第2話 仲良いなこの2人
はい、お察しの通り転生しました。
俺は魔法が使える”女の子”に生まれ変わったらしいです。
はい。俺は一生あのババァを恨みます。
なんでこんな冷静なのかって?
いやぁね、別にこのままでもいいかなぁって。
最初は嫌がってただろって?
いやさぁ…
だって……
俺の母親……超絶巨乳だったから…
いやまぢ最高っしょ!! まじ神!! しかも優しいし、俺のこと愛してくれてるみたいだし。
ただ一つだけ不満があるとすれば……
父親……いないんだよなぁ……。
でもそんなことはどうでも良い!! 今は母親がいるだけで十分幸せだからな!!!!
***
俺の名前はルミナス。
母親がつけた名前だそうだ。
母親はセレスティアという。
父親は知らない。
物心ついた時からいなかった。
だが俺は寂しくない。
なぜなら母さんがずっとそばにいるからだ。
俺は5歳になった。
5歳にしては難しい言葉も知っているので母さんからは少々気味悪がられた。前世の記憶がある分、精神年齢は大人だからなぁ……
まあ母さんは俺の事は天才の子ってことで片付けたらしいけど。
ある日、俺はいつものように家で本を読んでいた。
すると突然家の扉が開いた。
そこには一人の女性が立っていた。
服装からして魔女であることはわかる。
その女性は黒い髪で、身長が170cmくらいありそうな女性だった。
顔立ちは整っていて美人である。
胸も大きく、スタイル抜群。
彼女はゆっくりとこちらに近づいてくる。
なんだこの人……綺麗すぎる……。
それになんか怖い……
一体何者なんだ……
そして、彼女は俺の前に立った。
彼女の目は赤く輝いている。
まるで血のような赤さだ。
彼女から放たれる威圧感は凄かった。
思わず泣きそうになる。
すると突然、彼女がしゃがみ込み、俺の目線に合わせてきた。
近くで見ると更に美しい。
俺は少しドキッとした。
しばらく見つめ合っていると、彼女は微笑みながら口を開いた。
それはとても優しくて、温かみのある声だった。
「いい子だな。私のこの赤い目見ても泣かないなんて」
そう言いながら頭を撫でてくる。
不思議と安心する。
「セレスティアは今何処にいる?」
誰だろう? 母さんの名前を知ってるってことはかなり親しいのか?
「お母さんは今、庭の畑の世話をしていますよ。もうすぐ帰ってくると思いますが…」
「そうか、ありがとう。」
するとその人は立ち上がり、窓の外を見た。
「セレスティア、来たぞ。」
「あら!モンちゃん!」
「……その呼び方はやめろ。」
やっぱり知り合いなのか……。
敵とかそういう類いだったら心踊ったんだがな。
それにしても、モンちゃんって……随分可愛いあだ名だな…本人は嫌がってるが。
「あの母さん…この人は…」
「あら!そういえば紹介してなかったわね。この子はモンちゃん!私の元弟子よ!」
「おい!だからそのモンちゃんって呼び方やめろ!ルミナスがそっちで覚えちゃうだろうが!」
「あらごめんなさいね〜」
なるほど、師匠と弟子の関係だったわけだ。
ていうかさっきから思ってたんだが、この2人の会話に全くついていけない。
まず、モンちゃんって呼ばれてる人が誰かわからないし、そもそも名前が分からない。
とりあえず、自己紹介することにした。
彼女の名前はモルリジューズというらしい。
彼女は昔、性奴隷として闇オークションで売られ、母さんがモルリジューズを買い取ったらしい。
そして、母さんの優しさに触れ、母さんの弟子になることを決めたんだそうだ。
性奴隷か……ファンタジーものでは定番かもな。
「そんなモルちゃんを私が呼んだ理由はね………」
「おい。」
「……そんなモルリジューズちゃんを私が呼んだ理由はね!ルミナスに魔法を教えて欲しいのよ!」
「……そんなことだろうと思ったよ。」
……なるほど?
つまり俺はモルリジューズさんの弟子になるって言うことか。
ん?俺はてっきり母さんから魔法を教えて貰えると思ったんだが…。
「モルリジューズさんから魔法を教えて貰えるのは別にいいですけど、お母さんは教えて下さらないんですか?」
「あ…えっと、それはね…」
「セレスティア、まだ言ってなかったのか?」
「ううっ…ちょっと言いずらいっていうか……」
なんだなんだ?何を言おうとしている?
まさか……
俺に言えないような秘密でもあるというのか?
うーん…すごく気になる…すごく気になるぞ!
そんな俺の様子を見て察した母さんは慌てて言った。
母さんは俺を抱きしめてきた。
「ごめんね…!いずれちゃんと教えてあげるからね…!」
「は、はあ…わかりまし…ムグッ」
む、胸が顔に……
「はぁ…とりあえずセレスティアは訳あって魔法を教えてあげられない。変わって、私が教えてあげよう。」
おぉ……なんとも頼もしい限りだ。
これで俺も晴れて魔法デビューか。
厨二心が擽られるじゃないか。
***
俺から離れた母さんは突然「あっ!」と声を上げた。
どうしたんだろう、と首を傾げていたら、母さんは何やら細長い箱を持ってこちらに近づいてきた。
「誕生日の時に渡そうと思っていたんだけどね、今の方がいいかって思ったの。」
「…開けていいですか?」
「勿論!」
箱の中に入っていたのは、とても綺麗な杖だった。
先端に黄色の宝石が付いているのが特徴的だ。
俺にとっての初めてのプレゼントである。
とても嬉しかった。
前世で俺は今まで一度もプレゼントを貰ったり、誕生日を祝って貰うということをされたことがなかった。
俺には親がいない。
物心ついた時からいなかった。
事故で亡くなったらしい。
親戚の家に住むことになったが、親戚たちは俺に全くの無関心で、物もまともにプレゼントして貰えなかった。
だから今世で、こんなに立派なものを貰えて、本当に嬉しい。
くそ、涙が出てきた。
俺こんなに涙もろかったっけ?
とりあえず感謝だ、感謝の気持ちを伝えることを優先しよう。
「お母さん……、ありがとう…!」
「ふふ、こんなに泣いちゃって。魔女になれることがそんなに嬉しいの?」
「そういうことでは無いんですけど…」
そう言いながら、俺は手に持った杖を見つめた。
「明日からみっちり教えてやるからな。」
モルリジューズさんのその言葉を聞いて俺は、はい!と答えた。
この人、見た目は怖いが、意外といい人かもしれないな……。
「そうだ、お前はこれから私の家に住むことになる。セレスティアとは暫しの別れだ。」
「え”」
セレスティアはいままで聞いたことの無い声をあげた。
俺はセレスティアの顔を見る。
彼女は、まるでこの世の終わりのような顔をしていた。
おいおい…美人が台無しだぜ…。
「モルちゃん!」
「モルちゃんやめろ。」
「私そんなの聞いてないわよぉ!」
「言ってないからな。」
「私の家で教えるのじゃダメ?」
「ダメだ。」
「なんでだめなのよお〜」
「私の家とセレスティアの家じゃ遠すぎて往復するのめんどくさい。」
「私の家に住めばいいじゃない!」
「嫌だ。」
「モルちゃ〜ん!」
「だからやめろ!!!」
母さんがモルリジューズさんに抱きつこうとしたが、彼女はひらりと避けて母さんは床にダイブした。
母さん……痛そう。
それにしても、この2人は仲が良いんだな。
モルリジューズさんは母さんの事を避けているが、なんだかんだで嫌いではないのだろう。
それに比べて母さんは、モルリジューズさんを溺愛している。
この二人を見ていて悪い気はしないな。
美女ふたりのイチャイチャ…
おっと、新しい扉を開いてしまうところだったぜ。
結果的に母さんはモルリジューズさんに完全に論破され、俺は成人するまでモルリジューズさんの下で魔法を教わることになった。