輝操・物紹介
第一章に登場する物の紹介です。
本編とは関係無いので読み飛ばしても問題ありません。
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輝操術
この物語の根幹とも言える秘術。アークィンだけにしか使えない。
両手の甲を合わせる事で発現、強い光を放つ。その後に専用術式を唱える事で力が両手に収束し、ようやく制御可能となる。なお一度発動すると解除するまで消えない。なのでその特性を生かし、予め体に力を纏わせておく事も出来る。
その力の効果はわかっている分で以下の通り。
・輝操・転現……物質を変化させる
・輝操・復解……変化させた物を光体へ戻す
・輝操・閃駆……アークル光体を射出
・輝操・拡却……空間拡大し、範囲の物を消し去る
本来は転現で大体の事が済む。しかし言葉を変えて意味を成す事で操作が容易となる為、こうして派生形が生まれたという訳だ。なお種類はこれだけに限らず、まだ一部に過ぎない。
名称の由来は当然、アークィンの名前から。専用の術ならば当人の名前をもじるのが一番だろうというウーイールーの意見から名付けられた。
その実態は「なんでも出来る術」。文字通り、可能性は無限大。
基本形となる輝操転現は対象物をあらゆる形へ昇華える事が出来る術。これに触れると物理法則を無視して変質・変形が可能。しかも有機物・無機物に拘らずなんにでも。おまけに筋肉などの複雑なパーツでさえ変質させ、変質後の部位には元の概念だけが残る。
なので仮に腕を石に換えても筋肉は動くし血も通う。ただし石の血液が駆け巡る事になるので後にどうなるかは想像に容易い。神経も変質するので亀裂でも入ろうものなら全身に痛みが走る。生物に見舞えばとてもおぞましい結末を迎えかねない恐るべき力と言えるだろう。
転現、復解、閃駆は基礎技でストックを溜めるにも便利。現状は最大で五つまで貯める事ができ、この三つの力を駆使して戦術を組み立てられる。
拡却は発動部に存在する物体に大穴を開けられる技。しかも今まであたかも穴があったかの様に。なので開けた瞬間にも真空引力は発生しないし、なんならしっかりと大気がある。よって原理的に言えば場にある大気に塗り替える技、と言った方が正しいかもしれない。なおその境目は「激情の吹き出し」の如くトゲトゲしくなっている。閃光に触れたモノが変わるという仕組みであるが故に。
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陽珠
世界を照らす太陽。人工物と思われるが誰が造ったかは不明。
中にて【陽珠の君】と呼ばれる人物がコントロールしているらしい。
現代と同じく、昼と夜を演出する。しかし太陽と違って空に在り続け、夜には月の役目も果たす。なので「日が落ちる」「日が昇る」という言葉は存在せず、【日照内】【日照外】という言葉が生まれた。なお、昼と夜という言葉自体はちゃんとある。
日照内は約12時間、日照外は約10時間とされ、季節によって変動がある。
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機空船
空飛ぶ乗り物。空が大半を占めるこの世界において必須とも言える乗り物である。そのため割と一般的で、平民が持つ事もあるくらい。主に赤空界で製造され、割と高値で取引されている。ただし一機製造するのに小型機でも一ヵ月以上は見込まねばならない。現代の車と同じと思えばいいだろう。
機構によっても変わるが、基本は空流循環式の排気航行。取り込んだ空気を魔力で加速させて吹き出すという仕組みだ。魔力は充填形式を持っており、搭乗者あるいは充電スタンドで補給する事が出来る。後者はもちろん有料。
元は古代遺産のレプリカ。それを今風に合わせて改良した物。赤空界では日々新型機空挺が開発設計されているそうだ。ちなみにモデルアップスパンはおおよそ十~十五年ほど。なので最新型といっても十年前の機体などといった事はざらである。
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混血
二種族以上の遺伝子を持つ者の事を指す。
この世界では多数の人間・亜人・獣人が存在し、彼等は交わって子を成す事が出来る。そしてそれらは必ず二種の特徴をもって生まれて来るという。
アークィンらもまた混血であり、親の特徴を受け継いでいる。その為、姿を見られて蔑まされる事も少なくはない。
それというのも混血はこの世界において忌み嫌われているから。
【業魔黙示録】という伝説が彼等を邪悪な存在と見せた事によって。
なお血統には【ステージ】と呼ばれるカテゴリが存在する。
・ステージ1……純血
・ステージ2……二種混血
・ステージ3以上……三種以上混血
ステージ3以上は2と姿が変わらないので、世に出してはならないとして粛清対象とされている。全ては【業魔】を生まない為にも。
ただし血筋で考え方が変わる訳でも無い。故に、血筋だけで邪悪と罵るのは現実を見れない者の驕りである。
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奴隷
この世界においての奴隷とは基本、人身売買を指さない。あくまで職業であり、一定の人権が認められている。なので辞める事も出来るし、望んでなる事も多い。ただ薄給で単純作業が多く、考える必要も無い仕事を与えられるというだけだ。
ただ仕事柄、管理が非常に甘い。その為、人身売買が横行してしまった、という背景がある。もちろんこれは犯罪なので公になれば逮捕案件であるが。しかし危ない仕事も多く、人員数も圧倒的に足りない。それを確保するにはどうしても買うしかないという側面が存在する。それ故、公安側も敢えて目を瞑っているのが現状だそうな。
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烈火波鞭
炎系低級魔法。炎の鞭で敵を打つというもの。普通の魔法使いが使うと、敵を炎に晒す事が出来る。しかしアークィンの場合は瞬時に消し炭と化せる。魔力の質の違いがよく出るので愛用している様だ。
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鋼穿烈掌
闘氣功を腕に纏わせ、掌底と共に撃ち出す大技。そもそも常人が実現出来ないレベルの高等技術。これを喰らえば防具・防御力を貫通し、内臓を破裂させられる。最高レベルであれば肉片も残らない程に吹き飛ぶそう。アークィンの得意技の一つ。なおウーイールーはこれを連打出来たという。
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光閃射
光系低級魔法。閃光を放って遠くの敵を撃つ射撃術。普通の魔法使いでも容易に扱える代物で、魔導部隊が掃射する姿は圧巻。威力は現代のハンドガンレベルで肉体を貫けるかどうか、といった程度となっている――が、アークィンの場合は狙撃ライフル並の威力と化す。精度は割と高め。
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交響詠唱
魔法で魔法を詠唱するという高等技術。習熟度次第で幾つも重ねる事ができ、アークィンは理論上、最大で七つ分の同時集積が可能。ただし魔力消耗も高いので多用は出来ない。
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精霊使い
大地に流れる精霊の力を借りて不可思議な力を発現する魔法の亜種。当人の魔力を消費せず、媒体を通して自然力を行使するというもの。ただし媒体物との相応の信頼と融和性が無いと効果は十二分に発揮されない為、非常に扱いにくい術法となっている。主に自然界に耳を傾けやすい樹人、妖花人などの植物系獣人やエルフなどといった亜人にしか扱えないと言われている。
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療術士
魔法の系譜の一つで、対象者の傷を治す力・療術を扱う者。出来るのは基本的に傷を塞いだり毒を抜いたりするくらい。失った血を戻したりは基本的に出来ない。
本術は昔、回復術だとか治療魔法、神聖魔法などと言われていたが、治す事に変わりは無いとしてこの名前に統一された。力の秘密を紐解くと、神の力などは一切必要無い事がわかった為である。なんでも神信奉者が力を独占する為に広めたデマだったそうな。全くもって罰当たりな話である。
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銀麗騎志団
ノオンが旗上げした個人団体。決して騎士の称号は持っていないが、志は騎士にも負けない。モットーは「正義を貫き悪を挫く」。人の目に届かない悪人を懲らしめる為にと、常に目を輝かせる。
騎志団としたのは、騎士を名乗れないから。混血構成ともあって立場上、名乗ってはいけないという制約がある為である。しかし当人達はこの名を気に入っているので問題無い模様。
なお名前の由来は「なんとなく」。マオがふとそう言ったのでこうなったそうだ。
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小麦
青空界の小麦はとても美味しい。故に豊穣の黄金とも呼ばれ、世界中で愛されている。もちろんこれでパンも作れるし、粉にして料理にまぶしたり、お菓子にしたりと用途は多い。現代との違いがあるとすれば、これが豆の種類とされている所くらいか。姿は似ているが、実が穂に包まれている事から分類がそうなってしまったという。世界柄、年中育つからというのもある様だ。
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メディポットポーション
いわゆる回復アイテム。療術が秘められているので割と傷の塞がり具合は顕著。ただし使い過ぎると耐性が付いたり、中毒になったりするので要注意。そりゃ傷口から血管に異物が入ったら調子も悪くなるよね。
なお「メディポット」はメーカー名。なのでポット+ポーションで重複しているじゃないか、というツッコミは無粋である。
それと勘違いしている方は多いと思うが、ポーションは「瓶」という意味である。瓶だけでは回復出来ないのでちゃんと頭に名前を付けてあげよう。
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業魔黙示録
かつての伝説の題名。実話を書き記したもの。遥か昔に誕生した、世界半壊せし獣【業魔】の恐ろしさを伝えたものである。
【業魔】とは遥か昔に様々な種族を掛け合わせて生まれたとされ、混血児を異端と知らしめた存在でもある。ただし事の詳細は不明。
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神鉄
正式名称はアフトラタン・ガルトライト、あるいはアフタロライト。白空界でのみ採れるとされる超希少金属。しかし実際に産出された記録は無く、伝説の産物と言われている。だが現存する六聖剣には実際に使われており、謎は未だ多い。
不壊不朽の金属とされていて、現存する他あらゆる物質よりも硬い。おまけに精錬方法も難しく、現状の技術・環境では加工するのも難しいとされている。技術に関しての記録は緑空界に残っているらしいけれど。
なおアークィンはこれをもう量産する事が出来る。ただしそんな事をすれば色々と厄介な事になるので、容易に創るつもりは無いらしい。
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猫
猫である。この世界にも猫はいる。
ただし世界が狭いともあって品種は五種しかいない。
その種類は以下の通り。
・サムテッタ……標準的な短毛種。尻尾がとても長い。気まぐれさん。
・ブーケセット……足先がブーケの様な毛並みになった準長毛種。おっとり。
・トライコーン……後頭部に角が生えている。背中を掻く為に。やんちゃ。
・コルコル……別名「雪玉」。足先しか見えない程の超長毛。というか毛玉。
・クナトリー……足が長く野性的な短毛種。でも比較的人懐っこい。
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砲筒
この世界にも火薬は存在し、大砲というものもしっかり存在する。中には肩持ち式の砲筒もあり、それを世間では親しみを持ってバズーカと呼ぶ。しかし決してBazookaではなく、正式名称はバッゾローク。そこから訛ってこの名前へと変化したという。決して現実から引用した名称ではない。ただの偶然である。
なお現状は魔法の方が扱い易いとされ、実物は赤空界にしか無い。それも骨董品レベルであり、実用性は無いとのこと。ウーイールーは遥か昔に実射された所を見た事があるらしく、その感動を伝えられていたのでアークィンは知っていた。
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騎志
騎士になれないノオンが考えた概念。信条は「騎士に非ずとも志は誇り高くあれ」。この信条があったからこそ【銀麗騎志団】は生まれたと言っても過言ではない。いつしかこの名はアークィン達にとって騎士以上に特別な意味を持つ事になるだろう。
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探知魔法
罠の発動トリガーに利用される接触反応式の術。この魔法自体には一切殺傷力は無く、ほぼほぼ感じないくらいの微細な魔力しか籠らない。その為とても感知し辛く、プロの探知士がいないと見つけるのも困難とされている。この魔法と攻撃系の罠魔法などを繋げる事で、設置場所を悟られずに済むという訳だ。
なお盗賊の周囲に仕掛けられていたのは放散式の地裂魔法で、人一人なら簡単に殺傷出来る威力を誇る。にしてもあんなにたくさん設置して大丈夫なのか?
実はマオとフィーもこの地雷には気付いていた。しかしアークィンが自信気に解除していくものなので任せていたそうだ。それだけもう信頼していたという証拠だろう。
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光音遮絶
風系魔法で、己の体に極薄の空気膜を纏って存在感を消す知覚遮断術。光さえも屈折透過させて摩擦も最小限となるので、人の目には映らなくなり服擦れなどの音も漏れない。魔力濃度が高いとほぼ無姿無音となり、気配でしか悟る事が出来なくなる。
デメリットは障害物に触れた時、摩擦を得られない事。なので迂闊に壁へ触ると滑ったりするし、転ぶと起きられなくなる事も。結構使い辛いので、それなりの修練が必要となる中級魔法である。解除は術者の意識一つで自由にできる。
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気空滑
風系魔法で、己の足裏と地面との間に気泡を生む術。パーセクトの足裏限定バージョンと思えばいいだろう。これも術者の意識一つで自由に解除可能。複数人に掛けてもこの原理は変わらない。
しかしこれには付与効果があり、身体から大気摩擦の影響をも奪う。よって一つ勢いを生むと無重力の様にどこまでも滑っていけるという。特に、パーセクトと一緒に使うと体全体が完全に摩擦を失うので、山などで使おうものなら最悪の場合はふもとまで滑り落ちてしまう事にもなりかねない。その扱い辛さから中級魔法ながら上級並みの扱いを受けている。
アークィンはそれを全て重心と慣性コントロールで制御し、しっかりと扱って見せた。
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罰
この世界においての罰とはそういう名称となっている。その由来はクロスを意味するXから。相手に戒めの腕十字を突き付けて後悔を促すという意味からこの言葉が生まれた。
それは偶然にも輝操術の烈光軌跡も同じ形だった為、アークィンはこの力を「悪人に罰を与える力」として行使するものと運命的に感じ取った。
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紫空界の騎士団集合戦術
盗賊に身をやつしたツァイネルの部下達が見せた戦法。全員の構えを全くの同じにし、規則正しく、かつ入り乱れる様に動く事で相手を惑わせるというもの。これは相手が一人でも数人でも効果を発揮し、遠近感と視認感覚を麻痺させる。その上で鈍った敵を容赦なく切り刻む高等戦術。もちろんこれは卑怯な戦法ではなく、れっきとした勝利の方程式の一つとされている。
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陣形
多くの国にて兵士・騎士が習熟する対人・対魔物の集団戦術。数人で敵に対して有効的な形へと隊形を整えて戦うというもの。その種類は多種多様で、この世界における集団戦闘はこの陣形の組む速さと相性で勝敗が決まるとも言われている。
盗賊が見せたのは「主盾」、「対魔」、「破魔突攻」。
主盾の陣は一列に並びつつも相手を囲む様に僅かと弧を描く陣形。この状態で敵と距離を詰め、周囲から一気に詰めて潰すという攻守一体の作戦である。
対魔の陣は主盾と逆で、自陣を弧状の壁で覆うというもの。ただし中心が少し出ており、魔法を掻き分けて進むという意図も兼ねている。
破魔特攻は対魔の陣から派生する陣形で、槍を模した突撃手段。魔法を防いだ後の隙を狙う反撃戦術である。大概の魔法使いはこれへの対策が打てずにやられる。
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複合闘戦士
二種以上の戦闘技術を持つ戦士の総称。手持ちの芸が多ければ多いほど相手を翻弄出来るので、使い手次第ではかなり有利となれる。ただし基本的には一つを極める者には敵わないとされ、その使い手は極端に少ない。つまり器用貧乏という事である。ただし武聖ウーイールーはその全てを極めたが故に最強となり、伝説と成り得た。
アークィンもその武聖によって複合戦闘を叩き込まれているので実践は可能。しかし習熟度は未だ及ばず、極めるには至っていない。
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騎士道
この世界における騎士道は現代のものとはほんの少し異なる。忠義を尽くす戦士という意味では変わらないが。一方で決闘様式などには大きな隔たりがあり、この世界独特のルールが敷かれている。
例えば、騎士の誇りとは剣と鎧であり、それを脱ぎ去る事こそが誇りを棄てる――つまり敗北となる。なのでその両方さえ置かなければ何があろうと敗けにはならない。逃げようが何しようが何の問題も無いという訳だ。この誇りの在り方を利用した「胴・肩・腰全てを木刀で打った方が勝ち」という騎士道決闘ゲームも存在し、実際の修練でも用いられる事がある。
他にも、背中を切ろうと恥にはならない。むしろ背中を取られる方が悪いという風潮まである。そもそも世界観として身体速度が現代を遥かに超えているので背中を取るのはもはや定石という訳だ。そんな世界だからこその在り方と言えるだろう。
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ゴリヤー海老
身がとても引きしまったプリップリの海老。伊勢海老の様に大きく、臭みも少ない。ただし腐りやすいので漁港以外では食べる事が叶わない。チーズやバターソースを添えて食べられるのが主だが、通はパイン蒸しを選ぶという。フルーツの酸味が染み込むとジューシーさが引き立ち、海老の如く飛び跳ねる程においしくなるのだとか。
なおハサミが大きく力が非常に強い。なのでうっかり触ると腕を断ち切られるなど、結構怖い生物でもある。その危険度もあって、割と高価な食材となっている。
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カニ
あのカニである。現代のアレと大して変わらない。だけど美味しさも変わらない。時々食べたくなるあの美味しさは世界が変わっても共通なのだろう。ただし色は茹でても緑色のままなので印象はあまり良い方ではない。
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メイルシュトロームアイス
ウルスーヤのレストランが誇る最強最高のアイス(自称)。凄まじく大きい器にこれでもかという程のクリームとアイスを乗せ、塩・砂糖をまぶして際立たせたもの。おまけに溶けにくくなる様にと氷魔法が掛かっており、二時間ほどは形を維持する事が可能。その間に食べきれなければ残念な結果が待っている。しかしフィーはこれを僅か三〇分で完食した。別次元腹恐るべし。
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ペリーヨワカメ
ウルスーヤからほんの少し離れたペリーヨ海で採れる最上級のワカメ。海底の恵みをふんだんに吸い上げたお陰で栄養満点。滋養強壮にもなり、夜の営みにとても効果があるという。そのお陰で値段は非常に高く、収穫量も制限されている。また密漁した場合は処刑に至る事もあり、扱いはもはや禁制品にも足る。なので少しづつ楽しむのが定石。その為のワカメキープである。時々売り切れるので取り置き予約するのも手とされている。
なおこの日テッシャの腹に消えたのは二本。なんて畏れ多い事を。
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ツマ
ウルスーヤの近郊で栽培された辛味若大根を千切りにしたもの。僅かに潮気があり、単体でも美味しく食べられる逸品。ツォイペーストを付けるとなおよしで、海産物との相性もばっちり。値段もリーズナブルで財布に優しい。食物繊維やビタミンも豊富なので漁師の良いお供となっている。
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栴檀
現代の栴檀と似た植物で、五芒星を描いた花弁が特徴。花弁の先が紫で色付いているので、夏期前になると大陸中が紫一杯となる。マルディオンの国花とされ、国章にもこの花弁の紋様が刻まれている。
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投射魔法士
いわゆる写真家。専用の魔法道具を使い、映したい景色を紙に念写させる事が出来る。そんなに難しい技術でも無く、需要もそこそこ。安定した時代だからこそ生まれた職業と言えるだろう。ちなみに暗幕に隠れて投射する事もあって「隠者」という複名もある。もちろん、紫空界の隠者だからといって決して茨を出したり、魔法道具を叩き潰したりする事は無い。
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突っ込まざるを得ない呪い
そんなものはない。ドゥキエル家の人間が基本的に天然でツッコミどころが多いだけだ。だがもしかしたらこれこそが魔女の呪いの効果なのかもしれない。その真相まではもはや不明である。
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粛清部隊。
その名の通り犯罪者を取り締まり、処刑をも行う実行部隊。隊員全員にターゲットの抹殺許可が下されており、作戦行動中は如何な殺生行為をも犯してもよいとされている。皇帝が結成し、自ら指揮していた。なのでこれも立派な近衛騎士団の一つ。
ノオンの父ファウナーも以前はここに所属しており、多くの犯罪者を抹殺してきた。その中にはステージ3以上の混血も多く、一歩間違えればノオンもその歯牙に掛かっていた事だろう。
ノオンを迎えた後、ファウナーはこの部隊を脱退。皇帝の好意で側近として働き始める事となる。
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若き魔女
ドゥキエル家の伝説に出て来る存在。残念な呪いをこの一族に掛けた張本人でもある。
その動機は不明だが、アークィンの予想では――
・当時のドゥキエルの者を愛していた。
・愛を成就させようと色んな手段を講じていた。
・でも想いは届かず破談。
・逆ギレして男×男の趣味に目覚めた。
・ドゥキエル家に男しか産まれないという復讐の呪いを掛けた。
――なのではないかとされている。
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点火魔法
指先を輝かせる魔法。ただそれだけ。本当にそれ以外の効果が無い。
昔は灯台守や漁師のハンドサイン用として使われていた。しかし魔道具の普及からその用途は次第に変化し、今では応援などに使われる事がメイン。
なおこの世界にもアイドルは存在する。なので応援する時は必然とこの魔法が使われる事に。そんなアイドルギーク達の中では「この魔法が使えない奴は前の席へと座る資格無し」という謎ルールが存在している。その為アイドルギーク達の大半が魔法職に就いているのだとか。決して童貞のまま三〇歳を過ぎたとかそういう訳ではない。
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六聖剣
紫空界が持つ国宝で、かつて【業魔】を倒したとされる剣。すべてに特殊能力が秘められており、現存する剣の中でも段違いに強い。おまけに神鉄で出来ている事からほぼ折れたり傷付いたりする事が無い。まさにこの世界における最強武器といえよう。
ちなみに種類は以下の通り。
・第一 エグザバーン (ヴェルストが所持、その前は皇帝)
・第二 ウィルナンジュ (ラターシュが所持)
・第三 フェタリオス (カイオンが所持、その後ノオンへ)
・第四 ラーネイジー (宰相が所持)
・第五 ガンドルク (ツァイネルが所持、その後ノオンへ、その後破損しお蔵入り)
・第六 クラウトラタン 皇国地下、ワイアード剣王の墓にて今なお眠る
順序による強さの差などは無い。
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マルドゥーケの歴壁
中央皇国マルディオン首都ワイアードが出来た時に建てられた史上最強の城壁。余りにも厚く高いため乗り越えるのはほぼ不可能。おまけに六つの魔導高射砲まで有し、空からの侵入さえ許さない。魔法防御にも優れ、過去の戦争において魔導士軍団の総攻撃さえも防ぎきったのだという。紫空界のアイデンティティであり、象徴とも言える建造物だ。
しかし今回の戦いで大穴を開けられ、修復にも時間を割かれる事に。元の工法もわからないので完全復元は無理そう。
とはいえ皇帝は今回の事の戒めとして、門はしばらく閉じなかったそうな。
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シャンカナ
紫空界原産。国花である栴檀に似た木で、六つ花弁を持つ花を咲かせる。花の蜜はとても甘く、これを採取して作った蜂蜜はとても糖度が高くなる。また花そのものにも甘みがあり、おまけに親油性も高いので植物油に長時間浸けると香料油へと変化する。この油で火を灯すと芳しい甘い香りがたちまち立ち上り、好む人の鼻を喜ばせてくれる。ただし濃度が濃いと中毒に至る事もあるので扱いには注意が必要。
なお一定の濃度まで達すると人の血流を促進させる興奮作用が生まれるので、古来より「異性を落としたい人はこの香を焚いた部屋に意中の人を連れ込むと良い」という恋愛成就法が存在する。
ちなみに生産量はそこまで多く無く、専門の店に行かないと売っていない。
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ジャガマヨサンドイッチとコーヒーブレイク
ジャガマヨサンドイッチとは青空界自慢の小麦で焼いた厚切りパンにペースト状の具を置いて挟んだもの。とても美味しい。
ジャガマヨとは、マヨラ地方原産の水芋【マヨ芋】をふかして潰し、ジャーガ氏考案の卵黄ペーストソースをかけ混ぜたもの。これも単体で充分美味しい。一方のサンドイッチはスンダウィという名称が訛って生まれた食事方法名。【スンダ】が「パンに乗せる」という意味で、【ウィ】が「被せる」とい意味。それがいつしか広まり、サンドイッチとなって根付いたという訳だ。
食事をこうした軽食で済ます事を別名コーヒーブレイクと呼ぶ。「一休憩」という意味を持つ【カヒ】という言葉を、まんま「やり過ごす」という意味の【ブレイク】と繋げただけ。それが平民に親しまれ、いつしかこう呼ばれ始めたのだそう。決して黒い飲み物が出てくる訳じゃない。
もちろんどちらも決して現実から引用した名称ではない。ただの偶然である。
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眩光魔法
光系魔法で、放射状の光を発して範囲内の相手の視覚を一時的に奪う魔法。正式名称は【眩光拡射】。中級魔法で溜めが必要と扱い方はそれなりに難しい。しかし乱戦時には気付かれずに撃てる事もあり、上手く決まれば多くの敵を一網打尽にする事が出来るだろう。ただし仲間をも巻き込む危険もあるので放つ時は背を向ける様に予め伝えておかなくてはならない。
なお籠める魔力が高過ぎると射程が伸びる分、自身も目が眩むことになる。
ディアルはこの魔法を使えないが、極限まで歯を美しく磨く事でその力を再現する事が出来た。イカしたお兄さんでないと実現出来ない力である。二番目の街にて出て来るキャラに相応しい技と言えよう。
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先駆けの春風
風系魔法で、ただ強風をぶつけるというだけのもの。追い風・向かい風は自由で、用途に応じて意識しながら詠唱するだけでいい。ただしこれでも自然現象を扱うとあって中級魔法であり、魔力もそれなりに消費する。
分類は一応、攻撃魔法。なので本来は療術士といった支援職には扱えない。習得は出来ても、当人の魔力質が適さず形を造れないからである。
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痺雷流陣
雷系魔法で、範囲内にいる相手を瞬時に麻痺させる中級魔法。探知魔法と併用する事でより多くの相手を巻き込む事が出来る。魔力の質によって麻痺度合いは変わり、最大では相手の意識を瞬時にして奪うほど。ただし上限値はそれほど高くない。アークィンも簡単にこの領域へ達せられる。
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闘氣功
魔法や精霊術とは別口の、精神力を媒体としたエネルギーを扱う戦闘技術の一つ。自身にしか効果を発揮出来ないが、そのぶん魔力の素質などに影響されず使用が可能。おまけに肉体を鍛える事で共に成長するので、前衛職は魔法よりこちらを扱う事が多い。基本的には身体強化に使う事が多く、硬さ・力強さ・速さなど長所を端的に伸ばす事で戦い易くする事が出来る。
その一方で攻撃に転用する事は困難を極める。何故なら、防→攻への切り替えが非常に厳しいから。強化に使用した全闘気を攻撃に転用せねばならず、更には切り替えに失敗すると集中力が途切れてしまう。つまり無防備となってしまうからである。しかも再展開にも時間がかかる。しかし戦闘中にそんなリスクを負う事は普通は出来ないし、なら強化に回した方がずっと効率が良い、という訳だ。
なおかの武聖ウーイールーはこの切り替えを極め、ほぼラグ無しで連続攻撃さえ可能。周囲から襲い掛かる敵集団を闘氣功の拳により一瞬で薙ぎ払ったという逸話が今でも残されている。
アークィンもこの領域とまではいかないがラグ無しの切り替えと多用な使用方法を実践可能。闘気による分身もこれにあたり、「意志のある残像」を見せる事で達人相手に大きな牽制を与える事が出来る。【鋼穿烈掌】もこの攻撃型闘氣功を打ち放つもの。これに限らず物質を貫通して衝撃を内部へ届かせる防御無効という特性をも誇っている。
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依存毒
紫空界でほんの少し採れる、とあるキノコに含まれた毒。このキノコを乾燥させ、粉末状にするとこの毒が出来上がる。ほんの微量を毎日摂取し続けると、約一年ほどで依存症が発症。抜けると激しい倦怠感に襲われ、生きる気力まで失っていく。その非道的効果から世界で使用が禁止され、紫空界でも使用者と配布者・製造者に厳しい罰則を設けている。いわゆる麻薬である。
治療方法は摂取しないこと。しかしその期間は摂取期間と同等で、非常に時間がかかるとされている。
なおこの毒キノコは食用キノコに紛れて生える特性があり、見分けはキノコのプロにしか出来ない程。なので素人が安易に口にしてしまうとたちまち中毒に陥り、最悪の場合は死に至る。少し食べただけでも依存性が残り、脳が委縮して正気を失う事になりうる。
ただし自然界にしか存在せず、人の生活圏にはほとんど入って来ない。なので大きな被害には至らず、駆逐するほどでないとされている。
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極厚バストアップブラ
この世界にも胸を意識する慣習はあった。シリコンにも似た軟質ゴムを使用しており、その質感は本物そっくり。備え付ける貴婦人の方々も満足する程の出来栄えとされている。なお買いたてだと若干匂いがあるので消えるまで仕込み(!?)が必要。おまけに言うと男性用もある。膨らんだ大胸筋は力の証。
アークィンがこの存在を知っていたのはもちろん、あの方から教えて貰ったから。にしても、そうなると十五年以上も昔からこのブラが存在していたという事になる。という事はもしかしたら、この世界の文明は現代と比べても相当進んでいるのではなかろうか。テレビなどもあるくらいなので。
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至幸なる癒緑光
光系魔法で、療術士でも一部にしか使えない程の上級療術。再生速度が非常に高く、受けたばかりの傷ならば瞬時にして元に戻せる。失った体力などは戻せないが、僅かに活力強化を付与する事もでき、どんなに消耗した人物でもこの魔法を受ければたちどころにしての再起可能という。
なお本来、魔法には固有能力以外のメリット・デメリットを付与する事は出来ない。ただ使用者本人のこだわりや欲求などが強いと稀に、習得時に特殊効果を備える場合があるという。
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蘇生回源
闇系魔法で、死者を蘇生する事が出来る魔法。遥か昔に封印され、使用を禁じられている。その理由は「死者の冒涜、ならびに死の概念希薄化の阻止」。生物にとって死は絶対であり、人為的に覆す事はあってはならない。死者が溢れてしまえば生者が生きる場所を失いかねないからこそ。よって蘇生は基本的に禁止とされ、続いて本魔法も使用禁止とされることになった、という経緯がある。ただし現在は使用者がいないのでこのルールは形骸化している。
この魔法が闇系とされているのは、死者を冥府、空の底より呼び戻すという概念があるから。どちらかと言えば死霊術などに近い。決して天の御霊より還って来るといった概念は無いとされる。
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ネコ語
フィーが考えた言語および付与効果の名称。実際の猫が喋る言葉ではない。
音声的言語は「にゃー」しかなく、そのアクセントと感情観に全てが凝縮される。なので基本的にはフィーしか解読出来ず、真の意図を知るのは喋っている本人だけとなる。考えようによっては一句だけに全ての意図が集約出来るので最強の言語とも言える。解読出来るなら。
なおバッドステータスとして扱われる。この効果が掛かると発した言葉全てがネコ語と化す。決してステータスオープンが出来ない世界ではあるが、これは多分そんな物が見れなくても関係無いくらいにわかりやすい。
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