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第66話 お騒がせ少年再び

 緑空界。

 ここは常々緑に包まれた温暖の地で、最も命に溢れている。

 しかも六大陸中最大級の広さで、歩いて横断するのに丸三日も掛かるという。

 それに加え、白、赤と続いて未開の地が多い事でも有名だ。

 故に奥地ではなお原住民が独自の暮らしを送っているという。


 しかしそのお陰で未だ危険な魔物も多い。

 生活圏の切り分けも出来ておらず、街での襲撃被害もあるのだとか。 

 ただしそれもまた自然の営みの一部とされ、改善される事は無い。

 こうした原始的にも近い世界がここにあるのだ。


 より自然に寄り添った思想国家。

 それが緑空界を束ねる国、【魔導宗国ペタラプリモ】なのである。


 その名の通り、この国より魔法が始まったともされている。

 最も、生まれたのは世界がまだ陸続きだった頃の話だが。

 けれど当時の技術はなお継承され続けているそう。

 その様な理由から【古来の地】などと呼称される事もあるって話だ。


 なお国家ではあるが国王などは存在しない。

 各州を治める州長と知識を司る【十賢者】が束ねているとの事。

 なので街によって法律が違ったりもするらしい。


 こんな地に住むのはそんな魔法を受け継ぎ、育んで来たエルフが主。

 次いで眷属である樹人や妖花人などもここの出身だ。

 獣人もそれなりに多く、独自のコミュニティもあるのだとか。


 一方で人間やドワーフなどの亜人はとても少ないそう。

 その理由はもはや言うまでも無い。

 彼等は人一倍蔑みを嫌う種族だから。


 で、肝心の混血はと言えば――ほぼほぼいないそうだ。

 元々閉鎖的な国家で、おまけに他種族への蔑視観が強いから。

 そもそもが生まれる環境ですら無いというのが大きいのだろう。


 じゃあ何でそんな国に俺達がやってきたのか。


 確かにココウに推薦されたのもある。

 折角だし親友とやらに会いに行くのもアリかと思って。

 でも俺にはもう一つ、ここに来たいと思っていた理由があったのさ。


 その目的は当然――【輝操術】の秘密を調べる事。


 というのも、この緑空界には世界のあらゆる知識が集められているから。

 大陸中央部にそびえ立つ巨大建造物【識園の塔】へと。


 【識園の塔】とは古代より存在する、天衝く程の巨大な塔だ。

 誰が造ったかも不明で、一説によれば神がヒトに投げ与えたとか。

 陸続きだった時代に神が槍の如く投げ放ち、大地へ突き刺したのだと。

 なので地下深くにも塔内部は続き、大陸底からも塔先が出ているという。

 その余りの大きさ故に、未だ空部の方が多いらしい。


 ここなら【輝操術】の事が書かれた書物の一つや二つあるかもしれない。

 そう思い、俺は旅を始めたらまずここに訪れるつもりだったんだ。

 幸い、保存書物は一般人でも閲覧出来るらしいから。


 ただ、実は父も一度ここへ訪れている。

 俺を村に預け、一ヵ月間くらい家を空けてな。

 発現したばかりの【輝操術】の制御方法を求めて。


 けれどその成果は皆無で、結局自分達で何とかしたって訳だ。


 だからもしかしたら何も見つからないかも。

 そんな不安も大いにある。

 けれど、まだ父の探していない所があるかもしれない。

 それに俺にはノオン達がいるから一人よりずっと多く探せるだろう。


 ノオン達もその目的を知った上で手伝うと言ってくれた。

 マオも嫌そうだったけど渋々了承してくれたよ。

 今日まで【銀麗騎志団】として頑張って来たから、今度は俺の為にってね。

 とてもありがたい事さ。


 後の不安があるとすれば緑空界の現事情だが、ここも問題無い。

 例の獣人二人組が割と話せる相手だったものでね。

 食事を驕る代わりにと、先日の内に情報を聞き出したって訳だ。


 ちなみに彼等は俺達の事を知らない様だった。

 まだ赤空界の出来事は緑空界まで伝わっていないらしい。

 なので変に気を遣ったりも無く自然と話す事が出来たよ。


 お陰で翌日の今日、難なく【識園の塔】へと向かう事が出来る。


 マオ曰く〝ものすっごい遠い上に徒歩しか手段が無い〟らしいけどな。

 しばらく歩き旅になるが、そこは我慢するしか無い。


 それに天気も良いし、万全の出発日よりと言えるだろうさ。

 だから後はもう進むだけだな。


 ――なんて思っていたんだけど。


「やぁやぁお兄さん達ぃ! どうやらお困りの様じゃあないかぁ」


 出発しようと街の出口に向かった途端にこれだ。

 例の少年が待ち構えていやがったのさ。


 チクショウ、お前に出会った事が一番の困り事だよォ!!


「いや、俺達は何も困っていない。少なくともお前に頼るつもりはもう無いぞ」


「そりゃないぜー。せっかくこうして婦女子様用の座布団まで用意したのにさぁ」


 なんたってしっかり乗車可能な荷車まで用意して立ち塞がっているんだから。

 きっと先日の食事処で嗅ぎ回っていたんだろう。

 全く、あの二人に口止め料も払っとけば良かったよ。


 しっかし、これは完全にターゲットを向けられているな。

 カモれるだけカモろうっていう魂胆が丸見えだ。

 下手に隠そうとしていない所が逆に憎たらしい!

 無駄に準備万端だし!


「アークィン、まず値段交渉をした方がいいんじゃないかい?」


 お前もだマオよ、楽しようとしている魂胆丸見えだぞ。

 歩きたくない気持ちはわかるが君は少し歩いた方がいい。


「にゃー(ハッハー! なんならボクが荷車を引こうじゃないか!)」


 やめておけノオン、そんな事をすると足元を見られるぞ。

 きっと変な荷物とか載せられて苦労するだけだろうよ。


「ちィ! もうすぐノオンちゃのネコ語が切れーそー」


 心配する所が違うよフィー。それはむしろ喜ばしい事だよ。

 あとこんな時はすっごい顔歪ませるのな、君。


 ――あ、テッシャいねぇ!

 アイツ、また一人でどこかに行ったな。

 確かに、緑空界はほぼほぼ土面だから潜り放題だけども。

 しかし魔法大国だからな、変なトラップ食らわないといいな。


「さーどうする兄ちゃん達! 今なら一日一万ウィルポッキリで【識園の塔】までご案内だぁ!」


「高い! 五千くらいまでまけてくれ!」


「ノンノン! オイラを破産させるつもりかい? 一日拘束なら一ウィルたりともまけられないねぇ」


 そしてこの少年は相変わらずだ。

 まさかの値段交渉さえ受け付けないとは。

 クッ、なんてがめつい奴なんだ……!


 だけどな、その頑なな態度は時に悪手を呼ぶんだ。

 俺達はそこまで間抜けじゃあないぞ。


「ちなみにそこの猫姉ちゃんなら知ってるかもしれないがぁ、この大陸じゃあ荷車は許可制で馬車も使えねぇ。おまけに今日は同業者が出払っていないときた! さぁどうする? 乗りたいなら俺に頼るしかないぜー」


「いや別にそこまで必要無いから」


「ア~クィ~~~ン!!」


 マオの悲鳴が聴こえた気がしないでもないが気のせいだろう。

 何も必ず乗らなければならないという訳では無いしな。

 到着時刻が変わらないなら尚の事で。


 何より無駄遣いする訳にはいかない。

 俺達に金銭的余裕はそこまで無いんだ。


「そ、そんな事言うなってェ。ほら、何かと道中大変だぜー? 魔物とか野盗とか出るかもしれないし。そこでオイラがいれば――」


「不要だな。俺達なら自分達で何とでも出来る」


「もしかしたら道に迷うかも――」


「お前の友達に道程を聞いたから心配いらないぞ」


 ほらほらどうした少年よ。

 想定外だって言葉が顔に浮き上がっているぞ。


 ――おっと、意地悪さが出てしまったな。

 少し反省しなければ。


 まぁ正直に言えば別に怨みなんて無い。

 昨日も決して損した訳じゃないからな。

 金が入用なら協力したい気持ちもあるさ。


 けど俺達にも生活がある。

 これからしばらく【識園の塔】付近で生活する事になるだろうしな。

 だとすれば今ある資金でも足りるかどうかも怪しいから。


 だからここまで用意してもらったのは悪いが、諦めてもらうしかないんだ。

 

「……じゃー仕方ないか。なら他をあたるとするさ。迷惑をかけてすまなかったよ」


「悪いな」


 そして意図が伝わったのだろう。

 途端にしおらしくなった。

 

 根が悪くない事はわかるよ。

 こうやって素直に謝ってくれるしな。

 ここではコイツみたいにアグレッシブじゃないと稼げないんだろうさ。


 なら今度会う時は本当に必要とする役割を果たして欲しい。

 もしその時が来たのなら喜んで利用させてもらうさ。




「ま、次の機会があったら是非ともこのクアリオを贔屓してくれよな!」

 



 ――待て。

 ちょっと待て。

 今、お前なんて言った?


 クアリオ、だと!?

 お前があのココウの親友クアリオだとォ!?


 この時の俺は獣耳を疑い過ぎる余り、穴中を指でほじくり回していた。

 そりゃもう血が噴き出さんばかりにグリグリと。

 それだけ信じられもしない驚愕の事実だったからこそ。


 まさかこのお騒がせ少年が俺達の探そうとしていたクアリオだったとは。

 これがデジャヴの正体だったなんて全く思いもしなかったよ。


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