輝操・物紹介2
第二章に登場する物の紹介です。
本編とは関係無いので読み飛ばしても問題ありません。
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輝操術
この物語の根幹とも言える秘術。アークィンだけにしか使えない。
その実態は「なんでも出来る術」。文字通り、可能性は無限大。
二章で発現させた力の効果は以下の通り。
・輝操・探追…意志追跡
・輝操・囲隔…全方位大気隔絶
・輝操・反律…魔導回路反転
探追は閃駆の亜種で、意識を乗せて敵の意志をサーチさせる。しかも追跡したならば消費する事もなく、その先で形状変化さえ可能。その探知距離に制限は無く、意志が引っ掛かり続ける限り世界の反対側でも見つけられる。ただし明確な意志と共にアークィンが相手を認識していなければ発動出来ず、また発動中は意識が引っ張られてしまうので戦闘中には使えない。割と使い勝手が難しい力と言える。
囲隔は属性攻撃に対して無敵を誇る環境隔絶術。物理・魔法や属性といった区分けで弾くのではなく、認識させた周囲状況から異常な力を検知して疎外するといった感じ。しかし肉体や直接奮う武具などは検知出来ず透過してしまう為、絶対防御とは言い難い。判断を間違えるとやられかねない、扱いの難しい技となっている。ちなみに全隔も可能だが、その力を使った瞬間にちょっとの力で遥か彼方に吹き飛ばされてしまう。重力は愚か重量概念なども隔絶してしまうので。そもそも歩けさえしない。
反律は魔動機などに働いて原理を反転させる力。内部構造を変える事無く、概念を反転させてしまう。なのでモニターがカメラになるなど、とんでもない力を見せてくれる。ではカメラがモニターになるのか、となるとそれは違って、出力はちゃんと出力機に向ける事が出来る。ここは探追あるいは閃駆との合わせ技で接続先を変える事が可能。アークィンはこの力で赤空界全域に映像を送る事が出来た。
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銀麗号
アークィン達が紫空界の皇帝から譲り受けた機空船。ボディカラーが赤で、丸い胴体に丸い大窓が正面側に二つ。それと天井と座席正面、床にも小さく一つづつ。小さな滑空翼が両側面にあり、姿勢制御用の尾翼と頭翼が一つづつ。そんな姿はまるでデメキン、とてもじゃないがカッコイイとは言えない。
このデザインは言わば競技「スカイフライヤー」の伝統に則ったもので、他の機空船は皆それなりにカッコイイ。平べったいステルス機みたいだったり、軍用ヘリコプターっぽかったり。用途によって派生が生まれ、形そのものが変わっていったという。しかしこの機体は古来から受け継がれてきた形状そのままで、変わっているのは内部・細部だけ。ただ機体性能だけは進化し続けており、お陰で既存の機体よりもずっと速いのだとか。空気抵抗どこいった。
そんな機体だからこそ操縦難易度は最高峰。プロでないと操縦自体がきついというレベルだ。その為、操縦初心者であるアークィン達には荷が重い機体とも言える。もっとも、彼等にはセンスそのものが無いとも言えるが。クアリオとココウはそのセンスと技術力でしっかりと操縦して見せた。
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デメキン
この世界にも出目金はいる。まん丸い体に大きなコブ目を持ったあの魚が。ただし海水魚で、最大サイズだと人の身体並みにまで大きくなる。あと生態が中々に特殊。正式名称は【ヘッドバッター】。主に紫空界に生息。
普段の性格はとても温厚で、常に仲間達とゆるり泳いでいるのだが。一つ外敵に襲われると途端に集団で逆襲し、一斉に頭突きを見舞うのだ。しかも出目の部分は本物の目ではなく紋様を象っただけのコブで。おまけにその突出先からは痺れ毒が噴出する様になっており、小突かれた相手は一瞬にして麻痺、最悪は死に至らしめるという中々に恐ろしい生物なのである。
だが、実は結構な知能を有していて人にとても懐きやすい。なのでいざ桟橋を歩こうものなら追って泳いでくる。ただひたすらにお零れの餌を求めて。更にはダイビング中にも一緒に泳いでくれたり、なんなら掴まったりすると引っ張ってくれたりもする。
そんな性質もあってペットとしても人気で、愛好家も多数いる程。触られるのも好きらしく、あちらからコブを擦り付けてきたりと怖いけど愛らしい。
なおそのコブはとても柔らかく、感触的にも見た目的にも女性のアレに似ているのだとか。なのでそっち方面の欲望を満たす為に飼う者もいるという話だ。けど出目金自体に罪は無い。ノットギルティ、ノットエロス。
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エルフとドワーフ
この世界にもエルフとドワーフがいる。ただし姿は想像通り、とはいかない。
エルフは人間よりも背が高く、最長では2.2メートルほど。おまけに肌が薄ら緑で全体的に面長で耳も首も頭並みに長い。魔法に長けている所は同じだが、別に草食でもなく普通に人間と同じ物を食べる。また世界が分断された影響で寿命が人間並みへと落ち込んでしまい、今では百歳まで生きられれば良い方。なお実際は【ユリーフ】という名であり、エルフは俗称として呼称しているに過ぎない。
ドワーフは全体的に頭が大きく、必然的に等身が小さくなる。基本的には三~四頭身くらいで背丈は人間の首元ほど。ただし一部では極端に大きくなる者もおり、人間並みの背丈にまで成長する場合がある。性格的には多少気難しいが温厚であり、気が合うとあっという間に友人と成れるほど人付き合いが良い。なお実際は【ダワッフェロ】という名であり、ドワーフは俗称として呼称しているに過ぎない。
この二種族は昔から忌み嫌い合っており、地続きだった頃は互いに争う程だった。片方は生活圏の森を守る為に、片方はモノづくりで木材を得る為にと、共に主張を引かせる事も無く。
しかしほんの三〇年前にガウザとメローナによる意識改革が行われ、二種族間にて圧倒的早さで理解が深まった。お陰で今では「忌み嫌う者なんて頭の固い老人くらい」と若者達の嘲笑ネタにもされている。
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魔動機と魔導具
似た様な名称ではあるが実は根本的に違う。「魔法的機械」と「機械的魔法」と言った感じで。
魔動機とは魔力を動力にして動く機械の事。根本的には現実の機械と変わらない。ただし一部は魔法的な力も働いているので全てが物理駆動という訳ではないが。そういった魔法の力を機械的に発動させる事で人に負担を与えず生活を豊かにさせてくれる。回路が複雑であればあるほど多様性を宿す事が出来、おかげでテレビモニターやカメラなどなど、現代にも似た機器を生む事が出来た。なお魔導人形であるゴーレムなどもこの分類に入るとされている。
一方の魔導具は機械的性質を持たずに魔力回路だけで動く、いわば「人工魔法発生装置」である。色んな魔法を使い手の負担無く発動が出来るので、副戦力や魔力節約にも持って来いな道具と言える。古来よりこの魔導具は存在し、多くの魔導士によって生み出されてきた。そのほとんどが戦闘用の武具としてであるが。なので攻撃魔法を撃ち出したり、防御魔法を展開したりと出来る事は非常に単純。魔動機との違いはこの辺りだろう。
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学習書
魔動機技術の発展で本も簡単に造れる様になった。なので赤空界ではそれなりに本が多い。緑空界から木を輸入し、木片チップから紙を作るという製造ラインまで確立している程だ。なので実は緑空界より勉学に富んでいるとさえ言われている。緑空界の十賢者もそこには一目置いていて、本の輸入・製造などには積極的だったそうだ。その所為なのか、識園の塔のメインフロアには一台だけ場違いな大型複写機が置かれている。青緑の壁に囲まれた白い機体はなかなかに異物感があった模様。
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土竜人特有の求愛頬つねり
土竜人は基本的に暗い所で暮らす習性がある。そのため視力が悪く、匂いや音で相手を認識したりする事が多い。しかし共に居たいと思う相手には「手が届く場所に居て欲しい」という願いから頬をつねって存在を確かめ合うのだという。それがいつしか求愛の行動にもなり、彼等に親しまれているのだとか。
テッシャがその行為を行ったアークィンに対して意識しているかは不明。
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ケバブ
一本の棒に肉を巻き付け焼き上げて、それを豪快に包丁で削いで提供する肉料理の一種。赤空界でもっともポピュラーとも言える料理であり、そこらに沢山屋台があるほど。パンに挟んでマイルドに楽しむのもよし、ソースをぶちまけて豪快に行くのもよし。楽しみ方は場所によって異なり、その種類は百をも越えるのだとか。その味にアークィン達も囚われ、赤空界にいる間はずっとこれを食べる事を夢見ていた。もちろん決してイケナイ素材が入っている訳ではない。単純に美味しいだけである。
なおケバブの語源はクェ・ヴァン・ブゥエという赤空界古言語の調理三拍子から。それぞれが刺す・焼く・切るという意味を持っている。しかし元来この言葉は無く、刺す・焼くまでが普通だった。なので焼肉・肉焼きは「カヴァン」と呼ばれている。だが近年に「切る」が後工程として追加され、その特殊性からケバブという名前が生まれたそうな。
もちろん決して現実から引用した名称ではない。ただの偶然である。
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生気譲送魔法
正式名称は【生気譲送】。その名の通り、相手に生命力を分け与えるという光魔法。ただし扱いを間違えると自分も死に掛ねないので割と怖い。この特性から、樹人など生命力に溢れた者だけが扱える。
生命力とは一般的に体力・気力にあたり、療術と違って意欲までをも上げさせることが出来る。なので使い方次第では戦闘継続力を格段に引き上げられるという。
なお魔力版は【魔気譲送】という別の魔法が存在する。こちらは魔力だけの譲渡となる。
一方でこの世界において生気吸収、魔気吸収という魔法は禁忌とされている。効果が余りにも強力で、相手を一瞬にして死に至らしめる可能性があるから。おまけに見た目もエグいので遥か昔に封印された。そもそも相手の生命力をどうこうする事自体がよろしくないと判断された様だ。その点の療術はグレー的な扱いと言えるか。
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スカイフライヤーとフライハイアー
赤空界伝統競技と、その頂点に立った者の銘を指す。
起源は世界が分断された頃からで、当時はただの航空郵便員達の戯れだった。しかし時を経てそれが競技となり、今では国が誇る程の大規模に。毎年百人以上のレーサー達がしのぎを削っているという。
レースにはS1~3というランクがあり、高いランクほど報酬が多くなる。その一方で強豪だらけとなるので、腕を磨けなければランク落ちも免れない。それでも諦めず戦い続けた者だけが最高峰の称号を手に入れられるのだ。
とはいえこの仕組みはバウカンによって歪められ、今では形骸化している。替えられたのは彼が大統領になる前、おおよそ三〇年も昔から。操縦士を引退して間も無くの一議員だった頃から計画は始まっていた様だ。
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傍受魔法
正式名称は【声言傍受】。遠くの音や声などを聴き取る風系中級魔法。仕組みは探知魔法と同じで、どこかに密かと設置する事が可能。ただしよく確かめれば常人でも見てもわかる様な跡が残るので注意が必要となっている。
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防音魔法
正式名称は【防音隔】。全ての音を隔絶する風系下級魔法。光音遮絶などと同種であり、こちらはただ音を遮断するだけ。おまけに衝撃を受けると即座に割れてしまう。故に動体などへの設置は難しいとされる。ただしその性質を利用して接触感知に使われるなど、別方面での利用方法もあるそうだ。
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人工石壁
この世界にもコンクリートはある。多少元素は異なるが、同等の性能を誇っていてとても汎用性に富む。おまけに魔法親和性も高く、魔導式も組み込み易い。そんな性質のお陰でトラップなども組み込み易かったり、魔動機用の配線なども仕込む事が可能。バウカンもこの性質を利用して地上とのネットワークを構築した様だ。
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緑雷・砕禍
マオの【スピードフォーム】でのみ使用可能な瞬速の突蹴。魔力を電磁力の如く放電させ、大地とのスパークを引き起こす。本物の電気ではないため大地とも反発し合い、その力を利用して一瞬にしてトップスピード――雷光の領域へと到達出来るというもの。貫通力と突貫性に優れ、その速度は達人でさえ見切るのは困難。アークィンさえも発動直後しか捉えられず、驚愕する様子を見せていた。
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緑雷・貫根
【緑雷・砕禍】の拳版であり、かつ連射が可能な乱れ貫手打ち。おまけに射角が広く、前方一八〇度全域を瞬時にカバーする事が可能。見事に決まれば何人もの敵を同時に瞬殺出来るという強烈な突き技である。
ただし非常に射程距離が狭く、かつ堅い物体には逆効果。なので相手の強靭さを見誤ると己が逆に傷付く事となりかねないという扱いにくい技でもある。
しかし初見の相手にこれ以上の奇襲は無い。故に鬼の十兄妹との戦いでは見事に虚を突く事ができ、見事打ち倒す事が出来た。
なお使用者に極端な負荷がかかる様で、これを放った後のマオは両腕の感覚がマヒしていた。でも一時的な事も知っていたので終始冷静だったという。
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冷気放射弾
水系下級魔法。周囲に氷の粉塵を撒き散らし、周囲の視界を一時的に奪うというもの。更には魔力練度が高いと周囲の気温を急冷却し、相手を凍えさせて戦闘力を奪う事が出来る。アークィンはその性質を利用し、この魔法をチッキー部屋の冷却に使用した。
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十賢者
影で緑空界を支配する賢人達の総称。欠員が出る度に十三州長達の推薦によって選出され、常に十人が揃っている。ただもちろん誰でもいいという訳ではなく、緑空界の発展に寄与した術法の達人でなければならない。
とはいえ昔はここまで緑空界の政治に食い込んだ者達ではなかった。当初の賢者は魔法に漬かり過ぎた変人でしかなく、「賢者の名を与えて塔に閉じ込めておけば好き勝手されずに済むだろう」という目論見から創られた称号だった。しかし時を経てその知識が政策や発展に繋がる事に気付き、生産的な者のみ敬われる様に。お陰でブブルクの代ではドップリ賢者毒に染まっており、十三州長も逆らう事が出来なくなっていた。
しかし今回の事件で立場が失墜。ミルダの働きもあって「世の中に寄与出来る人物」が選出前提となった。
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呪術
怨みの感情を媒体にして相手の力を貶める術。魔力を使う魔法とは概念が異なり、精神力を消費する。どちらかと言えば闘氣功の亜種にも近い術法である。ただし効果はとても魔法的であり、間接的に力を奪うなどの弱体魔法の様な効果を与える事が可能。術者にもリスクはあるものの感知がほぼ出来ず、「得体の知れない力によって弱らされる」という精神的負担も負わせる事が出来るので効果はスペック以上に高い。
起源は魔法よりも古く、人がまだ文明を築く前から。祈祷術や鬼道術という様々な派生術から今の形へとまとまった。悪魔降臨術などもこのカテゴリにあたり、基本的にはどれも外道術とされたものばかり。「とにかく何でもいいから呪い殺してやる」と言った怨の感情が極まって生まれたという。
なおこの世界においても何故か悪魔は山羊の化け物となっている。しかしそれは悪魔降臨術の祖が山羊人族を嫌う鹿人族であった為で、決して現実の悪魔のそれとは異なっている。ビジュアルが似ているだけで中身は全く別物という訳だ。
しかし賢者達の研究の末にそれらの術法は全て一定の規則を有している事が確認され、とある時代より呪術という名で括られた。悪魔も実際には存在せず、罪悪感を押し付けて性能向上させる為に生み出された妄想の産物でしかない。悪魔なんていない、それは只のスケープゴートである、と……山羊なだけに。
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生命越源現象
衰弱系の呪いが一定以上の生命力を吸った状態で強制解除されると起こる現象。呪いは解除されると吸い取った力を持ち主へと返す習性がある。しかし持ち主が極端に弱まっていると返って来た生命力の大きさに耐えきれず、魂が体から押し出されてしまう。故にこの現象が発生した場合、死亡率は100%である。
ただし余りの特殊事例につき、殆どの術法使用者が認知していない。一定以上というのはすなわち自立困難な状態を指し、そこまでの衰弱に至れば基本的には死に至ってもおかしくないからだ。なので大概はこの現象が起こる前に呪いが消える事となる。なので知られる機会が殆ど無い、という訳である。
つまりミラリア達は既に死に体だったという事。仮に呪術が正しく解かれても、生き残る事が出来たかどうかは怪しい。その点で見ればもう手遅れであり、アークィン達の行動は決して間違いでは無かったのかもしれない。この現象で死んだ者は須らく痛みを感じず、穏やかに眠る様にして死ぬ事となるが故に。
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ゴーレム
異世界モノにおいてゴーレムは鉄板である。なのでもちろんこの世界にもしっかり存在する。
素体は鉱石・金属・木材から人形と幅広く見繕う事ができ、その力も素体の出来栄えによって変わって来る。また人型にも拘らず、兵型でも四脚や多脚なども。他にもフローター式だったりローダー式だったりと多種多様。中には特攻爆砕タイプもあったりと用途によっても多彩。ただし基本的には魔導人形なので組み込まれた魔導式の能力如何で性能が決まる。特にミスリルなどと言った魔力との相性の良い素材を使うと飛躍的に強くなる様だ。ただしその分精製するのが非常に困難とされているが。
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ブーストトランポリン
テッシャの【アーストランポリン】とフィーの魔力強化魔法が合わさる事で生まれた超巨大な泥トランポリン。テッシャの意思次第で引く事も伸ばす事もでき、その特性でジャンボフォームのマオを高く打ち上げた。
なおこの技に特有の名前は存在しない。大地魔法の応用で産んだ技術だからである。
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真・銀麗号
クアリオが密かに造り上げていた機空船用改造パーツを銀麗号に組み込んで出来た機体。本来はいつか自身で手に入れた機体に組み込むつもりだったが、ミラリアの死をきっかけに吹っ切れ、思い切って今使う事を決めた。
左右背部に伸びる様にしてバーニアを設置、底部にも補助フローターを搭載して高速航行でも高い安定性を得る事に成功。その性能は凄まじく、現行の同サイズ機空船では絶対に追い付けない程の加速・速度を体現した。その速度比は1.3倍差と別格。他にも急速転回スラスターなども取り付けられ、鋭い旋回駆動が可能となっている。欠点はそういった高速駆動に搭乗者が耐えられるかどうか。
また装甲表皮を守る様に物理緩衝バリアを搭載。ある程度の衝撃にまで耐えられる様になった。防御能力としては石の塊である識園の塔に突撃しても傷が付く程度という脅威の性能。ただし魔法力に対する防御性能は乏しいまま。
加えて小型マナタンクを増築。充填魔力量が1.5倍に増え、出力アップに対する消耗にも耐えられる様になった。お陰で航続時間は以前と変わらない。
その他装備として追加で六つの座席シートが備えられた。こちらは木製の簡易式で、無いよりはマシといった感じ。
なおこれらの追加パーツは全てクアリオが独自開発したもので、赤空界にも同等性能を誇る部品は存在しない。
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宝霊銀ラタルコラン
緑空界にて少量のみ採れる希少鉱石を精製して造られる、世界で二番目に硬いとされる金属。銀と銘打っているが事実上は重金属で、精錬後に白く輝く事から亜銀の一種とされた。ただ、魔力を流すと途端に紫色へと変化する為に【紫宝銀】と飛ばれる事もある。
また銀と銘打たれたもう一つの理由として、魔力伝導率が究極に高いという。魔力伝導率とは言わば魔導式の走行速度を指し、これが速ければ速いほど魔導具使用時の効果発動が速くなる。この素材を使った場合はラグなし速射が可能。故に超高級素材として扱われ、魔導具一本分で豪邸三つが買える程だという。
ただし入手難易度が非常に高く、現行ではほぼ採掘されない。後は緑空界奥地にて生息する魔物【戦車蟻】の身体にたまにだけ付着している事があるそうだ。その大きさに期待をしてはいけないが。
ちなみに比較されたミスリル(輝銀)はこの世界において八番目に硬い。魔力伝導率は二番目とされるがラタルコランと大きく離されている。それでも高級素材に変わりは無く、魔導士垂涎の高級魔導具に使われる事が多いとか。そもそもこの世界においての銀は金より数倍も価値が高い。むしろ金は黄空界で腐るほど採れるので最も安価な貴金属とされている。
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万越たる再築者
ドワーフの技工士ガウザとエルフの魔導士メローナが思い描き、生涯を賭けて造り上げた夢の結晶。魔導具でありながら魔動機を一瞬で組み替える事の出来る凄まじい力を誇る。
完成直後に子供であるミラリアとクアリオに密かと託され、その後はクアリオが秘密を解き明かして発見。ミラリアとの秘密としてずっと隠して持ち続けていた。ただし使うのは今回が初めて。その為に効果は添えられた説明書に書いてあった分しか知らない。故にまさかクアリオンの様な物が出来上がるとは思ってもみなかったらしい。まさしく親が用意した斜め上違いのプレゼントとなった。コレジャナイ感ばっちり。
ただし秘められた能力は虹空界に久しく見ない全くの新技術であり、性質はとても輝操術に似ている。輝操術ほど便利とはいかないが、今後この魔導具がより発展する事となれば遠い未来には同じ領域にまで達せるかもしれない。
ちなみに一回使用すると後の一、二ヶ月は使用不能となる様だ。燃費はそこまでよくないらしい。
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