輝操・人紹介2
第二章に登場する人物の紹介です。
本編とは関係無いので読み飛ばしても問題ありません。
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アークィン=ディル=ユーグネス
本作の主人公。
本章では対人戦闘が少なかった為、少し派手さが足りなかった。ドラーケン戦でも一撃終了とあって物足りなかったかもしれない。そこは敵が不甲斐ないと思って許して欲しい。
しかし新たな輝操術のバリエーションも増え、成長もし続けている。強くはあるが完成した存在という訳でも無く、伸びしろも多いのでこれからも変わらず強さを見せてくれる事だろう。
ノオン達と触れ合う事で徐々に軟化していっている模様。口ぶりだけはなかなか変わる事が無いけれど。ここは父親を見て育ってしまったからこそなので仕方ない所ではある。
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ノオン=ハウ=ドゥキエル
【銀麗騎志団】の団長。
今回は半分ネコ語役。おまけに今回は戦闘もする事が無かったのでオマケ感は否めない。これも全て一章で目立ち過ぎていた反動である。アークィンに涙を流させた罪は重かった。
しかし相変わらず肉体派である事に変わりは無く、アークィンをぶん投げたという活躍は地味だが確実だった。
なお後、塔半分が頭上から落ちて来た時には必死に潜って躱していた。鎧を着ているのにここまでの遊泳能力を発揮した彼女の底力はもはや常軌を逸していると言えるだろう。さすが騎志と褒め称えたい所だ。なにせ騎士でも普通に無理な事をやり遂げたので。決して展開ミスなどではなく実力の所業である。
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マオ=リィエ
ほんの少しお節介なお姉さん風味の精霊使い。
本章では半ば主役に近い立ち位置を誇っていた。出身国と古巣を舞台としただけに当然の活躍ではあるが。
今回登場したクロ様との融合こそが彼女の真価、その名も精霊体化。力の向け方で多様に姿を変える事ができ、用途によって使い分けられる。時間制限がある事に変わりはないが。
その力は現状でわかっている限りで以下の通り。
・スピードフォーム……速度を重視した姿。この姿だと天地さえ関係無い。
・パワーフォーム……一撃に重点を置いた姿。魔力で慣性を操れるらしい。
・ジャンボフォーム……巨大クロ様を着た状態。フゥージャンボー!
これらの力は切り替え可能だが、制限時間を大きく削る事になる(おおよそ一〇分ほど)。しかも形態によって持続時間は異なり、場合によっては切り替えただけで精霊化状態を切らしてしまう事も。戦闘中に魔力を補充する事も出来ないので切り替えは難しい。
ちなみに【精霊朋師】とはアークィンが勝手に付けた名前。後でこの銘を教えられ、彼女も気に入って使い始める事になる。
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フィー=ロッカ
おっとりとした感じの療術士少女。語尾を伸ばすのが特徴的。
スィーツに情熱を懸ける余り、毎日摂らないと気が済まない。なので赤空界では割と必死目で賭け事に率先的だった。甘味の為なら手段を択ばないクチ。ただしその所為で割と先を見ない性格だという事も判明してしまった。行き当たりばったり系。
その一方で、緑空界では呪術を見抜くなどの類稀ない力を見せつけた。というのも彼女はアークィンの言う通りあらゆる術法に精通している様で、見抜けない術法は無いのだとか。
「使う事は出来ないが感じる事が出来る」、これ実はかなり特異な事で、耳を疑う程の非常識とも言える能力。何故なら、力を感じるというのは本来は卓越者の為せる事であり、その道筋の達人だけが至る領域。つまり各種の力を使い慣れていないと成せない事なのだ。
なのに何故彼女はそれが出来てしまうのか。未だ謎は多い。
ただ、その謎が明らかとなるとはそう遠い話ではないかもしれない。
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テッシャ=テッサ
果てしない程マイペースな褐色娘。
余りにも自由過ぎて今回はほとんど役に立っていない様に見えた。とはいえちゃんと情報を仕入れたり、アーストランポリンを作るなど仕事はしっかりやっていたが。他にもクアリオの村の状態をさりげなく感覚で理解していたなど、深く伺ってみると割と活躍している。ビジュアルとして出ない所で色々動き回っている所為で目立たないだけなのだろう。
地面から離れると途端にスライムメンタルが発動する。特に置かれた状況が酷くあればあるほど顕著となり、アークィンの操縦レベルとなると今にも首を吊りそうになる。ココウの練習を受けた後はようやくリスカレベルのメンタルに落ち着いた。その点で見ると操縦能力チェッカーとしてとても役立つ存在と言えるだろう。その命が保つ限りだが。
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ココウ=ファジョッシ
緑空界出身の二七歳。純血のエルフだが幼い頃にクアリオと知り合い、共に育った為に混血への蟠りが無い。両親がクアリオの両親と仲良かった事で出会ったそう。クアリオと共に育ったので技工士としての腕前も培われた。
四年前に意を決して渡航。教習所にも通わないままスカイフライヤー界へと参入。その後に頭角を現しS3、S2を実力で攻略していった。しかしS1になった所で現実を知り、疑問を抱きつつも従う事に。ただそれも一年程でしびれを切らして反抗、アークィン達の前で大暴走を見せつけた。この時は半ばヤケになっており、かつ冷静でもあって腕前も伴っていたからこそ誰も抜く事が出来なかった様だ。まさにこの時の彼はフライハイアーに相応しい操縦をしていたと言えよう。
アークィンと別れた後もレーサーを続行。競技が復活した時の復活祭レースに一番で出場したそうだ。でも残念ながら一位にはなれず。多くのライバル達と激しいデッドヒートを繰り広げ、四位という結果に終わった。どうやらバウカンの呪縛から解き放たれたのは彼だけでは無かったらしい。
なお余談であるが、彼はこれより四年後に正式なスカイハイアーとなる。この頃にはファンを多数獲得していたともあり、盛大に祝われたそうな。
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バウカン=デウナジー
赤空界の大統領。現在七一歳。
ドワーフの中でも大柄な方で、人間並みの背丈を持つ。となれば比率的にも頭や腕も大きい。ただし老人であり運動も怠っていた事から痩せ細り、頭部以外は人間にも近い体格となっている。ただし顎は広く割れていて、胴回り並みという大きさ。肩幅も広いのでそれだけで人間よりずっと強そう。
三二歳の頃にスカイハイアーとなった経験がある元レーサーで、四〇近くまで活躍していた。しかしその辺りで熱が冷めて電撃引退。直後に名声を理由に政治界へと誘われ、興味を持って参入する。だがここで市民の愚かさを目の当たりにし、彼等をコントロールするという野望に燃える事となった。それだけ当時の赤空界が荒れに荒れていたという事なのだろう。
大統領であるが故に表向きは非常に人柄がよい。エルナーシェ姫とも何度か話を交わし、自由で平和な未来に意欲的な姿を見せていたそうだ。ただし裏の顔としては疎ましく思っていた様だが。彼にとっての平和とは自由無き統制世界の事であり、決して相容れる事はないと思っていたからだろう。
ちなみに逮捕後はしっかりと余罪など纏めて洗い出され、禁固五年という罪状が言い渡されたという。国民のモラルを向上させ、社会的発展をもたらした事実は否めないからこその判決だった。もちろんこれはアークィンも納得している。殺すまででは無いと思っていたので。
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おっさんドワーフ
なんか凄そうに見えるけど普通の私立探偵。だけどそこまで仕事熱心という訳ではなく、ただアークィン達が気になったから付きまとっていただけ。元々は悪人かもしれないなどと思っていたが、スカイフライヤー見学の辺りで見改めた。なので都度助言をしてくれるなど良い人の立ち回りをしてくれたという訳である。
ちなみに事件後、アークィン達からの善意でバウカン逮捕事件の詳細を聴かせて貰っていた。お陰でその後はココウともよく付き合う様になり、色々と情報を提供していたそうだ。
本名はカッザ=ブゥイ。赤空界出身。
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ショー=グレーン
一昨年までに三年連続でスカイハイアーを冠した天才レーサー。人間でビジュアル的に女性受けもよく、ファンサービスも欠かさない。おまけに派手好きで、金尽くしの装飾はわざわざ黄空界へと服飾品を特注依頼する程に凝っている。
一年前は両親の急病看護でレースに出られず。エルカー=バッゾとの勝負も叶わず悔しい思いをしたとインタビューで打ち明けていた。
――が、これらは全てバウカンの用意したシナリオ通り。ただ単に顔が良くて受けていて、それなりに腕もあったから起用されただけでレーサーの腕前としてはS2上位レベルといった所。なので本気のココウを抜く事が出来なかった。
お陰で事件後は速攻S2降格へ。バウカンに従ってただけだからとお咎めは無かったものの、これが一番の屈辱だったに違いない。ちなみにバウカンへは望んで従っていた様だ。
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エルカー=バッゾ
去年に流星の如く現れ、突然とスカイハイアーの座を勝ち取ったレーサー。人間でビジュアル的に女性受けも良く――とまぁこの辺りはショー=グレーンと同じ。元々は目立たないS3レーサーだったが偶然バウカンの目に留まり、徹底教育を施された後にS2を策略で速攻で飛び抜けてS1へ。そのままトップへと登り詰めさせられた。
事件後はレーサーを引退。元々目立ちたがりだったのあったけれど、やはり納得はいかなかったらしい。バウカンという後ろ盾も失ったので残る理由も無くなってしまった様だ。ちなみに彼もまたお咎め無しとなっている。
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鬼の十兄妹
バウカンが雇った精鋭用心棒で全員が鬼人族。しかも全員ほぼ同等の姿形をしており、一瞬見ただけでは判別が付かない。だがその実力は種族に見合ったもので、例え一人欠けようとも臆する事の無い気迫さえある。特に全員が身体を重ねた陣形「マッスルフォーメーション」はありとあらゆる力を受け流す防御性能を秘めており、この力でマオを土壇場まで追い詰めた。しかし防御を解いた瞬間を狙われ敢え無く撃沈。ナイスマッスルという謎の言葉を残してこの世を去った。
なおNo.1の長男は開幕にマオに潰された。また女性はNo.2、4、8と三人いて、全員がコンプラ厳守の革ブラジャーを纏っている。たくましい大胸筋を隠す為に。全員しっかりと血の繋がった仲の良いマッスル兄妹だった。んん、ナイスマッスル。
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チッキー
バウカンが幼体の頃から育て上げたランドドラーケン。二七歳の雌。気まぐれで卵ハンターから卵を買い取り、孵化させて飼い始めたら気付けば夢中に。今では専用育成施設を作り、仕事がてら戯れてもらうなど深い愛情を受けて育てられている。というより大きくなり過ぎて地上では飼えなくなった。食費もバカにならないが、お金には困っておらず問題無かったらしい。
ランドドラーケンは赤空界の山奥に生息する巨龍族で、只でさえ強靭な鱗をさらに硬質・密集化させた胴体部亀甲を有している。そこから伸びる首はとても長く、空中から敵を見つけては死角から火炎放射を見舞うなど攻撃性能がとても高い。その炎はあらゆる生物を焼き尽くせる程に高温で白光化する事からフレアーブレス(陽珠の炎)などと呼ばれて恐れられている。
また巨体故の強靭な四脚は人など軽く踏み潰せる程に堅牢。世界でもっとも重量のある魔物としても有名だが、鱗は金属と比べても比重が軽くて硬い。なので競技用機空船に最適と言われ、素材価値としても最高峰。巨鱗一つで五万ウィルは固いとされる。ただし並みの者では太刀打ち出来ない。おまけに縄張り意識が強いので鱗一つ持ち帰れれば御の字と言った種族。
バウカンの護衛としても優秀な存在で、アークィンの前に立ち塞がった――というより跨いでいた。しかし自慢の炎を防がれ、鋼穿烈掌によって胴体部を破砕されて死亡した。
ちなみに事後、その亡骸より鱗を回収され、上質な素材として有効利用される事に。当初はアークィンへの報酬として渡される予定だったが、そこはきっぱりと断った模様。理由は「ドラーケン退治を理由にバウカンを捕まえた訳ではないから」との事。なし崩しで得た物で儲ける気はなかったらしい。ただその代わりに素材をココウ用の新機体へと使う事が約束された。
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クアリオ=ノヴ=ヤー=ミスティオ
未だ少年っ気の抜けないヤンチャな性格の技工士。歳は二四歳。身長は一二一cm。見た目はまるでエルフの子供で、色白でありながらも割と筋肉質。濃いエメラルド色の剛毛ハリネズミヘアを有し、元気さを体で体現するかのよう。それでいて幼らしい輪郭の丸さも相まって誰からも子供の様に見られている。しかし実はアークィン達より年上というのだから驚きだろう。
ドワーフとエルフの混血で、歴史的に見ても指折りしかいないと言われる程の希少な存在。ただし軽蔑を誰よりも受ける存在ともなった。確かに生まれた当初にはエルフとドワーフの対立は消え去っていたが、混血に対する憎しみがその分膨れ上がっており、周囲から極端に忌避されて毎日を暮らしていた。しかし姉ミラリアとココウが居たからこそ挫ける事無く今まで生き続けられた様だ。根底には優しさを秘めており、常々誰かの役に立ちたいと思っている。
出身は緑空界で出た事も無い。父に憧れて技工士を目指す様になった。ただ技術そのものは継承されていない。子供の頃に離れ離れとなったからだ。それからは姉と共に二人で困難を乗り越え、更にはココウに支えられて今程までに成長する事が出来た。昔はココウの方が技術が上だったが、すぐに頭角を現して超える事に。しかしココウは諦めずにそんな彼と競い合う様となり、親友として共に才能を育み合う程となる。末にココウはスカイハイアーに、彼は最高の技工士になる事を誓い合って別れた。
その後、下働きでお金を稼ぎつつ独学で技工術を学び続け、誰にも悟られないまま多くの魔動機を開発し続けた。無限肉焼き機や無限ワカメ培養装置など、村人の助けになる物も残している。中には魔物を捕らえて食肉加工まで一貫して行う装置を造るなど、やり過ぎ感の否めない物もあったそうだ(これは現在稼働していない)。
母親が魔導士だったが魔法の類は一切使えず、コンセントレーションも練れないので魔力さえ扱う事が出来ない。おまけに力はあるものの拳を奮う事には躊躇してしまい、どうにも相手を攻撃する事自体が不可能な様だ。お陰で個人の戦闘能力は皆無でもっぱら支援役。そのうち魔動機の武器などを造って援護攻撃などくらいはするかもしれない。
ただし彼にはクアリオンという心強い仲間がいるので、ここぞという時は誰よりも強力な戦力を発揮してくれる事だろう。彼もまた【魔械技師】としてのクアリオの大事な戦闘力なのである。
趣味は機械いじりと機構設計にちょっと土いじりが好き。特技は荷車引きと、やたら気を回す事。苦手な物は根深い奴と陰険な奴(事後)。
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ミラリア=ノヴ=ヤー=ミスティオ
クアリオの姉で二八歳。とてもお淑やかな性格で、元気だった頃は母親の様にクアリオの面倒を見ていた。ロングストレートの髪を持ち、元々痩せている事もあって面影はエルフとそっくり。ドワーフ分が肌色に馴染んで人間っぽくも見える。もしかしたら現実で一般的なエルフに最も近い存在なのかもしれない。
元は魔法が得意で、立場の問題さえ無ければ一級魔導士となれた程。ただし混血であるが故にこういった階級職に就く事が出来ず、クアリオを守る為にと内職や出稼ぎなどで日銭を稼いでいた(緑空界ではライセンスが無いとお金稼ぎにて魔法を行使する事が出来ない)。
一時はそんな緑空界に嫌気を差した事もあった。ブブルクが治めているとわかっていたからこそ、離れる事も考えていて。そんな折の三年前、ブブルクが突如として混血達に土地を与える事を約束。そこで彼を見直し、混血の村の立ち上げを手伝う事に。そして完成後、彼女達は村へと移り住んだ。それが罠だとも知らずに。元の才能故の自信が有ったからこそ逆に呪術にも気付けず、結果的に自分の首を絞める事となってしまった様だ。
その所為で徐々に体調を崩して現在へ。元々素養のあった魔法も見る影が無くなり、炎を灯す事さえ出来なくなっていた。
そこでアークィン達と出会い、悲惨な結末を迎える事となる。
実はココウに恋心を抱いていた。しかし自身が混血である事と、彼の夢を止めたくないという想いから打ち明ける事は無く。その想いは誰にも知られないまま命と共に消え去った。
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ガウザとメローナ
およそ三〇年前に赤空界と緑空界の対立を消し去った歴史的人物。それでいてクアリオとミラリアの両親でもある。
ガウザがドワーフで技工士、メローナがエルフで魔導士。最初の出会いは偶然で、酒場での話し合いで絡んだ事から関係が発生。その後に嫌い合いながらも縁を深め、次第に嫌悪感を払拭。気付けば共に冒険したり戦ったりなど息が合う程に。そこで互いに夢を語り合って意気投合、愛し合うまでに発展した。その後は緑空界の奥地に移り住み、夢を追い求める。そこでミラリアとクアリオを授かり、子育てしながら研究を続けていた。
しかしそこでブブルクに研究の事を感づかれ、押しかけた彼と口論に。その翌日、識園の塔へと召還された二人は密かに抹殺されてしまった。
だがこの時、二人の夢は既に叶っていた。その夢こそが【万越たる再築者】の製造だったから。だからこそ密かにこの魔導具をクアリオ達に託し、彼等は囮として自らの命を差し出したのだ。その在り処を永遠とわからなくさせる為に。
ちなみに渡した時は只の凝ったオルゴールだったそう。でもその仕組みをクアリオが解明し、分解した所で魔導具の存在に気付いた。技工士でなければ絶対にわからない仕組みだったらしく、その所為でブブルクも見抜けなかった様だ。
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魔導勇者クアリオン
クアリオの【万越たる再築者】により、霊鋼チェアゴーレムを組み替えて造られた巨大人型魔動機。全長六メートルほどで青と白を基調としたボディカラー。固有意思があり、人格さえはっきりしている。その性格は純粋で実直。勇気があって悪い事へと敢然と立ち向かう正義感の塊。ただ生まれたばかりであるが為に疑う心を持ち合わせておらず、ブブルクの奸計に危うく引っ掛かりそうになるほど。
一方で既存のゴーレムを遥かに凌駕するスペックを持ち合わせており、原型のチェアゴーレムをも軽々と粉砕する程に力強い。更には体格差があるテーブルゴーレムを気合いで押し返すなど、根性面でも優れている為に潜在能力もかなりの高さと言えるだろう。
【万越たる再築者】の力の影響なのか、一部駆動部は金属にも拘らず肉体の様に軟体変形して動いている模様。なので喋る時にはしっかり口を動かしているし、関節も自在に変形して動いている。お陰でビジュアル的にも人に近い動きを体現し、動作効率も非常に人体的。その上で超大質量を誇るのだから砕けない物は殆ど無い。パワーに関してはもはや銀麗騎志団随一と言えるだろう。
しかも驚くべき事に魔法も使える。一応は精霊級の存在なので。特に召喚魔法は随一で、想像した物を瞬時にして呼び出す事が可能。そうして生まれたゴッドフェニシオンは本体との合体シークエンスまで構築されており、初めての合体であろうとお約束の如く成功させて見せた。
そうして完成するのがゴッドクアリオン。元のカラーに加え、合体部の金の装飾と赤が交わりトリコロールカラーを再現。おまけに力強いフォルムを体現し、見た者を圧倒・震撼させた。この時の全長は八メートル程にまで伸びる。腹部が伸び、脚部と頭部、背に追加パーツが加わる為である。なお幅全長は翼部にて一六メートルにも及ぶ。その圧倒的重厚感を前にはテーブルゴーレムの巨体さえ霞む程だった。
必殺技は【ファイナルヴェクタースラッシュ】。只の縦一文字斬りだが、霊鋼製のゴッドクアリオンブレードと溢れる魔力波動を纏った一撃なだけに、断てない物はほぼ無い。その理由は常々剣鍔から切っ先へと膨大な魔力を流しているから。まるでチェーンソーの如く、魔力を滑らせ削り取る事で相手を切り裂くのだ。その速度は光速の如し。その力によって古代から残り続けた識園の塔を両断するなど、破壊力は常軌を逸している。
ちなみにクアリオン単体でも変形が可能で、自走荷車に変わる事が出来る。ただしこの世界には存在しないフォルム故に特異性が高く、アークィン達は利用しなかった。目立ちたくないし、乗車人数も限られているので。
あと命名したのは本人。決してクアリオが付けた訳ではない。
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ゴッドフェニシオン
クアリオンが召喚した鋼鉄の大鳥で、幅全長一六メートルの巨体を誇る。また全身がラタルコランで出来ており、クアリオンと同等の防御性能をも秘めている。ボディカラーは金と赤を基調としており、その姿はまさしくフェニックスの如し。その神々しいフォルムが堪らなく遊び心をくすぐってくれる事だろう。
もちろん召喚しただけあって生命的な意志があり、クアリオンは愚かアークィン達とも意思疎通が出来るそうな。ただし人語を語れない為に筆談などが必須。
クアリオンの「フォームアーップ!」の叫び声に反応し、バラバラに分解。そのまま各パーツがクアリオンへと組み込まれ、魔導合体ゴッドクアリオンが完成する。その時の出力はクアリオン単体のおよそ三倍にも匹敵し、チェアゴーレム程度なら握り潰す事さえ可能に。恐らくテーブルゴーレムでも剣無しで倒す事が出来ただろう。それでも必殺技をブッパしたのはお約束の為である。
合体からの必殺技は勇者のロマン。そうして産まれし力はもはや人の物差しで測れはしない。これぞまさに勇気の力だ。
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賢者長ブブルク
緑空界を裏で牛耳る十賢者の一人で代表。九二歳の男性老人で本名はブブルク=ウル=フズ=グムヌーツ。専行は属性魔法学で全ての属性魔法を扱う事が出来る。ただし禁忌魔法を除いて。常々紫のローブを羽織っており、見た目はとても厳格。だが裏を返せば極悪非道の限りを尽くす悪徳賢者である。
エルフ界名門の家系にて生まれ、英才教育を受けて成長。ただこの時から性根の悪さを秘めており、かつそれを隠し通せる程の知能もあった。お陰で表では信用されつつも裏で誰かを貶めるなどは日常茶飯事。特に他種族への偏見と嫌悪は誰よりも強く、見下して止まらなかった。そんな性格のままに賢者となり、彼の強さに惹かれた者達が集い、更には理念に共感した者達の集団【異種排斥派】が生まれた。まさに緑空界から異種族を強行排斥せんばかりの悪行を犯していたらしい。
しかし三年前にエルナーシェ姫との話し合いの末、世界の流れを汲んで軟化を示す。だがこれはもちろん表向きで、混血達に土地を与えるという理解を示しながらも、一方で呪術で呪い殺そうという魂胆を秘めていた。これなら事後も勝手に死んだ事と出来る為、排斥派の仕業などと謂れを付けられずに済んで丁度良かったそうだ。
アークィンとの戦いの後は狼との混合生物として生きながらえる事に。おまけにミルダの告発によって賢者の地位も剥奪、以降は塔地下施設で動物園の動物の如く仲間達ともども飼育されたそうな。で、そのまま後一七〇年ほど生き続けたという。
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ゼコル=グノポル
エルフの呪術師で【呪詛研啓士】という異名も持っている。年齢は八三歳でこの道のエキスパート。肩部が横に尖った群青色のローブがトレードマークで、おまけに身長半分ほどもあるマジシャンハットを被っている。おまけに長い髭がうねうねと横に伸びた細顔爺で、顔のみならず全体的に細身となっている。
ブブルクの部下でもあり元は弟子でもあった。その為頭が上がらず、賢者となった今でも小間使いされていた様だ。ただし本人もそれで満足していた様だが。
もちろん【異種排斥派】の一人で、ブブルクの依頼を受けて混血の土地へと呪いを掛けた。しかも全部で三か所に。その反動もあった為に三年前から賢者活動は休止、ブブルク達の保護の下に塔内部で生活していた。しかしそこでアークィンに見つかり、呪土へと昇華えられる事となる。
なお、この衰弱呪術による被害者は百超え。かつ一挙に死亡した事もあって、この一件は【異種排斥派】の犯行として処理。しかも歴史的大虐殺として名を残し、彼も悪名を刻まれる事となった。
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ミルダ
エルフの療術士で【癒之華】という異名も持っている。年齢は八六歳で女性、本名はミルダリカ=ユク=ヴェ=ヤーラカ。ソフトなセミロングストレート銀髪。白を基調としたローブを纏い、清潔感に溢れている。しかし道具は本と日記帳以外持ち合わせておらず、とてもエコノミスト。普段は穏やかで、とても争いなどしたりはしない。ただしやる時はやる様で、アークィンと出会った時はブブルクに反抗して見せる程。それなりに正義感が強いらしい。
というのも彼女、実は若い時にウーイールーと共に冒険していた事があって。旅先で彼の志を何度も聞かされたお陰で、思考が正義感へと傾倒した模様。その甲斐もあって別れた後も人を助ける事に余念を挟まず、長い年月を掛けて力を行使して来た。その末に賢者へと選ばれ、今では療術の研究を兼ねた人助けのコミュニティを運営しているそうだ。なのでブブルクと馬が合わないのは当然の事。それでもバチバチとならなかったのは彼女が争いそのものを望んでいなかったからだろう。
とはいえ、それが結果的に傍観していたという事実にもなる。故に彼女もまたブブルクに加担していたと言っても過言ではない。もちろんその事は彼女自身も反省していたし、後悔も強かったが。
故に今後はブブルクの様な存在が生まれない様にすると心に誓っていた。
密かにウーイールーの事を愛しており、その想いは今なお続いている。ただその想いが叶う事はないと諦めてはいたが。ちなみにアークィンが養子である事には気付いていない。容姿を確かめる間も無かったのと、言動が昔のウーイールーと全く同じだった為に。
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食堂の料理長
緑空界には珍しい異種間コミュニティ型食堂を経営する猫人族。包丁を両手に持って食材を刻む姿はとても料理人らしい。料理自体もとても上手で、出来た料理は界隈でも群を抜いて評価が高い。ただしいずれも大味なので舌が肥えた人には若干きついかもしれない。
昔は格闘士をやっていた様で、闘氣功もしっかり使える。なのでアークィンを抑えた時の力は尋常じゃなかった模様。食い逃げは許しません。
名前はネオネオ=ウラムッチュ。黄空界出身。
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食堂で出会った二人
狼獣人と虎獣人の冒険者コンビ。ちょいとばかし荒々しいが根は良い人達で、混血のアークィン達であろうとちゃんと物事を教えてくれた。比較的混血に対する偏見が少ない様だ。
冒険者とは言うが緑空界に来てから長いらしく、割と事情通。クアリオとも何度も面識があり、話す事もしばしばだという。他にも食堂を贔屓している事から常連客とも仲が良く、コミュニティの牽引役ともなっている。いると助かる説明好きのお兄さんズ。
ちなみに狼の方がテオース=マ=ウッカオ。青空界出身。
虎の方がナンデル=アフガオン。同じく青空界出身。
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