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第5話 自分らしく生きて

誤字報告くれた方、ありがとうございます。

翌日

今日は、いよいよ本格的に魔法の練習をするらしい。

俺の魔法の先生になってくれるのは、もちろんモルリジューズ。

そして何故かリーシャもいる。

仕立て屋の仕事はどうしたのか聞いてみたら、リーシャは仕事は休みだと言った。

リーシャに聞いた話では、店番は妹と交代でやってるから大丈夫なんだとか。

まあ、そういうことならいいんだけどさ……


俺たちは今、モルリジューズ宅の庭にいる。

彼女の家は豪邸なので、物凄く広い。

これでもかってくらい広い。

こんなに広かったら手入れが大変そうだ。

手入れは魔法でやるのか?


そんなことを考えながら、俺はモルリジューズとリーシャの方を見る。

モルリジューズは、魔法で椅子を作り出し、そこに座っている。

リーシャも同じく、モルリジューズの隣に立っている。

一体何をするつもりなんだろう……


「まず、最初の段階でお前がどれぐらい魔法を扱えるか確かめる必要がある。そこで、私が出した課題をクリアしてもらう。」


え、授業形式で魔法を教えるんじゃないのか!?

いきなりテスト!?


だがモルリジューズの表情は真剣そのものだ。

これはふざけてはいけない雰囲気だ。

俺は気を引き締めて、モルリジューズの次の言葉を待った。

彼女は続けて話す。


「何、そんなに難しく考えなくていい。お前の目の前にある原木を、今できる魔法を使って破壊してみろ。」


なるほど、それなら簡単そうだな。

と思ったが……

俺は今までまともに魔法を使ったことがない。

俺はどうすればいいか戸惑っていると、リーシャが俺に声をかけてきた。


どうやらアドバイスしてくれるみたいだ。

俺は素直に聞くことにする。

彼女曰く、


「魔法は想像力が大事!頭の中でイメージがしっかりできていれば簡単にできるよ!」


とのことだ。

俺は早速、目を閉じて、頭の中のイメージに集中する。

俺のイメージは台風で大木がなぎ倒される感じ。


よしっ、やってみるか……


俺はゆっくりと目を開く。

杖をを前に出して、空を描く。

そこから風が渦巻いているような感覚をイメージしていく。

すると、徐々に風の渦が大きくなっていくのを感じた。


これが魔力の流れなのか?


魔力をコントロールしながら、俺は少しずつ大きくしていく。


もう少しだ。

この感覚は楽しい。

もう少し魔力量を増やして……もっと強く……

まだだ……まだまだ……

限界まで…………よし、できたぞ!! 俺は勢いよく目を見開く。


そして、杖の先を木へと向けた。


魔法を放とうとした途端、俺の体に何かがぶつかったような気がした。

否、実際に何かが俺に激突したのだ。

俺は思わず尻餅をつく。


「いってて……誰ですか全く!邪魔しないでください!」


俺の周辺の風のうずは綺麗さっぱり無くなっていた。

そして、代わりに俺の視界には、見覚えのある少女がいた。

リーシャだ。

俺の身体の上に覆い被さるように倒れている。

俺の体と密着しているせいか、とても柔らかい感触が伝わってくる。

貧乳もこれまたいいなと思ってしまった。


リーシャはガバッと勢いよく起き上がって、切羽詰まったような表情をしている。


「ど、どうしたんですか……?」

「どうしたも何も、危ないところだったんだよ今!」


えっ……?どういうことだ?


俺はまだ状況が掴めていない。

すると、モルリジューズがため息をついた。


「はぁ……、まさかこれほどまでとは……」


「え……?」


「起き上がって周り見てみてよ!もうすごいことになってるんだから!」


私はリーシャに言われ、慌てて立ち上がる。


辺りを見てみると、私の周囲には無数の木々が横倒しになっていた。

まるで竜巻でも通ったかのように。


さらに、地面には大きな穴がいくつもあいていた。


もしかしてこれ全部俺がやったのか?

まだ魔法を放ってないのに?


いやいや、おかしいだろ。

俺は、自分がしたことの重大さに気づく。

モルリジューズは呆れた表情だ。


「さすが災厄の魔女の娘だな……。災害を産む天才だ。」


モルリジューズはそう呟いた。

災厄の魔女……


これはやばいな。


***

モルリジューズに魔法を教えてもらうことになって数日が経った。


またあの時の事が起きないように、魔力のコントロールの仕方を徹底的に教え込まれた。

おかげで、今では魔法を暴走させることはない。


モルリジューズの教え方は上手かった。

俺でも理解することができたし、魔法を放つときのコツなどもしっかりと教わった。

モルリジューズは教えるときは厳しいが、褒めるところはちゃんと褒めてくれる。

だから、俺はどんどん魔法を習得していった。


モルリジューズと共に生活していく中で、ひとつわかったことがある。


それは……


モルリジューズが超絶甘党だった事だ。

彼女は隙あらばお菓子を食べている。


そんなに食べて糖尿病にならないのかと聞いてみたところ、魔女は病気にならないらしい。

便利だな。


ある日、モルリジューズが食べる用のお菓子が尽きたので、補充するために街へおつかいに行くことになった。


「パシリかよ……」


俺はボソッっと独り言を言ったつもりだったのだが、モルリジューズの耳には届いていたようだ。

彼女はギロッとした目つきでこちらを見る。


怖い。


だが彼女はすぐに優しい表情に戻った。

どうやら聞こえなかったフリをしてくれたみたいだ。

優しいな。

俺は彼女の優しさに感謝しつつ、街へと向かった。


***

街に着くと、俺は真っ先に菓子屋へと向かう。

その店は、この世界では珍しい和風テイストのスイーツを売っている店で、俺はそこでいつも買っていたのだ。


俺はすぐに買い物を終えて店に出る。


家を出る前にお金を大量に渡されたので、結構余ってしまった。

モルリジューズ曰く、


「お金は余ったら自分のものにしていいし自由に使ってもらって構わない」


とのことだ。


俺は貰った金で何をしようかと考えていると、前方に俺と同じぐらいの男の子がぽつんと突っ立っているのが見えた。


何やら困っている様子だ。

俺はその子に声をかけることにした。

大丈夫か?と声をかけたら、男の子はビクッと体を震わせて後ろを振り向いた。

そして、目に涙を浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。

どうやら迷子になってしまったらしく、母親を探しているという。

だが俺にはどうすることもできない。


なのでおれはあることを思い付いた。

母親が迎えに来るまで男の子と一緒に遊んであげようと思ったのだ。


俺は早速、一緒に遊ぶことを提案した。

すると、男の子はパァっと顔を明るくし、喜んだ。そして二人で遊び始めた。

鬼ごっこをしたりかくれんぼうしたり……

とても楽しかった。


男の子は俺の事を『魔女さん魔女さん!!』と慕ってくれた。

俺も弟ができたようで嬉しく思った。


しばらく時間が経ち、俺達は疲れてベンチに座って休んでいた。

俺の隣には、先程の少年が座っており、俺の手を握ってくる。


手を握ると安心するんだよな。俺にもわかるぞ。

俺も昔は母さんによく握ってもらったっけな。

懐かしいぜ。


男の子は神妙な顔をして俯いた。


俺はどうしたの?と声をかけたら、


「ボク、嘘ついた。」


と言うので、どういうこと?と聞き返すと、


「ボクね、母親とはぐれた訳じゃないんだ。」


と言ってきた。


え……じゃあなんでこんなところにいたんだ……?


男の子は続けて言う。


「ボクのお母さんはね、魔女なんだよ。」


「はぁ、そうなんでんすね」


「え、驚かないの?」


俺は「別に?」と返すと、彼は少しムキになったように、いやいや驚くから!と言った。


なんで驚く要素があるんだ?

別に変じゃないだろ。


「私のお母さんも同じ魔女ですよ?」


「そういうことじゃないんだよ……」


私の言葉に、目の前の男の子は頭を抱えてしまった。

一体どうしたというのだろうか。


「魔女の子供はみんな女で産まれてみんな魔女になるでしょ?」


え、普通に初耳。

人間と同じように男女均等に産まれてくるもんだと思ってた。


俺は適当にそうですね、相槌を打っといた。


ん?待て。

てことは…………


「え、あなたの女の子だったんですか!?」


「うん……そういう反応になるよね…」


私は驚きの声を上げた。

だってまさか男だと思っていた人が女性だったなんて思わないでしょう……


私は心の中でそんな事を思いつつ、改めて彼の顔を見る。

確かに言われてみると、中性的な容姿をしている。


「魔女の子供は皆、女らしく生きるよう躾られるはずなのに、ボクは生まれつき男のような精神をもってしまったんだ。お母さんはそんな僕を気味悪がってしまうから、ボクは家を飛び出したんだ。」


そうなのか……それは辛いだろうな。

俺がもしその立場だったら、きっと耐えられないだろう。

俺はそんなことを考えていた。

ふと、隣を見ると、彼女は今にも泣き出してしまいそうな表情をしていた。

どうやら相当辛い思いをしてきたようだ。

俺に何かできることはないかと考える。


……そうだ。


なにか元気づける言葉をかけてあげよう。でもどんな言葉を言えばいいのかな……

よし、思いついた。

これなら彼女の心を癒せるかもしれない。

俺は彼女の目をしっかりと見つめてこう言った。


「私は君の味方です。別に、女なのに心は男とか、変じゃないですよ。女らしく、男らしくとか考えずに、自分らしく生きてください。」


すると彼女は目を見開いて驚いていた。

その後、彼女は涙を浮かべながら、ありがとう、と言ってくれた。


彼女は帰ったら母親を説得しに行くらしい。


帰り際に、彼女に呼び止められた。

なんだろう。


彼女は俺に近づき、両手を握られる。


え、なに……


「大きくなったら、ボクのお嫁さんになってくれる?」


「は?」

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