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その魔女に祝福を  作者: 晴海翼
第二部:間章 行き倒れの没落貴族
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218.砕突のオルテール

 オルテール達が合流する少し前。

 彼らは突如民家から現れた魔物の対応に、追われていた。


「ハァッ!!」


 気合を込めたオルテールの一突きが、下級悪魔(レッサー・デーモン)の顔面を捉える。

 瞬く間に下級悪魔(レッサー・デーモン)の頭は瞬く間に貫かれ、肉片が飛び散っていく。


「オルテールさん、すごいです……」

「いや、アレ。持ってるのただの棒きれだろ……」


 落ちていた角材を拾い上げ、それを槍のように振舞う老人の姿にイディナとフィアンマは目を疑った。

 宙を舞う魔物達が、狙いを定めて急降下する。僅かな隙を突いてオルテールは確実に魔物を葬っていく。

 砕突のオルテール。誰が呼び始めたのか判らない二つ名に、偽りは無かった。


「あれならジイさんは心配要らないかな。イディナは、這いつくばって生きている魔物を頼む。

 飛んでる奴はボクとジイさんで片付けるよ」

「わかりました!」


 フィアンマとオルテールが動き回る魔物達を捉え、イディナは這いつくばる生き残りを倒していく。

 イディナに於いては余裕のある限りで、上空へ向かって魔術で作った石塊を飛ばして援護も行っていた。


「ほう、小娘。魔術が使えるのか」

「えへへ。あまり得意じゃないので、これしか使えませんけど」


 彼女は料理を振舞う際に、魔術で石かまどを作る機会が多い。

 非情に近しい性質を持つ石の礫(ストーンショット)は、彼女が扱える唯一の攻撃魔術だった。

 

 嬉しい誤算としてイディナの援護とオルテールの活躍もあり、深夜に現れた魔物はやがてその数を減らしていく。

 視界に映る範囲で最後の一体に角材を突きつけ、オルテールは周囲を見渡した。


「後は、若と神剣を持つ小僧か」


 直後、アルジェントの持つ剣から放たれた爆発によってイルシオンが民家へと吹き飛ばされる。

 轟音と砂埃によって、フィアンマ達はその位置を特定する。


 ……*


 そして現在。オルテールは湧き上がる怒りを静かに抑え込んでいる。

 眼前には色眼鏡を掛けた、人を小馬鹿にしたような態度の小僧。

 瑪瑙のような縞模様を持つ右腕は、冷静であればもう少し気味が悪いと思っていただろう。


 本来であれば、今すぐにでも突き殺したいぐらいだった。

 深手を負わされた自らの主。姿の見えないもう一人の神器使い(イルシオン)


 龍族(ドラゴン)の王ですら手玉に取る、面妖な男。

 カラクリは判らないが、魔力を灯した攻撃は逆に奪われる危険性を秘めている。


 ならば、この場を戦うのに自分以上の適任者はいない。

 そう考えたオルテールは、オルガルから宝岩王の神槍(オレラリア)を受け取る。

 淡く輝いた穂先が、かつての相棒を歓迎していた。


「若。お苦しいかとは思いますが、爺の闘いを見て学んでくださいませ。

 貴方の扱いきれていない、神器の力をご覧に入れて見せましょう」

「はは、段々心を開いてくれていたと思ったんだけどね。

 じいや。すまないが、ここは君に任せた」


 避けた肩口を、布の上から抑えながらオルガルは弱々しく微笑んだ。

 初めての経験に狼狽えるイディナへ礼をし、一歩退く。


「御意。では、この砕突のオルテールの力をとくとご覧あれ」


 オルテールは自らの踵を、宝岩王の神槍(オレラリア)の柄で小突く。

 重力の向きが変わり、前方へ()()()()()

 扱い慣れた彼自身でなければ、とうに顔面は砂に埋まっていただろう。たったそれだけで、自分はまだ未熟なのだとオルガルは思い知らされた。


「さァて、火を操る龍族(ドラゴン)がその程度の火傷で動けなくなるわけねェよな。

 元気に暴れられる前に、仕留めさせてもらうぜ」

「ぐっ……」


 アルジェントの推察は間違っていない。思わぬしっぺ返しを受けたフィアンマだが、火龍(サラマンダー)である彼は炎に耐性を持っている。

 焼け爛れた皮膚も、時間が経てば回復をする。この場を凌げさえすれば。


 当然ながら、アルジェントがフィアンマの事情を待つ理由は無い。

 誘いこんでいるのかと警戒しつつ、大剣を高く掲げた。

 魔術付与(エンチャント)によって幾重もの風が刃となって重なり、フィアンマへ振り下ろされようとしている。


「じゃ、呆気ないかもしれねェけど。あばよ」

 

 叩きつけるように下ろされた大剣は風を斬るかのように独特の音を放った。

 身体を捻って躱そうとしたフィアンマだが、魔術付与(エンチャント)の刃が実像以上に伸びていると気付いてしまう。

 このまま避けてしまえば、また背後に居るイディナ達へ危険が及ぶ。


「くそっ!」


 避ける訳には行かない。フィアンマは両の腕を頭上へと掲げる。

 腕を多少犠牲にしてでも、刃を止めるという覚悟。

 勝負に乗ったと言わんばかりに、口角を上げるアルジェント。大剣と重なる風が、フィアンマの腕へと届こうとしていた瞬間。


 大剣は柄だけを残して、その先が綺麗さっぱり消えていた。

 魔術付与(エンチャント)によって生み出された風の刃も例外ではない。アルジェントの手元に残っているのは、長い柄のみ。

 決してフィアンマに触れた訳ではない。その前に、折れた。妙な力によって。


「――アァッ!?」

 

 薄ら笑いを浮かべていたアルジェントの額に、青筋が浮かぶ。

 確かに自分は紅龍王(フィアンマ)を仕留めるべく大剣を振り下ろした。その結果が、刀身の破壊。

 しかも、紅龍王(フィアンマ)に触れた訳ではない。横から加わった力によって、強引に破壊された。


「ふむ、危ないところじゃったな」

 

 不意に現れたオルテール。彼に横槍によって、アルジェントの一撃は不発に終わった。

 それだけならまだいい。問題はこの老人が持っている武器だった。

 大理石のような穂先には見覚えがある。先刻倒した男が持っていた神器。

 所有者以外は扱えないはずの神槍を、別の人間が持っているという状況に理解が追い付かない。

 

 呆気に取られるアルジェント。一瞬生まれた隙。

 彼の顔面に目掛けて飛ぶのは、固く握られたフィアンマの拳だった。


「ボーっとして、余裕のつもりか!?」

「――ッ! コンニャロ!」


 頬に激痛が走る。色眼鏡はフレームが曲がり、レンズが割れる。破片が砂の上に乗っては、埋もれていく。

 頬骨が折れたかのように、吹き飛ばされたアルジェントの右頬は腫れていた。

 

「ジイさん、助かった……」

「なに、貴様等には一宿一飯の恩があるのでな。

 それに、まだまだこれからじゃ」


 色眼鏡に隠れていた視線。吊り上がった瞳は、敵意を露わにしている。

 ここからが本番だと言わんばかりに、オルテールは宝岩王の神槍(オレラリア)の柄で砂をトンと叩く。

 生み出されるのは無数の砂の塊。オルガルの生み出した物が砲弾でするなら、こちらは散弾銃と形容できるものだった。


 おかしい。アルジェントだけではなく、フィアンマも同様の意見だった。

 宝岩王の神槍(オレラリア)の継承者がオルガルであるのであれば、この場で操っているオルテールはどう説明するのか。

 彼は能力を完全に使いこなしている。神槍が、彼に使われる事を拒絶していない。

 

「……どういうことだッ!? ジジイ、なんでテメェが神器を扱える!?」


 声を荒げ、怒りを露わにするアルジェント。

 受け入れ難い眼前の状況。その説明を、敵であるオルテールに求めてしまう程に動揺していた。

 

「フン、何も知らぬ小僧が。宝岩王の神槍(オレラリア)は正真正銘、若の持つ神器だ。

 尤も、以前の所有者は儂だったがな。槍と神に頼んで、一時的に扱わせてもらっているに過ぎぬ」

「そんなワケわかんねェことが……」

「あるんじゃよ。小僧には、判らんかもしれんがな」


 やや呆れた様子で答えるオルテール。彼は愚直な男だった。

 愚直に神器を授かってから、延々と研鑽と祈り。槍への感謝にその時間を費やした。

 生まれたものは確かな信頼関係。彼が力を求めれば、宝岩王の神槍(オレラリア)は喜んでその手を差し伸べる。


「もうひとつ、貴様に教えてやろう。神器の力をな」


 オルテールは創り出した砂の塊を、アルジェントへ向かって射出する。アルジェントにとっては、絶好の好機。

 『強欲』の持つ接収(アクワイア)は魔力を持つものを無制限に(カード)へ変えられる訳ではない。

 最大で十枚がアルジェントの限界。十枚を(カード)化してしまえば、解放するまでは新たに(カード)を生み出す事は出来ない。

 

 一方で、同時に右手で触れてしまえば複数の物体を(カード)化する事は出来る。凍撃の槍(フリーズランス)を封じ込めたのが、いい例だった。

 そういった点では、オルテールの放った散弾銃は彼にとってはむしろ有難かった。

 数が多すぎるが故、数発は貰う覚悟をしている。だが、砂の塊を(カード)化する事で新たな攻撃手段は確保できる。

 先刻の割り込みには驚いたが、自分の力が跳ね返ると知って強気に出られる人間はそういない。


「ヘッ、もう充分知ってるっての! ソイツはもう見せて貰ってんだからな!」


 砂の砲弾に触れた時のように、アルジェントは右手を突き出す。

 後は(カード)化した散弾銃をお見舞いする。そこから形勢逆転のシナリオが組まれる……はずだった。


「ガハッ……!?」


 アルジェントの思惑とは裏腹に、砂の散弾銃は彼の身体へと撃ち込まれていく。

 打ち付けられた砂が身体へ食い込み、皮膚が裂ける。中には、痣となるものもあった。

 

「……なんなんだ!? どうして、(カード)にならない!?」


 自分は確かに右手で触れた。接収(アクワイア)の効果は、瑪瑙の右腕であればどこでもいい。

 落ち度はない。完璧だった。老人が生み出した砂の塊を、自分の力にするはずだった。


「たわけが。元来、神器に魔力など必要ない。祈りを以て、誠実に接する。

 たったそれだけで、神は我らに力を貸してくれるのだ」

「……なんなんだよ、それッ!?」


 神器と共に過ごしてきたオルテールにとっては、呼吸をするように容易な事。

 どうしても魔力という万能の力に頼ってしまうイルシオンやオルガルとは、決定的に異なる。

 

 勿論、魔力を乗せて威力を上乗せする事は出来る。

 妖精族(エルフ)であり、信仰心の強い少女。リタが得意とする技術でもあった。

 

 けれど、今この場に於いてはオルテールの使い方が最も効果的な場面。

 散弾銃を目眩ましに、アルジェントの左側へと回り込むオルテール。

 宝岩王の神槍(オレラリア)の穂先が、彼の身体へ目掛けて最短距離を駆ける。


「クソがッ!!」


 穂先が自らの脇腹を掠める。重力の向きが変わり、鮮血が勢いよく後方へ散っていく。

 ワンテンポ遅れて、宝岩王の神槍(オレラリア)の影響が自分にも働き始めた。

 後方へ()()()アルジェント。このままでなるものかと、咄嗟に掴んだのは宝岩王の神槍(オレラリア)の柄だった。


(そうだ、こうしちまえばいい! オレっちを拒絶させれば、ジジイも支えては居られないはずだ!)


 神器は使う者を選ぶ。その性質を利用しない手はなかった。

 咄嗟に掴んだ宝岩王の神槍(オレラリア)は、悪意を持つ者を拒絶する。

 鉛のように重くなった神槍が、地面に向かって引き寄せられる。


 武器と自由さえ奪えば、こんな死にぞこないの老人など恐れるに足らず。

 今頃、鉛のように重くなった神器を支えきれないでいるに違いない。

 

「ジジイも、これで――」


 アルジェントは目の前の状況が信じられなかった。

 事もあろうに、オルテールは神器から手を離している。

 鉛のように重くなった神槍を、アルジェントはたった一人で支えている。


「はあっ!? なんで手ェ、離してんだよ!?」

「その手はもう30年も前に喰らったんでな。あの時は儂も若かったもんじゃ。

 今思うと、こうするだけで勝手に相手が動けなくなるというのにのう」


 余裕綽々と言った様子で、うんうんと頷くオルテール。

 二人の神器使いを子供扱いにした自分が、今度は子ども扱いされているという屈辱。

 アルジェントは、興奮のあまり目を血走らせる。

 

「ゼッテェ、その時もジジイだろ! クソがッ!」


 後方へ落ちる感覚こそなくなったが、今度は宝岩王の神槍(オレラリア)を支えきれずに左手が地面へと埋まる。

 その瞬間を待っていたと言わんばかりに、瓦礫の中から一人の少年が飛び出す。


「イルシオンさん!」

 

 遠目に戦闘を見守っていたイディナが、声を弾ませる。

 額から血を流してこそいるものの、その眼に曇りは無い。ただ真っ直ぐに、悪意を持つ者(アルジェント)を目指す。


 民家の瓦礫に埋もれながらも、イルシオンは全神経を戦闘に集中させていた。

 フィアンマ達が援軍に現れた事により、彼は気付かれないように飛び出す機を伺い始める。


 彼の気配に気付いていたのはオルテールのみ。

 アルジェントへ説明して見せた言葉も、全てはオルガルとイルシオンへ言い聞かせる為の者だった。

 

「祈りを、神器と会話を……」


 ぶつぶつと呟きながらも、吐露した本音と自分がどうしたいか。ただそれだけを紅龍王の神剣(インシグニア)へ語り続ける。

 自らの魔力は、身体能力の強化へと注ぎ込んだ。淀みのない魔力操作から生まれる脚力は、砂地をものともせずに突き進んでいく。


「チッ、ここでミスリアの坊っちゃんか!」


 宝岩王の神槍(オレラリア)によって挟まれた左腕が、アルジェントの身体を逃がそうとしない。

 必死に腕を引き抜いた頃には、イルシオンは眼前にまで迫っていた。


 己の弱さを、未熟さをどれほど悔やんだだろうか。

 自分は死ぬまで罵られるべきだ、責められるべきだ。イディナに言われるまで、それが当然だと思っていた。


 彼女が涙を浮かべている理由を、頭の片隅で考え続けていた。

 本当の理由は分からないが、自分が悲しみだけに囚われる事を嘆いてるように思えた。


 クレシアもそうだった。あの擦り切れたノートには、自分を護ると強く誓っていた。

 ヴァレリアも、シンも。形は違えど皆、自分に手を伸ばしてくれている。


 自分を見守ってくれている。

 男が己を奮い立たせるのに、これ以上の理由は必要ない。


 イルシオンは紅龍王の神剣(インシグニア)に強く願った。

 深く沈んだ哀しみは背負う。立ち上がる為に背中を支えてくれた人達へ報いる。

 その為の力を、自分に貸して欲しいと。

 

「頼む! 紅龍王の神剣(インシグニア)、オレに応えてくれ!!」


 誓いと情熱は、いつしか祈りに昇華されていた。

 紅に輝く神剣は、これまでにない淀みのない力を纏いながら『強欲』へ迫る。


「気合だけでどうにかなると思ってんじゃねェ! テメェとの格付けは済んでんだよ!」

 

 紅龍王の神剣(インシグニア)の一太刀を、『強欲』の右腕が受け止める。

 懺悔と誓いを聞き入れた紅龍王の神剣(インシグニア)は、傷付きながらも立ち上がろうとするイルシオンを僅かだが認めた。

 魔力が籠っていないにも関わらず、紅い刀身は瑪瑙の右腕に亀裂を入れる。


「――なんだとォ!?」


 邪神の力が、『強欲』が欠ける。信じ難い出来事に、アルジェントは咄嗟に右腕を引いた。

 この右腕を、接収(アクワイア)を失ってはならない。彼の際限ない欲望が、神器との正面衝突を避けた。

 気付けばアルジェントは、イルシオンから距離を取っていた。


「引いたか。ならば、この戦いは小僧の勝ちだな」


 老人の声に振り返ると、そこにはオルテールが立っていた。

 彼の手には宝岩王の神槍(オレラリア)が握られている。咄嗟に右手を繰り出そうとするが、欠けているという事実に迷いが生じる。

 その一瞬を見逃す程、砕突のオルテールは甘くない。


 『強欲』の右手の代わりに、アルジェントは一枚の(カード)を投げていた。

 中から現れたのは、常闇の迷宮(ブラック・ラビリンス)の断片。闇のカーテンが、自分とオルテールの間に割って入る。


「そんなモノ!」


 オルテールは構う事なく、常闇の迷宮(ブラック・ラビリンス)ごと宝岩王の神槍(オレラリア)を突き立てる。


「がは……ッ!」


 僅かな破片では、襲い掛かる衝撃までは吸収しきれない。辛うじて、身体が貫かれないようにするのが精一杯だった。

 宝岩王の神槍(オレラリア)によって重力の向きが変わり、アルジェント身体は弾き飛ばされる。

 魔力の一切籠っていない一撃に、彼は抗う術を一切持ってはいなかった。


「そのまま砂漠の果てまで、吹っ飛んどれ」

「――クソッ! 覚えていやがれ、このクソジジイッ!!」


 捨て台詞を吐きながら、アルジェントは彼方へと飛ばされていく。

 その様子を見たオルテールは、鼻で笑っていた。


 ……*

 

「イルシオンさん!」


 戦闘が終わったとみるや、イディナはイルシオンへ駆け寄る。

 自分の持っている救急道具で、彼の血を止めるべく応急処置を始めた。


「フン、小僧よ。少しは神器と打ち解けたようだな。

 一宿一飯の恩は、これで返したぞ」

「オルテール殿……。感謝する」


 止血している途中にも関わらず、イルシオンは深く頭を下げる。

 再び滲みだした血を見て、流石のイディナも「血、また出ますから!」と少しだけ怒っていた。


「はは、じいやは流石だね……。

 僕ではまだまだ、足元にも及ばないよ」


 多くの血を失い、ふらつきながらもオルガルはその戦いを見届けた。

 師であるオルテールとの差に劣等感を抱いた彼へ、オルテールは宝岩王の神槍(オレラリア)を差し出す。


「何を仰いますか。若はまだまだこれからですじゃ。

 この砕突のオルテール。バクレイン家の復興と、儂を越えてもらう事を生きがいとしておりますゆえ」

「どちらも、道のりは遠そうだ。でも、じいやの期待には応えないとね」


 再び宝岩王の神槍(オレラリア)を受け取るオルガルは、僅かにはにかんだ。

 旧き相棒と今の相棒。その両方の背中を押すかのように、宝岩王の神槍(オレラリア)の穂先は輝いていた。


 偶発的な遭遇による邪神の脅威は、一先ずの区切りを迎える。

 安堵とは裏腹に既に悪意が伝播していたのだと気付くのは、夜が明けてからだとイルシオン達は気付いていなかった。

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