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第86話 これって本当に愛情?

 闘氣功・攻防一体式の修練が始まった。

 しかし思った以上に彼女達の理解力は高かったらしい。


 始めてからおおよそ一時間後。

 テッシャが早速と錬氣を成功させたのだ。

 続いてその一時間後にノオンも。


 うむ、なかなかに速い上達っぷりじゃないか。

 教えた方としてもとても鼻が高い。


 ただ少し脚が冷えてしまったのは残念だ。

 父だったらこれを理由にもうワンセットやらせるに違いない。


 でも俺は父ほどに()()たっぷりではないのでな。

 今は先へと進ませてもらうとしよう。


「よし、これで二人とも下地が出来た。恐らく理論上は攻防切り替えが出来る様になっているハズ」

「おっおーっ!」

「なら次はその切り替えをスムーズにする鍛錬に入るとしよう」

「かかってこーい!」


 にしてもこういう時のテッシャは凄く素直だ。

 いつもはすぐどこかにいなくなるし、自分勝手に暴れるもんなんだが。


 ――いや、もしかしたらこれが素なのかもしれないな。

 自分勝手に見えるのは、自分なりに何かをしようとしているからかも。

 例えばノオン達の役に立とうとかそういう理由で。

 それがただ空回りしてるだけに過ぎなくて。


 だとすれば今回の修練を希望した理由も理解出来る。

 皆の力になりたいんだって気持ちが。

 かく言う俺も同じだから。


 だったら全力で応えてやるさ。

 だから受け止めて見せろよテッシャ!

 あとついでにノオンも。


「今度は身に着けた闘氣功を全身に巡らせる方法を教えよう」

「こうやるのー? ぎゅんぎゅーん!」

「早い、もう巡らせてるのかよ。わかった、じゃあその次に行くぞ」


 だからと言ってこっちがボール投げる前に返球してくるんじゃあない。

 そこん所は相変わらずマイペースだな。まぁ良い傾向だけど。


「次と言ってもこれが最後だ。今から連続でその錬氣を続けろ。ただし頭・右手・右足・左足・左手・頭と順序良く巡らせてな」

「なんだぁ、最後は凄く簡単じゃないか! ハッハー!」

「言うじゃないかノオン。じゃあ是非ともやって見せてくれ。〝氣を一切消す事無く体に溜め込み続けながら身体に巡らせて〟それを二日間止める事無くな」

「待って!? 君、ボクらを風船みたいに破裂させて殺す気かい!?」

「安心しろ、慣れれば凄く簡単だ。あ、眠っている間も錬氣し続けろよ」

「君は鬼かい!?」


 ここまで飲み込みが早いならこれも出来るだろう。

 なんて事は無い、俺も通り過ぎた道だしな。

 まぁ俺の時は一週間ぶっ続けでやらされたが。

 でも今の彼女達ならきっとそこまで必要無いさ。


 なんたってこれが最も辛いのは一日目だから。

 そこさえ過ぎれば二日も一週間も変わらん。


 だがその一日目が本気で辛いぞぉ?

 眠れないし集中力途切れるしで、そこからなかなか進まんからな!

 

「コツは氣を使い続けるんだ。その上でグルグルと回す。回した地点でピンポイントに力を作用させてな」

「なんだか聞いただけで眩暈がしてきたよ……それを二日間ぶっ通しだなんてさ」


 それこそ眩暈なんて起こせば即リセットだ。

 だから気合を入れて貰わなければこちらも困る。

 じゃないとこうして教えた甲斐も無くなってしまうから。


 なのでここで父の格言を一つ添えて置く。

 ノオンも大好きみたいだからな、きっと啓発になる事だろう。


「父曰く、〝千機一刹(パヅ・ヒュード)。真の強さとは極限の先にある。立ち塞がった壁は壁に非ず、全て叩き壊せる物と知れ〟と。これもその壁なんだ。だから全て乗り越えて見せてくれ。でなければ攻防一体なんて夢のまた夢だぞ」

「がんばるーっ!」

「ほら、テッシャもこれだけやる気見せてるんだからノオンも頑張れよ」

「くぅーっ! 闘氣功の才能も欲しかったぁ~ッ!!」


 なお、これに必要なのは才能では無く感覚的な理解だ。

 それが出来れば凡人だろうと成せる手法なのさ。

 後は気力と根性だよ。なんたって胆力がモノを言う修行だからな。


 ただ、このままだと途中で投げ出してしまう事も出来る。

 テッシャはともかく、このままだとノオンが諦めてしまいそうだし。


 なので逃げられない様に楔を打っておこう。


「そこで俺からのプレゼントだ。【輝操(アークル)計診(ヴィジュター)】」

「「ッ!?」」


 なんたって俺は無駄が嫌いだ。

 教えた事を無為にされたくはない。

 もちろん簡単に無為にする様な二人ではないとも思っているけども。


 けど一抹の可能性も潰さねば安心など出来ん。

 俺は完璧主義者でもあるんでな。


 だからコイツを二人の手首に()りつけた。

 輝操術製の計測光腕輪を。


「これはいわゆる測定器だ。二人が俺の課した試練を乗り越えて初めて消える様にしてある。腕輪自体に悪影響は無いが、無理に外そうとすれば手首が千切れるから気を付けろよ」

「何この徹底ぶりィ!!」

「そりゃ俺もずっと付きっきりって訳にもいかないだろう? だから昨日の内に術を創っておいたんだ」


 二人には何が何でも成し遂げて貰わねばならない。

 例え俺がいなくとも正しく力を身に着けてもらう為に。

 その為にはこんな物を取り付ける事もいとわないのさ。


 それに、俺には個人的にやりたい事があるのだから。


「俺はこの後しばらくここを離れる事になるからな、ずっとなんて見てられないさ」

「「「えっ?」」」」


 実はこの白空界に来たらやっておきたいと思っていた事が一つあるんだ。

 父より話を聞いてからずっと想い描いていた夢が。


 ならこの機会に是非とも挑戦したい。

 いや、何が何でもせずにはいられない。




 それが【霊峰ングルトンガ】の踏破。

 白空界中央にそびえる巨山を己の手足で登り切る事である。


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