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その魔女に祝福を  作者: 晴海翼
第二部:第三章 オリハルコン争奪戦
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242.魔狼族の総意

 背後で轟く音が段々と遠ざかっていく。

 リタはしきりに振り返りながら、大勢の鬼族(オーガ)と戦うレイバーンを心配していた。

 ひょっとしたら既に戦いを終えていて、自分達を追っているのではないだろうか。

 誰も居ない空間が、彼女の淡い期待を否定する。


「……リタちゃん」

「あはは、ごめんね。そんなにすぐ追い付けるわけないって分かってるのに」


 精一杯の強がりが、ぎこちない笑顔を作る。

 何十人もの鬼族(オーガ)が立ちはだかっていたのだ。すぐに追いつけるどころの話ではない。

 ふと、最悪の状況すらも考えてしまう。自分達も安全圏に居る訳でないにも関わらず。


「テメェら! もうこんなところに!」


 侵入者を迎撃する為に、続々と集まってくる鬼族(オーガ)

 その中の一人と遭遇をする。赤く染まった体躯に、二本の角を持った個体。

 自分よりも遥かに小さな存在を見つけると同時に、巨大な金棒が振り上げられた。

 

 本来、鈍重な種族である鬼族(オーガ)にしては素早い反応。

 けれども、まだ遅い。金棒が頂点に達すると同時に、鬼族(オーガ)の身体が痺れにより硬直する。


「邪魔だ!」


 銃口から迸る魔力の塊。

 金色の稲妻(ゴルトブリッツ)が、既に鬼族(オーガ)の身体を貫いていた。


「が……ッ!?」


 突然、身体の自由が奪われた事に鬼族(オーガ)は脳の処理が追い付かない。

 白眼を剥く直前に視界の隅に捉えたのは、鞭のようにしなる金色の髪を宙に躍らせる少女の姿だった。

 

「ゴメン、あたしたち急いでるから!」


 透明の刃から繰り出される冷気は、稲妻とは違う形で鬼族(オーガ)の身体から自由を奪う。

 急速に温度を失った鋼鉄の金棒は鬼族(オーガ)の皮膚と一体化する。

 違和感や痛みを感じる間もなく鬼族(オーガ)は意識を失った。凍り付いた巨体は、大きな音を立てて崩れ落ちる。


「――あっちの方から音がしたぞ!」「急げ!」


 城内に残っている鬼族(オーガ)の声がこだまする。

 一度の交戦が呼び水となり、更なる鬼族(オーガ)を呼び寄せる切っ掛けを生み出す。


「急ごう」


 動きが鈍いと言っても、相手は巨体。その歩幅は自分達の比ではない。

 立ち止まっていてはすぐに追いつかれると、シンはこの場を移動するように促す。


「わかった。リタちゃんも、行こう!」

「……うん、分かった」


 フェリーの訴えに賛同し、リタも追従する。

 目的を見誤ってはならない。一番大切なのは、小人族(ドワーフ)の長老を救出する事。

 鬼族(オーガ)に手間取っている時間はない。喧騒に紛れて邪神の男(アルジェント)が連れ去ってしまえば、その時点で自分達の敗北となる。

 後ろ髪を引かれる思いで、リタは鬼族(オーガ)の城を駆け抜ける。

 一刻も早く長老を救出する事が、彼と再会する近道なのだと自分へ言い聞かせた。


 ……*


「オラァァァァァァ!」

 

 城の入口で繰り広げられる戦闘は、激しさを増していた。

 黒狼の遠吠えと共に、歪に形を変える地形。一瞬の動揺を逃さず、カスピオが鬼族(オーガ)の喉を食い破る。

 次々と積み上げられていく戦闘不能の鬼族(オーガ)だが、彼らとてただ立っているだけではない。

 無謀とも思える人数で攻めて来た魔狼族とその仲間に気圧されては、末代までの恥だと己を鼓舞する。


「ヂョーシに……、ノるンじゃ、ネェ!」

「あぁ!? クソ、離しやがれっ!」


 喉を食い破られながらも、鬼族(オーガ)は力を振り絞って懐へ潜り込んだカスピオを丸太のような両腕で拘束する。

 カスピオが身を震わせても、指はがっしりと毛を絡みとっている。振りほどく事は叶わない。


「よぉし、そのまま手を離すなよ!」

 

 抱きかかえられたカスピオを目掛けて、青い身体を持つ鬼族(オーガ)が金棒を振り被る。

 刹那、鼠色の巨体と白銀の刃が鬼族(オーガ)の視界を横切る。

 無防備の脳天目掛けて打ち付けられようとする金棒が、カスピオの頭を捉える事は無かった。


「あ……?」


 白銀の爪によって裂かれたのは金棒と、鬼族(オーガ)の手首。

 直前まで自分の一部だった手首は地面に転がり、悲鳴を上げても主に応える事は無い。


「大丈夫か!? カスピオよ!」

「ありがと……よっ!」


 自分を抱きかかえて離さない鬼族(オーガ)の首を、肩を掻き切るカスピオ。

 口元を鮮血に染めながらも、彼は拘束から解放される。


 だが、彼らの安全が保障された訳ではない。

 息を突く間もなく、頭上に影が覆う。斧が、金棒が、大剣が。力任せに身を破壊しようと一斉に叩きつけられようとしている。


「ぐ、ぬ……!」


 襲い掛かる暴力を受け止めたのは、魔獣族の王(レイバーン)

 振り下ろされた武器が加速しきるその前に、獣魔王の神爪(レイシングスラスト)を装着した右腕が鬼族(オーガ)の武器を受け止める。


 勢い自体は弱められたが、鬼族(オーガ)にも意地がある。止められたなら、そのまま潰してしまえばいい。

 全体重を武器へ伝わらせ、レイバーンの腕を徐々に下げさせる。

 自分と同等の体格に、重量のある武器。いくら膂力に自信があるレイバーンといえど、支えきれない。


「レイバーン! くそっ!」


 カスピオは察していた。自分が逃げ遅れないように、レイバーンは敢えて鬼族(オーガ)の攻撃を受け止めたのだと。

 彼が作ってくれた猶予を無駄にしてはならないと、鬼族(オーガ)の群れにその身を滑らせていく。

 飛びかかっていたのでは遅いと判断した彼が攻撃を加えたのは、足元。鋭い爪が、鬼族(オーガ)の足首を裂いていく。


「ぐうっ!?」


 踏ん張りが利かず、己の力を支える事が出来なくなった鬼族(オーガ)は体勢を崩す。

 振り下ろしていた武器が天を向くのとは反対に、足首を裂かれた鬼族(オーガ)は無様に尻餅を着いた。


「へっ、ざまあ――」


 したり顔のカスピオだが、鬼族(オーガ)にも意地がある。

 崩れ落ちる身体。自由となった腕を思い切り、魔狼の背中へと打ち付けた。


「ガハッ!?」

 

 骨の軋む音がする。呼吸が出来ない。

 激痛と共に、カスピオの口元にべったりと纏わりついていた血が宙を舞う。

 

「カスピオ! ……ぐっ!」


 援護をしようとするレイバーンだが、獣魔王の神爪(レイシングスラスト)はまだ斧と大剣を受け止めている。

 地面へ縫い付けられている彼の腹を、鬼族(オーガ)の膝が打ち付けられた。


 二発、三発とレイバーンの腹にめり込んでいく膝。

 抜け出そうにも、上から体重が掛けられており動けない。

 レイバーンが出来る抵抗は、自らの膝を折らない事だった。


「テメェも、一体何なんだよ!? なんで獣人の癖に、そこまでデケェんだ!?」


 人間、妖精族(エルフ)小人族(ドワーフ)鬼族(オーガ)にとっては虫けらのように小さな存在と共に現れた男。

 純血の魔狼とは違う、混ざり者。獣人でありながら、自分達鬼族(オーガ)のような身体を持つ男。

 鬼族(オーガ)にとって初めて見る魔獣族の王(レイバーン)は、彼らの常識から外れた存在。


「余も……。知りたいぐらいだ……!

 今まで気にも留めてなかったが、こうも色々なものを目の当たりにするとな!」


 父も自分と似たような体格をしていた。

 確かに、自分より大きな獣人は臣下にいない。思い返せば、ルナールと初めて出逢った時も彼女は驚いていた気がする。

 不思議な事は沢山ある。自分の周囲だけで世界を識った風に振舞える程、自分が聡いとは思ってはいなかった。


 自分の個性として、この姿を受け入れていた。

 良く言えば、周囲も受け入れてくれていたのだからそれだけで良かった。

 悪く言えば、考えなかった。自分の出自に疑問を持たなかった。


 クスタリム渓谷を目指したのも、偶然だった。

 東に進めば祖先がいると知ってはいたが、あまり興味は湧かなかった。

 シン達が相談しなければ、きっと永遠に訪れなかっただろう。レイバーンにとっては、妖精族の里(いまのせいかつ)の方が大切だから。


 だが、知ってしまった。

 祖先の住まう地で、小人族(ドワーフ)がどうなったかを。魔狼族と、鬼族(オーガ)の関係を。

 その上で、獣魔王の神爪(レイシングスラスト)が自分の手元にある意味を自分なりに考えた。


 魔狼族と鬼族(オーガ)は、本当にずっと憎しみ合っていたのだろうか。

 かつて。少なくとも一度は、手を取り合おうとしていたのではないだろうか。

 この身と腕で輝きを放つ神器を鑑みて、そんな事を考えてしまった。


「余は一度、鬼族(オーガ)の王に逢ってみたい。話をしてみたいのだ!」

「黙れ! テメェみたいな得体の知れない奴をオルゴ様に逢わせられるか!」


 レイバーンの腕がふっと軽くなる。押し付けられていた斧と大剣が、再び宙に上げられたからだった。

 唐突に力の行先を失ったレイバーンは、体勢を崩す。何度も膝を打ち付けられた腹筋が、すぐに立て直す事を許さない。


 状況が変わる戦場で、レイバーンの時間だけが止まる。

 再び振り下ろされる大剣。横薙ぎに払われる斧。対処しなくてはならないのに、思考と反射が一致しない。

 レイバーンは歯を食い縛った。意味はないが、せめて悲痛な叫びを遠くに居るリタへ届かせないようにと。

 だが、ふたつの刃がレイバーンへ届く事は無かった。


「レイバーン!」


 自分に群がる鬼族(オーガ)を振り払った黒狼(リュコス)は、喉が枯れる程に吠えた。

 魔力を伴った声は、大地を揺るがす。大剣を持つ鬼族(オーガ)の足元を崩し、刃の進路を逸れさせる。

 横薙ぎの斧を振るう鬼族(オーガ)の斧は、足元が崩れた代わりに、盛り上がった岩が刃先を受け止める。


「リュコス、礼を言うぞ!」


 漸く思考に追い付いた身体が、大剣を持った鬼族(オーガ)を弾き飛ばす。

 次にレイバーンが見定めたのは、カスピオだった。

 

 鬼族(オーガ)によって身体を痛めつけられているカスピオは、身体を丸めている。

 彼に群がる鬼族(オーガ)を払いのけ、鬼族(オーガ)の群れと一度距離を置いた。


「……悪ぃな、王サマにリュコスよ」

「気にするな。こちらこそ、お主たちの援護に感謝しているのだ」


 一度呼吸を整え、改めて鬼族(オーガ)の群れと相対するレイバーン達。

 カスピオは痛がる素振りを見せてはいないが、相当なダメージが蓄積しているのは明らかだった。

 リュコスの顔も、疲労の色が濃い。先日からの連戦が、響いているようだった。


 一方で、鬼族(オーガ)はたった二頭の魔狼と一人の獣人を仕留めきれない現実に戦慄していた。

 元々、黒狼(リュコス)鬼族(オーガ)の間でも警戒されている存在だ。今更驚いたりはしない。

 しかし、俊敏な動きで自分達を惑わすカスピオが想定外の強さを見せている。

 銀狼(ヴォルク)黒狼(リュコス)以外にも、強い魔狼は存在していたのだと思い知らされる。


 極めつけは、突如現れた獣人。

 魔狼族の顔と鬼族(オーガ)の身体を持つ、異質な混血(まざりもの)

 何より、右手に装着された白銀の爪。鬼族(オーガ)も、その特徴を知っている。


 獣魔王の神爪(レイシングスラスト)。魔狼族に伝わる、王の証である神器。

 継承者である銀狼(ヴォルク)が、偽物の獣魔王の神爪(レイシングスラスト)を持っていたと暴かれたのは記憶に新しい。

 魔狼族は空中分解寸前だからこそ、たった二頭しかこの場に現れなかったのだと考えていた。


 だが、今は違う。目の前の獣人が、鬼族(オーガ)を混乱に陥れる。

 偽物の獣魔王の神爪(レイシングスラスト)が暴かれた状況で、敢えて偽物(それ)を身に着ける馬鹿者が存在するだろうか。

 粗暴で単細胞な鬼族(オーガ)でも判る。そんな事をすれば、今度こそ魔狼族に殺されてしまうだろうと。


 ならば、行きつく答えはひとつしかない。

 獣人(レイバーン)の持つ神器は、本物なのだと。

 

 圧倒的な数的有利にも関わらず、鬼族(オーガ)が攻めきれない理由はそこにあった。

 彼らは恐れている。神器が齎す、圧倒的な力が自分達へ振るわれる事を。


 ただし、あくまでそれは心情的な話。事情となれば、変わってくる。

 自分達の王。鬼武王の神爪(レクエルド)の継承者であるオルゴは言った。

 神器を掲げ、「魔狼族は、今日で完全に叩き潰す」と宣言してみせたのだ。


 ならば、自分達も退けない。

 例え神器が相手でも、退いてしまえば王に裁かれてしまう。

 距離を置いて生まれた間で、鬼族(オーガ)は再び己を鼓舞する。

 神器の後ろ盾による強気なのか、恐怖政治による弱気なのか。真実は、本人達さえも理解していない。


「しかし、やはり余たちだけでは骨が折れるな」


 愚痴混じりに、レイバーンが声を漏らす。

 覚悟をしていたとはいえ、鬼族(オーガ)の耐久力は想像以上だった。

 獣魔王の神爪(レイシングスラスト)の力を引き出せないかと、戦と獣の(ケルノス)神に祈りを捧げる余裕すらない。

 

「フン。威勢よく仲間を送り出しておいて、弱音を吐くとはな」

 

 呆れるようにリュコスが呟くと、レイバーンはばつの悪い顔をした。

 後悔はしていない。一番大切なのは、共に過ごした仲間の救出。皆を巻き込む訳には行かない。

 自分がこの場に留まっているのは、ただの我儘だと自覚している。

 格好をつけすぎた感は否めないが、判断は間違っていないはずだった。


「それを言われると耳が痛いのだが……。

 余としては、鬼族(オーガ)の王にも逢ってみたいのだがな……」

鬼族(オーガ)を全て倒せば、出て来ざるを得ないだろう」

「そういう意味ではないのだが……」


 好戦的なリュコスに、レイバーンは顔を顰める。

 ずっと敵対していた魔狼族にとって、レイバーンが意図するものは理解しがたかった。


「おい、オメェら。気を抜くなよ。奴さんは、また来るつもりみたいだぜ」


 全身の毛を逆立たせながら、カスピオが注意を促す。

 彼の言う通り、鬼族(オーガ)は次の瞬間にも自分達へ飛びかかってきそうだ。

 気に当てられたレイバーンとリュコスも、臨戦態勢へと入っていく。


 だが、体勢とは裏腹に鬼族(オーガ)は中々一歩を踏み出さない。

 訝しんだレイバーンと二頭の魔狼は、向かい合う鬼族(オーガ)が慄いているようにも見えた。

 その理由を察したのは、彼らの鋭敏な嗅覚。


「……む?」


 戦場に充満する血の臭いとは別に、獣臭が鼻腔を擽る。

 両脇にいる魔狼のものではない。もっと後ろから、一頭、二頭……どころではない。

 大量の魔狼の臭いが、瞬く間に自分達の元へと近付いてくる。


「リュコス! カスピオ! テメェらばかりにいい恰好はさせねぇぞ!」

「これだけデケェ喧嘩なんだ、おれたちも参加させてもらうぜ!」


 背中を震わせるのは、魔狼の遠吠え。

 振り向いた先には、大量の魔狼が列挙していた。

 大怪我を負った銀狼(ヴォルク)以外の魔狼。その殆どが、鬼族(オーガ)の城へと集まってくる。


「テメェら、結局来たのか……。ったくよ、それなら最初から来いっての」


 半ば呆れ気味に、カスピオが毒づく。

 言葉とは裏腹に、彼の口元は僅かに緩んでいた。


「あぁ!? 助太刀に来てやったんだから素直に喜びやがれ! ボロボロの癖によ!」

「はぁーっ!? オレの活躍も見てない癖に、好き勝手言ってくれるじゃねぇか!」


 先刻までの痛みはどこへ消えたのやら、口喧嘩を始める魔狼達。

 呆気に取られるレイバーンの隣で、リュコスが「煩い」と呟いていた。


「お主たち、良かったのか? その、今回の突入は魔狼族の総意ではないと思っていたが……」


 魔狼は互いに顔を見合わせ、レイバーンの問いに答える。


「まぁ、確かに王やヴォルクやリュコスのことは色々あるがよ。

 めんどくせぇから、鬼族(オーガ)をぶっ潰した後でもいいと思ったんだよ。

 どうせ、大した手間でもねぇだろうし」


 他にも理由はある。魔狼族には、レイバーンの言葉がずっと胸に突き刺さっていた。

 偽りの王だったとしても、銀狼(ヴォルク)黒狼(リュコス)が自分達を支えていた事には変わりない。口には出さずとも、心では認めていた。

 彼らが積み上げて来たものまで壊してはならないと、魔狼族は立ち上がった。

 

「んだと!? 丁度いい、こっちこそ犬ッコロを纏めてぶっ潰してやるよ!」


 魔狼族の発言に聞き捨てならないと、鬼族(オーガ)が吠える。

 睨み合う両者に、これ以上の言葉は要らない。魔狼族と鬼族(オーガ)の争いは、瞬く間に再開される。


「……レイバーン。貴様は、先へ行け。

 小人族(ドワーフ)を救い、邪神とやらを倒し、鬼族(オーガ)の王に逢うのだろう。

 こんな所で油を売っている暇はない、急げ」


 魔力と血が飛び交う中、リュコスはレイバーンが先へ進む事を促す。

 目的が一致した魔狼族は、決して鬼族(オーガ)に引けを取らない。

 ここにお前が居る必要はないと、黒狼(リュコス)の眼は語っていた。


「……うむ。なら、お言葉に甘えさせてもらおう。

 ただし、無理はするなよ!」

「あんな化物に挑んでいた奴に、言われたくはないな」


 『強欲』(マモン)との戦いを思い出し、リュコスは鼻で笑う。

 「違いない」と、レイバーンも思わず笑みを溢しながら、鬼族(オーガ)の群れを突っ切っていく。

 その先により激しい戦いが待っていると知りつつも、彼は歩みを止めない。

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