輝操・人紹介
第一章に登場する人物の紹介です。
本編とは関係無いので読み飛ばしても問題ありません。
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アークィン=ディル=ユーグネス
本作の主人公。出生地は不明、両親も不明。混血であり人間と何かのハーフと思われる。年齢はおおよそ二〇歳(推定)。身長一七八cmで髪は栗色で短髪、獣耳と共に後ろへ跳ねた様な髪型を持つ。肌はやや濃い目の肌色で、鍛えられてきたせいか全体的に筋肉質。ただし無駄な鍛え方をしていないので着痩せするタイプ。
普段は布服に金属腰板、フード付きマントとその裏に小さな肩甲も。腰裏にポーチを下げ、その背には大型鞄を背負っている。なお名付け親はウーイールー。ディル=ユーグネスは「次代の希望」という意味を持つ。
性格は割と冷静だが激情型で、危害を加えてくる相手には容赦しないタイプ。でも友達などを求めている所為か、仲間には比較的甘い所がある。我儘をなんでも聞いちゃう感じ。とはいえ自覚は無く、文句を言いながらもという欠点もあるが。本人はクールを徹していると思っているらしいが、戦闘以外で想定外の事が起きるととても動揺しやすい。
おおよそ五歳ほどくらいの時に人さらいに売られそうになっていた所を武聖ウーイールーに救われ、その後六歳前に【輝操術】を初発現。その力に可能性を見た彼により子として育てられ、徹底的に鍛え上げられた。
救出当時の思い出のお陰で父を神格化しており、亡くなった今も憧れを失わない。それ程の尊敬があったからこそ、死んでもおかしくない修練を課せられても恐れず立ち向かい、乗り越え、その力を身に蓄え続けた。故にその能力は常人とは比べ物にならない程に強大。父同様、現存するあらゆる武技を扱え、達人にも劣らない。
ただしまだ若いため、習熟度は道を極めた者には僅かに劣る。しかしそれでも戦術切り替えが容易に行え、戦況逆転を狙う事が出来るのだ。その為の知恵も叩き込まれているからこその強みである。
欠点は人付き合いが苦手な所。元々忌避された混血である事と、人馴れしていない事もあって、人前でもなかなか喋れず口足らずな事が多い。それと元々頭が回るのもあって考え過ぎる事も多々。なので思考が空回りし、思い違いする事もあるのが難点か。人馴れという欠点はノオンら【銀麗騎志団】との出会いでどんどん改善されていく事になるだろう。
特筆すべき特徴はやはり、彼だけが使える【輝操術】。この力は父すら知らぬ力で、幼少期から共に扱い方を手探りで見つけて来た。詳細は専用項目を参照のこと。
使用武術は全て。使用魔法は攻撃系なら全て。また闘氣功術に優れ、少しだけ強化魔法や回復魔法も使える。が、戦闘面以外はからっきし。料理が出来るのは幸いか。
戦闘ランク:格闘A+、その他戦闘技術A、強化魔法C、療術E。
趣味は編み物と、草の葉を繊維に沿って裂く事。特技はツッコミ(旅立ち後に習熟)。父の格言を事あるごとに呟く癖がある。
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エルナーシェ=ウェド=ラドルファ
本作のヒロインと見せかけてプロローグで退場した、名実共に悲しい女性。ただしその存在感はとても濃く、死後もなお世界に引きずらせる程だった。
青空界、【聖ラドルファ王国】の第一王女であり、世界に希望を与えた象徴姫とされた。僅か八歳から世界の在り方を憂い、変える事を決意。その後世界を何度も渡り、説得し、心を繋げ続け、一九歳となった時に王位を継ぐ事を決意した。
それから二年後、世界が纏まりを見せた所で【陽珠】へと向かったが、【陽珠の君】の無理な要求を受け入れる事が出来ず自害。その結果、世界に大きな禍根を与える事となってしまった。もっとも、その原因は青空界の王や側近にあったわけだが。
なお、彼女の死の影響は青・紫空界だけに留まらない。他の四界においても様々な形で悪影響が及んでいる。アークィン達はそこから生まれた悪意と戦う為に旅を続ける事となるだろう。
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陽珠の君
世界を照らす太陽【陽珠】の中に住む人物。女性で褐色肌、加えてとてもグラマラスな体格を持っている。欲求不満なのか、男を誘う様な言動が多い。
しかしその正体は一切不明。神の様な扱いこそされているが、神であるかもまだわからない。ただ世界は彼女と密接に繋がっており、その機嫌を損ねればそれだけで世界が滅ぶ可能性さえあるという。
各国の代表者継承には必ず彼女の許しを得るのが必須となっており、数年ごとに各国から訪問者が訪れる事となっている。なお、訪問日も決まっていて、その日の事を【訪陽日】と呼ぶ。
プロローグにてエルナーシェ姫を自殺に追いやった。だがその真意は不明。ただの気まぐれか、それとも何かを思ってやった事か。
いずれアークィン達とも絡む時が来るかも知れない。
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武聖ウーイールー
アークィンの育て親にして唯一無二の世界最強と呼ばれた男。身長は約二〇〇cm、全身筋肉の塊とも言うべき存在だった。
この世界に名を馳せたのは僅か二八歳の頃。当時最強と呼ばれた剣士を完膚なきまでに叩き潰し、その上でその技術までをも学び、更にはありとあらゆる武術を身に付けた。その為、武芸百般、彼に知らぬもの無しと呼ばれる【武聖】の称号が付けられる事に。約四七歳の頃である。その後も彼は旅を続け、身体を鍛え、格言を残し、悪人を粛清していった。
しかし七一歳の頃、事実に気付く。自身は既存の技術を学べるが、新しい技術を生み出す事が出来ないのだと。そこで絶望し、一時的に全活動を辞める事となる。
だがその後ふと思い立って人さらいを倒した所でアークィンと遭遇。その存在に何故か心を奪われ、彼を育てる事に。
その後は【輝操術】の研究とアークィンの鍛錬に明け暮れ、死ぬまで青空界の山奥を出る事は無かった。享年九七歳、この世界では大往生である。しかし死ぬ三日前まではしっかり動いていたという。最後の最後まで愛する息子を案じた、正真正銘の父親だった。
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ノオン=ハウ=ドゥキエル
【銀麗騎志団】の団長であり、自称【騎志】。歳は一九歳、身長一六四cm。淡い紫の髪を持ち、短髪で首裏だけ伸ばして結っている。しかしキューティクルが常人より多く、毛質も極細で触るととても柔らかい。元は長髪だったらしい。剣を扱うので体つきは女性ながら白くとも結構筋肉質。ただし細さは維持しているので見栄えは割と格好良い。ただしその所為で男に間違われる事もある模様。胸の大きさは訊くんじゃあない!
銀の軽装鎧を気候に拘らず常に纏い、外では決して脱ごうとしない。誇りの象徴らしいので。
母親は何かのハーフで父親は不明。ただし人らしい姿と獣耳を備えている所は血族は人間+犬系か猫系かその辺りと思われる。【ステージ3】と呼ばれるカテゴリの人物で、本来は抹殺対象。しかし父親に隠され、今でも生きながらえる事が出来た。
性格は嘘を付けない正直者で超真面目、何でもハキハキと喋る。だからといって目立ちたいとかそういう意識は無く、根本的に天然系。ただしそれでいて頭も回るので、いざという時は自ら先陣を切って行動する事が多い。特殊な家系で育ったせいか色恋に完全耐性を持つという生粋の朴念仁でもある。なので媚薬効果のある香料さえも只の良い香りとしか思わない。
出身は紫空界。生まれたばかりの時に父に救われ、その後養子に。特殊性癖まみれのドゥキエル家の中で奇跡的にまともな子として育った。最初はとても女の子らしく、天使の様な存在だったが、兄カイオンやディアルに愛情を受けつつも惹かれ、騎士になろうと努力する様になった。
しかしそこで才覚を発揮。ディアルを越え、父が唸る程の剣術を発揮する事となる。だが一六歳の頃にエルナーシェ姫の事故死が発生し、隙を見て世直しの旅に出た。その後マオ、フィー、テッシャと出会って【銀麗騎志団】を設立、青空界へ訪れた時にアークィンと遭遇、物語の登場人物として戦う事となったのである。
得意武器は剣、小剣。速さを売りとした高速剣技が得意で、身体強化の闘氣功も扱えるので素早さはまるで雷光の如し。能力で上回る兄カイオンをも翻弄し、見事打ち倒す事が出来た。得意剣技はドゥキエル相伝、七剣殺法。その技種の居合術【疾の位、駿・駆・刃】を常用する。またその進化系である【宝・華・駿・駆・刃】は一瞬にして五閃する事で華を象るというもの。返し刃の速度に定評のあるノオンだからこそ成し得る必殺技と言えよう。
戦闘技術:剣術S、闘氣功C、格闘D
趣味は手紙を書く事と、尻尾を指でくるくるする事。特技は歌が上手いのと楽器演奏。苦手なのは魚釣り(過去のトラウマより)。
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マオ=リィエ
ほんの少しお節介なお姉さん風味の精霊使い。歳は秘密。身長は一七三cm。肩下まで伸びた深緑のウェービーな長髪を持つ。肌(?)は比較的薄めの肌色、表情豊かで口数も多い。黒に緑のラインが走るローブを纏い、ボディラインはそれなりに艶めかしい。
人間と樹人の混血で、髪も実は葉なので光合成も可能。実は自由に動かしたりする事もでき、腕の代わりに髪で物を持ったり指示したりする事がある。だけどしんどいのでそこまで常用はしない。あと人間の血が濃いのかやたらと肉食。食に拘りがある様で、新しい街にきたらまず何かを食べないと気が済まない模様。
常々大黒猫型精霊【クロ様】を背負っており、それで付いたあだ名が【歩くキャットタワー】(アークィン命名)。※第二章で
性格は前述通りのお節介さん。とはいえ割と適当な所もあり、責任感は薄めといった所か。ただし頭は回る様で、ノオンの代わりの副参謀として立つ事もある。その一方で、精神的キャパシティが少ない所為か、大きいショックを受けると引き籠るという性質も。復帰させるには長時間【クロ様】とコロコロする必要がある。
出身は緑空界。気付けば生まれていて親も無く、しかし種族的性質もあって植物とも会話出来る特性があり、孤独では無かった。それで僅か五歳で精霊術を会得し、【クロ様】と相棒に。その後、紆余曲折を経て赤空海に移住。そこでバカンスしていた所にノオンと遭遇し意気投合。【銀麗騎志団】メンバーとして戦い今に至る。詳細は今後の物語に期待しよう。
得意技は精霊術で、【クロ様】を使った変幻法がメイン。魔法系なのにやっている事が物理攻撃という変化球技でアークィン達を助ける。特に巨大化は凄まじく、質量が無いのに兵士達を難なく薙ぎ倒すという荒業まで実現。その動きはまるで風船、変幻自在の動きで何もかも蹴散らしてくれる無双属性。ただし時間制限付き。
戦闘技術:精霊術A、地魔法B、水魔法B、闇魔法B、弱体魔法B、風魔法C、回復魔法C、強化魔法C、杖術E
趣味は食べる事と、【クロ様】と寝る事。特技は食べる事と、髪を回してほんの少し飛べる事。苦手な物は海水とマタタビ(怨恨的な意味合いで)
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フィー=ロッカ
おっとりとした感じの療術士少女。歳は一五歳(自称)。身長は衣服込みで九七cmと年齢以下の低さ。雪の様に白い肌と水色のぱっつんストレート長髪を持つ。ただし普段は垂れ耳フードに隠れて見えない。丸く笑うと齧歯が見える。体格も白と水色を基調としたローブに隠れてほぼ見えず、足先がスカートから覗く程度。でも彼女にスリーサイズを求めてはいけない。
恐らく人間と兎人の混血で、垂れ耳フードの中には白く長い耳が仕込まれている。
性格はとてもおっとりとしていて口調もとても遅い。焦りというものを知らず、例えどんなに窮地でも一切ペースを崩さない。語尾をゆるく伸ばすのが癖で、それが続くと自分自身が眠くなるというおまけつき。なので長話する事が出来ない。ただし説明を語る時だけは何故か倍速、アークィンさえ聴き取るのが難しい程の超速口調となる。
出身は白空界とのこと。気付けばノオン達と一緒にいた。本当にいつの間にかだったそう。しかし療術士という数少ない力を持ち、悪い人物でもないという事で自然と納得、正式な仲間としてその後も旅を続けていた。ただ、あんまり自分を語らず、謎は多い。彼女が使う魔法は回復系だけかと思いきや【先駆けの春風】といった攻撃系魔法も扱えるという。制限は無いので不思議でこそないが、そんな活躍の限定される魔法を習得しているのは一体何故なのか。詳細は今後の物語に期待しよう。
得意技は療術全般。最大級療術の【至幸なる癒緑光】は蘇生術並みで、死に掛けたノオンを蘇らせるほど。ただしデメリットとして、被効果者に「にゃー」しか言えなくなる【ネコ語】というバッドステータスが漏れなく付与される。回復量次第だが、最大で一年も続く恐るべき弱体効果である。他にも強化魔法を得意とし、それぞれ全てに多様なバステ付与効果がある模様。それも今後に期待(?)しよう。
戦闘技術:療術S、強化魔法A、攻撃魔法F、弱体魔法F、杖術F、その他諸々
趣味はスィーツ巡りとモフモフ。特技は猫ホールドとネコ語(ただし本物には通じない)。苦手な物はウネウネとカサカサ(想像にお任せする)。
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テッシャ=テッサ
果てしない程マイペース褐色娘。歳は一七歳。身長は一五五cm。褐色の肌を持ち、棘の様な黄色ライトニングヘアを誇る。いつも跳ねる様に動くので、腰ほどに長い髪はいつも踊っている様に見えなくも無い。全体的に細身だがちゃんと筋肉らしい物はついており、格闘にも秀でている。衣服はラフで皮鎧がメイン。露出は多めでプロポーションは悪くない。けど彼女にそういう事を求めるのはいくない。
人間と土竜人の混血で、実はよく見ると頬に各三本のツン髭が生えている。紋様にも見えるけど違う。ちなみに土竜人は土の中で暮らしている訳では無く、土を掘って暮らすのが得意な種族。なのでテッシャみたいに穴を掘って進むのはむしろ異端である。なお草食主義の模様。
性格は明るく天真爛漫で、それでいて極まる程にマイペース。他人に何されようが自分の思った事しか言わない考えない。だけど割と素直で、ノオン達のお願いはちゃんと聞いてくれる。時々いなくなるけど。余りにも自由過ぎるので制御が難しい反面、言う事を守らせられれば自由に何でもこなしてくれるというポテンシャルの高い存在でもある。
黄空界出身。元々一人旅で世界を回っていて、やたらめったら土の中を掘りまくっていた。しかし青空界で暴れていた所をノオンに確保され、そこで和解。以降は【銀麗騎志団】の斥候役として大事な立ち位置を担っている。詳細は今後の物語に期待しよう。
得意技は格闘術と大地魔法。特に大地魔法は、腕に備えた爪腕甲【地懐双爪カエトハァル】の付与能力が相まって非常に強力。石畳程度なら瞬時に融解、泥化して敵を引きずり込める。おまけに即座に固めて閉じ込めたりなど汎用性が高い。故にアークィンに「地上戦なら最強クラス」と言わしめる程となった。実際、彼女に地上戦で勝てる者はほぼいないだろう。瞬時に足元全てを融解させられた時点で負けが決まるのだから。なお、その力を使った高速潜行も可能で、速度は人が走るよりもずっと速い。
戦闘技術:格闘A、地魔法A(装備補正S)
趣味は穴を掘る事と石細工。実は結構芸術性が高い。でも何故か掘られるのは大概が筋肉裸夫像。特技も趣味に同じ。苦手なのは脂。胃もたれは土内潜行の強敵である。(本人談)
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カルネ=クロワ
エルナーシェ姫の侍女で親友。姫相手だろうとハッキリと物を言える存在であり、かつ誠実な人物だった。
しかし姫の転落事故の直後から、その存在は一切報告が無い。彼女がどうなったのかはもはや誰にもわからないという話だ。
なお黒髪で柔らかなストレートロングヘア。ツンと伸びた鼻だけはエルナーシェ姫にもそっくりで、それが彼女唯一の自慢でもあったという。
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ツァイネル=バ=ヴォンファティ
紫空界、中央皇国マルディオン第二近衛騎士団団長。年齢は四三歳で銀髪オールバックとショートポニーテール。現マルディオン皇帝に忠誠を誓い、忠義の為にはどの様な残酷な事にも手を染められるストイックの鬼。ただし物をハッキリと答える性格を持ち、皇帝にも直訴する事がある。とはいえその忠義と勇気ある行動が皇帝の信頼を引き寄せ、大事な聖剣を賜る事も出来た。部下にも恵まれ、信頼も厚い。実は結構な人情家だったりする。
だがエルナーシェ姫の死後、皇帝が病に伏せ、かつ事件の真相を知った事で青空界を強く憎む事となる。皇帝が心を病んだのは聖ラドルファ王国の者達の所為なのだとして。故にその時から青空界の人間を人とも思わぬ様になった。そこでラターシュの甘言に惑わされ、尖兵として赴く事を決意。盗賊となって二年以上も戦い続けていた。
なお独身で恋人も無し。若き時に最愛の人と死に別れ、以降は色恋を完全に捨て去っていたそうだ。
粛清部隊員だった頃のファウナーの部下という経歴もある。また、ノオンが子供の頃にファウナーの家へ訪問した事があったのだが、その際にうっかり彼女を雑種呼ばわりしてしまった。それが元でファウナーに出禁を貰い、以降はあまり仲が良くなかったそう。ノオンが会ったと言っていたのはこの時の事。
彼の持っていた第五聖剣【ガンドルク】は斬撃を衝撃波に換えて飛ばす事が可能。その切り替えは自由で、後にこの剣を預かったノオンは逆にこの力を使わずに戦っていた。
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ディアル=ハウ=ドゥキエル
ノオンの兄で、ドゥキエル家の三男。年齢は二五歳、身長は一八九cm。青く跳ねた短髪に筋肉の張った角張り顎と、全身の引き締まった筋肉は漢の証。そんな彼は漁師で、今日も元気に海で魚を獲りつつ海獣や魔物と戦っている。なので下手な兵士より断然強い。輝く程に白い歯は毎日念入りに磨いている証拠。その輝きは兵士さえ目を眩ませられる程に強烈。決して魔法効果ではない。
以前は家柄になぞって騎士を目指していたらしいが、頭角を現したノオンに腕前で完全に勝てなくなり諦める事に。漁師を目指したのは、子供の頃ノオンに唯一勝てた魚釣り勝負で自信を持てたからだそうだ。ただしその後、帰った後に自慢げに調理してみた所、二人揃って食中毒に。ノオンにトラウマを与えたという悲しい過去を持つ。
性格はアグレッシブな真っ直ぐ誠実タイプとノオンそっくり。おまけに謀略までしてみせる程で、アークィン達を利用して事の真実を突き止めたという。なかなかの策士とも言える。もちろん他の兄弟と違って非常に前向きで、悪意はほぼ無い。今回の戦いでも全身全霊でアークィン達に協力して見せた。そういった意味で言えば兄弟の中で一番ノオンに近い存在だと言えるだろう。
なお、もう結婚している。子供はまだいないが、作る努力はしている模様。その点で言えばドゥキエル家の中でもっとも普通な存在なのかもしれない。
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親方
紫空界、産業組合海洋漁業部を取り仕切るパワー系おっさん。ディアルの上司。元は肉体闘士で戦いにも秀でている。もっとも、この世界における海の男は兵士よりもずっと実戦経験が多いので、こんな男がいるのは決して不思議ではない。
人情家で部下からの信頼も厚く、呼び声一つで屈強な男達が集まって来る程。おまけに現皇帝のやり方を信頼しており、忠義を尽くす事も吝かでは無かった。お陰でアークィンの反抗作戦にも進んで参加し、自らさえ盾にして彼等を見送った。
あの戦いの後はすぐ仕事に戻った模様。なんたる筋肉か。
ちなみに本名はジーグマン=ゴルゴッサ。赤空界出身の四七歳。
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カイオン=ハウ=ドゥキエル
ノオンの兄で、ドゥキエル家の次男。年齢は二九歳、身長は一九八cm。鬼の様な二本の跳ね毛が特徴の青髪を持つ。その体躯もまさに鬼と言わんばかりに巨大強靭で、重鎧を纏おうとも素早く動けるほど。その速さでアークィンを戦慄させた。
本来は騎士を目指していたが、戦闘スタイルが不適正ともあって一時は諦める事に。しかしエルナーシェ姫の存在に触れ、再び騎士を目指そうと努力する。だが今度は姫が亡くなり、失意に落ちてしまう。そこでラターシュの誘いがあり、ヴェルスト陣営へと組み込まれた。
実力だけは騎士・戦士に拘らず国内トップクラスで、戦闘スタイル問題が無ければ間違いなく騎士になっていた。それでもカイオン自体はそこまで騎士に拘ってはいなかった様だ。あくまでも家の為、あるいは姫の為を思っての生き様だったのだろう。
一方でやはりドゥキエル家の血を引いている事に間違いは無かったらしい。エルナーシェ姫のプロマイドを常々持ち歩いていたり、自室の壁一杯に写真を貼りまくっていたなど、割とウブな所が多かった。しっかりと告白までして見せた所はとても男らしいと言えるけれども。
ノオンに負け、戦いに敗れた後、フィーに蘇生させられた。お陰で一年ネコ語の刑をくらい、完全敗北を悟る事となる。
その後は反省して剣を棄て、剣士・戦士向けトレーナーとして多くの屈強な戦士達を排出したそうな。
なお、持っていた剣は第三聖剣【フェタリオス】。持ち手に相応しい質量と形へと変わるハードロングソードである。この聖剣は戦後、密かにノオンへと預けられた。世界から悪意を消し去る為に必要と感じた皇帝の采配で。兄の想いを受けたからこそノオンも受け取り、その力を正義の為に奮うと心に誓う。
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ラターシュ=ハウ=ドゥキエル
ノオンの兄で、ドゥキエル家の長男。年齢は三二歳、身長は一七三cm。他の兄弟と違ってセミロングの青髪を誇る美男子。体躯自体はしっかりとしているが、見た目はとても絞られて細めに見える。また肩幅も狭いので、服装次第では女性にも見えなくもない。もっともそれはその様に身体を矯正されて育てられたから、というのもあるのだが。
所持していたのは聖剣【ウィルナンジュ】。レイピア型の剣で使い手に加速の力を与えるというもの。加えて類稀なる剣捌きによって一度はアークィンを追い詰めた。策を講じなければきっと負けていたであろう程の剣の腕前を持つ。
そんな彼はドゥキエル家の持つ呪いと宿願を最も受け、不幸な人生を歩む事となった存在。そもそもが男しか産まれないという呪いは非常に半端で、染色体的に女だったとしても男にされてしまう。その為、とても女性に近い男が生まれてしまうという。
ラターシュもそうして生まれた存在で、おまけに一族の伝統芸に則ってノオンが来るまで女の様に育てられた。その時まではそれが普通だと思っていたのだが、父親の興味がノオンへと移った事で現実を理解してしまう。その結果憎悪が膨れ上がり、ドゥキエル家の特殊性癖を敵とみなし、滅ぼす事を決意した。実はとても繊細な人物。真の女性に生まれたかったと心では思っていた様だ。
こんな境遇があった為に友人はほぼいない。この世界においてはまだコスプレは浸透しておらず、女装が忌避の対象となる為だ。そんな悲劇の子供時代を送った為にひねくれ、更には女であろうとする意味も失い、復讐の為に剣を奮っていた時にヴェルストと知り合った。恐らく周囲から疎外された者同士という事で惹かれ合ったのだろう。おかげで決して友達とは言えないが、一応は信用し合える仲となった。だが、本当はそれ以上の親友を欲していたのかもしれない。
そしてその結果、彼は最後の決戦でアークィンの抱擁を受け入れ、負けを認めた。最後の最後でアークィンに友情を感じた為である。それはアークィンも同じで、実は元の姿に戻さなかった事を後悔している。しかしアークィンはその後悔を内に殺す事を決めたのだ。罰を下す者としての責任と覚悟を以て。
なお気付いた方もいるかもしれないが、アークィンとラターシュの決着図はかのマルディオン祖皇帝とワイアード剣王の騎士伝説の再来である。神鉄を棄てたアークィンと剣を置いた祖皇帝。心の傷を抉られたラターシュと襲撃の傷を負った剣王。その結果が友情と別れを導いたのは、この地だからこその運命だったのかもしれない。
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ファウナー=ハウ=ドゥキエル
ノオンの父。実際には登場しない。今後はわからないが。
歴史深いドゥキエル宗家の長であり、人間性にも富んだ有能な人物。【中央皇国マルディオン】の副宰相であり、かつては騎士として戦っていた実績もある。
かの武聖ウーイールーにも認められた人物で、人当たりは良い様だ。
ただし複雑なドゥキエル家の歴史背景をもろに受け止めた男な訳で、実は結構な特殊性癖の持ち主。もちろんそれは代々から伝わって来た事なので誰も文句の言えない事ではあるが。ノオンも実はその毒牙に掛かりそうだったのだが、本人が気付かないのと、父親自身の理性もあって大事には至らなかったのだそう。
ただしそうなる前、ノオンが来る前にラターシュへ一族の宿願を押し付けた事もあり、その業は結構深い。なお如何わしい事はしていないので誤解しない様に。
実は皇帝と旧知の仲であり、若い頃は現宰相含めた三人で色々と遊び回っていたそうだ。実はほぼ同い年なので結構な歳という事になる。つまり結婚したのは割と遅めだったのだろう。皇帝含めて。
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皇帝
紫空界、中央皇国マルディオンを束ねる稀代の優帝。本名はクラストール=アング=マルディオン。年齢は六三歳と高齢で、もうすぐ第二皇子ルークランに皇位を渡して退位する予定だった。
しかしエルナーシェ姫の死後、そのショックでしばらく病に伏せる。その間に第一皇子ヴェルストが暗躍し、知らぬ間に政策を塗り替えられる事に。そこでようやく復帰しようとしたのだが、陰謀に嵌って幽閉された。この時点で皇帝に味方はほとんどおらず、成す術無しだった。貴族は半数が懐柔されていた様だ。しかしアークィン達の活躍によって救出され、その後は国を立て直そうと躍起になる。第二皇子もそれに賛同し、助け合いながら働いたそうだ。
皇帝の地位は基本的に世襲。故に跡継ぎは皇帝になる為の勉学を受け、民を導く為に尽くさなければならない。その見返りとして高い地位と不自由無い生活が送れる。そういった認識を持って皇族は成り立っているという。
なお跡継ぎになれなかった皇族は皇位継承を終えた時点で平民化する。その位は今までの努力に見合った位置へ。とはいえ素養が元々高いので、子孫は大体が上級民街にて暮らしているのだとか。皇国政府で働く者も少なくはなく、意外と血族親近者は多いのかもしれない。すなわち世襲は血統ではなく、あくまで現皇帝の息子が継ぐ、という形の伝統なのだろう。
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第一皇子ヴェルスト
皇帝の息子で今回の事件の首謀者――という事にされている。実際の立案者はラターシュだが、最も位が高い存在なので責任を負わされたと言った方が正しいか。自業自得な事に変わりは無いが。三三歳。
顔は整っているが、歪んだ思想から顔をも歪ませるのが得意となり、とてもじゃないが普通とさえ言えない。ブロンドの髪を有しているがヘアスタイルは適当で、無駄に額先でカールを巻いている。それでいて中肉中背、腕と足は細目でアンバランス。走るとガニ股になるという癖があり、脇が甘いのでいつも肘が上がってしまう。典型的な我儘王子、というのを想像すれば分かり易いだろうか。
基本的に怠け者で、我儘で、サディストで、捻くれて、野心的。何を取ってもいい所が無い。おまけに人の事を邪魔するのが得意で、ラターシュの邪魔さえするものだから当人にもうっとおしがられていた。どうやらヴェルストにとってラターシュは頭が上がらない存在らしい。味方が彼しかいないので必死だったのだろう。
最後の戦いでアークィンに四肢を折られ、おまけに父親から現実を見せつけられた所で気絶した。その後は療術士に四肢を治してもらい、即座に追放。その後漁業都市へ移送、再教育を兼ねてディアルら産業組合漁業部の下で下働きさせられる事となった。自分が迷惑を掛けた人々に償う為にずっと。自殺する勇気も無い男なので監視も付かなかったらしい。
余談だが、その後はしっかりと海の技を覚え、至らないながらもせっせと働き続けたそうだ。
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第二皇子ルークラン
皇帝の息子で次期皇帝第一候補。しかし皇帝の幽閉と共に彼もまた幽閉に。地下牢に閉じ込められたまま二年も過ごす事となった。しかし賢いからこそ事態の予測は出来ており、諦めずにずっと耐えていた様だ。
おかげで現在、アークィン達の活躍によって救助された時もまだ元気があった。弱っていたが、さすがにまだ若いとあって直ぐに公務へと戻ったという。やはり皇帝となる者は気概そのものが他者とは違うという事か。
でも残念ながら今後彼が物語に出て来る事は無い。
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