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第78話 逆襲のメタルゴーレム

 突如、俺達の目の前に巨人が現れた。

 それも本来有り得るはずも無い存在が。


 あ、あれは……そんなバカな、メタルゴーレムだとッ!?


 クッ、まさかこんな防衛機能があったとは。

 これはつまりマオも知らない隠し機能って事か!


 コイツは全身が金属で象られた人型魔法生物だ。

 単純かつ鈍重な動きしか出来ないが、力と防御なら人間の比ではない。

 その拳で潰されれば最後、闘氣功が無い俺では到底耐えられないだろう。


「このチェアゴーレムは【宝霊銀ラタルコラン】で出来ておる。ミスリルなんぞよりずっと固く、魔導効率にも優れた最高峰の素材でな。並みの武器では傷一つ付かんぞ」


「何だと!? 何故そんな物がこの部屋で動けるんだッ!?」


「クハハ、当然であろう! チェアゴーレムの存在レベルは人を越えているのだから! つまり精霊と同位という訳だ! 故に人レベルまでの力を封印するこの部屋では影響を一切受け付けん!」


 おまけに精霊と同位の存在ときた。

 つまりそれだけ強力で、かつ奴等の言う事を聞くという。

 まったく、なんて厄介な奴が備わっているんだ!


 しかもどうやらその厄介者は一体だけでは無かったらしい。


 ふと見渡せば次から次へと床がせり上がっていく。

 「ギギギ」と奇音を掻き鳴らしながら。


 それで現れたのはなんと合計六体。

 ブブルク勢の有するチェアゴーレム達が俺の前に立ち塞がったのだ。


 この数は尋常じゃないぞ。

 正直に言えば圧倒的に不利だ。

 一体でも手こずりそうな相手なのに六体とは……!


「ここまで来れた事はさすがと言えるが、相手が悪かったのぅ国堕とし」


「……そう語るという事は、赤空界の出来事を知っているな?」


「当然よ、ワシらは賢者ぞ!」


「知っていて民には教えてなかったのか! 知の独占者にでもなったつもりか!?」


「フン、そうして粋がっておればよい。間も無く肉塊に成り果てる俗物めが」


 こう口で牽制してはいるが、今は俺の立場が弱い。

 恐らく奴等もそれをわかって強気になっている。

 所詮は強がりでしかないのだと。


 もちろん俺に決して手が無い訳じゃあない。

 確かに、【輝操術】でならチェアゴーレムだろうと瞬殺は出来るだろう。

 どんな硬い金属だろうと組成そのものを変えてしまえばいいからな。


 けど、その為の術ストックが絶対的に足りないんだ。

 突入時に【拡却(エンリージェ)】を二回使ってしまって。

 逃がさない為にと最後のストックを【閃駆(シャウティ)】で放ってしまった。


 【拡却(エンリージェ)】はストックを二つ消耗する大技だからな、痛手だったよ。

 その所為で、今作った分の二つしか無い。


 悔しいが、【輝操術】は最大五つまでしかストックを溜められないからな。


 その理由は、俺が憶えた事を絶対に忘れないから。

 便利な能力だとは思うが、【輝操術】に対してはデメリットにもなる。

 許容ストックを越えると、暴発の可能性が生まれてしまうのさ。


 それだけ【輝操術】はとてもデリケートな術でね。

 少し意識を向けるだけで力が発現してしまう。

 そこで行使時に別の力をうっかり思い浮かべてしまえはどうなるか。


 ――当然、一緒に発動してしまうんだ。


 その制御はとても難しい。

 五つ以上を憶えてしまうと漏れなく暴発する程にな。

 だから今の俺にはこれ以上の力を溜めておく事は出来ないんだ。


 故にとても不味い状況と言える。

 ドラーケンに跨がれているだけの状況なんかまだ可愛いもんさ。


「諦めるな武聖ウーイールーの息子よ! 我々も貴方に加勢します!」

 

 しかしそんな最中、あの三賢者もがチェアゴーレムを呼び出していて。

 それがなんとブブルク側のゴーレムに掴みかかっていくではないか。


 これは予想外の展開だ。

 まさか敵だと思っていた相手に助けられるなどとは。

 十賢者と言っても、どうやら全てが悪人という訳ではなかったらしい。


 ――なら今は彼等の誠意に甘んじよう!


「ええいミルダどもめ、相変わらず邪魔ばかりしおって! じゃが残り三体で奴を潰せばいい事よ! やれぇチェアゴーレムども!」


 となれば残すは三体のゴーレムだ。

 内二体はどうにでもなるとして、一体だけは俺自身の力で倒さねば。


 やれるのか?

 いや、何としてでもやらなければならない。

 死んでいった者達の無念を晴らす事が使命ならば!


 ここが正念場だぞアークィンッ!! 歯を食い縛れえッ!!


 すると途端、ゴーレムが三体同時に襲い掛かって来た。

 俺が身構えた事に反応したのだろう。


「【輝操(アークル)復解(ドゥーン)】!」


 なら俺も負けてはいられない。

 すぐさま創りたての力を展開し、光体に変える。

 それを横跳びしながら狙いを付けては二体へと撃ち出した。


 この狙いは完璧だ。

 瞬時にしてゴーレム二体揃って胴体が消し飛び、あっけなく崩れ落ちていく。

 単純だがこれが一番手っ取り早いからな。


 なにせ考える余裕が一切無い。

 今この瞬間にも巨腕が俺目掛けて振り抜かれていたのだから。


「うおおーーーッ!?」


 しかも敢え無く、その鋼拳が俺の身体へと打ち込まれた。

 力強く、容赦無く、そして走り込むままに。


「ぐぅおああッッッ!!」


 身体が軋む。

 意識が歪む。

 凄まじい衝撃が全身を走った事によって。


 更には跳ね飛ばされ、壁へと激突する事に。


 だが、跳ねていたお陰で威力を相殺する事が出来たらしい。

 それでなんとか床へと降り立つ事は出来た。


 ただ、それでも頭が、意識が揺らぐ。

 それだけの威力が今の拳にあったのだ。


 ぐう、なんて一撃だよ……!

 少しでも気を緩めれば意識を刈り取られかねないぞッ!!


「よぉし効いているぞ! 潰してしまえチェアゴーレムゥ!!」


 けど奴等の声が俺の怒りを刺激して意識を保たせてくれる。

 存分に気色悪いが、今だけは感謝くらいならしてやるよ!

 だからと言って容赦する気は無いけどなッ!!


 幸い、身体はまだ動く。

 それにゴーレムの攻撃も速い訳じゃない。

 なら避ける事も反撃する事さえも可能だ。


 実際、二撃三撃と拳が奮われたが、難なく避ける事が出来た。

 その上で体術を駆使し、相手の攻撃をいなして殴り付ける。

 こんな攻撃でもしないよりはマシだからな。


「ふはははっ! 金属に拳で応戦するなど、なんと情けない奴よ。無駄だというのがまぁだわからんのかぁ!」


 そう、悔しいがこれは無駄な抵抗に近い。

 俺には回避する力はあっても決定打が無いんだ。

 これだけ遅くとも【輝操術】を練る集中力が得られないから。


 それに制御前の暴発を狙うのも危険だ。

 例え昇華えられたとしても、形を維持した変化ならばそのまま潰されかねない。


 なんたって人間兵とは訳が違う。

 相手は意思の無い魔導兵だからな。

 一切狼狽える事無く拳を振り抜いて来るだろう。


 ならどうしたらいい、どうしたらコイツを倒せる!?

 考えろ、思考を回せ、可能性を見つけ出してみせろ!


 何としてでもこの一体を倒して形勢逆転を果たす為にもッ!!


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