに行かせたんだ?」


 俺は気になって興味本位で聞いてみる。

 すると、ジブリエルは、


「その方が面白そうだからに決まってるじゃない」


 ニヤリと笑いながらそう言った。

 やっぱりな。

 そんなことだろうと思ったよ。


「あんまり二人のことをからかったらダメだよ?」


 と、陸を歩いていつもの調子を取り戻したユリアがジブリエルへ忠告する。

 が、しかし、ジブリエルはチッ、チッ、チッ、といった指をユリアへ向かって振る。

 ほんとに何を考えてるんだろうかこの妖精は。


「ユリア、あなたは大事なことを忘れているわよ?」


「? 大事なこと?」


 なんだろうか。

 その場にいた全員が不思議そうにジブリエルの言葉を待つ。

 すると、彼女は仕方ないわねぇと言いたげな反応をしたかと思うとユリアに向かって、


「私は心の声が聞こえるのよ? つまり、少しでも心に思ったことも私には筒抜けってこと」


 そう言った。


「う、うん…」


 戸惑いながらも次の言葉を待つユリア。


「つまり、ユリア。あなたが誰をどんな風に思ってるのか言ってもいいのよ?」


「なっ…?!」


 ジブリエルは勝ち誇った顔、というかドヤ顔にユリアは驚愕の表情だ。


「私の標的はガルガンだけじゃないってことを…ちょっ、ちょっと…?!」


「待ちなさい!」


「おい!」


 迫るユリアから逃げるジブリエル。

 なんか前にもこんなことやってたような気がするな。

 あの時は俺がシャーロットから逃げたんだっけか。


「ヒカリ、行くぞ」


「はい!」


 俺達は二人に遅れないように後を走って追い掛けた。


 それから集合場所に着いた俺達。


「あ〜…何やってんの?」


 シャーロットの第一声。

 それもその筈、ジブリエルは今ユリアに頬をつねられていた。


「大丈夫だから気にしないで」


「う、うん…」


「あろ、ユリアさん。いらいです…」


「お仕置きです」


「まあ、二人のことは一旦置いておいて。それで馬車はどうだった?」


 俺が聞くとシャーロットはまあいいかという反応をする。


「一応、ヒルダに獣人族の村がある場所を大体聞いたからその近くにあるアルパナっていう村に向かうことにしたわ」


「アルパナか。それってどれぐらい掛かるんだ?」


「大体一週間ぐらいらしいわよ」


「一週間か…」


 しばらくは馬車の旅になりそうだな。


「明日の朝早くに出発するみたいだから今日は早めに休みましょう」


「分かった。てことらしいぞ?」


「うん」


「分かっら…」


 ジブリエルはいつまでこの状態なんだろうか。

 まあ、自業自得だな。

 しかし、ジブリエルはなんのことを言っていたんだろうか。


 この日、俺達は早めに休んで明日に備えることにした。

見てくれてありがとうございます。

気軽に感想や評価、ブックマーク等をして下さい。嬉しいので。

週一から三話投稿予定。

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