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第117話 戦争開始

 アルケティとの邂逅の後、俺はすぐにレジスタンス本拠地へ戻った。

 その真なる目的を心中に秘めたまま。


 もちろんパパム爺にも事実は伝えたよ。

 だからか当人はホッと胸をなでおろしていたものだ。

 なんでも、暗殺などでアルケティを倒しても意味が無いという事で。


 パパム爺は恐らく〝レジスタンスが勝った〟という事実が欲しいのだろう。

 存在感を民衆に示し、王国復興への足掛かりへとする為に。

 象徴を立てるという所はアルケティのやり方と同じだな。

 そう悟れたお陰で言い訳も楽だった。


 まぁ、もしアルケティが本当の悪人だったなら迷わず滅殺していたがね。

 俺達にとっては王国復活なんてどうでもいい話なのだから。




 そしてあれから一週間。

 俺達は今、帝都を囲う反乱軍と共に砂漠へと立っている。


 アルケティとの約束を果たす為に。




「しかし何故わざわざ宣戦布告などなさったので? 奇襲した方が勝率は高いのではありませぬか?」

「この人数を隠したまま移動するのは不可能に近い。どうせ察知されて罠を張り巡らされるのがオチさ。そうやって泥沼で互いに張り合った所で被害ばかりが増えるだけだ。なら正面切ってぶつかると宣言した方が戦力増強に集中させられるだろう?」

「な、なるほど、確かに……」


 現在、レジスタンスは【接続都市シャウシュミ】を拠点として三方に展開。

 総数約二万人の三大隊にて帝都と相対している。

 あとは大将が号令を出すだけで戦いが始まる、といった状態だ。


 レジスタンス側にとっての大将とはもちろん、テッシャの事。

 今も俺達の後ろで煌びやかな服を纏って台座に掛けているよ。

 で、俺が参謀役として付いている。


 とはいえ、あいにく俺には戦略というものがわからないがな。

 さすがに父からも戦争のイロハまでは教えてもらっていないから。


 なのできっとこう説得出来はしたが、実際はそこまで単純ではないだろう。

 今の状況に仕立てたのはより戦い易くする為だけに過ぎない。


 それに、パパム爺は俺達を利用するつもりだからな。

 だったら俺達の方もレジスタンスを利用させてもらうだけさ。


 互いに出来るだけ消耗させない為にも。


「斥候より報告! 現在帝都では約三万の部隊が周囲を固めているとの事! また市民の姿は無し。先日の報告通り、避難を済ませた模様!」

「了解。なかなか手際が良いじゃないかアルケティの奴。これなら思う存分やれそうだ」

 

 そして恐らく、アルケティはこの思惑を察している。

 だから今報告のあった三万の兵はきっと前に出てこない。

 帝都を壁にしてじっと耐え抜く事を選ぶハズだ。


 数では相手の方が圧倒的に上。

 おまけに要塞の如き帝都が敵の進攻を阻む。

 だからこその防衛作戦だとすれば理由も付けやすい。


 ならばと、一方の俺達もしっかり作戦を立ててある。

 ノオン、マオ、クアリオンを前線に立てた三本柱作戦を。

 一騎当千である二人と一体が象徴となる事で士気を上げる算段だ。


 なにせ一人は聖剣持ち、もう一人は超巨大化、更には霊銀ゴーレムときた。

 いずれも目の当たりにしただけで震える程に象徴的だからな。


 ただ、彼女達には適当に戦うだけでいいと伝えてある。

 少し士気を昂らせて戦い、後は兵士達に任せるのだと。

 無駄に消耗する必要なんて無いからな。


 というのも推測が正しければ、この戦いは数に拘らず一方的となる。

 帝国側が防御一辺倒となるからこそ。


 アルケティは別に国に拘っている訳じゃないからな。

 このまま突破してレジスタンスが天下を獲ろうが関係無いんだ。

 その末に俺達が象徴となれば、混血融和計画は大きく前進するから。


 銀麗騎志団が今度は黄空界を支配する悪逆帝を成敗。

 後は紫空界のマルディオン皇帝がかの英雄を俺達だと宣えばいい。

 そこでようやく人々は気付く事となるだろう。


 世界は混血の英雄によって救われた、とな。


 まぁ紫空界の二番煎じだから少しインパクトには欠けるかもしれないが。

 それでも時期的には最良と言えるだろう。

 この三か月余りで世界は今までに無いほど激動しただろうから。


「さて、それでは俺達も行くとするか。ニペル、ここで戦況を逐一連絡してくれ。意志を示しただけで()()()は容易に働くハズだ」

「わかりました~♪ 皆さま、どうかご無事で」


 その事実上の締めをこれから行う。

 俺がアルケティと再会する事によってな。


 ただし、目標は全面戦闘が起こる前までに。

 必要以上の被害を出す前、俺達は遊撃部隊として極秘裏に()()する。


 敵側も思ってもみないだろうな。

 まさか大将が自ら先陣を切っていたなんてさ。


 そう、テッシャが得意の土内潜航術を使って俺を導くんだ。

 更にはフィーも加え、一気に帝都中心へと乗り込む。

 つまり、二万の兵はその為の囮という訳だ。


 しかし戦況がわからなければ動き難くもなるだろう。

 そこで俺は一つ、皆に力を預けておいたんだ。


 その名も【輝操(アークル)報繋(カムーク)】。


 これは遠方だろうと瞬時にして会話が出来る通信術。

 しかも声を出さなくても伝わる秘匿機能付きさ。

 これで周りに余計な事を察されずに済むだろう。


 そして準備はもう整った。

 後は実行に移すだけだ。


『無事に帰ってきたら抱擁して差し上げます~♪ それも全裸で~♪』

『冗談はそれだけにしておけ。よし、潜行隊出るぞッ!!』


 故にテッシャが戦闘開始を宣言し、間も無く俺達を抱えて砂の中へ。

 土内でも平気な様にと囲隔(クルセット)を展開しながら。




 さぁ待っていろよアルケティ!

 可能な限り早くお前の下へと辿り着いてみせるからな!


 俺の力と、お前の願い。

 その二つを以って未来を正しく輝かせる為にも……!


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